新製品・新サービスのインキュベーションとしての役割を担うクラウドファンディング(crowd funding)。スモールビジネスの創業・起業など、スタートアップにおける資金調達方法のひとつとして浸透しつつあり、個人事業主やフリーランスにも推奨できるサービスです。
東京都では、個人事業主を含む中小事業者を対象に、クラウドファンディング活用促進のための支援事業を行っており、令和4年度の助成金の申請申込受付が6月24日からスタートしています。この記事では、クラウドファンディングの概要や、東京都による取り組みについて解説していきます。
Contents
クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、「crowd(群衆)」と「funding(資金調達)」からなる造語で、クラウドファンディング事業者によるプラットフォームを通じてインターネット上で新製品や新サービスなどのプロジェクトを公開し、不特定多数の人々から広く支援金を募ることができるサービスです。
クラウドファンディングの代表的な類型
クラウドファンディングの代表的な類型としては、支援の対価(リターン)が発生する「購入型」、発生しない「寄付型」が挙げられ、さらに、購入型は目標金額を達成した場合のみ支援額を獲得できる「All or Nothing型」と、達成しなくとも支援額を獲得できる「All in型」の2方式に分けることができます。
類型 | |
購入型 | 寄付型 |
支援の対価(リターン)として、支援者にモノやサービスを提供 | 支援金を寄付金として受け取り、支援者へのリターンは発生しない |
購入型の方式 | |
All or Nothing型 | All in型 |
期間内に目標金額を達成することで支援額を獲得可能 | 期間内に目標金額を達成しなくとも支援額を獲得可能 |
クラウドファンディングを活用すべき理由
従来、新製品が世に出るまでには、自己資金・融資・借入を元手に開発し、販売ルートに提案、広告を通じて販売といった流れが定石でした。さらに、大抵は後払いの支払い条件を待って入金されるケースが多く、利益になるまでには大変な労力と時間がかかります。もしフリーランス・個人事業主となって日が短い場合だと、実績がないために融資・借入が難しいケースも十分考えられるでしょう。
一方でクラウドファンディングは、自分が開発しようとする新製品の有用性や革新性、実現可能性などといった魅力を多くの人に伝え、支援してもらうことができさえすれば、上述した従来の流れと比べ、資金調達から利益創出までにかかる労力や時間、負わなくてはいけない金銭的リスクを大幅に軽減することが可能です。個人・中小企業者の小口や無担保での資金ニーズに応えるものとして、クラウドファンディングの活用が推進されています。
また、支援したことで生じる「プロジェクトにかかわった」という当事者意識から、支援者が製品だけでなく開発者やプロジェクト自体のファンとなって中長期的なサポートを担ってくれるといった副次的な効果が生まれる可能性もあるなど、チャレンジするメリットは大きく、フリーランス・個人事業主も活用すべきサービスであると言えるでしょう。
※参照:CAMPFIRE 統計データ
クラウドファンディングを成功させるためのポイント
クラウドファンディングを成功させるには、支援者となってくれるかもしれない人たちに自分のプロジェクトについてまずは知ってもらい、共感・賛同を得ることが必要です。筆者の経験上、以下3つの施策を効果的に行うことが大きなポイントとなると考えられます。
- 事前告知による集客(SNS広告など)
- プロジェクトページでのコンテンツの品質(写真・構成・文章)
- プロジェクト開催中の集客(SNS広告・プラットフォーム内での広告など)
もちろん、こうした施策を実施するには費用がかかります。プラットフォームを提供するクラウドファンディング事業者に支払う手数料を含め、クラウドファンディングの活用促進におけるハードルを下げるものとして、助成金制度を取り入れている自治体もあります。ここからは、東京都の取り組みを例に挙げて解説していきましょう。
東京都による「クラウドファンディング支援事業」とは?
東京都は、クラウドファンディング支援にまつわる事業を実施しています。
- クラウドファンディングを活用した資金調達支援
- クラウドファンディングを活用したDX支援
- クラウドファンディングを活用した事業の再構築支援
従来の「クラウドファンディングを活用した資金調達支援」ほか、新たに「クラウドファンディングを活用したDX支援」「クラウドファンディングを活用した事業の再構築支援」の2事業が加わりました。
対象は、個人事業主、株式会社、NPO法人、一般社団法人など。クラウドファンディングの利用に伴う手数料などを一部助成し、さまざまな属性(主婦・学生・高齢者など)による創業や、営利のみを目的としないソーシャルビジネスへの挑戦などへの促進が目的です。令和4年度の助成金の申請は、6月24日から受け付けています。
本事業で実施される支援メニュー
3事業における具体的な支援メニューとしては、クラウドファンディング事業者に支払う手数料の一部助成(助成金)をはじめ、クラウドファンディング活用についての無料セミナー開催や事業者による個別相談の実施ほか、事業概要やクラウドファンディング情報の提供などです。本事業で取り扱いのあるクラウドファンディング事業者は以下の通りとなっています。
サービス名 | 取扱類型 | 取扱方式 | 特徴 |
A-port | 購入型 寄付型 |
All or Nothing型 All in型 |
朝日新聞社系 |
BOOSTER | 購入型 | All or Nothing型 All in型 |
PARCO活用 |
CAMPFIRE | 購入型 | All or Nothing型 All in型 |
国内最大級 |
GoodMorning | 購入型 寄付型 |
All or Nothing型 All in型 |
ソーシャルグッド特化型 |
GREEN FUNDING | 購入型 | All or Nothing型 | TSUTAYA系 |
J FUNDING | 購入型 | All or Nothing型 All in型 |
インバウンド課題解決 |
Kibidango | 購入型 | All or Nothing型 | サポート充実 |
machi-ya | 購入型 | All or Nothing型 All in型 |
メディア系 |
Makuake | 購入型 | All or Nothing型 All in型 |
応援購入 |
MOTIONGALLERY | 購入型 | All or Nothing型 All in型 |
クリエイティブ系 |
READYFOR | 購入型 寄付型 |
All or Nothing型 All in型 |
日本初 |
1. クラウドファンディングを活用した資金調達支援
「クラウドファンディングを活用した資金調達支援」の支援対象者は、都内で事業を行い、次のいずれかに該当する創業希望者または中小企業者です。
- 創業の計画がある者
- 創業から5年未満の者
- 新製品・新サービスの創出に挑戦する者
- 「『未来の東京』戦略」の戦略に寄与するソーシャルビジネスを行う者
助成内容は、「クラウドファンディング事業者に支払う手数料の2分の1(上限額40万円)」となっています。特例として、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い発生・顕在化した社会的課題の解決に資し、「『未来の東京』戦略」(※)の戦略に寄与するソーシャルビジネスを行う個人または法人は、「クラウドファンディング事業者に支払う手数料の3分の2(上限額50万円) 」が助成されます。また、助成対象となる利用手数料は、「2022年4月1日~2023年(令和5年)3月15日までの間に取扱クラウドファンディング事業者に対し支払っている」ことが必要です。助成対象の例・ 助成対象とならない例は以下の通りです。
※2021年(令和3年)3月に策定され、「成長」と「成熟」が両立した、持続可能な都市の実現を目指す、東京都の総合計画 。
助成対象の例
- 利用手数料、決済手数料、早期振込手数料
(取扱クラウドファンディング事業者から調達資金を受け取るために必要な手数料) - プロジェクトページを作成するための費用
(プロジェクトページの文章・画像作成費用など) - プロジェクトの広報活動にかかる費用
(SNSなどによるWeb広告費用、実店舗での展示費用など)
助成対象とならない例
- 取扱クラウドファンディング事業者以外の事業者などに支払った経費
- 対象サイト以外のサイトに掲載したプロジェクトにかかる経費
- 手数料に含まれる消費税
- 過去に本助成金の支給を受けているプロジェクトと同一のプロジェクトにかかる経費
- 助成金を申請したプロジェクト以外のプロジェクトにかかる経費
本支援の活用にあたってのポイントは、プロジェクトのコンテンツ制作費用や広告費用を、いかに取扱クラウドファンディング事業者に支払う利用手数料に含めることができるか、です。取扱クラウドファンディング事業者以外に支払う費用は助成対象にはなりません。
念のため、取扱クラウドファンディング事業者への費用の支払いが、調達額との相殺の場合でも助成対象に認められるかを確認し、取扱クラウドファンディング事業者と支払い条件を合わせるようにすることをおすすめします。
2. クラウドファンディングを活用したDX支援
令和4年度から新設された「クラウドファンディングを活用したDX支援」は、都内で事業を行う「デジタル技術を活用した新製品・新サービスの創出に挑戦する者」が対象です。クラウドファンディングのサービス利用に伴う「クラウドファンディング事業者に支払う手数料の3分の2(上限額50万円)」を助成します。
本事業でのポイントも「クラウドファンディングを活用した資金調達支援」 と同様に、プロジェクトのコンテンツ制作費用や広告費用を、いかに取扱クラウドファンディング事業者に支払う利用手数料に含めることができるか、となると考えられます。申請するプロジェクトにおいて、どのようなデジタル技術が活用されているのか、その特長を支援者となるであろう人たちに理解してもらい、興味をもってもらう必要があるからです。そのためにも、取扱クラウドファンディング事業者が開催する無料セミナーの受講や、本事業で開設されている相談窓口などを有効に活用しましょう。
3. クラウドファンディングを活用した事業の再構築支援
DX支援と同様に令和4年から新設された「クラウドファンディングを活用した事業の再構築支援」の対象は、都内で事業を行い、以下に該当する中小企業者です。
- 事業の見直し・再構築にチャレンジし、事業の継続・発展を図る者
- 令和2年2月以降の任意の3カ月の各月の売上高が、令和2年1月以前の直近同月の売上高と比較し、それぞれ5%以上減少していること
少なくとも2019年11月30日以前に起業している個人事業主・法人の方が対象で、新たな取り組みが、新たな需要を取り込むものであることが申請要件です。「クラウドファンディング事業者に支払う手数料の3分の2(上限額50万円)」を助成します。
ポイントは、プロジェクトの内容が事業の再構築に沿った企画であることです。例えば、「店舗販売中心のビジネスモデルから、インターネットを活用した販売への事業転換」、宿泊業であれば「テレワーク需要を見込んだ事業モデルへの転換」などが挙げられるでしょう。
助成金申請の流れ
助成金の交付申請は、クラウドファンディングでの資金調達を終えて、手数料の支払いが済み次第に行います。以下の流れを参考にしてください。
助成金の交付申請期限は、2023年(令和5年)3月15日(水)24:00までです。交付決定額が上限に達した時点で交付申請の受付終了。助成金の入金目安は支給申請から2週間後となっています。
ポイントは、STEP.2の手数料の支払いと、STEP.6の助成金支給にタイムラグがあることです。あらかじめ余裕を持った資金繰りを行っておきましょう。例えば、プロジェクトリターン制作分の支払い条件などを踏まえ、リターン配送日程を調整するといったことが検討できるでしょう。
まとめ
クラウドファンディングに成功すれば、資金調達だけでなくプロジェクトの実現にかかる労力や時間の削減など、さまざまなメリットが生まれます。ただ単に「クラウドファンディングを実施する」というだけではなく、いかに写真やイラスト、動画やテキストなどで、プロジェクトの魅力や品質を伝えるか、どのような広告を打つかが重要です。もし助成金を活用する場合には、その対象となるよう費用内容や、相殺の可否などといった支払い条件を確認しておきましょう。
代表取締役 早川 昇
千葉県木更津市で、クラウドファンディングを活用し累積4,000万円以上を調達。柔らか珪藻土等化学技術を活用した快適製品を創出している。
令和2年度 木更津商工会議所 優良会員企業表彰 受賞
千葉県ひまわりベンチャー育成助成金認定
千葉県経営革新計画承認企業認定
千葉県ものづくり認定製品認定
ワールドビジネスサテライトのトレンドたまご出演
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