国民年金に加入する人が受け取る、老齢基礎年金。月々の保険料に一定額を上乗せして納付すると、年金の受給額を増やすことができる「付加年金」という制度があるのをご存じでしょうか? 少ない負担で、フリーランス・個人事業主の懸念である「老後の生活資金」の土台となる年金を増やせる方法のひとつとして、ぜひ覚えておきましょう。
付加年金とは?
「付加年金」は、老齢基礎年金に上乗せして支給される終身年金で、付加年金を受け取るには、毎月の国民年金保険料に「付加保険料」を上乗せして納める必要があります。付加保険料を納付できる人は次のとおりです。
- 国民年金の第1号被保険者(フリーランス・個人事業主など)
- 国民年金の任意加入被保険者(65歳以上を除く)(※)
※国民年金に任意加入できるのは60歳以上
※65歳以上は「特例任意加入」と呼び保険料納付10年未満で老齢基礎年金を受けられない人だけが納付要件を満たすために加入可
会社員の場合は厚生年金に加入し、老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされます。しかし、フリーランスや個人事業主は厚生年金に加入できないため、老齢厚生年金がありません。そこで、年金額を増やせる付加年金が設けられました。
第1号被保険者であっても、国民年金保険料の免除(一部免除を含む)や納付猶予・学生納付特例を受けている人は対象外です。また、国民年金基金に加入している人は、付加保険料を納付できません。
ただし、「産前産後の免除期間がある(※)」人は付加保険料を納付できます。
※出産予定日(または出産した日)が属する月の前月から4カ月間の国民年金保険料が免除
※参照:日本年金機構「付加年金」
付加保険料は月400円
付加保険料の月額は400円で、毎月の国民年金保険料に上乗せして納付します。国民年金保険料を年払いや前納する場合は、付加保険料も年払い、または前納になります。また、付加保険料の納付は任意で、申出をすればいつでも開始・終了できます。
付加年金額は、付加保険料の納付月数に比例します。計算式は次のとおりです。
- 付加年金額=200円×付加保険料納付月数
例えば、20歳から60歳までの40年間(480月)付加保険料を納めた場合、付加年金額は次のとおりです。
- 200円×480月=9万6,000円(年額)
納付した付加保険料の総額は19万2,000円(=400円×480月)なので、65歳から2年間付加年金を受け取れば元が取れる計算です。65歳時の平均余命は男性が約20年、女性が約25年なので、平均すれば支払った保険料の10倍(女性は10倍以上)の受給が見込めます。
ただし、付加年金は定額のため、老齢基礎年金のような物価スライド(物価に応じて年金額が増額・減額)がないことは考慮する必要があります。
付加保険料を加えた国民年金保険料を40年間納めた人の年金額は総額で次のとおりです。
- (老齢年金の総額)=老齢基礎年金額の満額+付加年金額
=78万900円(※)+9万6,000円
=87万6,900円
※令和3年度の金額(毎年4月に改定)
以上から付加年金のメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット | デメリット |
少額の掛金で年金を増額できる | 国民年金基金に加入している人は付加保険料を納付できない |
65歳から2年で元が取れる | 65歳から2年未満で死亡した場合は元が取れない |
申出手続は役所・年金事務所へ
付加保険料の納付申出先は、次のいずれかです。
- 市区町村役場の担当窓口(保険年金課など)
- 年金事務所の国民年金課
原則、本人や代理人などが訪問して申出をしますが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け郵送受付を行っている自治体もあるので、Webサイトなどで確認してみましょう。
納付申出をするときの提出書類等は次のとおりです。
- 提出書類:国民年金被保険者関係届書(申出書)
- 添付書類:年金手帳または基礎年金番号通知書(※)
※マイナンバーカードで代用可能
納付に関しての注意点は以下の4つです。
- 付加保険料の納付は「申出をした月分」から開始
- 納期限(保険料納付の締切日)は「翌月末日」(※)
- 納期限を経過した場合でも、期限から2年間は納付可能(国民年金保険料と同様)
- 付加保険料の納付を止めるときは「付加保険料納付辞退申出書」を提出
※月末が土曜日、日曜日、休日等にあたる場合及び年末の納期限は、翌月最初の金融機関等の営業日
国民年金基金に加入していたら付加保険料を納めることはできない
国民年金基金の加入者は、付加保険料を納付できないことに注意しましょう。また、国民年金基金は任意で脱退できないため、すでに国民年金基金に加入している人は、今後も付加保険料を納付できません。
両制度を併用できない理由は、国民年金基金の1口目の給付は付加年金相当が含まれており、付加年金の二重加入を防ぐためです。つまり、2年で元の取れる優遇制度には利用限度があるということです。
逆に、付加保険料を納付している人が国民年金基金に加入する場合は、市区町村役場などで付加保険料の納付を止める手続きが必要になります。
国民年金基金・iDeCoとの比較・違い
フリーランス・個人事業主などといった国民年金の第1号被保険者は、満額78万900円の老齢基礎年金しか受給できないので、年金の上乗せを考える人は多いかと思います。年金を増額できる主な制度は、付加年金をはじめとする次の3つです。
- 付加年金
- 国民年金基金
- 個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」
付加年金と国民年金基金は、国民年金第1号被保険者や任意加入者を対象とした年金で、老齢基礎年金に上乗せして支給されます。
iDeCoは、厚生年金の加入者や第3号被保険者も加入できる国の年金制度です。自分で掛金を支払い、自分で運用し、運用実績に応じた年金(または一時金)を受け取ることが特徴のひとつです。また、付加年金との併用も可能となっています。
3つの年金はすべて国の制度で、掛金や受け取る年金などに対して税制上の優遇措置があります。どの制度を利用するかについては下の比較表を判断材料のひとつとしてみてください。
付加年金 | 国民年金基金 | iDeCo | |
年金の種類 | 終身年金 | 終身年金 | 有期年金(※1) |
年金の型 | 確定給付 | 確定給付 | 運用実績に応じて変動 |
支給開始年齢 | 原則65歳(※2) | 原則65歳 | 加入時年齢によって60歳〜65歳(※2) |
掛金の運用者 | 国が年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に寄託 | 国民年金基金連合会 | 加入者本人 |
掛金の月額 | 400円 | 1口(年齢により異なる)〜6万8,000円 | 5,000円〜6万8,000円 (任意) |
掛金の所得控除 | 社会保険料控除 | 社会保険料控除 | 小規模企業共済等 掛金控除 |
受給に対する控除 | 公的年金等控除 | 公的年金等控除 | 公的年金等控除(※3) |
※1:一時金での受給も選択可能。有期期間は5年以上20年以下の年単位で選択
※2:国民年金基金以外は繰り下げ受給も可能
※3:一時金受給を選択した場合、退職所得控除を使える
掛金に対する所得控除の種類は異なりますが、どの年金制度でも掛金全額を所得控除できます。また、受け取る年金に対しては公的年金等控除が使えます。
65歳以上で収入が公的年金(受給総額330万円未満)のみなら、所得控除額は最大158万円(=公的年金控除110万円+基礎控除48万円)です。個人年金など、自分で私的年金に加入するのと比べて、税制上のメリットは大きいといえるでしょう。
一例として、付加年金と国民年金基金に20歳から60歳までの40年間加入したときの受給額は次のとおりです。
付加年金 | 国民年金基金 | |
掛金月額 | 400円 | 6,370円 |
65歳からの年金年額 | 9万6,000円 | 24万円 |
※国民年金基金は「20歳男性B型加入」で試算
※参照:「国民年金基金」
なお、付加年金と国民年金基金の年金額は確定していますが、iDeCoは運用成果次第です。掛金月額1万円として20歳から40年間加入、運用利回りを仮定し、60歳時の一時金額を試算(手数料は考慮せず)すると次のとおりです。
- 毎年1%で運用:590万円
- 毎年3%で運用:926万円
- 毎年5%で運用:1,526万円
iDeCoでは運用次第で損をするリスクもあります。しかし、上記の掛金総額は480万円なので、低い利回りでも長期運用により一定の運用益が得られることがわかります。
※参照:「iDeCo」
まとめ
付加年金は、老齢基礎年金に上乗せして支給される終身年金です。毎月400円の付加保険料を納付すると、65歳から年額「200円×付加保険料納付月数」の付加年金が受給できます。
老齢厚生年金を受給する会社員と比較して、年金の少ないフリーランス・個人事業主などが、安い掛金で年金額を増額でき、65歳から2年の受給で支払った保険料と同額の年金が受け取れる点も魅力です。フリーランス・個人事業主におすすめのお得な年金制度であるため、ぜひ検討してみてください。
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