情報漏洩や著作権侵害、フリーランスに起こりがちなトラブルの対処法を弁護士が解説。

フリーランスで仕事をするということは、会社勤めとは違った難しさがあります。何といってもトラブルが起こった際、すべて自分で対処しなければなりません。コンプライアンスが厳しくなった現在、フリーランスに求められる要件も多くなっているのが現状。そこで、弁護士の細越さんに、フリーランスに起こりがちなトラブルと対処法を聞きました。

悪意がなくても起こってしまう情報漏洩

以前は一定数以上の個人情報を扱う事業者だけに個人情報保護法が適用されていましたが、今は取扱件数に関わらず、個人情報を扱う事業者は、個人情報保護法に準拠して管理しなければならなくなりました。つまり、フリーランスの方も個人情報を扱う場合には、個人情報を適切に管理しなければいけません。

また、企業と新規に取引を行う場合、企業との間で機密保持契約を結ぶことが多いと思います。少なくとも、取引契約書の中では、機密保持義務が規定されると思います。それらの契約書では「業務中に知り得た相手方の機密情報を第三者に漏洩してはならない」と定めるのが通常です。つまり、相手方企業の情報を何らかの形で漏洩してしまった場合、機密保持義務に違反したことになり、発生した損害に対して責任を負わなければならなくなってしまいます。

自分に悪意はなくても、情報漏洩が発生してしまうリスクはありますよね。

情報漏洩のリスクは、実は身近な場所にも存在します。お酒を飲んでいてPCやタブレットを紛失したり、カフェやコワーキングスペースなど、自宅以外の場所で仕事をする際に、通信環境が脆弱な場合には、悪意のある第三者にPCを乗っ取られたりすることなどもリスクとして挙げられます。

また、見落としがちなのが、カフェなど開かれた場所で打合せを行う場合です。取引先の情報やその他の機密情報を周囲の人に聞かれるような声で話したりすることにより、意図せず情報漏洩を行っている場合があり、結果として損害賠償責任を負わなければいけなくなってしまうことにもなりかねません。機密情報を伴う打合せを外で行う場合には、遮音性の高い会議室を使用するなどの対応が必要です。

今は、SNSやブログなど、個人が情報発信を行える場所が多く存在します。だからこそ、情報発信を行う際には、常に機密保持義務と情報漏洩のリスクを頭に入れておくことが大切だと思います。

二つのパターンが想定される著作権侵害

CST法律事務所 弁護士 細越善斉さん

フリーランスの著作権侵害を考える場合、二つの視点が必要です。ひとつは自らが著作権を侵害するリスクで、もうひとつは自身の著作権を侵害されてしまうリスクです。それぞれにどのようなリスクと対処法があるかを見ていきましょう。

まず、自らが著作権を侵害するリスク。これは、たとえばライターであればネットの記事をそのままコピペして納品してしまったり、デザイナーであればどこかのサイトの画像を無断で使用してしまったりという場合に発生します。私は、弁護士として企業の側で契約書作成のお手伝いする場合が多いのですが、その際に、「成果物が著作権を侵害している場合、かかる侵害により生じた損害はあなた(フリーランス)が負担する」という契約内容にする場合が多いです。

常にそういったリスクをはらんでいることは意識しておく必要がありますね。

そうですね、自らが著作権を侵害しないための対処法としては、とにかく安易なコピペ等は避け、誠実に丁寧に、自分自身で制作していただくということに尽きるのではないでしょうか。

次は、もうひとつの著作権を侵害されてしまうリスクについてです。著作権は、著作物を創作することにより発生し、登録等の手続きを経ることなく権利を取得することができます。つまり、フリーランスの方が記事やデザインを制作した瞬間に、その制作物の著作権はあなたに帰属することになるのです。そのため、その著作権をあなた以外に帰属させる場合には、著作権の帰属について別途合意をする必要があります。

なお、創作物の著作権については、クライアントとの力関係もあり、発注元であるクライアントに帰属させるという契約内容になっている場合が少なくありませんが、著作権は、フリーランスのクリエイターにとってとても重要な権利です。そのため、契約締結段階において、著作権の帰属及びその条件について、しっかりとルールを決めておきましょう。

CST法律事務所 弁護士 細越善斉さん

納品物の瑕疵トラブルは、互いの認識が重要

起こりがちなトラブルとして「納品物の瑕疵」という問題があります。法律的には「当事者間で合意した内容や品質に達していない」場合、瑕疵にあたるとされています。つまり、何が瑕疵にあたるかは、結局のところ、何を合意したかというところに行き着きます。これが自動車の組み立てや住宅建築ですと、設計図や仕様書などで合意内容を特定できますから瑕疵にあたるか否かを判断しやすいのですが、記事やイラスト、デザインといった場合、瑕疵にあたるか否かの判断は非常に難しくなります。

たとえば、「弁護士に取材して、改正相続法に関する記事を制作して欲しい」という依頼があったとします。フリーライターが弁護士に取材し、改正相続法に関する記事を制作し、納期までに納品した、それなのに、クライアントはその記事に対してクオリティ的に納得できないと言ってきた。この場合、法律的には納品物の瑕疵といえないことがほとんだと思います。それでもクライアントは、「作り直してください」と要求してくるかもしれません。その場合、法的義務がないとしても、クライアントとの今後の取引を見据えて、リクエストに応じるかどうかを決断するということになるでしょう。

これはクリエイティブな仕事をしている人の中には、経験したことがある人は少なくないでしょうね。

「納品物の瑕疵」については、価値判断や個別の事情、事前の状況によってさまざまに変化します。契約書を交わし、その契約内容と相違があれば話し合いを行って、合意した内容で再度書面を交わす、といった対応を心がけましょう。

納期遅延により損害賠償違約金を請求される可能性も

フリーランスで仕事をしている方にとって、納期は最初に必ず設定されると思いますので、これを意識しない方はいないでしょう。納期との兼ね合いで特に気をつけなければいけないのは、依頼を受けた内容が「定期行為」にあたる場合です。定期行為とは、平たく言うと、納期に納品されなければ意味がない、という依頼の場合です。たとえば、Aさんの誕生日に渡すためのバースデーカードをデザインしてください、納期は誕生日の前日にしてください、といった依頼です。この場合に納期が守られなかった場合、納期後に納品されても意味がありません。そのため、定期行為で納期を過ぎてしまった場合は、無催告で契約を解除されてしまいます。さらに、損害賠償や、契約内容次第では違約金を請求される可能性もあります。

あってはならないことですが、やむ得ない事情で納期遅延してしまった場合は考慮されないのでしょうか?

納期遅延についてフリーランスの方に「責めに帰すべき事由」がない場合、たとえば自然災害の影響や交通事故で入院してしまったため納期に間に合わなかった場合などですね。このような場合は、「責めに帰すべき事由」がないという判断になり、納期遅延の責任を負わずにすむ場合が多いと思われます。

このようなトラブルは、もちろん発生しないに越したことはありませんが、意図せず巻き込まれてしまう場合もあります。そのため、万が一のことを考えて、しっかりと契約書を作成しておくことをおすすめします。まずは契約書、さらに細かいやり取りはメールなどで証拠化しておくことで、最悪の事態を免れることができる場合が多くありますので、日々の仕事の請け方と進め方をこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。

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CST法律事務所 弁護士 細越善斉
中小企業からベンチャー企業・フリーランスまで、幅広い業種の顧問弁護士・社外役員を務める。

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