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弁護士が教える契約の基本とトラブルあるある!事前に備えてトラブル回避

FREENANCE 契約

フリーランスや個人事業主、スモールビジネスのオーナーとして事業をスタートさせた方や、これから副業を始めようとしている方へ向けて、知っておくべき「契約」の基本を五十嵐良平弁護士が解説します。報酬の支払い業務範囲についてなど、契約を締結していないことで想定されるトラブルを参照しながら「業務委託契約書」「NDA(秘密保持契約書)」における条項の記載例も紹介していきます。

本記事の対象はこんな方
  • フリーランスになったばかりの方
  • 契約や取引の基礎を学びたい方
  • 想定事例からの学びを実践したい方

契約とは?

「契約」とは、当事者間の意思表示の合致によって成立し、合意された内容の実現に向けて当事者を拘束する規範を指します。つまり、合意・約束のうち“法的に守らなければならない”としたものです。あくまで約束なので、基本的には、その内容は当事者がお互い納得する限りで自由に決められますが、口頭であっても契約は成立します。

契約書とは?

契約自体は口頭でも成立しますが、それだけでは証拠が残りません。メールやチャットの場合も同様で、やり取りの内容が証拠として十分でないことも多いため“当事者間の合意”を証明できる形できちんと書面に残したもの「契約書」です。

提示された契約書の内容は交渉できる?

契約書の内容は、あくまで“当事者間の合意”の内容を記載したものであり、もちろん当事者が納得する限りで自由に決めることができます。納得ができなければ交渉可能ですし、折り合いが付かなければ「契約しない」ことも可能です。

トラブル予防には業務委託契約書の締結を

ここからは「契約書を締結しない」ことで、フリーランスや個人事業主に起こると想定されるトラブル例を紹介します。

以下のトラブル予防には、業務を受託する際に、業務範囲や報酬金額、支払条件等を明示した「業務委託契約書」を締結すべきです。各ケースにおいて、業務委託契約書でどのような条項を確認・記載すればいいのかといったポイントについても解説していきましょう。

Case 1. お金を支払ってもらえない

ライターの場合
「記事を書いてください! お礼はしようと思ってますので」「わかりました」というやり取りのみで、契約書は結ばずに記事を執筆し、納品。後日に報酬を請求しようとしたところ「お金がかかるとは思ってなかった」と言われ、支払ってもらえない。

報酬額・支払条件の明示

報酬の支払いについては具体的な「金額」はもちろん、「請求のタイミング」等を決めておくことが大切です。業務委託契約書にそれらが明示されているか確認してください。

業務委託契約書の条項例
  • 委託者は、成果物の納入の日から10営業日以内に納品された成果物の検品を行う。
  • 受託者は、当月に検品が完了した成果物の委託料の金額(1記事あたり2万円)の合計を記載した請求書を翌月15日までに委託者へ提出する。
  • 委託者は、請求書受領月の末日までに受託者へ委託料を支払う。

Case 2. 業務範囲が広がっていく

Webデザイナーの場合
ランディングページのデザインを依頼され、 完成品のHTMLを納品。その後に、お問い合わせフォームの機能 (バックエンド)の制作もすべきと言われ、これがなければ完成していないとして報酬を払ってもらえない。

業務範囲の明示

業務範囲についても、具体的に書かれているか確認しましょう。案件によって業務範囲は変わるため定型化は難しいかと思いますが、業務内容の明細と合わせた見積書がある場合は別紙として添付する、といった対応も有効です。

業務委託契約書の条項例
  • 委託者は、委託者のWebサイト(URL)の改修を目的として、以下に記載の業務を受託者に委託する。
    i. コンテンツマップ及びワイヤーフレームの作成
    ii. デザインの作成
    iii. 各ページのレスポンシブ対応
    iv. 前各号に付帯する業務
    (但し、ドメインの設定やサーバ設定、バックエンドの改修等は含まない)

Case 3. 突然、契約を打ち切られてしまった

Webエンジニアの場合
Webサービスの開発に参画。ある日突然、正社員を採用して内製化することにしたので、来月からは発注しないと言われる。

契約期間の明示

業務委託契約書に期間の定めが明記されているかに加えて、解除の条項も確認しておきましょう。「委託者(クライアント)は、受託者に対して30日前までに書面で通知することにより、本契約を将来に渡って無条件で解除することができる」といった条項が記載されているケースも考えられます。

業務委託契約書の条項例
  • 本契約の期間は、2022年7月1日から2023年6月30日までとする。但し、期間満了の1カ月前までに、委託者又は受託者から別段の意思表示がないときは、本契約は同一条件にて更新されるものとし、以後も同様とする。

Case 4. 知的財産権の帰属で揉めてしまった

デザイナーの場合
新サービスのマスコットキャラクターを作る仕事の依頼。サンプルとして画像データをいくつか制作。そのうちの1つを委託者が選び、修正の要望を反映し納品。後日、選ばれなかったサンプルを別の仕事で使用したところ、委託者から損害賠償請求を受ける。

知財の帰属の明示

知的財産権の帰属が委託者(クライアント)、受託者(自分)のどちらになるかを確認しましょう。例として、著作権自体は受託者に帰属させつつ、委託者が使うものについては利用を許諾するという方法もあれば、著作権を委託者に帰属させるパターンもあります。

業務委託契約書の条項例①
  • 本業務の遂行の過程で得られた成果に係る著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む)その他の知的財産権は、受託者に帰属する。
  • 受託者は、委託者に対して、無償で、当該知的財産権の利用を許諾する。
業務委託契約書の条項例②
  • 本業務の遂行の過程で得られた成果に係る著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む)その他の知的財産権は、全て委託者に帰属する。

なお、著作権とは別に、氏名のクレジットについて決定できる「氏名表示権」、 著作物を改変されない「同一性保持権」といった、著作者の人格的利益を保護する「著作者人格権」という権利がありますが、これは著作者だけが持つ権利で譲渡できません。そのため契約書には著作者人格権の行使についての条項が盛り込まれていることも多く、確認が必要です。

第三者の権利を侵害していないか「非侵害保証」

知的財産権に関連して「非侵害保証」も確認すべきポイントです。委託者としては、お金を払って作ってもらったものが、実は第三者の権利を侵害していて適法に使えないということは避けたいため、契約書に権利の非侵害を保証する条項が入ることがあります。

業務委託契約書の条項例
  • 受託者は、本業務の成果物が第三者の知的財産権の侵害を構成しないことを表明し、かつ保証する。

他方で、受託者としては、故意に第三者の権利を侵害しようとしたわけではなくとも、IT分野等の領域では非侵害の調査が難しいことから「知る限り」といった限定を付したり、賠償額の上限を定めるといった限定を付したりすることも考えられます。

契約書は合意内容の具体化につながる

ここまで紹介したようなトラブルにあわないためにも、契約についての合意内容を記載した契約書を締結しておくことが大切です。契約書に記載する文言を決める過程で合意の内容を具体化でき、互いの認識の齟齬の予防にもなります。

NDA(秘密保持契約書)とは?

業務委託契約書と併せて締結するものに「NDA(Non-Disclosure Agreement/エヌディーエー)」があります。これは、相手方に開示する秘密情報について、目的外利用や第三者への開示を禁止する契約で、取引や商談を始める際に、事業内容や取引条件を守秘するために締結します。

NDAの条項については、秘密情報の範囲や目的が適切かどうかを確認しましょう。例えば、同業他社との取引を禁ずる競業避止義務条項といった、秘密情報の保護を超えた取引の具体的な内容や取引条件を縛る条項の有無等です。

秘密保持がきちんとなされているかを確認するため、立入調査を求める条項が入ることもあり、そのような場合は、受け入れる体制を整えられるか、整えられるとしても、事前に連絡してもらうようにするか、受け入れ不可であれば報告だけで済ませるようにするなどの対応が考えられます。

NDAの条項例
  • 開示当事者は、いつでも、受領当事者の事業所に立ち入り、受領当事者における秘密情報の管理状況を調査することができる

まとめ

「契約書」とは、当事者間の合意をその内容を証明できる形できちんと書面に残しておくものです。基本的には、その内容は当事者がお互い納得する限りで自由に決められ、交渉も可能です。

トラブルを予防するために、お互いに納得のいく契約書を締結しておくことはとても大切です。契約書に記載される文言が、自分が相手と約束しようとしている内容になっているか、必ず確認するようにしましょう。

監修者profile
五十嵐良平
日本橋川法律事務所・弁護士(第一東京弁護士会所属)
弁護士登録後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、山下総合法律事務所を経て独立。企業間取引に関する法務の経験を活かし、独立後は、個人事業主・フリーランス向けにも、数多くの契約書作成・レビューといったサービスや取引に関するアドバイスを提供。
https://nriver-law.com/
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