『オモコロ』や『電ファミニコゲーマー』等のオンラインメディアを中心に、フリーランスのライターとして活躍しているヨッピーさん。斬新な視点のもと写真を駆使したストーリー性のある記事で読者の心を鷲摑みしながら、時にコンサル業、時に芸能活動、時に町おこしと、さまざまな業務を請け負っていらっしゃいます。
長年のサウナ愛好家でもあることから“銭湯神”を自称し、現在ではオールドルーキーサウナ渋谷忠犬ハチ公口店のゼネラルマネージャーという一面も。サウナの利用側から運営側へと立場が変わっても「ギャップや嫌なことは何もない」と言い切るヨッピーさんのサウナへの愛、地元への愛、そしてフリーランスにとって大切だと思うものについて伺いました。
大阪府出身。商社から独立後にフリーランスのライターとして活動。『オモコロ』『電ファミニコゲーマー』『Yahoo!ニュース個人』など多数のWebメディアで活躍中。企業の広告案件や不正に対する追及記事なども執筆。ライター以外にも、Webマーケティングのコンサルタント、企画設計、講演にイベント主催、メディア出演など、その活動は多岐にわたる。
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サウナの話
だってGMOインターネットグループって渋谷が本拠地でしょ? それはもう全社員が行くべきじゃないですか。「渋谷のオールドルーキーサウナの会員はGMOの社員しかいない」「オールドルーキーサウナの会員が全員GMOの社員」っていう状態になってもおかしくないのに、来たことすら無い状況はもうまったく理解できないですね。
そういえばGMOの社員に対して、無料開放の施策もされてましたもんね。
そうですよ。あれも渋谷中に行列ができて、近隣のビルから「迷惑だ!」って怒られるだろうと思ってたのに、来たの1日15人ぐらいですかね。意外とそんなに来ないから「あれ?」みたいな。
まぁ、誰もがサウナ好きなわけではありませんし……。
いや、人類すべてサウナを好きになるべきだと思ってます。ホントに!
えええ!? そこまで言い切るサウナの魅力を、では教えていただけますか?
魅力はですね、もう、頭を空っぽにできるってことです。そもそも僕がサウナに毎日行くようになったのが、サラリーマンをやっていた26、7歳ぐらいの頃で。夜9時とかに会社を出て、飯食って、家帰って、シャワー浴びて寝る。毎日その繰り返しだったから、全然リフレッシュできなかったんですよ。
会社だって今ほどワークライフバランスも整ってないし、家に帰っても「あの案件あしたやらなきゃ」とかを考えながら寝るから、仕事脳がまったくオフにならない。「あした事行くの嫌だな~」とか思いながらベッドに入っても当然なかなか寝付けない。
そんなとき、会社からの帰り道に寿湯っていう銭湯(https://kotobukiyu.jp/)を見つけて、軽い気持ちで行ってみたらメチャクチャ良かった! 銭湯を出て歩いてる時点でメチャクチャ眠くて、家に帰ったらストン!と寝れて、かつ翌朝の目覚めもすごくよろしいと。身体も軽くなるし、「これは良いものを見つけた!」と、会社帰りに銭湯に行くのが習慣になったんです。
自営業になってからはサウナ施設の休憩室にパソコン持ち込んで仕事することもあるんで、今はだいたい週8回の頻度でサウナ行ってますね。今日も取材の帰りに、渋谷のオールドルーキーサウナに行きますよ。あと、夜は六本木のテレビ朝日でAbemaTVの収録があるんで、その帰りにまたオールドルーキーサウナの六本木通り店に寄ってから帰ります。ほら、1日2回行く日もあるでしょ。だから週8回。
凄まじい……! やっぱり家のお風呂に入るのとは違うんですね。
全然違いますね。家の風呂だと水風呂がないので、体が軽くなるとか、いわゆる“ととのう”という状態を作れないんです。あと そのうち湯に浸かりながらとか、サウナに入りながら他のお客さんに迷惑にならない範囲内で全身のストレッチをやるようにしてるので、そうなると家風呂では難しい。
「サウナは身体に悪いんだ!」みたいな事をおっしゃる人もいますけど、たしかに水分ぜんぜん取らずに入ったり、ギリギリまで我慢するような入り方は危ないんですが、サウナドクターと言われている医師の加藤(容崇)先生がサウナ大国・フィンランドの文献を調べたところ、頻繁にサウナに行く人は週に1回しか行かない人よりも脳梗塞のリスクが50パーセント低いとか、認知症のリスクも低いとか、様々なメリットがあるそうで。
元気だからサウナに行ってるのか、サウナに行ってるから元気なのかはその結果からはわからないですけど、少なくとも「サウナで寿命が縮む」「体に悪い」というエビデンスはない。
本当ですか? 最近の研究によると、サウナの熱で精子が死ぬという話も聞きましたが。
あ!それは本当です! 濃度と運動量が下がるんですよ。だから僕、それはずっと啓蒙してるんです。「サウナに入るときはタオルで金玉を守れ!」って。ほんとに! Twitterでも何回か言ってます!
ただ、確たるデメリットはそれくらいで、「サウナは体に悪い」とか「血圧が乱高下して体にいいわけがない」って主張してる人もいますけど、だったらジョギングで脈拍が増えたり、血圧が上がるのも身体に悪いってことになる。むしろジョギングくらいの軽い負荷を身体にかけるから、血管の弾力性が上がったりで耐性がつくんじゃないかなって。
身体に負荷をかける事自体が悪なら、ずーっと寝たまんまで生活したほうが長生きするのかって話で、そんなのむしろ早死にしそうでしょう。
さっき言った通り、水分も摂らずに我慢して、脱水を起こすぐらい頑張ったりするともちろん身体に悪いですよ。加藤先生も「サウナは健康にいい、ただし正しい入り方をすれば」と言ってますし。お酒を飲んだらサウナに入らないとか、サウナに入る前に水分を必ず摂りましょう、水風呂に入るときはちゃんと手すりを持ってゆっくり足から入りましょう、低血圧/高血圧の人は控えましょうとかって、正しい入り方をしましょうね、という話で。ジョギングだって、自分の持病や限界を考えずにめちゃめちゃ暑い日にめちゃめちゃ走ったら危ないでしょう。
なるほど……! あと、頭を真っ白にできるという意味では、座禅や瞑想に近しいところもありそうですね。
サウナでととのってる時っていわゆるマインドフルネスと同じような脳の動きをするらしいんですよ。僕、瞑想もチャレンジしたことあるんですけど、あれって習得するのがなかなか難しいんですよ。どうしても雑音とか気になっちゃいますし、10分瞑想するのを半年間ずっと続けて、やっとコツを掴めてくるかなというレベル。それがサウナでは気軽に疑似体験できるということですね。
だから、もし予算気にせずに究極のサウナを作れるとしたら、まず、お寺のお堂を建てるんですよ。その真ん中でお坊さんに護摩行をしてもらい、その回りで僕らが座禅して“もう無理!”ってなったら外に出て滝行して、戻ってきたらまた座禅組んで瞑想する……っていうサウナが出来たら理想ですね。たぶん10億円くらいかかりますけど。
「サウナに入ってそれでも悩んでたらそれが本当の悩みだ」
究極のマインドフルネスですね! そんなサウナ愛が高じて、現在では渋谷のオールドルーキーサウナでゼネラルマネージャーを務めていらっしゃるそうですが、では、オールドルーキーサウナの“推しポイント”って何でしょう?
オールドルーキーサウナに初めて行ったときの衝撃が、受付は顔認証でタオルやアメニティも揃ってるから本気の手ぶらで済むってことだったんです。都度利用だと流石にスマホは必要だけど。
とにかく入店してから浴室に入るまでがめちゃくちゃ早いのと、受付に人がいないから、定期巡回している清掃スタッフ以外には人手もかからないんですよ。
そしてあらゆるものが遠隔操作・自動操作でサウナ室の火入れや水風呂を冷やすのも全て自動で立ち上がるんですが、レディースデイ以外は常時遠隔で監視できる体制をとってるのでマナーの悪いお客さんがいても館内放送で対応できる。
それに基本的に会員制なんで、ちゃんと秩序が保たれているんですよね。おかげで室内が荒れないから、そのぶんの人件費が節減できて、単価も安くなる。
月額制のサウナって他にもありますけど、渋谷、六本木、新宿、新橋っていう超一等地で、通い放題月額1万7,000円という値段で通えるところは、他にないですし。
オールドルーキーサウナはサウナ施設だけれど、作った人はIT企業の創業者なので、テクノロジーと仕組みであらゆる問題を解決しているんですね。「ITサウナ」って言っても良いと思います。IT系の人は一度来てみて欲しい。あの徹底ぶりは本当にすごいので。
この間、たまたまなんですけどホテルを何軒も運営している経営者の人と知り合った時に、その人がオールドルーキーサウナに行った時に衝撃を受けて、新しいホテルはあのシステムを真似して作ってるらしいんですよ。IT化して省人化するぞ、って。人手不足の時代ですし。
ゼネラルマネージャーとして、では、言うことナシですか?
いや「もったいないな」と思うところはありますよ。元々看板を一切出してなかったから、近くを通ってもそこにサウナがある事が気付かないよね、とか。
無料開放のときも「こんなところにサウナがあるなんて知りませんでした」ってお客さんに言われましたし、意外と認知されていなくて“知る人ぞ知る”存在になっているのがもったいないな、とか。だから「看板をつけよう」っていう話をしたり、Webサイトも特殊な構造をしてたんで、改善してもっと検索に引っ掛かりやすくしようとか。そのへんのインターネット関連は、僕、得意なので。
全部顔認証で済む、しかも立地は一流で低料金となると、てっきりお客さんが詰めかけて会員枠もいっぱいなのかと思いきや、意外とそうではないんですね。
確かに、六本木の1号店を作ったときは、一瞬で会員枠が埋まったらしいです。だから六本木店は都度利用のお客さんが使えないんですけど、その反面オールドルーキーサウナ=会員しか利用できない施設、っていうイメージが定着しちゃったのかもしれません。
でも、今は六本木店以外なら、スマホさえあればキャッシュレス決済で都度利用できるんですよ。ハード面はもう言う事無いんで、あとは知名度をどんどん上げて、お客さんがいっぱい来るようになれば店舗も増やせますし。実際認知が広がるにつれて都度利用のお客さんは増えてますからね。
店長の岡村(陽久)さんは全国で何百店舗と広げたいと言ってるんで、それを達成するのが目標なのかな。僕、全国民がサウナ通いを始めると、GDPが8倍になるっていうのを吹聴してるんですけど……。
待ってください。どういう仕組みで8倍に?
サウナに通うことによって、単純に寝付きが良くなって眠りが深くなり、身体がリセットされるわけですよ。ってことは、より気持ちよく働けるんですよね。当然、生産性も上がる……という好循環になるはずなんです。
それは精神面も同じで、オールドルーキーサウナのWebサイトのトップページに、こう書いてあるんです。「サウナに入ってそれでも悩んでたらそれが本当の悩みだ」って。
これ、本当にそうだな、と思うんですよ。僕は、多少腹立つことや悩み事があっても、サウナに入ると基本「ま、いっか」と忘れられる。だからサウナに入っても消えなかったら、それが本当の悩みなんでしょうね。だからストレスも減る。
確かに! とても哲学的で、良い言葉ですね。
漫画家のまんきつ先生が一時期、アルコール依存症だったんですよ。『アル中ワンダーランド』(2015年)っていうエッセイとかも描いてらして、当時「酒飲まんと寝れん」って話をしてたんです。それを聞いた僕が「サウナに行ったら寝れるから」って近くのサウナを紹介したら、その日は本当に久々に酒も飲まずに寝られたんですって。
そしたらまんきつ先生がこれはいいぞ!とサウナに通い始めて、今度は『湯遊ワンダーランド』っていうサウナの漫画を『週刊SPA!』で連載し始めるまでになったんですよ。
そういう事例は他にもたくさんあって、お礼のメールとかも、僕宛にメッチャ来ますよ。
そこまで言われると、ぜひサウナに挑戦してみたい気持ちになるんですが、例えばオールドルーキーサウナって女性も入れるんでしょうか?
レディースデーはありますよ、週に1回。ただ、基本的にそれ以外の時間帯は男性専用ですね。東京都浴場組合の人が言ってたんですけど、東京都の銭湯って男女の比率が大体2対1なんですって。男性のほうが圧倒的に多い。だからオールドルーキーサウナの仕組みで女性向けのサービスを拡充すると採算が合わなくなるんですよ。
そもそも、なぜ男性のほうが女性の倍サウナに来る――言い換えると、倍好きなんでしょう?
男がサウナ好き、なんじゃなくて、単純に女の人はお化粧があるから、気軽には入れないじゃないですか。男だったら営業の途中でも“1時間空いたから、ちょっと一風呂浴びてくか!”ってできますけど、女性はそうはいかない。
例えば渋谷のオールドルーキーサウナに行くとして、男性はノーメイクで行ってノーメイクで帰るとしても、女性が渋谷からノーメイクで電車乗って家に帰るのはちょっと抵抗あったりもするじゃないですか。かといってお風呂入ったのにメイクしなおすのは面倒臭いし。だから、お化粧とかあんま関係ないような年代の人――おばあちゃんとかの年齢層になると、やっぱり女性客の比率もあがるそうで。
なるほど! オールドルーキーサウナにも化粧水や乳液は常備されているそうですが、メイクまではしない男性がほとんどですもんね。身体に良いのは男女関係ないはずなので、女性が行きにくいのは残念ですが……。
女性特有の悩みって、血行不良から来るものも多いじゃないですか。冷え性だったり、肩こりだったり。そういうのってサウナ通いしてると、本当に良くなりますよ。強制的に血液を循環させるので、冷え性とかてきめんに良くなります。代わりに、メッチャ汗かきになりますけどね。
代謝が良くなるってことですね。ちなみに今、サウナって都度払いだといくらなんですか?
東京だと、大体1,000円ちょっとじゃないですか。1,020円ってとこが多いかな。今入浴料が520円なんで、サウナ料金プラス500円くらいが一番多い料金設定なんじゃないかと。ただ、それは銭湯の場合で、これがサウナ施設になってくると2,000円、3,000円とかがデフォルトでしょうね。