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偽装フリーランスとは?偽装請負の被害に遭わないためのポイントを弁護士が解説

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フリーランスや個人事業主をはじめとする多様な働き方の推進が進む一方、顕在化しているのが、「偽装フリーランス」「偽装請負」などと呼ばれる問題です。自身がその被害に遭ってしまったらどうすればよいのか、また、こうしたトラブルに巻き込まれないためにはどのような対策を講じればいいのか、弁護士である筆者が問題点などを解説します。

偽装フリーランス・偽装請負とは?

偽装フリーランスや偽装請負は、実態は労働者であるにも関わらず、業務委託契約・準委任契約または請負契約といった形式を取って、雇用主としての責任を逃れる場合のことをいいます。

偽装フリーランスが社会問題に

「A社の工場で働いていてケガをしたが、A社の社員ではないため労災が下りない」など、偽装請負という社会問題が話題になったことがありました。この問題自体が解消されたわけではありませんが、昨今、働き方がますます多様化していくなかで、偽装請負ならぬ、偽装フリーランスという新たな問題が生じています。

2020年(令和2年)の内閣府の調査によると、フリーランスとして働く人は全国で約462万人いると報告されています。2023年(令和5年)4月の参議院内閣委員会では、偽装フリーランスという言葉が使われるなど、社会問題として取り上げられました。

※参照:フリーランス実態調査結果(内閣官房日本経済再生総合事務局)

各契約類型の特徴

問題は「どういう場合に、労働者の実態を備えているといえるか」です。まずは、それぞれの契約の特徴をみてみましょう。

1. 労働契約(雇用契約)(民法623条)

  • 《内容》
    労働者が労働に従事することを約束し、使用者が報酬を支払うことを約束する
  • 《区別のポイント》
    労働者が使用者の指揮命令に服する
  • 《例》
    平日毎日9時から18時まで工場で一定の作業をする

2. 請負契約(民法632条)

  • 《内容》
    請負人が仕事の完成を約束し、注文者が仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する
  • 《区別のポイント》
    一定の成果や仕事の完成を契約の目的とする
  • 《例》
    契約締結から1年後までに一定の仕様の建物を建築する

3. 準委任契約(業務委託契約)(民法656条)

  • 《内容》
    委託者(委任者)が受託者(受任者)に事務を委託し、受託者(受任者)が承諾する
  • 《区別のポイント》
    成果や仕事の完成ではなく、事務処理をする
  • 《例》
    医師として診療・治療行為を行う(治すことを約束するわけではない)

基準は、指揮命令下にあるか否か

請負契約や業務委託契約(準委任契約)の場合、注文者や委託者(委任者)は、請負人や受託者(受任者)(以下まとめて「フリーランス」と呼ぶことにします)に対して指揮命令をするわけではありません。

逆に、指揮命令をすると、労働契約・雇用契約と評価されることになってしまいます。つまり、労働契約・雇用契約と請負契約・業務委託契約(準委任契約)との区別は、「使用者の指揮命令下にあるといえるかどうか」にあります。

もっとも、「指揮命令下にあるといえるかどうか」の判断基準はやや曖昧です。そこで、判例や学説では、以下の具体的な視点を使って総合判断をしています。

  • 具体的な作業についての依頼・指示に対して諾否の自由があるか
  • 業務内容や遂行方法について具体的な指示があるか
  • 勤務場所や勤務時間についての拘束があるか
  • 他のフリーランスに業務を代わってもらったり補助してもらったりしてよいか

契約書の題名が「業務委託契約」や「請負契約」となっていたとしても、あくまでも就業の実態をみて判断されます。

したがって、フリーランスであっても、上記のポイントに照らして注文者・委託者(委任者)の指揮命令下にあると評価できれば、労働契約・雇用契約として、労働基準法等の労働法令による手厚い保護の対象です。

フリーランスに依頼する側は、労働者を雇うよりも労働保険料などのコストがかからない利点から、外注を選択する場合もあるでしょう。

しかし、実際のところ、フリーランスが9時~5時にオフィスで勤務にあたり、上司の指示にしたがって作業していたり、フリーランスであるがゆえに有給休暇が取れず、残業代も支払われなかったりする場合は、偽装フリーランスと評価される可能性があります。

偽装フリーランス・偽装請負のトラブルに巻き込まれてしまったら?

このような偽装フリーランス、偽装請負のトラブルに巻き込まれてしまったら、フリーランスや下請としては、どのような対応をすればよいのでしょう。

大まかな方向性を検討する

フリーランスとして働いている方には、フリーランスとしての働きやすさに利点を見出して、自らフリーランスという働き方を選択している方もいれば、企業との力関係などから正社員にしてもらえず、やむを得ずフリーランスという働き方を選択している方もいるでしょう。

それぞれ求める働き方が異なりますので、偽装フリーランスのトラブルが起きて対処法を検討する際には、以下が重要な要素となります。

  • フリーランスのまま働き続けたいのか
  • 従業員としての待遇となるのがよいのか
  • トラブルを契機に、契約自体は解消してもよいのか

以下にて相談窓口などをご紹介していますので、相談するにあたり、自身が希望する方向性を伝えて相談すると、相談がスムーズです。

フリーランス・トラブル110番に相談する

フリーランスに関するトラブルに対応するため、国は2020年に「フリーランス・トラブル110番」を設置しました。第二東京弁護士会が運営を行っており、弁護士から必要な法的アドバイスをもらえる制度になっています。

毎年数千件の問い合わせがあるようですので、法的な紛争とまではいえないようなトラブルや、困ったことなどがあれば、気軽に問い合わせてみてください。

そのほかの対応

偽装フリーランスに関するトラブルに限れば、実態が労働者であるにもかかわらず、労働法上の保護を受けられないというのが典型的なトラブルです。たとえば、有給休暇が取れない、残業代が支払われない、最低賃金を下回る報酬しか払われない、業務中にケガをしたが労災が下りないといったものです。

端的に残業代を請求したいのであれば、自身に合った弁護士を探して依頼をしてもよいでしょう。また、労災の問題であれば労働基準監督署等に相談するなど、トラブルの類型ごとにピンポイントで相談先を決めるのも解決への近道です。

フリーランスとしての働き方を継続する前提であれば、不当な取引条件等についての相談として、公正取引委員会の相談窓口に相談することも検討してみてください。

※参照:全国労働基準監督署の所在案内 厚生労働省

偽装フリーランス・偽装請負のトラブルに巻き込まれないために

フリーランスとして働く方は、労働法上の保護が受けられない代わりに、働きやすさ等のメリットを重視して、フリーランスを選択している場合も多いでしょう。

そこでここからは、フリーランスとしての働き方を続ける前提として、偽装フリーランス・偽装請負のトラブルを未然に防ぐための注意点を、トラブル別に検討してみました。各ケースに共通することとして、「フリーランスとしての稼働開始時に、契約書内容をしっかりと詰めておく」という点が重要です。

有給休暇が取れない(休めない)

請負契約の場合、請負人は仕事の完成を約束するものですから、いつ休むかは請負人の自由裁量に任されているはずです。業務委託契約(準委任契約)の場合も、細かく業務時間を定めていないことが多いです。

逆に、フリーランスのはずであるのに、細かく業務時間が定められていて休みを取る余地がない場合、指揮命令下にあると認められる可能性が高まります。

フリーランスを活用する側としても、コスト面等からフリーランスに利点を見出している場合もありますので、労働法上の義務を課せられると困るということもあるでしょう。すると、そこに交渉の余地が生まれます。できる限りトラブルになる前に、自由なタイミングで休みを取れるよう、交渉してみてください。

残業代が支払われない・最低賃金を下回る報酬しか支払われない

請負契約の場合、成果や仕事の完成に対して報酬が支払われるため、どれだけの時間や手間を要するかは、当初の契約締結時にできる限り想定しておくべきです。当初の想定が困難な場合も、想定が可能な部分をできる限り特定して契約を行ってください。

想定が困難な部分については報酬算定の方法などを取り決めておくなど、作業時間や手間が不透明な部分について、安易に報酬を確定しないことが賢明です。

業務委託契約(準委任契約)の場合、時間単価で報酬が設定されているのであれば、単純な報酬の未払いになるのみです。報酬が未払いの場合は、最終的には訴訟提起をして未払報酬を回収することになるでしょう。

月額や作業内容ベースで報酬額が決まる契約内容の場合は、作業内容や稼働時間に照らして報酬額を増額できるよう、契約時に定めておくことが望ましいです。当初の想定よりも稼働時間が長くなることもあるので、こういったケースに備えておきましょう。

いずれにせよ、求められている仕事に対してどれほどの時間や手間を要するのかを事前に想定して契約締結に臨むことは、後に偽装フリーランスとして、労働法上の保護を求める場合にも有用です。

業務中にケガをしたが、労災が下りない

請負契約や業務委託契約における業務の遂行中に災害が生じた場合、原則としてはフリーランスがその危険を負担することになります。労働者であれば労災が下りる(労災保険給付が受けられる)ため、一定の保護を受けられます。一方、フリーランスは働けなくなれば、単純に報酬がもらえません。

フリーランスとしての契約締結時には、そのようなリスクも踏まえて報酬額を確定することが好ましいです。例えば、民間の保険に入ることを前提に、保険料を捻出できるだけの報酬額を決める、なども考えられるでしょう。

また、注文者や委託者(委任者)の従業員と一緒にオフィスで働くような場合には、契約に、災害発生時についての取り決めを盛り込んでおくことが望ましいです。

なお、労災について定める労働者災害補償保険法(労災保険法)では、特別加入が認められており、フリーランスであっても一人親方として労災保険に加入できる場合があります。

業種が限定されていますが、フリーランスであっても労災保険法上の保護を受けられる可能性があります。業務上の負傷や傷病が発生するリスクが高い業務の場合は、このような選択肢も検討すべきでしょう。

フリーランス新法の成立

フリーランスの保護を図るため、令和5年4月に、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)、通称“フリーランス新法”が成立し、2024年(令和6年)の秋頃までに施行される予定となっています。

このフリーランス新法では、フリーランスとの取引について、フリーランスを利用する側に一定の義務を課しています。たとえば、委託する業務の内容や報酬額、支払期日等の取引条件を明示しなければならず、また、フリーランスへの報酬支払は発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内に期限を設定しなければなりません。

さらに、育児介護等と業務との両立が可能なように配慮する義務や、フリーランスへのハラスメント行為についての相談体制を整えるなどの措置を取る義務が課せられるなど、より一層のフリーランスの保護が図られるものとなっています。

とはいえ、フリーランスが活躍する業種は多岐にわたり、たとえば業務の内容をどこまで具体的に定めるべきかなどは、ケース・バイ・ケースの判断とならざるを得ません。したがって、フリーランス新法が施行されても、上記のような点に注意すべきという状況に変わりはないため、自身でしっかり契約を管理していくことが重要です。

※参照:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)等に係る取組について

まとめ

社会問題となっている偽装フリーランスの問題は、「実態が労働者であるのにフリーランスであるがゆえに労働法上の保護が受けられない」というものです。フリーランスの保護を図るフリーランス新法が令和6年秋頃までに施行されますが、これですべてが解決するわけではありません。 偽装フリーランスのトラブルに巻き込まれないよう、業務中のトラブルを想定して契約締結にあたりましょう。それでもトラブルが発生してしまった場合は、「フリーランス・トラブル110番」に相談するなど、トラブルごとに適切な対応を確認し、対応にあたってみてください。

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