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【弁護士が解説】副業でネットショップを始める前に!知っておきたい「特定商取引法」事業者の住所記載は義務?

FREENANCE 特定商取引法

ネットショップを利用した際などに目にする「特定商取引法に基づく表記」。開いてみると、事業者の氏名・住所・電話番号などが記載されていますが、なぜこのような項目を明示しなければならないのでしょうか。この記事では、フリーランス・個人事業主や副業を始めようという方が知っておくべき「特定商取引法」について、概要を解説します。

特定商取引法とは?

特定商取引法は、正式名称を「特定商取引に関する法律」と言い、略して「特商法」と呼ばれたりします。特商法は、昭和51年(1976年)に施行された法律です。昭和51年当時は主として訪問販売を規制する法律であったことから、「訪問販売等に関する法律」という名称でした。

施行後、社会の発展に併せて順次法改正が繰り返され、平成12年(2000年)に現在の「特定商取引に関する法律」という名称に変わり、現在にいたります。

特商法の目的は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止することで特定商取引の公正を図り、購入者(消費者)が損害を被ることを防止することで、消費者の利益を保護することにあります。

特商法では、消費者を保護するため、事業者に対しては概要書面の交付を義務付け禁止行為を明示するなどして事業者への規制を課し、他方、消費者にはクーリングオフを認めるなどしています。こうした事業者への規制と消費者への保護を定めることで、トラブル防止・解決を図っているのです。

※参照:消費者庁 特定商取引法
※参照:特定商取引法ガイド

適用対象となる取引形態

特商法は、以下のような取引形態に適用されます。なお、従前の特商法においては、例えば訪問販売では一部の指定商品の販売のみに限定して適用される、文字通りの「特定の商取引」に関する法律でしたが、現行法では、指定商品の制度は撤廃され、以下の取引形態に広く適用されます。

  1. 訪問販売
  2. 通信販売
  3. 電話勧誘販売
  4. 連鎖販売取引
  5. 特定継続的役務提供
  6. 業務提供誘引販売取引
  7. 訪問購入

1. 訪問販売

事業者が、営業所以外の場所において、商品の売買契約ないしは役務(サービス)提供の申込を受けたり、契約締結したりする契約形態を指します(法2条1項)。典型例には、販売員が消費者の自宅を訪れて契約するものが挙げられます。かつての特商法では、一部の指定商品の販売に限定されていましたが、現行法では、指定商品による制限はありません。また、商品の販売のみならず、サービス提供(役務提供)に関する契約についても適用されます。

※参照:特定商取引法ガイド 訪問販売

2. 通信販売

郵便、FAX、インターネットなどの通信手段を用いた方法による商品の販売、サービス提供に関する契約形態が該当します(法2条2項)。ECサイトを通じた商品販売などが挙げられるでしょう。

※参照:特定商取引法ガイド 通信販売

3. 電話勧誘販売

事業者が顧客(消費者)に電話をかけて、あるいは、ビラ広告などを介して顧客(消費者)に電話をかけさせて、商品の販売やサービス提供の契約の申込、契約締結を行う取引形態を指します(法2条3項)。

※参照:特定商取引法ガイド 電話勧誘販売

4. 連鎖販売取引

連鎖販売とは、消費者庁が示す定義では「個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品(権利)・役務の取引のこと」を指します(法33条)。端的に言えば、マルチ商法のことです。

※参照:特定商取引法ガイド 連鎖販売取引

5. 特定継続的役務提供

特定継続的役務提供とは、一定の期間以上にわたって継続して役務を提供する契約形態を指します(法41条)。英会話やエステなどをイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。現在は7つの役務が指定されており、期間についてはそれぞれ「ひと月を超えるもの」もしくは「ふた月を超えるもの」、金額についてはいずれも「5万円を超えるもの」となっています。

指定役務 役務内容
いわゆるエステティック 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと(いわゆる美容医療に該当するものを除く)
いわゆる美容医療 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又は歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと(美容を目的とするものであって、主務省令で定める方法によるものに限る)
いわゆる語学教室 語学の教授(入学試験に備えるため又は大学以外の学校における教育の補習のための学力の教授に該当するものを除く)
いわゆる家庭教師 学校(幼稚園及び小学校を除く)の入学試験に備えるため又は学校教育(幼稚園及び大学を除く)の補習のための学力の教授(いわゆる学習塾以外の場所において提供されるものに限る)
いわゆる学習塾 学校(幼稚園及び小学校を除く)の入学試験に備えるため又は学校教育の補習のための学校(幼稚園及び大学を除く)の児童、生徒又は学生を対象とした学力の教授(役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所において提供されるものに限る)
いわゆるパソコン教室 電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又は技術の教授
いわゆる結婚相手紹介サービス 結婚を希望する者への異性の紹介

※参照:特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供

6. 業務提供誘引販売取引

業務提供誘因販売取引とは、消費者庁の定義によると「『仕事を提供するので収入が得られる』という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるなどとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと」を指します(法51条)。在宅ワークやサイドビジネスで収入が得られるなどと謳って、その業務に必要な商品やサービスを購入させることも含まれており、いわゆる情報商材などもこれにあたります。

※参照:特定商取引法ガイド 業務提供誘引販売取引

7. 訪問購入

訪問購入とは、事業者が顧客(消費者)の自宅を訪れるなどして事業者の営業所以外の場所で、顧客(消費者)から物品の購入を行うことを指します。例えば、着物・貴金属の買い取りを業としている事業者が、顧客の家を訪れて顧客が所有する着物等を購入する契約形態を指します。

※参照:特定商取引法ガイド 訪問購入

特商法による規制

特商法では、上記の契約形態ごとに細かく事業者側に規制を課していますが、各契約に共通して定められている規制の概要は、以下の通りです。

  • 氏名等の明示の義務付け
  • 不当な勧誘行為の禁止
  • 広告規制
  • 書面交付義務

「氏名等の明示の義務付け」とは?

上記の特商法で定められる各契約を行う事業者は、その勧誘に先立って、顧客(消費者)に対して、事業者の氏名または名称を明示することが義務付けられています(法3条、16条、33条の2、51条の2、58条の5等)。なお、事業者のみならず、電話勧誘販売では勧誘者の氏名表示連鎖販売では統括者、勧誘者の氏名表示も行う必要があります。

この氏名表示を行うべき事業者は、法人に限定されていません。個人・フリーランスの方でも、事業者である以上は氏名等の表示の義務があります。ネットショップ(通信販売)での販売を副業として行っている方にも、氏名表示の義務があります。

なぜ事業者に氏名表示が義務付けられているかというと、トラブルになったときに顧客(消費者)が事業者らへの責任追及を容易に行えるようにするためです。この氏名表示義務に違反していると行政に判断されてしまうと、業務停止命令を受けるおそれがあります。

明示の範囲は「住所」にも及ぶ

氏名等の明示に関して、具体的にどこまで明示すべきかですが、特商法の施行規則3条において、「販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者の氏名」と定められています。同条は訪問販売に関する定めですが、他の取引形態でも同様に定められています。

したがって、基本的には、事業者の氏名に加えて、事業者の住所と電話番号の明示が必要です。この事業者の氏名は、通称名や屋号ではなく、戸籍上の氏名を表示する必要があります。

また、住所は現に活動している住所、電話番号は確実に連絡が取れる番号を記載しなければなりません。事業者が法人である場合には、商業登記簿上の法人名と本店所在地、電話番号に加えて、法人の代表者の氏名を明示が必要です。

なぜこれらの明示が義務付けられるかというと、事業者の所在を明確にすることで、氏名と同様に、トラブルになった際に消費者が事業者への責任追及を行いやすくするためです。こうすることで消費者を保護しようとしているのです。

※参照:特定商取引法ガイド 通信販売広告Q&A 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号

住所はバーチャルオフィスが利用可能

上記の通り、特商法の適用を受ける事業者は、個人・フリーランスの方も含まれます。また、副業で行っている場合でも、特商法の適用を受けます。そうすると、店舗や事務所等を持たずに個人で販売を行っている方は、特商法の氏名表示の原則に従えば、自宅の住所や電話番号を明示することが義務付けられることになります。

しかし、自宅住所を知られることにはリスクが伴います。特にネット上での販売などでは、不特定多数の人に自宅住所等を知られることになりますので、ストーキングや誹謗中傷等の被害に遭うといったリスクも考えられるでしょう。上述した原則論を貫くことは、個人の自由な営業行為を制限させることになりかねません。

そこで、消費者庁としては、下記の要件を満たす場合には、「通信販売の取引の場を提供するプラットフォーム事業者やバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示することによっても、特定商取引法の要請を満たすものと考えられます」との見解を示しています。

  • 個人事業者がプラットフォーム事業者の住所及び電話番号を表示する場合、当該個人事業者の通信販売に係る取引の活動が、当該プラットフォーム事業者の提供するプラットフォーム上で行われること
  • 個人事業者がプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示する場合、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィスの住所及び電話番号が、当該個人事業者が通信販売に係る取引を行う際の連絡先としての機能を果たすことについて、当該個人事業者と当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者との間で合意がなされていること
  • 個人事業者がプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示する場合、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者は、当該個人事業者の現住所及び本人名義の電話番号を把握しており、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者と当該個人事業者との間で確実に連絡が取れる状態となっていること
特定商取引法ガイド 通信販売広告Q&A Q18

※参照:BASE 事業者の所在地と連絡先を、非公開にできるようになりました

特商法が氏名表示を義務付けているのは責任の所在を明らかにするためであり、プラットフォーム事業者やバーチャルオフィス事業者に販売者(特商法上の事業者)を管理させることで、責任の所在を明らかにできる(消費者は責任追及できる)ので、プラットフォーム事業者・バーチャルオフィスの住所・電話番号の表示で足りると解釈したものと考えられます。

自宅住所などの個人情報をネットショップ等で明示したくない場合には、住所情報などを借りるバーチャルオフィスを利用するのもひとつの方法です。バーチャルオフィスのサービス内容によっては、法人登記が可能な住所を借りることができる場合もあります。

まとめ

特商法は、強い事業者と弱い消費者との対立構造を前提にして、弱い消費者を保護するために事業者への規制を強めてきました。事業者の氏名表示の義務付けも、弱い消費者から事業者への責任追及を容易にするための方策と考えられます。

しかし、ネットが普及・発展し、個人・フリーランスの方でもネットを介して簡単に販売事業を行えるようになった現在では、特商法の適用を受ける事業者が必ずしも強者とは限りません。個人の住所・電話番号をネット上で明示することはさまざまなリスクを伴います。こうしたリスクを回避したいのであれば、バーチャルオフィスの活用などを検討してみてください。

執筆者profile
弁護士 南 陽輔
大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録、2021年独立開業(大阪弁護士会所属)。大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件など幅広い領域の法律業務を担当していました。2021年3月に一歩法律事務所を設立し、一歩法律事務所では、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主とした業務を取り扱っております。
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