自分のアイディアが盗まれた!これは著作権侵害?フリーランスが知っておきたい盗用対策【法律の相談室】

インターネットの普及により、自分の作品をネットで公表したり販売したりするフリーランスの人も増えています。大勢の人に自分の作品を見てもらうチャンスが増える一方で、気になってくるのが著作権です。もし「自分の作品が著作権を侵害されている?」と感じたときの判断基準や対処法について、弁護士の辻悠祐さんにお聞きしました。

今回の相談者
Aさん:オブジェなどのアート作品を制作し、インターネットで販売して生計を立てている個人事業主。最近、自分の作品とそっくりのものが通販サイトで販売されているのを発見して困惑中。

そもそも、著作物に該当するかどうかの判断が難しい場合も

Aさん:先日、私の商品とそっくりの商品をインターネットで見かけたんです。自分のアイディアを盗まれたようで気分が良くないですし、私の作品と間違って購入するお客様が出てしまうのではないかと心配で……。

辻さん:そのよく似た商品というのは、現在も販売されているようですか?

Aさん:いえ。発見してすぐにその商品を販売しているサイトの運営者にメールで抗議したので、それ以降は同じ商品は販売されていないようですが……。著作権を侵害していると思うので、何らかの法的措置は取れませんか?

辻さん:販売していた商品の種類や内容によりますが、手作りした作品であっても、そもそもそれが「著作物」といえるかどうかは判断が難しい場合があります。著作物というのは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものです。

よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐さん

Aさん:具体的には、どんなものですか?

辻さん:具体例としては、小説、脚本、論文、絵画、版画、彫刻、映画などですね。そのため、販売されている商品に作成者の創作性が認められない場合や、美術の範囲に属すると評価しにくい量産品のデザインについては、著作物としての要件を満たすことは難しいと思われます。

A:それでは、著作物に該当しない商品は一切保護されないのですか?

辻さん:そういうわけではありません。たとえば、販売されている商品が著作物に該当しなくても、一定の要件を満たせば意匠(いしょう)として登録手続を行ったうえで、デザインを保護することができます。また、商品のロゴなども一定の要件を満たせば、商標として登録手続を行ったうえで保護することができます。

著作権が侵害されたことを証明するのは難しい?

A:それでは、仮に私が販売している商品が著作物だとした場合に、それを侵害した相手に対して何か法的な請求はできますか。

辻さん:仮に著作物だとした場合、相手の行為が著作権を侵害しているかどうかを考える必要があります。権利者に無断で既存の著作物に依拠(いきょ)して、これと同一もしくは類似性のある作品を作り出した場合は、著作権を侵害したといえます。

A:著作物に依拠したとは?

辻さん:典型例として、既存の著作物を模倣した作品が作りだされる場合です。たまたま作品が似てしまった場合は、既存の著作物に依拠したとはいえないので、著作権を侵害したものとはいえません。類似商品を販売している相手が「たまたま作品が似てしまっただけで、模倣していない」と反論してきた場合は、既存の著作物に依拠したことの証明は難しくなってきます。著作権は、創作的表現を保護するものなので、アイディアそれ自体は保護の対象ではありません。モノを作る人はいろいろな人の作品を見て、参考にしたりインスパイアされたりしますよね。作品からインスパイアを受けて、新たな作品を制作する場合などは、著作物の類似性などにもよりますが、著作権を侵害しているか否かの判断は難しくなることが多いと思われます。

著作権を侵害しているか否かの判断は難しい

辻さん:私たちは日々、生きているだけで、無意識のうちに何かにインスパイアされ続けていますからね。「真似しよう」と思わなくても、無意識のうちに作品が似てしまうということも起こり得るわけですね。

Aさん:とはいえ、これは明らかに盗用では?と思うケースもあります。その場合、どんな法的処置が取れるんでしょうか。

辻さん:著作権を侵害された場合は、侵害行為の差止請求や損害賠償請求、名誉回復等の措置を請求することが考えられます。相手が請求に応じる場合は問題ないのですが、請求に応じない場合は裁判などに発展する可能性があります。そうなれば費用面・時間面でのコストが大きくなってきますので、権利侵害される以前に予防措置に力を入れた方がいいと思います。

Aさん:その予防措置を、ぜひ教えてください。

デザインやロゴなどは可能な限り意匠や商標として登録を

辻さん:オリジナルのデザインやロゴなど重要なものについては、専門家に相談の上で意匠や商標などの登録を検討してもよいかと思います。意匠や商標は、特許庁で登録を受けることによって発生する権利です。意匠や商標として登録されると、インターネットで検索することもできるので、第三者に周知できます。また、侵害行為があった場合も、意匠法や商標法に基づいて相手に差止請求等を行うこともできます。

サイトに注意書きを加えるのも有効

辻さん:先ほど「お客様が類似商品だと気づかずに購入してしまうことを防ぎたい」と仰っていましたが、その予防策を講じることも大切です。

Aさん:具体的には、どのようなことができるでしょうか?

辻さん:まず、御社の販売用のサイトにお客様がわかりやすいように「類似品にご注意ください」と説明文を追加することをおすすめします。これによって顧客に、類似品が存在していることや、このサイトが正規の販売ルートであることをアピールできますし、類似品を間違って購入した方からのクレーム対策にもなります。

Aさん:さっそく記載します。ほかには何かありますか?

辻さん:サイトに掲載する商品の画像に御社のロゴを入れることで、画像の無断使用を予防しましょう。さらに、サイト内に「画像や文章の無断転載・使用を禁止します」という文言を入れておく。これで、完全に防げるわけではありませんが、抑止力にはなります。

著作権侵害が発覚した場合に自分で行える対処法は?

Aさん:もし著作権侵害が発覚した場合に、自分で行える対処法はありますか?

辻さん:さきほどお話したとおり、著作権を侵害しているかどうかの判断が難しいケースもあるので、すぐに著作権侵害と決めつけるのはよくない可能性もあります。もし著作権侵害が明らかな場合は、以下のような対処法があります。

・侵害事実を記録として残すために、URLまで含めた画面をスクリーンショットなどで残しておく。
・相手に販売中止を求めるメールを送り、それで反応しない場合は、配達記録がついた郵便などで中止を求める

・「類似商品が存在していること」をサイトでも告知して、お客様が間違えて購入するのを防止する。

Aさん:ありがとうございました!今後の参考にしたいと思います。

profile
よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐:中小企業や自営業者のトラブル、交通事故、債務整理、不動産、相続など幅広い分野を扱う。中小企業の顧問弁護士も多く務める。宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーでもあり、不動産や資産形成も得意とする。