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誰もやらなくていいことに旨味が詰まってる。掟ポルシェのフリーランス論

掟ポルシェ(ロマンポルシェ。)FREENANCE MAG

男気啓蒙ニューウェイブバンド『ロマンポルシェ。』のボーカル&説教担当として活動する掟ポルシェさん。活動領域は音楽にとどまらず、「説教番長 どなりつけハンター(文藝春秋)」「男の!ヤバすぎバイト列伝(リットーミュージック)」をはじめとして多数の著作も上梓。そして近年、妻と一緒に開始したビジネスがまさかの「結婚相談所」。

結婚相談所を立ち上げた理由や仕事観、フリーランスとしての心構えなどを、フリーランスのテレビっ子ライター・てれびのスキマがインタビュー。

profile/掟ポルシェ
『ロマンポルシェ。』のボーカル&説教担当。『男は橋を使わない』など、これまで8枚のCDをリリース。ひとり打ち込みデスメタル『ド・ロドロシテル』としても活動を展開。執筆活動も精力的に行う。現在は妻である日下ゆにと結婚相談所を運営中。
https://twitter.com/okiteporsche

“掟ポルシェ業”から結婚相談所へ

スキマ:今年2月から結婚相談所を始めたと聞いて驚きました。

掟:くだらないことばかりやっているのが、自分の年齢と合わなくなってるって感じたんですよ。もう55歳ですから。ステージ出ていってパッと裸になって笑ってもらおうとしても、「まだそんな超古典的手法で面白いと思ってもらおうとしているのか」と、哀れに思われるんじゃないかと。なにか別の仕事をやらなきゃと思っていたんですけど、今までまともに働いたことがないから、何をしていいのかわからない。そんなに世間は甘くないんじゃないかって思ってはいたんですけどね。

スキマ:奥様の勧めだそうですね。

掟:嫁は占い師をやっているんですけど、突然、結婚相談所をやりたい、占いの結果でもやったほうがいいと出てる、しかも俺と一緒にって言い出したんです。頼むから巻き込まないでくれと。これまでふざけたことばかりがんばってやってきたのに、ハイこっからは真面目な顔で正業やります!なんてダメじゃないですか。「いやいや、わかってるよな? 俺は掟ポルシェだぞ。サンバイザーかぶって瞼に銀ラメ塗りたくった人一倍コミカルな奴が、人の幸せ祈ってる場合じゃないよ」って頑として断ったんです。 

スキマ:なぜそれが一転して、結婚相談所をやることに?

掟:去年の10~11月に激しく体調を崩したんです。もう“掟ポルシェ業”もやってられないと危機を感じて。じゃあ、結婚相談所やるわってなったんです。やり始めた途端に体調が良くなったんで、たぶん嫁に呪いかなにかかけられたんじゃないかと思ってるんですけど(笑)。

スキマ:結婚相談所を始めると周囲に話したときの反応はいかがでしたか。

掟:もう「え?」ですよね。そうきましたか、みたいな。でもやってみると、かなりいい商売だなと。誰も不幸にならない仕事ですし。しかも嫁と2人でやることで、いいこともある。例えば結婚相談所なのでお見合いや交際という道筋を辿るんですけど、その中で「相手がこういうことを言っていたんだけど、どういう意味だ」とかって、会員さん含めて3人で話すと誰かが気付いたりするんですよ。あとは占いを使って、迷ったときは占いで見てみましょうって。そうするとうまくいくことが多いですね。

スキマ:親身になってサポートされているんですね。

掟:だからあんまり会員数を増やしたくないんですよ。うちは、かなり会員さんに対してのサポートが手厚いと思います。例えば、月に一回リモート会議みたいなものをやっているんです。「相手はどう考えているんだろう」って会員さんが迷ったときに、「こういうことじゃないですか?」と、自分では気付きづらいことを噛み砕いて説明することで、いろいろと整理することができる。やっぱり、メールとかのやり取りだけじゃわからないことって多いですよね。一人の担当者が何十名もの会員さんを抱えていたら、そんなに手厚くケアできないと思うんですよね。 

スキマ:準備から開業まで、苦労はありましたか?

掟:基本は嫁の個人事業を自分が手伝っているというスタイルなんです。銀行から開業資金を借りようとすると、事業計画とか書かなきゃいけないけど、そういうの2人とも得意じゃないんで。俺に押し付けられても「ごめん、まともなこと考えたら知恵熱出るからダメ」って。 

スキマ:会員さんは、どんな方が多いですか?

掟:普段の掟ポルシェ活動とか、嫁の占い師としての活動とかを見て来てくださるお客様がほぼ100%ですね。うちが他と違うのは、集客のための苦労を一切していないこと。よその相談所さんは会員になってもらうためのセールス活動がもっとも大変な仕事だと思うんですけど、その部分をショートカットできるっていうのは、すごく自分たちの強みだなと思いました。 

結婚の良さは、一緒に暮らせること

掟ポルシェ(ロマンポルシェ。)

スキマ:そもそも奥様との出会いは?

掟:1993年頃、編集者の仕事をやろうと思って、『すっぴん』という英知出版の雑誌の編集部に潜り込んだんですよ。そしたら、当時出版業界では過酷な就業形態が多かったんで、先輩の編集者たちが全然家に帰ってないのがわかった。先輩の一人に「最近、家帰ったのいつですか?」って聞いたら「7ヶ月前かな?あ、そういえば洋服取りに2~3か月前に一度帰ったよ!」って言うのを聞いて、3日で脱走しました。 

スキマ:3日で(笑)。

掟:ちょうどその週末に、どうしても観たい女子プロレスの大会があったので、なんの躊躇いもなく女子プロレスを選んで。で、それから8年程経って、『すっぴん』がめでたく創刊100号を迎えるタイミングで『すっぴんの素』というメモリアル本を作りまして。縁のある人に取材をする中でなぜか俺もインタビューを受けることになり、その時にライターとして来たのがうちの嫁でした。 

スキマ:2006年に結婚式を挙げていらっしゃいますが、結婚を考えたのはどんなタイミングだったんですか?

掟:2002年頃から一緒に住み始めるんですけど、もう4年以上付き合ってたんで、そこまで引っ張って結婚しないのはさすがになしでしょと。その頃からフリーランスでしたけど、いろんなところからお仕事はいただいていたんで、お金の不安とかはそれほどなかったですね。 

スキマ:結婚して良かったですか?

掟:良かったですよ。彼女の人柄も好きですし、話し相手が常に家にいるっていいもんですよ。結婚するまでは人と一緒に暮らすなんて絶対無理だと思ってたんですが、意外と慣れるものですよね。子どもとか、生まれてから数年は大変なことも多いけど、しゃべれるようになったら後はもう楽しいことしかないですし。子どもは二人ともすごい面白いし、割といい子に育ってくれているんで。結婚というもの自体、そこまでしたいと思ってなかったんですけど、自分としてはこの人たちと一緒に暮らせることが良かったなと思いますね。

仕事を断らないのがサブカル

掟ポルシェ(ロマンポルシェ。)

スキマ:著書で「本業が定かではないのがサブカルだ」と書かれていましたが、仕事選びの基準は?

掟:仕事を断らないのがサブカルじゃないですかね。

スキマ:なるほど。

掟:プロフィールにも書いてあるんですけど、頼まれたことは大体やる。もちろん、断った仕事もありますよ。でも、基本はやる。あと不器用すぎてゲームが全然できないのでゲーム関係の仕事だけは断ってますけど、過去にどうしてもやらなきゃいけない実入りの良いゲーム仕事を受けた時は、ゲームプレイヤーの方は無理だから実況のちゃちゃ入れみたいなパートを無理やり作ってもらってなんとかごまかしました。 

スキマ:フリーランスの場合、人と人とのつながりも大事だと思いますが、信用できる仕事相手はどのように見極めていますか?

掟:基本的にはどんな人とも一回仕事してみる。ヤバい人は一回仕事してみればわかりますから、ダメだったらそこでおしまいにする。以前に人脈の作り方について聞かれたことがあるんですけど、自分の友人関係を「人脈」なんて考えたことはないですね。有益か無益かで人を判断しないようにはしてます。実際に友人は、無益な人がめちゃくちゃ多いです。 

グレーはグレーのままで

スキマ:仕事において影響を受けた人はいらっしゃいますか?

掟:ギャグセンス的なところでは、『つる姫じゃ〜っ!』という漫画を描かれていた土田よしこ先生の作品が、かなり自分のお笑いの基本みたいにはなってますかね。あとはやっぱり高校生ぐらいの頃から読んでいた根本敬先生の影響は大きいですね。身の回りにいる大変な人・めちゃくちゃな人にほど、どうしても惹かれていくっていう。いろんな方の影響は、今もずっと受け続けてます。

スキマ:わりと影響されやすい?

掟:そうですね、自分には何も芯がないので。言いたいこと・主義主張は何もないですから。主義主張がありすぎるとやっぱりダメですよね。今、世の中見渡しても、言い切らないと気が済まない人が多いじゃないですか。グレーはグレーのままにしておかないと。なんでもかんでも白黒はっきりさせる必要はないし、グレーになった理由ってのは絶対あって。グレーの深みに思いを馳せたり、楽しむ余裕は持っていたい。それはプロレスに教わったことでもありますね。真実はそこまで重要じゃなくて、真実にたどりつく過程とか理由が面白いんだって。 

みなさまの余力で生かしてもらってます

掟ポルシェ(ロマンポルシェ。)

スキマ:個人事業主として、お金の管理もご自身でやっているんですよね。インボイス制度とか始まりましたけど……。

掟:いやもう、そういうの本当に分からない(笑)。確定申告は毎年自分でやってるんですよ、税理士とか雇わないで。でも今年から税理士雇わないとダメなのかなとか、ちょっと暗い気持ちになってますね。確定申告の計算ですらわかんなくて柱にガンガン頭を打ちつけたりしながらなんとか答えを出しているのに、もうインボイスとか考え始めたら血まみれですよ。

スキマ:フリーランスとして働く上で大切にしていることはありますか?

掟:うーん、何でしょうね。さっき仕事を断らないのがサブカルという話はしましたけど、でも、フリーランスはどうしても嫌な仕事は断れますしね。それが良いんじゃないですか。本当に自分がやりたくないことをやらないで済む。

スキマ:ストレスもかかりにくいですよね。

掟:そう、ストレスがたまらないように生きていこうとした結果、楽しくないことはやらないようにしようっていう風になった。「たまたまお前の楽しそうと思うことと、みんなが思ってる楽しそうなこととそんなに変わってないみたいだから、じゃあ、お前にはちょっとお金あげるね」みたいな感じで、みなさまの余力で生かしてもらってますんで。

スキマ:余力で(笑)。

掟:だから、ちゃんとした、かたいお仕事をしてる方には足を向けて眠れません。平日の昼間働いてくれてありがとうございます、おかげで自分が平日の昼間からビールを飲んでいられますって。でも、誰もやらなくてもいいことに、やっぱり旨味は詰まってるんですよね。できるだけくだらないこととか、やらなくていいことだけやっていたいんです。

掟ポルシェ(ロマンポルシェ。)

撮影/高浦宏幸

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