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【弁護士が解説】フリーランスこそ知っておくべき秘密保持契約!NDA(秘密保持契約書)締結の注意点とは?

【弁護士が解説】フリーランスこそ知っておくべき秘密保持契約!NDA(秘密保持契約書)締結の注意点とは?

業務や案件の依頼を引き受けるにあたり、委託契約書と合わせて締結することも多い、「NDA(Non-Disclosure Agreement)」。日本語では「秘密保持契約」といって、企業間の取引はもちろん、フリーランスや個人事業主が受注する際にも、業務内容によっては締結が求められるケースがあります。そこで今回は、フリーランスの目線から、秘密保持契約の意味や有効期間などについて、締結に際しての注意点とともに解説していきます。


フリーナンスは、フリーランス・個人事業主を支えるお金と保険のサービスです。
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秘密保持契約とは?

まずは、秘密保持契約を締結する理由から見ていきます。フリーランスや個人事業主として活動される方こそ、把握しておきたい内容です。どんな契約なのかを把握して、今後に備えていきましょう。

なぜ秘密保持契約を締結するのか

フリーランスをしていると、さまざまな企業や個人事業主と取引をすることになるでしょう。取引に際して、取引相手からフリーランスへ、あるいはフリーランスから取引相手に保有する秘密情報を渡す必要が出てくることもあります。

簡単な例でいえば、確定申告に際して税理士に請求書や領収証などを渡すとなれば、フリーランスの抱えている顧客の情報や、「どこから」「どれくらい」「なにを」仕入れたのかなど、さまざまな情報を渡すことになるでしょう。

このとき、その税理士がSNSで「A社はこのフリーランスの顧客でした」などと発信したとすれば、フリーランスはその顧客からの信用を失い、損害賠償請求されたり、取引関係を断ち切られたりするかもしれません。

税理士や弁護士など、法律上守秘義務を負っている場合(税理士法38条、弁護士法23条)もありますが、そうでないケースのほうが多いでしょう。

不正競争防止法では、不正の利益を得る等の目的で「営業秘密」を使用・開示する行為が「不正競争」として規制の対象とされています(2条1項7号)。

営業秘密を保有する事業者(以下「営業秘密保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為

引用元:不正競争防止法

ここで、不正競争防止法の「営業秘密」は、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」(2条6項)と定義されています。

①秘密管理性②有用性③非公知性の3要件を満たせば「営業秘密」として、不正競争防止法上保護されますが、企業等が持つ秘密はこれに限られないでしょうし、これに「営業秘密」に当たるかどうかが曖昧な情報もあるでしょう。

このほかにも、特許にかかわる情報を扱う場合、特許申請前に公にされてしまうと、「公知の発明(公然知られた発明)」として、特許を取得できないことになりかねません(特許法29条1項1号)。あらかじめ、そのような事態になるのを阻止しておく必要があります。

秘密保持契約(NDA/Non-Disclosure Agreement)機密保持契約守秘義務契約CA(Confidentiality Agreement)は、このように取引上知った取引先等の秘密情報(営業秘密や顧客の個人情報など)を、その取引先等に無断で外部に漏洩しないことについて合意するものです。

法律上、保護されていない秘密情報であっても、契約当事者の合意があれば、明確に秘密情報を保護することができます。また、当事者の合意で決めるものですので、秘密情報の範囲や有効期間、違反の場合の取扱いなど、柔軟に取り決めることが可能です。

相手方が法律上守秘義務を負っている場合や、不正競争防止法で保護される「営業秘密」に当たる場合であっても、お互いの認識を確認したり、責任限度を定めたりするために秘密保持契約を締結することもあります。

※参照:中小企業庁 解説編 秘密保持契約書「取引開始前の技術・ノウハウ漏えいを防ぐ~秘密保持契約書の締結が第一歩!」

フリーランスこそ秘密保持契約についての基礎知識を

秘密保持契約の締結は、商慣習であり、義務ではありません。義務ではないがゆえに、経済的な事情などで優位に立つ方が、フリーランス等弱い立場に立ちやすい方に対して、自己に一方的に有利な内容の秘密保持契約の締結を迫ることもあるでしょう。

公正取引委員会のスタートアップへのアンケートでも、連携事業者から受けた「納得できない行為」として、「NDA(秘密保持契約)に関すること」が挙げられています(約31%)。

スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書
※引用:スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書(令和2年11月 公正取引委員会)

さまざまなクライアントと取引を行い、受注側として弱い立場となりがちなフリーランスこそ、秘密保持契約の締結の際には内容について留意すべきです。

秘密保持契約書を確認する際の注意点

秘密保持契約の締結にあたっては、いくつか注意すべき点があります。以下では、問題になりやすい部分をピックアップして解説していますので、フリーランスや個人事業主の方は、取引先から、一方的に不利な秘密保持契約を締結させられないよう、しっかりと確認しておきましょう。

※参照:中小企業庁 秘密保持契約書ひな形

①秘密にする情報の範囲

秘密にする情報の範囲は、秘密情報を開示する側からすれば最大限広くすべきです。逆に、秘密情報の開示を受ける側からすれば、最小限にとどめておくべきことになります。しかし、一方のみが秘密情報を開示するだけならともかく、契約当事者双方が開示し合うのであれば、秘密情報の範囲は必要最小限にとどめておくのが無難でしょう。

いずれにしても、秘密情報の範囲は、想定される取引に応じて明確に定めておくべきです。なにが「秘密情報」に当たるのかを明確にしておかないと、秘密保持契約を締結した後に、秘密情報ではないと考えて開示したものについて、相手方から、秘密保持契約で約束したはずの「秘密情報」を漏洩したなどと主張され、紛争に発展してしまうリスクがあるからです。

ただし、いくら秘密情報の範囲を明確にするためとはいえ、開示する側が一方的に「秘密情報」として指定したものを、秘密情報として扱うという内容での合意には注意が必要です。本来秘密として保護すべきものとはいえない情報まで「秘密情報」として指定されてしまうと、今後の事業活動への負担となりかねません。

あらかじめ想定される秘密情報はできるだけ具体的に列挙し、取引の過程で新しく入手する情報については、双方の合意で「秘密情報」とすることができると定めるのが無難でしょう。

②秘密情報を開示できる範囲

秘密情報といえども、どのような形でも開示が許されないわけではありません。犯罪の捜査のために警察から開示を求められたり、裁判所から開示を求められたりと、正当な理由によって開示する場合もあります。

秘密保持契約書に「一切の開示を禁ずる」などと書かれていても、そのような正当な理由がある場合には開示可能ですが、秘密保持契約締結時に確認しておくべきでしょう。

そのほかの場合も、秘密情報を使うニーズがないわけではありません。例えば、フリーランスにとっては、取引の実績をアピールできるかどうかは、その後の事業活動にとって重要になることが多いでしょう。

秘密情報を開示する側からすれば、極力避けてほしいと考えるはずです。ポートフォリオやSNSでアピールしたい場合には、どの範囲、あるいはどの程度であれば開示してもよいのか。想定される場面を具体的にイメージして、できる限り具体的に開示できる範囲を定める方向で提案するのがよいでしょう。

③秘密情報の使用目的

なぜ秘密保持契約を締結するのか、なぜ秘密情報を開示するのかを明確にしておくことで、その目的と全く関係のない情報を開示された場合に、開示を拒絶したり、管理義務のみを押しつけられることを拒絶したりすることができます。

また、目的を定めておかないと、目的外流用の場合について、どうするかなどの意識もできません。目的を定められていない秘密保持契約の締結を迫られた場合には、目的を明らかにするよう求めてみてください。

④秘密情報の返還/廃棄

相手方から渡された秘密情報を、契約終了後どうするのかを定めるケースもあります。「マル秘」と書かれた紙媒体や電子ファイルをそのまま持っているならよいですが、顧客情報をさまざまなファイルに打ち込んだり、別のシステムに入力したりするなど、もはや渡された媒体のみにとどまらない場合もあるでしょう。

作業終了後は、すべてを削除するのか、あるいは特定できないように処理するのか。想定される場面に応じて、現実的な方法を定めていきましょう

⑤競業禁止義務

秘密保持契約の条項の中に、フリーランスへの競業禁止義務を課す条項が含まれていることがあります。取引先が一社であれば問題ないこともありますが、複数の企業等と取引をしているフリーランスの方は、事情を説明して外してもらうのがよいでしょう

どうしても外してもらえない場合には、地域(例:関東地方のみ)や期間(例:契約の有効期間内及び契約終了後半年間)、具体的な競業の内容(例:浄水器の一般家庭向けの営業活動)などを限定してもらうことが大切です。

⑥損害賠償義務

情報漏洩による損害は、例えば顧客へのお詫びの品や、システムの復旧に要した費用など、具体的に算定できるものもあれば、信用の失墜など、算定が困難なものもあるでしょう。また、1人のフリーランスでは賠償しきれないほど、高額になる可能性もあります。

秘密保持契約における損害賠償義務の定めにおいては、損害賠償限度額を定めたり、固定の損害額を定めたりしておくと安心です。取引額を限度とすると定めておくケースも少なくありません。

ただし、お互いに限度額等を定めておくと、フリーランスの側に損害が発生した場合に、それを超える部分は、自己負担となってしまう可能性があることには注意が必要です。

自分が漏洩した場合と相手方が漏洩した場合とで、損害の規模、因果関係が明白かなどについて、どのような違いがあるのかを意識しておくことで、どんな定め方をすれば自分にとって有利・不利かを判断できるでしょう。

⑦有効期間

秘密保持契約に有効期間を定める場合があります。しかし、例えば3年経てば秘密でなくなる情報であればよいですが、そのような情報はむしろ少なく、顧客情報など、ずっと秘密にしておくべき情報のほうが多いでしょう。

秘密保持契約自体の有効期間とは別に、有効期間中に開示された秘密情報について、管理義務の期間を定めることもあります。期間が長ければ長いほど、秘密を開示した側にとっては有利ですが、開示を受けた側にとっては、秘密を管理し続けることが過大な負担となる可能性もあります。

例えば、フリーランスの方で大企業と取引をしたとします。その取引の期間中は膨大な個人情報を管理するツールの費用をその大企業に請求できたとしても、取引が終わった後は自己負担で管理義務だけ負い続けることになれば、大きな足かせとなってしまいます。

どの範囲の秘密を、どの範囲で利用するのかを明確に意識し、契約終了後は紙媒体や電子ファイルを返還するなど、永久に管理義務だけを負い続けることがないよう、注意しておきましょう。

まとめ

秘密保持契約の締結にあたっては、秘密情報の範囲や開示の可否、契約終了時や契約違反時の取扱いについて、自身の置かれる状況を極力具体的に想定することが重要です。弱い立場に立たされやすいフリーランスこそ、自己防衛のためにも、秘密保持契約についての理解を深めておきましょう。

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