「早起きが苦手だからフリーに」。超人気イラストレーターの“自由”な23年間。

一度見たら忘れないユーモラスなイラストでおなじみの小迎裕美子さん。『美的』(小学館)『GLOW』(宝島社)など、多数の媒体の仕事をこなす人気イラストレーターとして多忙な日々を送っています。

「新幹線で上京しながら営業活動」「一家の大黒柱」「45才でリタイア?」など、ユニークなエピソードをたくさん持つ小迎さんに、フリーランスになったきっかけや独特の仕事のスタンスなどをお聞きしました。

会社員生活から抜け出したくて、名古屋から東京まで営業に

フリーナンス

小迎さんは1996年まではデザイン事務所にお勤めだったそうですが、フリーランスになったきっかけは何だったのでしょう?

私は完全にダメ人間でして、決まった時間にきちんと会社に行くことができなかったんです。早起きして混雑した電車に乗るのが、もう無理で・・・。そんな生活から一日も早く抜け出したかったというのが一番の理由です。

あとは、自分でいろいろなことをコントロールしたいという思いもありましたね。休暇や時間の使い方、それから仕事の内容も。会社員はどうしても上の指示に従わなければならないこともありますが、フリーランスならある程度は自分で決めることができますから。

おかげさまで、今は割とストレスの少ない生活が送れていると思います。

小迎さん

フリーナンス

とはいえ、フリーランス特有の「仕事がなくなるかもしれない」といった不安やストレスはありませんか?

私は、仕事がなくなるかもしれないという不安に陥ったことが一度もないんです。本当に運が良かったと思うのですが、独立当初からいろいろとお仕事を頂戴できたので・・・。

小迎さん

フリーナンス

名古屋の会社に在籍しているときから、大手出版社に自ら作品を持って営業に行かれたんですよね。

そうなんです。とにかく早く会社員生活から抜け出したかったので、新幹線で名古屋から東京まで行って、出版社に作品を持ち込んでフリーランスの仕事を獲得していました。

小迎さん

フリーナンス

すごい行動力と勇気だと思います。

当時は若くて熱意にあふれていましたし、「東京に行けば何とかなる」という夢みたいなものもあったのかもしれません(笑)。

おかげで営業した出版社からいろいろ仕事を頂戴できるようになって、さらにその媒体を見た他のクライアントからの仕事依頼もあって。フリーランスとしてやっていけそうな仕事量が確保できるようになったので、会社を退職しました。その後も仕事が絶えることはなく、とにかく忙しい日々が続きました。

小迎さん

AERA/挿絵

今の時代、生き残るなら専門を持つかマルチになる

フリーナンス

順風満帆なスタートですね。

運が良かったというのもありますけど、何よりも時代の影響が大きかったですね。出版社に作品を持ち込んで仕事をもらうというやり方が通用しやすい時代でしたし、私はその頃から自分のホームページを持ってたいたんですが、それは当時はまだ少なく。

今はインターネットやSNSが普及して、発信できる場所がとても多いじゃないですか。つまり誰でも自分の作品を簡単にアピールできるようになっているので、その分ライバルもすごく多いと思うんです。

小迎さん

フリーナンス

そんな風にライバルが多い中で、フリーランスとして上手くやって行くにはどうしたら良いのでしょう。

GLOW(宝島社)/イラストルポ

ライバルにはない個性を持つことではないでしょうか。何でも良いので「自分はこれだったら誰にも負けない!」という専門を持つことが重要だと思います。

その一方で、最近はオールマイティに何でもこなせる方の活躍も目立ちますよね。例えばイラストレーターでもイラストを描くだけではなく、自分でデザイン・企画・取材・撮影・原稿作成・編集までできてしまう方もいて、そういう方はニーズがたくさんあるんだろうなと思います。

小迎さん

フリーナンス

専門性を待つか、マルチになるか、ということですね。ところで独立してから今日まで約23年間、仕事に対するスタンスが変わったと感じることはありますか?

独立した当初はどんな仕事でもがむしゃらにこなしていたような気がしますが、今はもう少し自分を尊重してくれるクライアントさんを選ぶようになりました。私の好きな仕事をやらせてくれたり、優しい言葉をかけてくれたり(笑)。もちろんお金も重要なので、そこのバランスを取らなければいけないとは思いますが、気持ち良く仕事することも最近は大切にしています 。

小迎さん

フリーナンス

フリーランスをやめようと思ったことは?

ないですね。本当は45歳でリタイアして、その後はボーッと旅行したり、SNSで自分のイラストを発信したりしながら過ごそうと思っていたんです。ところがありがたいことに今もいろいろとお仕事をいただけるので、45歳を過ぎても仕事を続けています。

小迎さん

フリーナンス

45歳でリタイアって、思い切った考え方ですね!

そのぐらい、これまで頑張ってきましたから。最近は年齢的に厳しいと思う仕事も出てきましたし。例えば10代の雑誌で恋愛事情に関するイラストを描いてくれと言われても、今時の10代がどんなことを考えてどんな言葉遣いをしているのかリアルな空気感がわからないですから。そのあたりを含めて、そろそろ次の若い世代に譲らねばと思っています。

小迎さん

mini(宝島社)/人生曲がり角

夫を説得して会社を辞めてもらい、自分が大黒柱に

フリーナンス

独立後間もなく、ご主人が会社を辞めて小迎さんをサポートするようになったそうですね。

すごく忙しくて私一人では手が回らなくなったので、夫を説得して会社を辞めてもらいました。私が家計を支えることになったんです。夫は意外とあっさり承知してくれた気がします。おそらく私が「会社を辞めた方がいいんじゃないの〜?」と、日頃からさりげなく吹き込んでいたからかもしれません(笑)。

小迎さん

フリーナンス

自分が家計を支えることへの不安やプレッシャーはなかったですか?

もちろん、ますます頑張らないと、という気持ちは増しましたね。あとは健康に気をつけなきゃ、と。でも、絶対にやっていけるという自信がありましたから。

小迎さん

フリーナンス

素晴らしいポジティブ思考ですね。ちょっとベタな質問ですが、これまで仕事をしていて一番嬉しかったことは何ですか?

専業女子(ゴマブッ子著)/書籍カバー

普段は作品をメールで納品するんですけど、それを見たクライアントから「すごく良かったです」「小迎さんにお願いして良かったです」と言われると、それだけですごく嬉しい気持ちになります。ささやかな喜びですけど(笑)。

小迎さん

フリーナンス

ささやかですね(笑)

そうなんです(笑)。でも自分の作品に対するリアクションが得られたときは、やっぱりこの仕事をしていてすごく嬉しい瞬間ですね。

小迎さん

「人脈って、そんなに重要じゃないと思っています」

フリーナンス

それでは最後に、フリーランスの皆さんへアドバイスをお願いします。

アドバイスになるかは分からないんですが、個人的には人脈ってそんなに重要じゃないと思っています。不用意に人脈を広げても、それがトラブルにつながりかねませんからね。それよりも自分の信頼できる人間と、しっかり向き合って仕事をしていく方が良いと思います。

あとは当たり前のことですが、健康は大切。そしてしっかり遊んで、いろいろなものを見て、ストレスフリーで楽しく過ごしましょう。なんだかんだいって、フリーランスは最高です!朝は好きなだけ寝られますからね(笑)。

小迎さん

フリーナンス

やはり、朝に好きなだけ寝られることが重要なんですね(笑)。ありがとうございました!

取材・文:フリーナンス編集部

著書紹介
人生はあはれなり… 紫式部日記 (KADOKAWA/メディアファクトリー)

『源氏物語』の作者・紫式部の日記を、マンガ化。将来が不安、人目を気にしてしまうなど、現代女性でも共感できる、シキブが悩む人間関係、仕事、嫉妬などを綴りながら、『源氏物語』という生きがいを見つけていく。

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