フリーランスや個人事業主として事業をしていると、6月中旬頃に税務署から「令和○○年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の通知書」が送付されてくることがあります。これは、所得税の一部を先に納付する「予定納税」が必要であるという意味です。予定納税は期限内に納付しなければならないため、資金繰りに影響を及ぼす可能性もあります。どのような制度なのかあらかじめ把握して、自身の納付に備えておきましょう。

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予定納税とは?
予定納税とは、今年の所得税の納税額(納付は翌年の2月16日~3月15日)が一定額以上になると見込まれる人が、税金の一部を先払いするという制度です。前年分の確定申告で所得に対する納税額(予定納税基準額)が15万円以上になった人が対象となります。
※参照:国税庁 No.2040 予定納税
予定納税の期限は年2回
対象者には、所轄の税務署長から、予定納税すべき金額が6月15日までに書面で通知されます。予定納税基準額の3分の1の金額を年2回、以下の期限内に納付しなければなりません。
- 第1期分:7月1日~7月31日まで
- 第2期分:11月1日~11月30日まで
予定納税により税金を納めすぎている場合は、その後の確定申告において、払いすぎた税金が還付されます。ちなみに、会社員など給与所得者であっても、副業などで所得がある場合は、原則として確定申告をする必要があります。
後述しますが、予定納税を期限(7月、11月)までに納付しなければ、延滞税が課されるので注意が必要です。なお、 期限が土曜日・日曜日・祝日に当たる場合は、その翌日が期限とみなされます。
予定納税基準額とは?
予定納税が必要となる人は、前年度の所得を基準に計算した「予定納税基準額」が15万円以上である場合です。多くのケースで「予定納税基準額 = 前年分の申告納税額(所得税及び復興特別所得税)」となります。
前年の所得に退職所得や譲渡所得、一時所得が含まれている場合はこれらの所得は含まずに予定納税基準額が計算されます。フリーランスや個人事業主など、自分が行っている事業だけで、確定申告納税額が15万円以上となった人は、翌年には予定納税の可能性が高いことになります。
なぜ予定納税が採用されているのか?
所得税及び復興特別所得税は、1年間の所得と税額を計算したうえで確定申告をし、その税額を納める必要があります。このとき、納税額が多額になると一時に納付するには負担が重くなる可能性があります。また、国にとっては、税収を早期に確保することも重要です。それゆえ、「一時に納付する負担感の緩和」や「国の歳入を平準化する」といった目的で予定納税制度が採用されています。
予定納税は確定申告で控除できる
予定納税は、その年の納付すべき所得税の一部を「先払い」しているにすぎません。従って、確定申告によりその年の所得税額が確定すれば、そこから既に先払いした予定納税額が差し引かれ、その差額を確定申告時に支払うべき所得税として納付すればよいことになります。
例えば、予定納税として第1期分6万円、第2期分6万円を納付し、確定申告でその年の所得税額が16万円と確定した場合、確定申告時に納付すべき金額は4万円(=16万円-6万円-6万円)となります。また、予定納税した金額が確定申告で確定した所得税額よりも多い場合は、「還付金」として差額が還付されることになります。
※参照:国税庁【税金の還付】Q45 還付金はどのくらいで還付されるのですか。
予定納税の納付方法は5つ
予定納税を納付する方法は以下の5つです。
1. 振替納税
指定した金融機関の口座より、納税金額を口座引き落としにより自動で納付する方法です。税務署に事前の届出が必要になります。
※参照:国税庁 [手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付
2. e-Taxを利用した電子納税
国税電子申告・納税システム「e-tax」を利用して、オンラインで納税する方法です。税務署に対して一定の手続きが必要になります。
※参照:国税庁 [手続名] インターネットバンキング等からの納付手続
3. クレジットカード納付
クレジットカード納付とは、インターネット上でのクレジットカード支払の機能を利用して、国税庁長官が指定したカード会社へ、国税の納付の立替払いを委託することにより税金を納付する方法です。
「国税クレジットお支払サイト」は国税庁長官が指定した納付受託者が運営する国税のクレジットカード納付専用外部サイトです。
4. コンビニ納付
コンビニ納付(QRコード)とは、自宅のパソコンなどで作成したQRコードを使用し、国税庁長官が指定したコンビニエンスストアへ納付を委託することにより税金を納付する方法です。
5. 窓口納付
専用の納付書を使用して、金融機関又は税務署に持参し、現金で納税する方法です。納付書は税務署の窓口で入手します。
納付期限を過ぎると延滞税がかかる
予定納税の納付期限を過ぎると「延滞税」が課されるので注意が必要です。予定納税の延滞税の計算方法は次の計算式で示すとおり、延滞日数により日割り計算となります。
- 延滞税 = 予定納税額 × 割合(年率) × 延滞日数 ÷ 365
「年率」については延滞した期間によって異なり、以下の表によって定められています。
区分 | 納付期限 | 割合(年率) |
第1期分 (7/31まで) |
8/1~9/30 | 2.6% |
10/1~12/31 | 8.9% | |
1/1~ | 14.6% | |
第2期分 (11/30まで) |
12/1~12/31 | 2.6% |
1/1~1/31 | 7.3% | |
2/1~ | 14.6% |
例えば、第1期予定納税の納付額が60万円で、8月1日から8月10日まで10日間延滞した場合、延滞税率は、上表より2.6%になるので、以下のようになります。
= 600,000 × 0.026 × 10 ÷ 365
≒ 427円
なお、延滞税は自分で計算することはありません。期限を過ぎて納付した場合、後日、税務署で延滞税を計算し、延滞税分の納付書が送られてくるので、その納付書を使用して金融機関等において延滞税を納付します。
確定申告書への記入方法
予定納税をした場合は、確定申告書に予定納税額の記入を忘れないようにしましょう。確定申告書B(第一表)の右側の「税金の計算」欄の「㊿予定納税額(第1期分・第2期分)」が、予定納税額の記入欄です。この欄に納めた予定納税額の第1期分と第2期分の合計額を記入します。そして、「㊾申告納税額」から「㊿予定納税額(第1期分・第2期分)」を控除した金額に応じて、「(51)納める税金」「(52)還付される税金」のいずれかに記入します。
※参照:国税庁「確定申告書B(第一表)」
減額申請も可能
税務署から予定納税の通知を受けた人は、原則として所得税の予定納税を行わなければなりません。ただし、予定納税として支払う金額は、申請することにより軽減することができます。
業績悪化や廃業などで、6月30日現在においてその年の所得税見込み額が予定納税基準額に下回ると予想される場合、7月15日までに「予定納税額の減額申請書」を提出し、税務署で承認されれば、第1期分につき減額されることになります。
同様に、10月31日現在においてその年の所得税見込み額が予定納税基準額に下回ると予想される場合、11月15日までに減額申請書を提出し、承認されれば第2期分につき減額されます。
※参照:国税庁 令和3年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書
まとめ
予定納税は税務署が該当する人のみに通知書を郵送してくるので、自分で計算したり申告をしたりする必要はありません。通知書に記載されたとおりにしたがって納付してください。納付期限を過ぎると延滞税が発生するので注意が必要です。
また、予定納税の減額申請をする場合には、期限までに税務署への届出が必要です。前年よりも売上が大きく減少することが予想される場合は、早めに書類の準備を進めておきましょう。
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