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【社労士が解説】個人事業主のUber Eats配達員やITエンジニアも労災保険に「特別加入」できる!

労災保険 特別加入

業務中におこりうる「もしも」の災害に備える労災保険フリーランスや個人事業主は「特別加入」として一部職種の加入が認められていますが、今年から新たに「フードデリバリー配達員」と「ITエンジニア」が追加されることになりました。

そこでこの記事では、追加された背景や、労災保険に加入することでのメリット手続方法等について解説します。労災保険は、社会保険の中でも手厚い保障が特徴です。加入要件に該当する際は、ぜひ検討してみてください。

労災保険とは?

労働者災害補償保険(労災保険)は、労働災害にあった従業員を会社に代わって守るための国の制度です。主な特徴は次の3つです。

  • 対象となる災害は「業務災害」「通勤災害」の2種類
  • 労災被害に対する補償は主に「保険給付(現金等による給付)」
  • 保険料は全額、事業主が負担

主な補償内容は次の通りです。

保険給付 給付内容
療養(補償)給付 治療費が無料(労災病院など)になる/支払った治療費の還付金
休業(補償)給付 療養のため休業し賃金が支払われないときに、休業日数などに応じて支給される給付金
障害(補償)給付 所定の障害が残ったとき、程度に応じて支給される年金または一時金
遺族(補償)給付 労災で死亡した場合、遺族に支給される年金または一時金
葬祭料 労災で死亡した場合、葬儀を行う者などに支給される一時金
傷病(補償)年金 療養開始から1年6カ月経過しても治癒(症状固定)しない場合などに支払われる年金
介護(補償)給付 障害年金や傷病年金の受給者のうち、所定の介護を受けている人に支給される給付金

※参照:厚生労働省「労災保険給付等一覧」

手厚い保障が特徴の労災保険ですが、加入できるのは原則、会社などに勤める労働者(パート・アルバイトを含む)」で個人事業主は対象外です。ただし、一定の要件を満たす場合、個人事業主なども任意に加入できる労災保険の特別加入制度」があり、次の人が加入できます。

  • 第一種特別加入者:中小事業主等
  • 第二種特別加入者:一人親方等、特定作業従事者
  • 第三種特別加入者:海外派遣者

特別加入制度は、「労災保険の加入対象にならない人のうち、業務の実態や災害の発生状況等から見て、労働者に準じて労災保険により保護するのがふさわしい人」のために設けられました。2021年4月1日には、次の通り加入対象が拡大しています。

  • 一人親方等として「柔道整復師
  • 特定作業従事者として「芸能従事者」と「アニメーション制作従事者

※参照: 厚生労働省 令和3年4月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります

フードデリバリー配達員とITエンジニアは「特別加入」できる

特別加入の対象は、さらに拡大する予定です。2021年9月1日には「フードデリバリー配達員」と「ITエンジニア」も特別加入できることが決まりました。

特別加入の対象拡大の背景には、政府の働き方改革の推進があります。働き方改革では、会社に務める労働者の長時間労働の是正とともに、フリーランスなど多様な働き方ができる環境の整備を推進しています。

その一環として、2020年7月17日に閣議決定した「成長戦略実行計画」では、「フリーランスとして働く人の保護のため、労災保険の更なる活用を図るための特別加入制度の対象拡大等について検討する」ことが決まりました。

これを受けて、2021年6月18日の厚生労働省「第98回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会」では、関係団体として「一般社団法人日本フードデリバリーサービス協会(JaFDA)」と「一般社団法人 ITフリーランス支援機構」からヒアリングを行いました。

同日の部会で、フードデリバリー配達員・ITエンジニアへの対象拡大と省令案の概要が決定し、2021年9月1日に厚生労働省令が施行される予定です。

※参照:厚生労働省「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令案の概要」

特別加入の対象拡大となるフードデリバリー配達員・ITエンジニアは次の通りです。

フードデリバリー配達員に想定される労働災害

フードデリバリー配達員とは、原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物の運送の事業を個人事業主として行う人です。具体的なサービスモデルは、Uber Eats・出前館・menuなどのデリバリー配達員です。

「自動車及び原動機付自転車を使用して貨物運送事業を行う者」については、一人親方等として特別加入の対象範囲とされていましたが、2021年9月1日からは、「自転車を使用して貨物運送事業を行う者」も、特別加入の対象となります。

※参照:自転車を使用して貨物運送事業を行う皆さまへ 令和3年9月1日から 労災保険に特別加入できるようになります

フードデリバリー配達員に想定される労働災害は、配送途中の交通事故です。自転車は「軽車両」に分類され車道を走行するため、自動車との接触事故が考えられます。また、自転車同士の事故や歩行者との接触自転車を降りてからの転倒などもあるでしょう。

注意したいのは、自宅から仕事先に行く途中の事故です。個人タクシーや個人のトラック運転手などは、仕事と私生活の区分が明確でないことから労災保険の補償はありません。詳細は未定ですが、フードデリバリー配達員も同様の措置が予想されます

また、労災保険では、事故などで相手に与えた損害や配送物の損害は補償しません。特別加入の場合も、自分自身の心身に対する損害のみが対象です。

ITエンジニアに想定される労働災害

特別加入の対象となるITエンジニアとは、情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業を個人で請け負って行う人です。具体的には、ITコンサルタントプロジェクトマネージャーシステムエンジニアプログラマーなどです。

ITフリーランスの対象範囲
  • ITコンサルタント
  • プロジェクトマネージャー
  • プロジェクトリーダー
  • システムエンジニア
  • プログラマ
  • サーバーエンジニア
  • ネットワークエンジニア
  • データベースエンジニア
  • セキュリティエンジニア
  • 運用保守エンジニア
  • テストエンジニア
  • 社内SE
  • 製品開発/研究開発エンジニア
  • データサイエンティスト
  • アプリケーションエンジニア
  • Webデザイナー
  • Webディレクター 等

※参照:ITフリーランスの皆さまへ 令和3年9月1日から 労災保険に特別加入できるようになります

ITエンジニアに想定される労働災害は、一般労働者と同様に通勤途中の事故(自宅以外に職場がある場合)業務上の事故などが考えられますが、特に長時間労働による労働災害が懸念されます。

ITエンジニアは残業が多いという話もありますが、フリーランスのITエンジニアは労働時間を人に管理されておらず、人によっては過度な長時間労働をしている場合もあるかもしれません。

独立行政法人労働安全衛生総合研究所による「長時間労働者の健康ガイド」では、長時間労働は、脳・心臓疾患などの身体的な病気のリスクを高めるほか、精神障害などの一因となる可能性があることを指摘しています。フリーランスのITエンジニアは、労働時間の自己管理を徹底した上で、万一に備えた準備も大切です。

特別加入の要件

特別加入の要件は、前述の第一種から第三種に該当することで、労働者災害補償保険法施行規則で具体的に定められています。

  • 第一種特別加入者:中小事業主等
  • 第二種特別加入者:一人親方等、特定作業従事者
  • 第三種特別加入者:海外派遣者

フードデリバリー配達員は上記の「一人親方等」、ITエンジニアは「特定作業従事者」に追加される予定です。

特別加入するには?

一人親方等や特定作業従事者の特別加入については、一人親方等(または特定作業従事者)の団体(特別加入団体)を「事業主」、一人親方等(または特定作業従事者)を「労働者」とみなして労災保険を適用します。

特別加入の手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行いますが、フードデリバリー配達員やITエンジニアの特別加入団体はまだ設立されていません。日本フードデリバリーサービス協会やITフリーランス支援機構が特別加入団体となるのか、新たに特別加入団体を設立するのかは現状未定です。

また、特別加入するには保険料の納付が必要ですが、特別加入の場合、労災保険の給付基礎日額(休業給付の計算基礎となる金額)を任意で設定し、給付基礎日額に応じた保険料を支払うことになります。

保険料の計算は、次で計算した「保険料算定基礎額に保険料率を乗じて計算します。保険料率は、フードデリバリー配達員は1000分の12ITエンジニアは1000分の3です。

  • 保険料算定基礎額=給付基礎日額✕365日
  • 労災保険の保険料=保険料算定基礎額✕保険料率

フードデリバリー配達員やITエンジニアの年間保険料は、給付基礎日額に応じ次の通りです。

フードデリバリー配達員・ITエンジニアの年間保険料

給付基礎日額 保険料算定基礎額 フードデリバリー配達員の保険料 ITエンジニアの保険料
25,000円 9,125,000円 109,500円 27,375円
24,000円 8,760,000円 105,120円 26,280円
22,000円 8,030,000円 96,360円 24,090円
20,000円 7,300,000円 87,600円 21,900円
18,000円 6,570,000円 78,840円 19,710円
16,000円 5,840,000円 70,080円 17,520円
14,000円 5,110,000円 61,320円 15,330円
12,000円 4,380,000円 52,560円 13,140円
10,000円 3,650,000円 43,800円 10,950円
9,000円 3,285,000円 39,420円 9,855円
8,000円 2,920,000円 35,040円 8,760円
7,000円 2,555,000円 30,660円 7,665円
6,000円 2,190,000円 26,280円 6,570円
5,000円 1,825,000円 21,900円 5,475円
4,000円 1,460,000円 17,520円 4,380円
3,500円 1,277,500円 15,324円 3,831円

まとめ

労災保険は、労働災害にあった従業員を会社に代わって守るための国の制度ですが、労働者に準じて保護するのがふさわしいとみなされる人には、任意加入の「特別加入制度」があります。

労災保険は保障内容が手厚く、給付基礎日額の設定次第で保険料も調整しやすい保険です。対象制度の詳細が確定次第、ぜひ検討してみてください。

執筆者profile
社会保険労務士 西岡秀泰
生命保険会社に25年勤務し、FPとして保険・年金販売を関わってきました。現在は、社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険に関する企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で年金相談員として活動中。社会保険労務士とFPにおける経験と知識、また関連する税金や金融商品について、お役に立つ情報をお届けします。

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