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【弁護士が解説】フリーランスが知っておきたい!コロナで起こりうる発注キャンセルや納期遅延等、仕事のトラブルの対処法

FREENANCE【弁護士が解説】フリーランスが知っておきたい!コロナで起こりうる発注キャンセルや納期遅延等、仕事のトラブルの対処法

新型コロナウイルスが猛威をふるい、フリーランス・個人事業主にもさまざまな影響が出ています。そして、しばらくはこのコロナウイルスの影響を考慮に入れながら仕事をしていく必要があるかもしれません。そんな「withコロナ」の時代に、フリーランス・個人事業主が知っておくべき法律について、弁護士の細越さんに聞きました。

コロナの感染拡大の影響で、発注をキャンセルされた場合の対処法は?

新型コロナウイルスの影響で、フリーランスが仕事をキャンセルされることも少なくないと思います。そんなときに備えて、知っておくべきことはありますか?

基本的に新型コロナウイルスの影響に関わらず、キャンセルされた仕事がどの段階なのかが重要です。双方が合意をした後(いわゆる契約が成立した段階)なのか、契約が成立する前かによって変わってきます。

細越善斉
CST法律事務所 代表弁護士 細越善斉さん

契約が成立した後なら、契約書の内容に則って、「クライアントが契約を解約できるかどうか」「(違約条項に基づいて)フリーランスがクライアントにキャンセル料等を請求できるかどうか」などが変わってきます。反面、そもそも契約が成立する前段階なら基本的には何も言えないということになります。

契約した後にキャンセルされた場合は、契約書の内容によって変わるということですね?しかし、契約書を交わしていない場合はどうなるのでしょうか。

確かにフリーランスの方は、発注前に契約書を交わしていない場合も多々あるかと思います。そういった場合でも、メールやチャットツールなどのやりとりによって契約が成立していることを立証できる場合があります。ですので、クライアントとやりとりをしたメールなどは必ず残しておくようにしてください。そして、契約が成立していると判断できる場合は、具体的な業務の内容等に応じて、請負型の業務委託契約か、委任型の業務委託契約なのかが判断されることになります。

契約書がなくても、契約が成立していれば損害賠償請求を行える可能性があるということですか?

たとえば「〇月×日に取材を行って、その1週間後に記事を納品してください」といったメールに「承知しました」と返信していたら、基本的には請負型の業務委託契約が成立したと判断されるでしょう。そして、実際に取材を行って記事を書いている途中で一方的にキャンセルされた場合、それまでの出来高に関して損害賠償請求をできる可能性が高くなります。

いずれにせよ、コロナウイルスの影響に関わらず、発注された仕事をキャンセルされた場合の契約内容に沿って判断されるので、契約内容をしっかりと理解しておくことが大切ですね。

詳しくはこちらの記事でも解説しているので参考にしてみてください。
【フリーランス法律相談】受注した案件が消滅!業務委託契約の解除になる?契約書がないと泣き寝入り?

コロナの影響で納期に間に合わない場合は、フリーランス側の責任?

新型コロナウイルスの影響で納期に間に合わなかった場合は、フリーランス側が損害賠償請求をされる可能性はあるのでしょうか?例えば、「外出を自粛したため取材が実施できなかった」「自分やスタッフが感染してしまって作業が進まなかった」などのケースです。

まだ、そのようなケースでの損害賠償が認められたという裁判例を私自身が認識していないのでなかなか回答が難しいのですが……法律上は「債務者側に帰責事由があるかどうか」によって判断されます。

帰責事由とは?

簡潔に言えば「責任」ですね。クライアントから仕事を発注され、実際にその仕事を行っている場合には、契約が成立していると考えられるでしょう。その契約の中で納期が指定されている場合、その納期を守れないことに対する「責任(帰責事由)」がフリーランス側にあるかどうか、という観点から判断されます。

新型コロナウイルスの影響による納期遅れは、フリーランス側に帰責事由があるのでしょうか?

そこは、「時期」が関係してくるのではないでしょうか。

たとえば、3月や4月は新型コロナウイルスの影響がここまで大きくなることは誰も予想できなかったでしょうし、緊急事態宣言の発令もあり外出を自粛しなければいけませんでした。そういう状況の中で、人との接触や外出を要する仕事は進められません。その場合は、納期が遅れてもフリーランス側に帰責事由が「ない」と判断される可能性は十分にありえます。

しかし、新型コロナウイルスの感染状況が明らかになった7月や8月に新たに発注された案件に関しては、コロナによる業務への影響を踏まえた上での契約となりますので、「新型コロナウイルスの影響で納期が遅れても仕方ないですね」とは判断してもらえないかもしれません。

なるほど。時期的なことも判断材料になるのですね。では、自分が新型コロナウィルスに感染した場合についてはどうでしょうか。2週間の隔離が必要になるので、納期に間に合わないことも十分予想されるのですが。

そうですね。こちらもまだ裁判例がないので何とも言えないところですが、自分が感染して入院や隔離生活を余儀なくされて納期が遅れた場合、「帰責事由なし」と判断される可能性は十分にあり、その場合は損害賠償責任を負うことはないでしょう。ただ、責任を負わないとしても、関係者に迷惑をかけないようにするために、できるだけ早くクライアントには感染の事実を伝えて、その後の対処方法を相談された方がいいと思います。

たとえばそれが「夜の街」のような感染リスクの高い場所に出かけて、感染したとしてもですか?

その場合には、帰責事由ありと判断される可能性もありますが、そもそも感染症において、どこで感染したかを証明することは極めて難しいと思います。ですので、そもそも「夜の街」で感染した、ということを前提にした議論自体が、難しい場合が多いのではないかと思います。

また、このような想定外の事態が生じた場合の責任についても、やはり契約書が重要となります。つまり、地震などの天変地異、今回のコロナ禍といったことに関しては、一般論として不可抗力と判断されるケースが多いと考えられますが、個別具体的な状況では不可抗力とは判断されないケースもあり得るため、契約書上で地震の発生や感染症の拡大等を免責事由と規定しておくと、リスクを回避しやすいのではないかと思います。

自分が運営するイベントや店舗でクラスターが発生した場合、何かしらの賠償責任は発生する?

では、たとえば店舗を営んでいるフリーランスや、イベント運営などをしているフリーランスが、自分の店舗やイベントで感染者が出てしまった場合、何らかの賠償責任は生じるのでしょうか?

イベントの主催者側は「安全配慮義務」を負っていると考えられるため、安全配慮義務に違反していないかが問われます。もし「安全配慮義務違反」が認められた場合、損害賠償責任を負うケースはあるでしょう。

「安全配慮義務違反」とは?

判例上、特別な社会的接触関係に入った当事者間では、信義則上、相手方の生命・身体の安全を保護する義務を負っている、と理解されています。つまり、イベントの主催者は、参加者の健康等に配慮すべき義務があって、例えば緊急事態宣言が発令されて、営業禁止の業種に指定されたにも関わらず、何の感染対策もせずに営業していたことで感染させてしまった、というケースでは、「安全配慮義務違反」となる可能性は高いと思います。

これは極端な例ですが、現在であれば国や地方行政から新型コロナウイルス感染対策に関するガイドラインが提示されています。そして国自体が「ガイドラインに則ればイベントを行ってもOK」と言っている状況にありますので、このガイドラインをしっかりと守って、ルールに則って行う限りは「安全配慮義務違反」に問われる可能性は低いと考えられます。まずは、イベントの内容に応じて、提示されているガイドラインをしっかりと読み込み、遵守するということがとても大切だと思いますね。

ただ、実際にそのイベントで感染したのかどうか、その因果関係を証明するのはやはりとても難しいと思います。また、参加者側も、密になる可能性があり、感染リスクが高いことを認識しながら危険な場所に足を運んでいる、という点について、参加者の「過失相殺」が認められる場合もあり得るでしょう。そういったことを踏まえると、理屈上は損害賠償責任を負う可能性はありますが、因果関係の証明が難しいことと、過失相殺によって、負うべき責任は小さくなるのではないでしょうか。

何度も言いますが、新型コロナウイルス対策のガイドラインが提示されていますから、イベントや店舗の運営を行っている方は、ガイドラインを熟読して営業を行うことをお勧めします。ガイドラインは専門家が作ったひとつの指針ですから、それに則っている以上、安全配慮義務違反と判断されるケースはあまり多くないのではないかと思います。

本日は、お忙しい中、ありがとうございました。

profile
CST法律事務所 代表弁護士 細越善斉: 大企業からベンチャー企業・フリーランスまで、幅広い業種の顧問弁護士の実績を有する。事務所HPhttps://cst-law.jp/
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