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消費税を11回に分けて前払い!?フリーランスも対象の中間申告・中間納付とは【公認会計士が解説】

消費税を11回に分けて前払い!?フリーランスも対象の中間申告・中間納付とは【公認会計士が解説】

消費税には、前年の納付額が一定金額以上となった場合に必要となる「中間申告」「中間納付」という制度が設けられています。法人だけでなくフリーランスや個人事業主も同制度の対象です。そこで今回は、中間申告・中間納付とはどのようなものであるのかといった内容から、消費税の概要や、インボイス制度との関連についても解説していきます。

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消費税の中間申告・中間納付とは?

消費税の課税期間は1年間となっており、申告および納付も1年に一度行うことが原則です。例えば、消費税の納付義務がある個人事業主であれば、前年1月から12月の取引実績に基づき、翌年の3月末までに確定申告・納付するというのが一般的な流れです。ちなみに法人の場合は、事業年度の終了の翌日から2カ月以内の納付となります。

しかし、前年の納付額が一定金額以上となった場合は、年度の途中に複数回にわたり消費税の申告・納付が必要になることがあります。この制度は「中間申告」「中間納付」といい、前年の納付額をベースとして消費税額を年度の途中に「前払い」することとなります。

ただしこれは、前年度の実績をベースに前納するものです。結果的に支払いすぎた場合には、年度末の確定申告において「還付」という形で消費税の払い戻しを受けることができます。

中間申告・中間納付の目的

中間申告・中間納付制度は、税収の平準化や確実な税徴収など、国にとってのメリットから設けられた制度です。

一方、納税者側の観点からは、年に一度の納付とする場合にくらべて1回あたりの納付額が軽減されることから、納付に対する心理的な負担が軽減されたり、納付額が平準化されることにより資金計画が立てやすくなったりと、副次的なメリットが考えられます。

※参照:国税庁 No.6609 中間申告の方法

中間申告・中間納付が必要な一定金額とは?

直前の課税期間の確定消費税額が48万円を超える場合には、中間申告・中間納付が必要となります。ここでいう「確定消費税額」には、地方消費税分は含まれず、国税部分だけが対象となります。

普段私たちが支払っている消費税率の「10%」には、国に支払う国税部分「7.8%」と地方自治体に支払う地方消費税部分「2.2%」が含まれています(軽減税率「8%」であれば、国税、地方消費税がそれぞれ「6.24%」「1.76%」となります)。

中間申告・中間納付が必要となるのは、国税部分が48万円を超える場合になりますので、前事業年度分の「消費税及び地方消費税の確定申告書」の⑨「差引税額(② + ③ − ⑦)」(国税分)の金額を見ることで、制度の対象となるかを確認しましょう。

直前の課税期間の確定消費税額によって、中間申告・中間納付の回数が変わる

中間申告・中間納付の時期や回数は、前年の確定消費税額の金額によって変わってきます。具体的には、直前の課税期間の確定消費税額に応じて年1回、年3回、年11回のいずれかに該当することになります。

中間申告・中間納付の時期や回数

直前の課税期間の確定消費税額 中間申告の回数 中間申告提出・納付期限 中間納付税額 1年の合計申告回数
48万円以下 原則、中間申告不要
ただし、任意の中間申告制度あり
確定申告1回
(1年に一度)
48万円超から
400万円以下
年1回 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2カ月以内 直前の課税期間の確定消費税額の6/12 確定申告1回
中間申告1回
(半年に一度)
400万円超から4,800万円以下 年3回 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2カ月以内 直前の課税期間の確定消費税額の3/12 確定申告1回
中間申告3回
(3カ月に一度)
4,800万円超 年11回 ※下表を参照 直前の課税期間の確定消費税額の1/12 確定申告1回
中間申告11回
(毎月)

※年11回の場合の中間申告の申告・納付期限(個人事業者)

対象月 中間申告・中間納付期限
1月から3月分 5月末日
4月から11月分 中間申告対象期間の末日の翌日から2カ月以内

表のとおり、48万円超から400万円以下の場合、確定申告とあわせて半年に一度の申告・納付が必要、400万円超から4,800万円以下の場合、確定申告とあわせて3カ月に一度の申告・納付が必要、4,800万円超の場合には、確定申告とあわせて毎月の申告・納付が必要となります。

原則的には、中間申告対象期間の末尾の翌日から2カ月以内(例:4月分であれば、6月末日)までに申告・納付する必要がありますが、1月から3月分については、前年度の確定申告が完了する5月末日までに申告・納付することが求められています。中間納付は、振替納税やクレジットカード納付、コンビニ納付など、さまざまな方法による納付が可能です。

※参照:国税庁 消費税及び地方消費税(個人事業者)の中間申告と納付
※参照:国税庁 中間申告分の納期限及び振替日について

任意で中間申告・中間納付をすることもできる

直前の課税期間の確定消費税が48万円を超えない場合には、基本的には中間申告・中間納付は不要となります。しかし、任意で中間申告・中間納付をすることも可能です。年に一度の納付とする場合にくらべて1回あたりの納付額が軽減されることから、納付に対する心理的な負担を軽減したい方や、納付額を平準化することで資金計画を立てやすくしたい方は、任意で中間申告・中間納付制度の利用を検討されると良いでしょう。

ただし、消費税を前納することにより手元資金が減少します。資金繰りの観点から望ましくないほか、申告・納付に関する事務負担も増加することになるため、あまり推奨はされていません。

※参照:国税庁 No.6611 任意の中間申告制度

予定申告方式と仮決算方式

中間申告の方法には、「予定申告方式」と「仮決算方式」の2つのパターンがあり、多くの場合は「予定申告方式」をすることになります。

「予定申告方式」とは、前年の消費税額に基づき税務署が中間納付額を算出する方法のことをいいます。例えば、前年の納付額が100万円であれば、中間申告ではその半分の50万円を納付するといったイメージです。考え方として非常にシンプルですし、納税者側に負担がかからないため、基本的には「予定申告方式」を採用することを推奨します。

一方、「仮決算方式」とは、中間申告の期間ごとに決算を行い、自ら納税額を算出することをいいます。例えば、前年の納付額が100万円であったにもかかわらず、当年度は年間70万円程度の消費税額しか想定されないようなケースの場合、仮決算方式を採用する場合には、その半分の35万円の中間納付が必要となります。

「予定申告方式」を採用していた場合には、50万円(100万円 × 1/2)の中間納付が必要だったのに対して、35万円の中間納付で済むことになるため、このようなケースであれば「仮決算方式」を採用するメリットがあると考えられます。

ただし、中間申告のたびに仮決算を行うことは、実務的に大きな負担となりかねません(前年の消費税額が4,800万円超の場合には、毎月仮決算を行う必要があります)。そのため、前年とくらべて大きく納付税額が少なくなる見込みで、なおかつ、資金繰りの観点から少しでも中間納付額を減らしたいといった場合を除き、「予定申告方式」を採用することを推奨します。

中間申告を忘れたらどうなる?

前年の消費税額が48万円を超え、中間申告の義務があったにもかかわらず、申告・納付を忘れてしまった場合は、「予定申告方式」で申告書の提出があったとみなされ、消費税額が確定することとなります(期限後に「仮決算方式」へ変更することができなくなります)。

なお、納付時期が近づいてくると「予定申告方式」を前提として、税務署から中間申告書や納付書が送られてきますので、これらの書類に従って納付を進めるようにしましょう。

また、中間申告に限った話ではないですが、納付期限を超過した分だけ延滞税が発生します。税率自体は、通常の確定申告分と同様ですが、最大「14.6%」もの利率がかかることになるため、納付期限を忘れずに厳守するようにしましょう。

納期等の区分 法定納期限 振替日
中間1回目 2023年(令和5年)8月31日(木) 2023年(令和5年)9月27日(水)

中間納付の仕訳は?

消費税の中間納付を行った際の仕訳について、税抜経理の場合と税込経理の場合に分けて解説します。中間納付時に50万円を納付し、確定申告時に年間で120万円の消費税を支払うケースを例に具体的な仕訳を見ていきましょう。

税抜経理の場合

中間納付時

仮払金等 現金預金
50万円 50万円

中間納付時の支払いの相手勘定として「仮払金等」を計上します。

決算時

仮受消費税 仮払消費税 仮払金 未払消費税
200万円 80万円 50万円 70万円

決算時において、預かった消費税(仮受消費税)と支払った消費税(仮払消費税)の差額を未払消費税として計上します。この時に中間申告で支払った50万円分の仮払金を未払消費税から控除します。結果的に未納付分の50万円が未払消費税として計上されます。

納付時

未払消費税 現金預金
70万円 70万円

未納付である確定消費税額70万円の支払い時に未払消費税を取り崩します。

税込経理の場合

中間納付時

租税公課等 現金預金
50万円 50万円

中間納付時の支払いの相手勘定として「租税公課等」を計上します。

決算時

仕訳なし

税込経理を採用している場合、決算時には原則として仕訳が不要となります。

納付時

租税公課等 現金預金
70万円 50万円

一方、納付時に未納付分である70万円の支払い時に租税公課を計上します。

税込経理で決算時に消費税の確定額を未払計上する場合

なお、税込経理の場合であっても決算時に消費税の確定額を未払計上する場合には、決算時、納付時に以下の仕訳を計上します。

決算時

租税公課 未払消費税
70万円 70万円

納付時

未払消費税 現金預金
70万円 70万円

※参照:国税庁 No.6375 税抜経理方式又は税込経理方式による経理処理

フリーランスや個人事業主は、消費税の納税義務がある?

消費税は、私たちが日常的に支払うものであり身近な税金ですが、消費税の「納付」という文脈では、あまり正確に理解できていない方も多いでしょう。フリーランスや個人事業主における消費税の納税義務は、基準期間の課税売上高や、インボイス制度の導入などで異なります。

そもそも消費税の納付とは?

フリーランスに消費税の納税義務があるのかといった内容を理解するために、まずは消費税が「間接税」であるという点から理解を進めていきましょう。

「間接税」とは、納税義務者(税務署にお金を納付する人)と担税者(税金を負担する人)が異なる税金のことをいいます。消費税でいうと、納税義務者は企業や個人事業主などの事業者であるのに対して、担税者は最終的な消費者になります。消費者は、10%の税金を店頭などで支払う一方で、税務署へ直接納付することは求められていません。

消費者が支払った消費税は、事業者側からすると「預かっている」という状態になります。事業者は消費者に代わり、この「預かった消費税」を申告・納付する義務があります。一方で、商品の仕入れや各種サービスを受けるために企業も「消費者として」税込みで消費税を支払っています。

そのため、「預かった消費税」から「支払った消費税」を控除した差額分を税務署に申告し、納付することとなります。これが、消費税の申告・納付と呼ばれるプロセスです。

消費税については、FREENANCE MAGで詳しく解説しています。

免税事業者とは?

では、すべての事業者に消費税の納付義務があるのかというと、そうではありません。一定の要件を満たした場合には、「免税事業者」として消費税の納付義務が免除されます。

免税事業者とは、基準期間の課税売上高が1,000万円未満の事業者のことです。ここでの「基準期間」とは前々事業年度のことを指し、要件を満たした約2年後の事業年度から消費税の納付義務が生じます。また、新設法人の場合は、資本金の額が1,000万円未満であれば、設立当初の2年間は免税事業者となります。

インボイス制度導入による影響は?

インボイス制度とは、登録事業者が発行する適格請求書(インボイス)を保存することにより、仕入税額控除を受けることができる制度のことをいいます。インボイス制度の説明については、本記事では割愛しますが、ここでいう「登録事業者」になることによって消費税の課税事業者になるといった点をおさえておきましょう。

基準期間の売上高 インボイスにおける事業者登録の有無 消費税の納付義務
1,000万円未満 登録事業者以外 なし
登録事業者 あり
1,000万円以上 登録事業者以外 あり
登録事業者 あり

すなわち、従来まで基準期間の売上高が1,000万円未満のため、免税事業者となっていた事業者についても、登録事業者になることで免税事業者ではなく、課税事業者として消費税の納付義務が生じることになります。

適格事業者としての登録は任意のため、従来同様、免税事業者のままでいることも可能ですが、相手方が仕入税額控除を受けることができなくなってしまうため、多くのフリーランスが登録事業者となることが想定されています。

インボイス制度については、FREENANCE MAGで詳しく解説しています。

まとめ

原則的には年に一度の申告・納付が必要となる消費税ですが、前年度の消費税確定額が48万円を超える場合には、中間申告・中間納付が必要となるため注意が必要です。インボイス制度の導入により消費税の納税事業者となる方も多いと思います。中間申告を忘れた場合には、延滞税がかかりますので、制度の内容をしっかりと把握し、適切に対応できるように準備しておきましょう。

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