夫の扶養内で働くフリーライター妻。フリーランスが働き損にならない年収のボーダーとは?【お金の相談室】

「夫の扶養の範囲内で働く」のはパートタイムで働く女性に限った話ではなく、フリーランスでも可能です。しかし収入が増えてくると、「このまま扶養でいるべきか、扶養から抜けてもっと仕事をするべきか」という悩みが浮上するかもしれません。

今回はファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さんに、フリーランスとして働く妻が会社員の夫の扶養内で働くときにおさえておきたいポイントをお聞きしました。

今回の相談者
フリーライターYさん(40代):40代会社員の夫と二人暮らし。結婚前からフリーランスとして働いていたが、稼いでも出ていくお金(国民健康保険や国民年金など)が多く、働き損が気になってしまっい、結婚後は扶養内で働くことを選択。しかし最近は仕事が増え始め、このまま扶養でいるべきかと悩み始める。

「103万円の壁」とは?まずは扶養の基本ルールを知っておこう

よく103万円の壁と聞きますが、それはフリーランスでも同じことですか?パートやアルバイトと、フリーランスでは扶養のルールが違うのでしょうか?

まずは扶養の基本的なルールについて説明しますね。

扶養の範囲内で働く、といっても「税法上の扶養」「社会保険制度における扶養」などがあります。扶養内で働くというと、これら全て混同して語られることがありますが、それぞれのケースについて適用条件等が異なるんです。

株式会社ライフヴェーラ代表取締役・ファイナンシャルプランナー 鈴木さや子さん

扶養といってもいろいろなパターンがあるんですね!税法上の扶養とは?

税法上の扶養には、配偶者控除・配偶者特別控除の2つがあります。

配偶者控除・・・納税者本人の合計所得金額が1000万円以下でかつ、配偶者の年間所得が38万円以下の場合に適用。

配偶者特別控除・・・納税者本人の合計所得金額が1000万円以下でかつ配偶者の年間所得が38万円超123万円以下の場合に適用。

どちらも、適用されることによって、夫の税額(所得税・住民税)が変動します。

ただし2020年以降、制度改正のため適用条件が変更しますので注意しましょう。2020年以降、配偶者控除は妻の合計所得金額が48万円以下まで対象となります。 配偶者特別控除は、妻の年間合計所得が38万円超123万円以下での適用でしたが、2020年以降は48万円超133万円以下までになります。

ここでポイントになるのは、配偶者控除・配偶者特別控除は「収入」ではなく妻の「所得」の額によって適用されるか否かが変わってくるということです。

フリーランスの場合は「事業所得」が扶養適用のボーダーラインに

パートやアルバイトの場合は、年収から給与所得控除の65万円を差し引いた金額が「所得」となり、それが38万円以下になるかどうかがボーダーラインになります。

つまり、年間給与収入103万円(103-65=38万円)までなら、配偶者控除が適用される対象となるのです。これが巷で言われる「103万円の壁」ですね。

フリーランスの場合はパートやアルバイトとは違い、「年収から控除額と経費を引いた金額=事業所得の金額」が重要になります。

例えばフリーランスとして1年間で150万円稼いだとします。この場合「年収」は150万円ですね。所得というのは、ここから「控除額」と「経費」を差し引いた金額です。

仮に青色申告の特別控除を65万円受けて、経費が50万円だった場合、150万円-65万円-50万円=35万円が所得になります。この場合、年収が103万円を超えていますが扶養に入ることはできます。

パートやアルバイト・・・年間給与収入−給与所得控除の65万円=所得
フリーランス・・・年間収入−青色申告特別控除65万円−経費=事業所得

(税制改正によって2020年以降は、個人事業主の青色申告の特別控除額は、65万円、55万円、10万円の3種類になります。65万円の控除を受けるためには規定の条件を満たす必要があります。)

青色申告の特別控除もぜひ活用しよう

つまり、事業にかかった経費もしっかり計算に入れなければいけないということですね!

はい。経費や控除の額によっては、年収が103万円を超えたからといって、必ず扶養から外れるとは限りません。

年収130万円未満は「社会保険上の扶養」が適用に

では、社会保険上の扶養とは?

「社会保険上の扶養」とは、自分で社会保険料を納めるかどうかです。社会保険とは厚生年金、健康保険や介護保険のことを指します。社会保険の扶養は、妻の年収130万円未満が基準となっています。

これがよく聞く「130万円の壁」ですね。

はい。ただし、実際には夫が加入する健康保険の規定によって条件が異なりますので、きちんと確認しておきましょう。例えば、扶養条件が「年収130万円未満」だけの場合もあれば、「年収に加え、月収108,334円(108,334円×12ヶ月=1,300,008円)未満であること」といった条件が設定されている健康保険もあります。

さらにフリーランスの場合は「年収130万円未満」というボーダーが、経費等を差し引いた確定申告後の手取りの年収が130万円未満なのか、経費を引く前の金額が適用されるのかについても必ず夫の加入保険に確認しておきましょう。扶養から外れると、国民年金と国民健康保険の社会保険料を妻が自分で納める必要があり、手取り額が下がりますから。

税法上の扶養、社会保険制度における扶養、ほかに確認することはありますか?

「家族手当上の扶養」といって、夫の勤務先から配偶者手当が支給されるケースがあります。支給条件は、妻の年収が103万円未満というルールの会社が多いです。こちらも会社によるので夫の会社の総務・人事に確認しましょう。例えば、手当が月1万円だった場合、年間で12万円になるので、結構大きい金額ですよね。

みんな同じルールということではなく、加入健保や夫の勤務先による違いもあるんですね。

そうですね。扶養内で働くからといって、年収の上限だけ確認して終わりでは不十分です。たとえば所得が38万円を超えると、妻本人に所得税が課税されます。また、所得を38万円以下に抑えて配偶者控除の対象となったとしても、住民税の場合は33万円を超えると課税されるので注意が必要です。

勤務先の扶養の条件などを確認しておこう

扶養範囲内で妻が損をしないボーダーラインとは?

ではフリーランスの妻が働き損にならないためには、どのくらいの年収を目指せばいいのでしょうか?

先に説明したように「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」は条件が異なります。実際のところ金額が大きいのは「社会保険上の扶養」の方で、手取り金額に大きく影響します。

社会保険の扶養が外れると、

国民年金保険料が年間約19.7万円
国民健康保険料は年間約3〜4万円(所得に応じた金額になりますが、年収が130万円を少し超えたくらい・所得32万円と仮定して計算)
となり、合計で年間で23万円程度手取りが減ることになります。

社会保険上の扶養を外れるラインが「年収」なのか「経費をひいた所得」なのかにより異なりますが、前者とすると妻の年収130万円~160万円は働き損になる可能性が高いレッドゾーンです。

今後も社会保険上の扶養内で働きたいのであれば、扶養を外れるラインを夫の加入健保に確認の上、もし年収であれば、できるだけ月収が急増しないようにロールして130万円を超えないようにしましょう。

もし経費をひいた所得がラインであれば、青色申告の65万円の控除も使い、年収から経費と控除をひいた金額が、130万円未満になるようにしましょう。夫の扶養から外れて働く場合は、ラインとなる年収か所得が最低でも年間160万円以上を目指すと、働き損にはならないでしょう。

ありがとうございます!勉強になりました!

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鈴木さや子
株式会社ライフヴェーラ代表取締役 ファイナンシャルプランナー(CFP®)・1級FP技能士・DCプランナー1級・キャリアコンサルタント(国家資格) All About学費・教育費ガイド-毎日を笑顔で過ごすために、生活に役立つお金の情報やキャリアの考え方を、セミナーや雑誌のコラム、ブログ、Facebookなどを通じて発信。保険や金融商品などを一切販売しないFPとして活動中。
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