【弁護士が解説】下請法によって、代金は60日以内に支払う義務が定められているって本当?

フリーランスなら何度か耳にしたことがあるであろう「下請法」。

下請法は、取引上の立場の弱い下請事業者の利益を保護するために作られた法律。つまり、フリーランスという働き方を選んだ人にとって、下請法の知識を持つことは自分の身を守ることにもつながります。

今回は、下請法の中でも〝クライアントからの代金の支払い期日〟について、弁護士の細越さんに聞きました。

代金は成果物の受領日から「60日以内」に支払う義務がある

下請法では代金の支払い期日について「成果物を受領した日から60日以内に支払わなければならない」と定められています。この「60日以内」は、実務上「2か月以内」と読み替えて運用されています。

例えばライターがメールで原稿を納品する場合。

ライターがメールで納品物を送信して、クライアントがそのメールを受け取った日が、クライアントが「成果物を受領した日」になります。

クライアントからの「受け取りました」という納品確認メールが1週間後に届いたとしても、成果物のメールがクライアントに届いた日が納品日とみなされます。

〆日(月末)を起算とするわけではないのですね。

はい、あくまでも成果物を納品した日が、支払期限の起算日となります。たとえば、クライアントが月末〆の場合でも、納品日が8/1日だった場合、8/31ではなく8/1日を起算日として、60日以内に支払わなければならないことになります。

クライアントによっては、月末〆の翌々月末支払いという会社もありますが、これはどうなんでしょう?

その場合ですと、ちょうど月末頃に納品した物はぎりぎりセーフとなりますが、それ以外については下請法に違反していると判断されます。

× 2019年7月15日に納品→7月末締め9月29日支払い(60日を超過)
◯ 2019年7月31日に納品→7月末締め9月29日支払い(2か月以内)
事前に月末〆の翌々月末支払いとすることを、契約書で合意していれば話は別ですか?

たとえ両者間で合意し契約書を交わしていても、下請法に規定された支払期限を遵守しなければいけません。

ですので、月末〆の翌々月末支払いの場合、実際の受領日から60日(2か月)が経過すれば支払いが遅延したとみなされ、クライアント側には遅延損害金の支払い義務が生じます。

その他の制裁としては、下請法違反の事業者には公正取引委員会から勧告がなされますが、公正取引委員会のHPで下請法勧告一覧のページがあり、勧告を受けた事実については公表されますので、それ自体、企業にとってはかなり大きなダメージといえるのではないでしょうか。

下請法の適用は親事業者が資本金1千万円超の会社

フリーランスがフリーランスに発注する場合も、下請法が適用されますか?

下請法の対象となる取引は、事業者の資本金規模と取引内容で定義されています。具体的には、親事業者の資本金が1千万円を超える場合の取引が下請法の適用を受けます。つまり、資本金1千万円以下の比較的規模の小さい会社からの発注や、フリーランス同士の受発注に関しては、原則として下請法が適用されないということになります。

CST法律事務所 弁護士 細越善斉さん

そもそも下請法というものは、発注者と受注者のパワーバランスによって、立場の弱い受注者が不利益を被らないように、取引の公正化と受注者の利益保護という目的で設定された法律です。つまり、小さい会社同士の取引の場合、パワーバランス的に対等な関係なので、わざわざ法律で守ってあげなくていい、という考えなので、その場合は契約自由の原則に則って、両者が合意できる内容で契約を結んでください、というたてつけになっています。

クライアントが下請法に違反している場合、どこに相談すればいい?

下請法を意識しているフリーランスの方は意外と少ないという印象を受けますが、多様な働き方が認められるようになっている時代ですので、フリーランスの方は是非とも知っておいたほうがいい法律だと思います。そして、下請法違反に対しては、本来であれば毅然と対応されることをお勧めします。

しかし実際は、今後の取引のことを考え、フリーランス側から下請法違反を指摘したり、第三者に申告や相談することを躊躇することが多いようです。

それでも誰かに相談したい、という場合はどうしたらいいでしょう。

その場合は、中小企業庁の委託事業として公益財団法人 全国中小企業振興機関協会が全国に設置した「下請かけこみ寺」という機関が全国にあるので、そこに相談してみるといいと思います。基本的には下請事業者の下請取引上の悩みに、専門の相談員が無料で応じてくれ増すし、相談員が必要だと感じた場合、近くの弁護士に無料で相談を行うこともできます。

さらに、第三者の関与により下請法違反を是正してもらうために、「ADR」を利用する方法もあります。「ADR」とは裁判外紛争解決手続というもので、弁護士などが仲裁人として間に入って、裁判ではなく話し合いでの解決を目指す手続きです。下請かけこみ寺では、この「ADR」にも対応してくれるので、本当に困ったときには利用してみるのもいいですね。

下請法の知識を持ち、まず声をあげてみることが大事

代金の支払期限に限らず、さまざまな角度から立場の弱い下請事業者の利益を保護する目的で作られたのが下請法です。不当な扱いや紛争を避けるためにも、下請法の知識を持つことはとても大事だと思います。

親事業者に対しては、中小企業庁が毎年、書面調査を行い、その中でチェックリストが送られたりしていますので、親事業者の担当者は下請法についての知識は一定程度あると思います。そうであっても、現実には下請法を遵守していない企業は一定数あると思われます。

だからこそ、下請事業者側が知識を持ち、違反をしている企業に対して声をあげることが大事なのではないでしょうか。多くの下請事業者が知識を持ち、権利を主張できる社会になれば、親事業者側も対応を変えざるを得ないのではないかと思います。

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CST法律事務所 弁護士 細越善斉
大企業からベンチャー企業・フリーランスまで、幅広い業種の顧問弁護士・社外役員を務める。