FREENANCE MAG

フリーランスを応援するメディア「フリーナンスマグ」

モヤモヤするなら考えよう。竹田ダニエル『世界と私のA to Z』インタビュー

モヤモヤするなら考えよう。竹田ダニエル『世界と私のA to Z』インタビュー

カリフォルニア州の出身で、現在も在住しながら、アメリカの社会やカルチャーの実情を発信し続けている竹田ダニエルさん。大学在学中、音楽エージェント業に携わったのを起点に、ライター、コンサルタント、マネジメント、翻訳/通訳など、日本とアメリカを行き来しながら幅広く活動されています。中でも、アメリカのZ世代のリアルに切り込み、分析した著書世界と私のA to Z講談社)は、1997年生まれのZ世代当事者ならではの視点が大きな反響を呼んで、昨年の出版以来増刷が重ねられる結果に。そんな竹田さんの仕事観やモチベーションの源泉、そして日米両国の現代社会に対して思うことをお聞きしました。

profile
竹田ダニエル(タケダダニエル)
1997年生まれ、カリフォルニア州出身、在住。「カルチャー × アイデンティティ × 社会」をテーマに執筆するZ世代のフリーライター。「音楽と社会」を結びつける活動を行い、日本と海外のアーティストを繋げるエージェントとしても活躍。​
https://twitter.com/daniel_takedaa
https://www.instagram.com/daniel_takedaa/
https://www.foriio.com/daniel-takeda

特異性をアピールする

もともと大学では理系の勉強をされていたんですよね。

今でも本業はそちらですよ。日本人って肩書きとか年齢とかでフィルターをかけがちなんで、ほとんどオープンにしてないんですよね。だって、自分の言っていることに、経歴なんて何の関係もないじゃないですか。年齢だって本を出すまで明かさなかったし、その最低限の情報だけでも適当なことを言われたり、勝手なイメージを作られたりするので、別にいらないなって。

日本人は肩書に左右されやすいからこそ、言わずにフラットな状態で判断してほしいということですね。では、なぜ現在のような文筆業に携わることになったんでしょうか?

アメリカの大学って日本と違って、専門外のことも幅広く学べるんですよ。そもそも一つのことだけをやるのは不健康だし、人間としていろんなことやったほうが面白いという考えなんですね。ウチの大学でもミュージックビジネスの授業が開催されたことがあって、どの学科の学生にも応募資格があったから、“こんなことをやりたいんです”と書いて出したら合格したんです。そこで週に何回か集まって自分たちでプロジェクトを立てたり、例えばデザイナーの子だったらアクセサリーを作ってラッパーに着けてもらうとか、実際に音楽業界で活動しなければいけなくて。それで、日本でバンドをやっている知り合いに連絡して、ユニバーサルミュージックのインディー部門にコンサルタントとして雇ってもらったんです。

それはアメリカにいながら?

そうです、リモートで。当時Spotifyとかが出始めたころだったので、デジタルリリースを効果的に進めるためにアメリカで学んだことを実践したり、アーティストのSNS周りを担当したり、1年間の契約でやってました。日本の音楽業界って、英語ができる人があまりいないんですよね。できる人は、たいてい商社とかコンサルに行くから。

確かに! 私の周りの帰国子女や留学経験者も、みんな商社か外資系のコンサルタントに行ってます。あとは、海外にも支社のある大手メーカーくらい。

だから洋楽だと歌詞の誤訳もすごく多くて、でも、リスナーも気づかないから、ネイティブチェックの優先順位が低いんです。その逆も然りで、日本のアーティストを海外に売り込もうとしたら、正しい英語で伝えるのはもちろん、海外のSNSのノリを理解してないと厳しいところがあるんですよね。でも、その重要性をわかってないし、レーベルもお金を出さない。そういった経験から見えてきた音楽業界のことを、2019年に来日して以降ツイッターで発信していくうちに、とあるプロデューサーから「プロモーションを手伝ってほしい」と声がかかったり、いろんなアーティストと出会ったりして、彼らから信頼を得られるようになったんです。

それからアーティストに寄り添った目線でいろいろと発信していたら、音楽ジャーナリストの柴那典さんから「Z世代と音楽とメンタルヘルスについて書いてほしい」と依頼を受けたんです。ちょうどコロナ禍が始まったときで、それが初めて自分が書いた記事ですね。それがバズって徐々に仕事が来るようになり、2020年の秋頃にアメリカに戻ってからは、選挙だったりコロナ、Black Lives Matterだったりっていうアメリカの状況も発信していくようになりました。さっきも言ったように、日本人は一次情報にあたることがなかなか難しいんですよね。

わかります。基本的に翻訳された記事からしか情報を得られない。

でも、それって既にメディアの側で取捨選択されたものだし、誤訳されているものもすごく多いんですよ。そうやって間違った情報が出るのはすごく嫌だし、英語圏では話題でも日本ではまだ知られていないことを最初に伝えたい欲も少しはあるんですね。親にも「あなたはアメリカ人的なところもあって、人と違うことができるんだから、ソッチをやったほうがいい」と言われて、じゃあ、自分にしかできないことって何だろう?と考えると、やっぱりアメリカ人としてのアメリカの話とか、アメリカのZ世代の話なんです。

そうやって他者にはない自分の特異性をアピールするのは、アメリカ的な思考かもしれないですね。それこそ最初はプロフィールに“音楽ライター”って書いていて、そのほうがわかりやすいだろうと思ってたんですけど、洋楽のメインストリームについて書ける人なんて他に大勢いるじゃないですか。“俺が一番知ってる”おじさんとかも多い業界ですから、わざわざその畑を荒らしに行くつもりもないし、そもそも他と同じではいくらでも替えが利く存在になってしまう。

だったらアメリカに住み、アメリカの状況を肌で感じて、それを正しく日本語で発信することができるご自身の特性を、フルに活かしていくべきだろうと。そうしてZ世代について書かれた連載をまとめたのが、昨年上梓された『世界と私のA to Z』ですね。

2020年の秋に文芸誌の『群像』から声がかかって、最初は「アメリカのZ世代が選挙についてどう考えているかを書いてほしい」と言われたんです。まぁ、どうせアメリカのZ世代はLEFTに傾いていて、バイデンに投票してるって言ってほしいんでしょ? じゃああえて、「そうやってZ世代から期待する言葉を大人が引き出そうとするの、気持ち悪いのやめてもらえませんか?」っていうコラムを書かせてもらいました。

アメリカのZ世代について教えてほしいっていうのは、ある意味で良心の裏返しなんですよね。そのアナーキーなコラムが大ウケして、連載をもらうことになりました。日本に希望がなくて、良い意味での絶望を持っているから、海外に希望を求めて「アメリカのZ世代ってすごい」って信じたい人たちがいるんです。だったら、その期待に応えて「アメリカのZ世代はすごい」って言えれば楽なんですけど、実際はそんな簡単なものじゃない。文芸誌ということで結構シリアスなトーンで書いていたので、そこからシリアスな依頼も来るようになり、割と大きな仕事も貰えましたね。

今しか書けないことを書く

ただ、もともと理系畑の方で、しかも母国語ではない日本語で記事を書くというのは、苦労も多かったんじゃありません?

そうなんです。理系のバックグラウンドなので、実験レポートとか論文レビューみたいなものしか書いたことがなかったんですね。おまけにディベート部出身なので、論が立っていないと突っ込まれてしまう!という強迫観念もあり、アメリカの英語記事を調べて引用しながら、本当に論文のように書いていきました。ただ、私は本業が別にあるので、ライター業に全てを懸けなくてもいいんですよ。もし、収入の全てがライター業にかかっていたら、例えば自分を贔屓にしてくれるアーティストに関してネガティブなことは避けてしまうかもしれませんよね。

誰に強いられたわけでなくても、そういった心理的縛りが働くのは否めませんね。

だから女性ライターなのに、女性蔑視的な発言をするアーティストを許さざるをえなかったりもする。その点、私は他に収入源があるから、やりたくないことはやらなくてもいいんですよ。批判されるのは自分ですし、やりたくないことを絶対やらないようにしよう、思ってもいないことを言わないようにしようというのは、自分の中で大事にしています。

あと、決めているのが“今しか書けないことを書く”ということ。今は情報の流れがすごく速くてトレンドもどんどん変わるので、今しか書けないことがいっぱいあるんですよ。この『世界と私のA to Z』にしても、今、私自身がZ世代だから書けるものであって。連載の話を頂いたときも迷いはしたんですけど、人生一回きりですし、需要があるならやったほうがいいとシンプルに思ったんです。

結果『世界と私のA to Z』も増刷を重ねていますが、具体的にはどんなリアクションが来ていますか?

同世代の子からは「自分だけがおかしいと思っていたけれど、実は全然おかしくないことがわかった」とか、「社会に対して熱望観を持っているのが自分だけじゃないと知れて良かった」といった声がもらえて、それは一番嬉しかったですね。この前もファンの子が「本、いつも持ち歩いてます」って言って、会いに来てくれたんですよ。逆に、一番意味わかんなかったのが「コイツはZ世代がすごいと言いたいだけで年齢差別をしている。ジジイは死ねって言うのか」っていうアマゾンのレビュー。さすがに度が過ぎてたのか消されましたけど、被害妄想がすごいですよね。怖いですよ!

そんなこと、まったく書かかれていないというか。むしろインフルエンサー文化に振り回されて、資本主義的な消費に加担しがちといった問題点もキチンと書かれているのに。

環境問題も大事だけど今すぐ楽しみたいし、いつ死ぬかわかんないんだからはっちゃけたいけどお金はないとか。いろんな矛盾を抱えているZ世代の実情を書いているのに、だから、ちゃんと読んでないんじゃないですか(笑)。そういった現実をすっ飛ばして、Z世代を出来上がったトレンドとしか見ていないんですよね。

そもそもZ世代だけを切り取って、日本に持ち込むこと自体がおかしいんですよ。アメリカだとブーマー、X世代、ミレニアル、Z世代という風に世代が分かれているけれど、アメリカのブーマー世代は日本のベビーブーマーと一致していないし、日本とは世代の分け方がズレている。日本とアメリカで環境も全然違うから、同じZ世代でも違うのは当たり前だし、比べても意味がないんです。

でも、『世界と私のA to Z』には“Z世代って何を考えてるの?”なんていう帯がついていますから、それこそZ世代というトレンドをビジネスに利用したくて、この本を手に取る人も多そうですよ。

だから、その帯の文言も最初は嫌だったんです。でも「Z世代って何を考えてるんだろう?」って安易な気持ちで買ったビジネスおじさんが、読んでみて「思っていたのと違う!」ってなるのは面白いなと。要は皮肉ですよね。私はZ世代の当事者として、社会や自分の周囲を見たり、リサーチをするなかで「今、こういった変化が起きているな」と感じるものを、毎月リアルタイムで書いていっただけなので。

だから、すべての章が「いまアメリカでは、Z世代の間で××の革命が起きている」という書き出しで始まっているんですね。

そのせいか、年長世代からは「自分のことを透明人間だと思っているのか」みたいな反応もありました。あくまでも「今、こういうことが起きている」という客観的な視点で、自分自身の経験や考えを書いていないからでしょうね。

「結局、お前自身はどう思っているんだ?」という指摘も受けましたけど、私が賛成だろうが反対だろうが社会で起きている事実に変わりはないので、そこは重要じゃない。でも「俺はこうだ」という自我の強さに価値を見出す類の人もいるから、そういう“オラオラ系”の人は絶対私に依頼してこないんです。特に日本で男性として育ったら、自分の意見は絶対に正しいと信じがちなんで、私を人として理解してくれて依頼をくれるのは女性か、男性でも物腰の柔らかい人が多いですね。

フリーナンスはフリーランス・個人事業主を支えるお金と保険のサービスです

FREENANCE byGMO
\LINE公式アカウント開設/

LINE限定のお得情報などを配信!
ぜひ、お友だち追加をお願いします。

✅ご登録はこちらから
https://lin.ee/GWMNULLG