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個人事業主・フリーランスが知っておきたい国民健康保険を徹底解説

個人事業主・フリーランスが知っておきたい国民健康保険を徹底解説

フリーランスや個人事業主も会社員と同様に、公的医療保険に加入する必要があります。 これまで会社員だった人は、健康保険(被用者保険)から国民健康保険へ切り替えることが多いでしょう。会社で入っていた健康保険とは異なる部分も多く、間違いやすい点や手続き期限がタイトなものもありますので、きちんと理解しておきましょう。

フリーナンスは、フリーランス・個人事業主を支えるお金と保険のサービスです。
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国民健康保険とは

フリーランスや個人事業主となる際に必要な手続きのひとつが「公的医療保険(健康保険)」への加入です。

日本では、国民全員がなんらかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」を採用しており、74歳までは職業等に合わせて、いずれかの公的医療保険に加入します。なお、75歳以降の方は「後期高齢者医療制度」に加入します。

多くのフリーランスや個人事業主が加入するのは、市区町村が運営する国民健康保険(国保)、いわゆる「市区町村国保」でしょう。特定の職業の方には「国民健康保険組合」という制度もあります。

個人事業主会社員の健康保険の違い

会社員は、公的医療保険として「健康保険組合」または「全国健康保険協会」(協会けんぽ)が運営する健康保険(被用者保険)に加入します。

健康保険(被用者保険)とフリーランスや個人事業主の多くが加入する国民健康保険とで、異なる点は以下です。

保険料の負担者

健康保険(被用者保険)の保険料は会社が半額負担しますが、国民健康保険は本人が全額負担します。これが、一番大きな違いといってもいいかもしれません。

家族を扶養に入れられるかどうか

健康保険(被用者保険)では配偶者や子どもなどは「被扶養者」と扱われ、加入者自身が保険料を負担する必要がありません

(被扶養者になるのは年収が130万円未満の場合などです。ただし2022年10月からは、被扶養者が、従業員数101人以上の規模の企業に勤務する場合、一定要件に該当すれば年収106万円以上で被扶養者から外れることになりました。)

一方、国民健康保険には扶養という概念がありません。家族全員が被保険者となって保険料を支払うので、世帯全体の保険料負担が大きくなります。

例:会社員だった夫が自営業になると
夫は勤務していた会社の健康保険から脱退。その被扶養者であった妻と子どもも健康保険から脱退し、家族全員が国民健康保険に加入。保険料は会社負担がなくなり、家族分も含めて全額自己負担に。

計算方法

健康保険(被用者保険)の保険料は収入や年齢で計算しますが、半額は会社が負担してくれます。

国民健康保険は全額自己負担で、各年度(4月~翌年3月)の保険料は、世帯の国保加入者全員の医療分・後期高齢者支援金等分・介護分(40~64歳の加入者のみ)を合算します。また、各区分は世帯人数・収入・年齢などに基づき、均等割と所得割ごとに計算して合計します。

各自治体によって計算方法が若干異なりますが、以下は江東区の例です。

令和5年度国民健康保険料率等

区分均等割額所得割額年間限度額
1.医療分(加入者全員)加入者数×45,000円加入者全員の年間所得額×7.17%65万円
2.支援金分(加入者全員)加入者数×15,100円加入者全員の年間所得額×2.42%22万円
3.介護分(40~64歳の加入者)40~64歳の加入者数×16,200円40~64歳の加入者の年間所得額×2.23%17万円
保険料試算シートによる計算
江東区の「令和5年度保険料試算シート」を使って以下の条件で計算
夫:40歳 年間所得400万円
妻:36歳 年間所得70万円
子ども:8歳(所得なし)
年間の世帯保険料概算:644,367円

参照:江東区 保険料の計算方法・試算シート

個人事業主の健康保険には選択肢がある

一般的にフリーランスや個人事業主が加入するのは市区町村が運営する国民健康保険(国保)、いわゆる「市区町村国保」ですが、状況によって以下の選択肢があります。

  • 市区町村国保に加入
  • 国民健康保険組合に加入(特定の業種に限る)
  • 前職での健康保険(被用者保険)に引き続き加入(退職後2年間に限る)
  • 家族の健康保険(被用者保険)の被扶養者になる(本人の年収による)

市区町村国保に加入する

会社を退職してフリーランスや個人事業主になると、市区町村の国民健康保険に加入するのが一般的でしょう。

ただし、健康保険(被用者保険)と異なり、配偶者や子どもの保険料負担が生じます。死亡給付と出産給付は市区町村の任意給付となっており、働けない間の所得を補う「傷病手当金」といった制度もありません。そのため、後述のように、退職後2年間はもとの健康保険(被用者保険)の任意継続被保険者を選ぶ人も多いようです。

国保組合に加入する(特定の職種に限る)

国保組合は特定職種ごとに設立された「国民健康保険組合」が運営しています。医師・歯科医師・薬剤師・土木建築・文芸・美術など特定の業種に限られています。保険料は月額2万円程度の一律定額が一般的で、所得次第では国保よりも保険料負担を減らすことができるでしょう。傷病手当金の給付を実施している組合もあります。

前職の健康保険(被用者保険)に引き続き加入する

退職後2年間は、前職の健康保険の任意継続被保険者となることができます。制度の内容は在職中とほぼ同様で、配偶者や子ども等も扶養に入れます。ただし、保険料は在職中のような会社折半負担はなく全額自己負担となります。資格喪失日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出してください。

退職後まずはこの任意継続被保険者となり、その後に市区町村の国保に入れば、保険料の点でも給付の点でも有利になることがあります。

家族の健康保険の被扶養者になる

たとえば、共働きで配偶者が会社の健康保険に加入している場合、自分の年収が130万円(条件によっては106万円)未満なら、配偶者の健康保険の被保険者となるのもひとつの選択肢です。

国民健康保険料を支払うタイミング

保険料は前年の所得状況により6月に年度単位で計算され、同月中旬に国民健康保険料額通知書が世帯主宛てに送付されます。6月〜翌年3月の10回に分けて支払うのが一般的です。

国民健康保険の支払い方法

国民健康保険は、以下のような方法で支払うことができます。

  • 口座振替による納付…毎月の振替日に口座から自動振替
  • 納付書によるコンビニエンスストア/金融機関/市区町村役所窓口での納付
  • スマートフォン決済アプリによる納付(電子マネー)…自治体によっては、PayPay(ペイペイ)などの支払いも可
  • 年金からの引き落とし(特別徴収)

国民健康保険の加入手続き方法

国民健康保険に加入するには、自分で市区町村役所へ行って手続きをする必要があります。

持ち物

・健康保険の資格喪失証明書
・マイナンバーカードなどマイナンバーを確認できるもの
・本人の身元確認ができるもの(マイナンバーカード/運転免許証/パスポート/在留カードなど)

流れ

・加入事由の発生日以降14日以内に届出する必要があります。退職前の事前届出はできません。
・加入手続き終了後に「国民健康保険被保険者証(保険証)」が交付されます。窓口で本人確認ができれば、その場で交付されます。

参考:杉並区 国民健康保険加入の手続き

育児中の国民健康保険料

健康保険(被用者保険)には、産前産後期間や育児休業期間中の健康保険料免除制度が設けられており、この期間の保険料の支払いは不要です。一方、国民健康保険ではこのような免除措置がなく、産前産後期間でも国民健康保険料を支払う必要があります。

しかし、これでは健康保険(被扶養者保険)と国民健康保健のバランスがとれないことから、国民健康保険被保険者についても、産前産後期間の保険料を免除する措置が2026年1月からとられる予定です。

参考:厚生労働省 全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要

国民年金保険料については、産前産後期間についての支払い免除制度があります。また、国民健康保険においても被保険者のうち未就学児(小学校入学前)は、国民健康保険料の均等割額が5割軽減といった制度が実施されています。

国民健康保険の所得控除

所得税の控除には所得控除と税額控除があり、健康保険料は所得控除の対象です。確定申告の際に社会保険料として所得から差し引いて納税額を減らすことができます。申告の際は忘れずに手続きしましょう。

まとめ

会社に勤めていたときの「健康保険(被用者保険)」とフリーランス・個人事業者になったときの「国民健康保険」には、さまざまな違いがあります。会社負担がない・家族全員が加入するといったポイントをしっかり押さえ、保険料の計算をしてみてください。また、退職後すぐに手続きしなければならないこともあるため、退職前から準備しておくことをおすすめします。

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