収入が増えてくると「そろそろ法人化しようかな?」と考え始める人も多いのではないでしょうか。ただし税金のことなどを考えると、法人化すべきタイミングは慎重に考えた方が良いかもしれません。どれくらいの収入になったら法人化するべきかを、税理士の萩口先生にお聞きしました。
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税金面でのメリットを考えれば「個人所得が600~800万円以上」が法人化の目安に
フリーランスの方が法人化を考えるタイミングとしては、所得税と法人税のどちらが税金面で有利か、といったことが一つの基準になります。フリーランスの場合は所得税、法人の場合は法人税の対象になり、それぞれで税率が異なります。
それを大前提に法人化するタイミングを定めるなら、所得控除の金額によって多少の前後はありますが、「売上から経費を引いた個人所得が600~800万円くらい」になったときが、法人化を検討するタイミングかもしれません。(所得控除はここでは考慮しておりません。)
600~800万円のラインで税率が変わってくるのですか?
個人事業主の場合、例えば所得が800万円の場合、下の表の「課税される所得金額が695万円を超え、900万円以下」に該当しますので、所得税が23%です。そこに住民税が約10%が加算されますので、合計税率は約33%になります。
一方、法人化した際にかかる税金は、法人税・住民税・事業税になります。これを全て合算した税率は、以下のような3段階で変動します。
- 〜400万円まで:約22%
- 400〜800万円まで:約25%
- 800万円以上:約35%
ただし実効税率は各市町村で住民税が異なるため、それによって変わってきます。上記はあくまでも一つの目安と考えてください。
法人化した場合は、400〜800万円までで約25%目安となるわけですね。つまり、法人化した方がお得だと。
その可能性はあります。600万円~800万円というラインが、法人化を検討するひとつの目安と考えて良いでしょう。
法人化する際に必要な「生涯TAX」という考え方
一つ留意していただきたいのが、税金は一時的なものではなく、一生涯払う必要があるということです。つまり、そこで必要になるのは「生涯TAX」という考え方です。
生涯TAXとは?
生涯TAXとは、長期的視点で、自分や会社がトータルでいくらの税金を支払うことになるのかという考え方です。
例えば、所得税率がすでに40%に達している事業主の役員報酬を200万円増額するよりも、会社に内部留保して法人税を支払った方が、毎年のトータルの税金額を抑えることができます。さらに、これを退職時に退職金として自分に支払うことで、税率の低い退職所得として受けとることができます。
そういう考え方もあるんですね。
仕事を何歳まで続けるのか、それまでにどれくらいの収入を目指しているのか、そしてそれに対してどれだけの税金を払うことになるのかなど、「生涯TAX」という考え方で計算してみるのもいいかもしれません。
社会的信用や出資が必要になった場合も法人化検討のタイミング
税率以外にも、法人化することのメリットはあるのでしょうか?
まず、融資ではなく出資を受けることができるようになります。出資は事業の成功・成長を期待して投資家からお金を出してもらうこと。融資は金融機関から受ける資金援助を指しています。誰かに出資を受ける場合は法人化が必須になります。また、融資をするうえでも、借入主体が自分本人でなくなることは社長のリスク軽減という観点からも法人で借りた方がよいということがいえます。
さらに、社会的信用を得やすいというメリットもあります。たとえば、大手の会社と取引するには、法人であること、場合によっては資本金〇〇円以上であることという条件が提示される場合もあります。また、仕事が増えて人を雇おうと考えた場合、法人化しておいたほうが雇いやすくなる可能性もあるでしょう。
税金面以外にも、いろいろ考慮すべきことがあるんですね。
法人化については税金上の観点から議論されることが多いですが、経営上の観点・営業上・採用上など、事業を成長させるために法人化が効果的である場合には、これらの観点の方が重要である可能性もあります。
ですから私は自分のクライアントには、法人化を検討する際には税金上の観点だけに縛られないようにお伝えしています。そして税金の計算はなかなか複雑ですので、自分だけでは判断できないことがあれば税理士に相談しても良いかもしれません。
株式会社HG&カンパニー/はぎぐち公認会計士・税理士事務所 代表公認会計士・税理士。創業支援を得意とし、フリーランスの法人化支援やフリーランスが利用できる補助金や創業融資の獲得支援などを行なっている。法人化のタイミングについてのアドバイスには、年間数十件対応している。
株式会社HG&カンパニー/はぎぐち公認会計士・税理士事務所
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