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個人事業主の屋号も!ブランドイメージを守る「商標」について解説【知的財産アナリストが監修】

FREENANCE 商標

「商標」とは、新商品を売り出す際に注意が必要な、知的財産に関する決まりごと。これは、ブランドイメージや顧客との信頼関係にも関係するため、大きな企業だけでなく個人事業主やフリーランスにとっても大切なルールです。この記事では、商標の基本知識や登録方法に加え、商標を守り、侵害しないための注意点についても解説していきます。

商標とは?

商標とは、事業者が自社で取り扱う商品やサービスを、他社と区別する目的で使用される識別標識(マーク)のこと。こうした商品やサービスに付けられた「マーク」や「ネーミング」といった商標は、「商標権」という知的財産権にあたります。

こうした商標は、なにかを買ったり、サービスを利用したりするときに、「品質が保証されている」と消費者に感じさせる効果があります。そのため、商標は「もの言わぬセールスマン」と表現されることもあり、ブランドイメージを体現したものと言えるでしょう。

商標は、商品やサービスの単なる目印ではなく、業務上の信用維持や産業の発展、需要側の利益保護など、さまざまな役割を担っているのです。

※参照:特許庁 初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~

「屋号」も商標登録できる

個人事業主も、信頼や品質の保証を基にビジネスを行っているのは、大企業と同様。そのため、個人事業主の「屋号」も商標登録をすることができます。例えば、Webサイトで使える素材の提供や、ある種のオンラインサービスを提供する事業などを行っている場合、ブランドイメージが大切になってくるかもしれません。屋号を商標登録する方法は、一般的な手順と同じで、以下の通りです。

  1. 特許庁に商標登録出願をする
  2. 原則、出願日から2~3週間後に出願内容が公開される
  3. 各種審査、査定が行われる
    (拒絶された場合は理由通知があるので、意見書・補正書を提出)
  4. 登録料を納付する
  5. 設定登録

設定登録ができれば、個人事業主の屋号にも商標権が発生し、使用しているマークやネーミングが、守られるべき知的財産となります。

「商標」と「意匠」

「意匠」は、同じく特許庁によって登録されますが、Tシャツやトートバッグといった大量生産できる「工業製品としてのデザイン」が保護対象です。ただし、意匠が登録されたとしても、差し止めることができるのは登録されたデザインやそれと類似したデザインを模倣して使用する行為であり、その商品や製品に付けたマークやネーミングの使用を止める権利はありません

※参照:特許庁 意匠とは

個人事業主が商標登録するメリット

商標登録には、お金も時間もかかります。個人事業主が商標登録をすることでどんなメリットがあるのか、具体的な内容を見ながら考えてみましょう。

商標権侵害で警告できる

品質や利便性の高い商品を開発・販売し、人気が出てくると、知らない間に模倣品が出回ることもあります。特許庁に模倣品を取り締まるような権限はありませんが、商標登録していれば、模倣品を取り扱う業者に警告状を送ることもできます。

例えば、プラスチック日用品雑貨などを取り扱うとある工業所では、自社製品にブランド名をつけ商標登録をしています。模倣品を作っている会社には、商標権侵害を理由に警告し、安い模倣品と比較し、値切られるということがないように取り組んでいるようです。

商標権は、登録された国のみで効力を発揮する(属地主義)ため、国ごとで商標登録をする必要がありますが、こうした取り組みは、特に海外では重要視されているようです。

個人事業主であっても、努力して生み出し築き上げたブランドイメージを模倣され、価値を下げられるということは十分に考えられます。オリジナリティの高い製品やサービスの場合、その製品やサービスに使うブランド名やマークを商標登録することは、事業を守ることにつながるでしょう。

損害賠償等を請求できる

商標権は、ネーミングだけでなく、マーク(文字・図形など)も登録されます。マークが同じでも、使用する商品やサービスが異なるものに対しては商標権の効力は及ばないのが原則です。しかし、ネーミングやマークに加え、取り扱う商品やサービスまで同一もしくは類似となれば、使用禁止や損害賠償を相手方に請求することが可能です。そして、相手方がその請求に応じない場合は、裁判所に訴えて差し止めや賠償の命令を出してもらうこともできます。

例のひとつとして、バッグを主力製品として製造販売を行っている企業が、あるブランドを立ち上げたところ、SNSなどで人気を集め1年後には模倣品が出回り始めたとのこと。すぐに商標登録を行い、模倣品を見つけた場合には削除を依頼し、税関への輸入禁止申し立てを行い、模倣品販売業者へ訴訟を起こしました。すると、模倣品の差し止め、商品廃棄、損害賠償を勝ち取ることができたのです。

商標権は、企業の大きさに関係なく権利を証明するものとなるため、万が一損害賠償を求める事態になったときには、積極的に行動する動機付けにもなるでしょう。自ら生み出した商品やサービスにお金を出してくれる人のことも考え、商標登録しておくという考え方もあるようです。

費用・時間はかかるがメリットは大きい

商標登録は、お店などでの会員登録のようなすぐにできるものではなく、費用と時間がかかります。登録にかかる費用は以下の通りです。

  • 出願料:3,400円+(8,600円×区分数)
  • 登録料:28,200円×区分数
    ※書面で提出した場合の電子化手数料:1,200円+(700円×書面のページ数)
    ※「指定商品・指定役務」を分野別に分類したものが「区分」(第1類~第45類)となり、いくつの区分にまたがっているのかをカウントすると区分数が得られる

例えば、「自動車並びにその部品及び附属品」は第12類に、「自動車の修理又は整備」は第37類に分類されています。それらを指定商品・指定役務とする場合には、第12類と第37類の2区分になりますので、料金は以下の計算になります。
出願料:3,400+(8,600円×2区分)= 20,600円
登録料:28,200×2区分=56,400円

※引用元:特許庁「商標権は出願したらすぐに取れるの? 商標権を取るにはいくらかかるの?

※参照:特許庁 よく使う商品・役務名の検索方法

商標登録には、一般的に弁理士に頼まずに自力でする場合でも5万円以上、弁理士に依頼する場合は10万円以上の費用がかかります。また、出願をした後の審査に時間がかかるケースもあり、商標登録が無事に完了するまでは、1年程度、審査中に問題があれば、それ以上の期間が必要になることもあるようです。

たしかにお金と時間はかかりますが、更新すれば(10年ごと)、半永久に保護され譲渡も可能です。自分(自社)が努力して築き上げてきたものだけでなく、今後のさらなる成長の可能性や、顧客との信頼関係など、さまざまなものを守る足掛かりにもなるでしょう。

商標登録の手続き

商標登録は特許庁への出願から審査、そして登録という手順が踏まれますが、その前にもいくつか準備があります。ここでは、書面(紙)での出願方法インターネット(電子)での出願方法と、分けて解説していきましょう。

出願前の先行登録確認

特許庁へ出願する前に、出願しようとしている商標が、すでに使われていないかを調査する必要があります。登録の有無は以下の方法にて検索が可能です。

  1. J-PlatPat(JPP/特許情報プラットフォーム)」にアクセス
  2. 称呼(読み方のこと/「呼称」ではない)が類似する商標を検索
  3. 同じ文字を含む商標を探す

文字で探す場合は、ひらがな・カタカナ・英字などはそれぞれ別の文字として検索されるため、注意が必要です。また、文字の前後に「?」を入力して検索すれば、名前の前や後ろに違う文言が付随していても、検索結果に表示されます。

詳しい使い方は、J-PlatPatに関する「操作マニュアル」の「第5章 商標の操作」を確認してください。

※参照:特許庁 商標を検索してみましょう
※参照:J-PlatPat 操作マニュアル

書面(紙)で出願する方法

先行登録確認で問題がなければ、出願の準備をします。

STEP.1
商標登録願の作成
商標登録願の様式をダウンロードし、J-PlatPatと「商標登録出願書類の書き方ガイド」を参照しながら、商標登録願を作成します。作成した商標登録願を、A4用紙に印刷します。印刷した様式を使って手書きすることもできますが、その場合は黒のボールペン(文字が消せないもの)を使用します。
STEP.2
集配郵便局などで特許印紙を購入し、指定の箇所に貼り付け
特許庁への手続きは、「特許印紙」が必要です。収入印紙では手続きできないので注意しておきましょう。また、特許庁へ直接提出できる場合は、特許庁内での購入も可能です。なお、貼り付けた特許印紙に割印は不要です。
STEP.3
特許庁に提出
郵送する場合:「₸100-8915 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号 特許庁長官 宛」に郵送。宛名面余白には、「商標登録願 在中」と書き、書留・簡易書留郵便・特定記録郵便などで提出してください。

直接持参する場合:特許庁1階の出願受付窓口へ提出してください。受付時間は平日9時~17時まで。土日祝日や年末年始(12月29日~1月3日)は閉庁しているため注意が必要です。

STEP.4
電子化手数料を納付
書類で提出した場合は、電子化手数料として、1,200円+(700円×書面のページ数)が必要です。出願日から数週間後に送付される払込用紙を使って納付してください。

インターネット(電子出願)で出願する方法

インターネットで出願する方法(電子出願)については、「初心者のための電子出願ガイド」を参照しながら進めることができます。電子出願の簡単なフローは以下の通りです。

STEP.1
事前準備
マイナンバーカードやICカードリーダーを用意し、パソコンに「公的個人認証サービス 利用者クライアントソフト」をインストール。ソフトを利用し、自分の証明書を表示できるか確認します。
STEP.2
インターネット出願ソフトのセットアップ
「インターネット出願ソフト」をダウンロード・インストールし、各種設定を行ってから、申請人利用登録を行います。
STEP.3
さくっと書類作成の利用
インターネット出願用の一部の書類をWeb上で作成できる「さくっと書類作成」にアクセスし、書類を作成します。なお、「電子出願ソフトポータルサイト」上の電子出願用ひな型を利用してWord等を使ってHTML形式で作成することもできます。
STEP.4
インターネット出願ソフトの利用
「インターネット出願ソフト」を使って、目的に合わせた項目を選んで書類を取り込み、チェックを行います。作成した書類は、そのままソフトを使って特許庁へ送信することが可能です。また、受理状態や受理書の確認もこのソフトから行えます。

※参照:特許庁 初心者のための電子出願ガイド

まとめ

時間とお金のかかる商標登録ですが、自身(自社)のブランドイメージや財産を守るなど、大きなメリットがあります。個人事業主やフリーランスの場合もこれは同じです。努力して築き上げてきたものを守るために、ぜひ商標登録を検討してみてください。

監修者profile
谷 直樹(たに なおき)
弁護士/AIPE認定知的財産アナリスト(特許)
大手企業を顧問先とする企業法務系法律事務所に勤務した後、外務省の推薦で国連の専門機関で法務の国際スタッフとして従事。その後、長崎市内で中小企業を主なクライアントとする法律事務所を開業。長崎県よろず支援拠点コーディネーター、長崎県知財総合支援窓口の相談担当専門家としても在籍中。
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