自転車の交通違反に対して、2026年4月1日より「青切符」制度(交通反則通告制度)が導入されることになりました。これにより、自動車やバイクと同様、比較的軽い交通違反に対して反則金が課され、取り締まりがより強化されます。
この記事では、自転車に「青切符」制度が導入された背景やその目的に加え、個人事業主やフリーランスへの影響を解説します。
特に、フードデリバリーなどの配達業務で自転車を利用する個人事業主やフリーランス、配達の副業をしているパラレルワーカーにとって、この制度変更は毎日の業務に直結するため、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
青切符とは? 導入の背景と交通反則通告制度の概要
自転車に交通反則告知制度である「青切符」が導入されたのはなぜか、その背景を解説します。
青切符導入の決定と施行日
2024年5月17日、改正道路交通法が国会で可決され、公布日である2024年5月24日から2年以内に施行されることになりました。この改正は、自転車のルール違反についていわゆる「青切符」制度(交通反則通告制度)を導入するものです。
この改正がなされた背景には、自転車の道路交通法違反が重大な交通事故を招いているにもかかわらず、不起訴とされるケースが多いことにあります。
不起訴となれば、違反者への責任追及が十分に行われません。今回の法改正では、満16歳以上の自転車運転者について、青切符制度が適用されることになりました。
交通反則通告制度(青切符)とは?
交通反則通告制度、いわゆる「青切符」制度は、自動車や原動機付自転車(原付)を運転される方であれば、なじみのある制度でしょう。
今回の改正による自転車への青切符制度が適用される前から、青切符制度は、自動車や原付に適用されていました。
ただし、運転免許証を取得しておらず、自動車や原付に乗ったことがない方にとっては、交通反則通告制度はなじみがないかもしれません。
道路交通法では、自動車やバイクが安全に運転できるよう、一定のルール違反に罰則が定められています。罰則=「刑罰」になるため、窃盗や放火などの刑法上の犯罪と同じように、道路交通法違反も刑事手続が付されることがあります。
「刑事手続が付される」とは、検察官によって起訴され、裁判所で刑事裁判が開かれ、判決が下されることを意味します。しかし、一定の軽微なルール違反のすべてにおいて刑事裁判を開くというのは、違反者にとっても、検察や裁判所にとっても現実的ではないでしょう。
一方、違反に対してなにもペナルティがなければ、多くの違反を見逃す結果となり、違反者が続出しかねません。そこで、一定の「軽微な違反」については、警察官が違反者に青切符(交通反則告知書 / 青キップ)を切り、青切符を切られた違反者は青切符とともに警察官から手渡された「納付書」のとおりの金額を期限までに支払う制度が定められています。

違反者が「納付書」に従って反則金を支払えば、刑事事件として扱われることはありません(道路交通法128条2項)。この際支払う交通反則金の額は、違反の類型ごとに道路交通法施行令の別表で定められています。
交通反則金の支払期限は、原則として通告を受けた日の翌日から起算して10日以内です(道路交通法128条1項)。
なお、違反者が未成年者の場合、「罪を犯した少年」として家庭裁判所の審判を受けることになりますが(少年法3条1項1号)、この反則金を納めれば、家庭裁判所の審判に付されなくなります。
一方、警察官が見間違えたなどの理由で、道路交通法違反の事実を争うことを望む場合、反則金を納めず、通常の刑事手続に付される流れになります。
このように、交通反則通告制度は、違反者に防御の機会を保障しつつ、刑事事件化する件数を絞って刑事手続による違反者や国の負担を減らすために制定されています。
加えて、反則金という一定のペナルティが違反者に対して課せられることで、違反を抑止するものとなっているため、合理的で優れた制度といえるでしょう。
自転車「青切符」制度導入の背景-自転車による事故は増加傾向
内閣府が公表した「令和7年版交通安全白書」によると、平成16年に交通事故発生件数が95万2,720件、負傷者数は118万3,617件とそれぞれ史上最悪を記録しています。
対して、令和6年中の交通事故死者数は2,663人、重傷者数は2万7,285人と減少しており、交通事故発生件数や負傷者数は平成16年以降、減少傾向にあるとされています。

一方、自転車による事故は増加傾向にあります。令和7年2月27日に警察庁交通局が公表した「令和6年における交通事故の発生状況について」と題する文書によれば、携帯電話などを使用しながらの自転車関連死亡・重傷事故は、令和4年中に23件、令和5年中に26件、令和6年中に28件発生しており、増加傾向にあることがわかります。
交通事故全体の件数が減少している一方で、自転車事故が増えていることから、自転車も「車両」であると意識付けを徹底し、交通ルールを遵守してもらう必要性が高まっているといえるでしょう。
※参照:令和7年版交通安全白書 全文(PDF版) – 内閣府
※参照:令和6年における交通事故の発生状況について
「ながらスマホ」は青切符の対象? 反則金額の具体例
実際に違反として扱われる行為と、その反則金額について解説します。
主な対象違反行為
令和7年10月時点で公開されている主な違反行為とその反則金の金額は以下のとおりです。
| 違反行為 | 反則金額 |
| 携帯電話使用等(保持) | 1万2,000円 |
| 遮断踏切立入り | 7,000円 |
| 信号無視 | 6,000円 ※点滅の無視は5,000円 |
| 通行区分違反 ※逆走・歩道通行など |
6,000円 |
| 傘差し運転 | 5,000円 |
| イヤホン等の使用 | 5,000円 |
| 一時不停止 | 5,000円 |
| ブレーキ不良自転車運転 | 5,000円 |
| 夜間の無灯火運転 | 5,000円 |
| 並んで走行 | 3,000円 |
| 2人乗り | 3,000円 |
「ながら運転」の取締強化
昨今問題視されている、運転中にスマートフォンや携帯電話を使用する「ながらスマホ」(携帯電話使用等)については、反則金の金額は1万2,000円とされ、もっとも高額な反則金が予定されています。また、傘差し運転、イヤホン・ヘッドホンの使用といった「ながら運転」については5,000円の反則金が予定されています。
これら、「ながらスマホ」「ながら運転」は、片手運転や不安定な操作につながる行為として、厳しい取り締まりがなされると見込まれます。
ただし、スマートフォンや携帯電話を使用中の運転で、実際に交通の危険を生じさせた場合は、青切符ではなく、「赤切符」(交通反則通告制度の対象外)となります。これは、裁判の必要な刑事手続へと移行する違反行為のため、特に注意が必要です。
フリーランスへの影響は? 交通反則金は必要経費にならない
ここからは、自転車「青切符」制度が制定されたことの影響を大きく受ける対象者について解説します。
フリーランス・副業・個人事業主への影響
これまでは、軽微な違反について、実際に交通事故の原因となった場合を除いて、自転車のルール違反は見逃されてきたのが実情かもしれません。しかし、これからは取り締まりが強化される可能性があります。
Uber Eatsをはじめとするフードデリバリー業務や、荷物配達などで日常的に自転車を利用するフリーランス・個人事業主、パラレルワーカーなどにとっては大きな影響があると推測されます。
例えば、配達先の住所を探すために画面を注視しながら運転をするなど、気を緩めると自転車の運転ルールに違反してしまいかねません。交通反則金は、必要経費として計上できませんので、個人事業主が業務上行ったとしても自己負担となります。
今後は、違反して青切符が渡された場合に業務が中断してしまうリスクを冷静にとらえ、慎重な運転が求められます。
重大な違反をした場合等の法的措置
自転車で重大な違反をした場合は、自動車と同様、青切符ではなく「赤切符」が渡される場合もあります。赤切符は正式には「道路交通法違反事件迅速処理のための共用書式」といい、交通反則通告制度という簡易なルートが使えない重大な違反がなされた場合に渡され、刑事手続に付されることになります。
赤切符が渡されるのは、酒酔い運転・酒気帯び運転、飲酒運転などの特に悪質性・危険性が高い違反のほか、スマートフォンや携帯電話の使用をしながら運転し、実際に交通の危険を生じさせた場合などです。
赤切符が渡されるような違反は、運転者自身も危険な上、身体的にも精神的にも大きな負担となる刑事手続が進められるため、絶対に行わないようにしましょう。
違反を繰り返した場合等の法的措置
自転車で交通違反を繰り返した場合、交通反則通告とは別に、「自転車運転者講習」の受講が必要です。具体的には、14歳以上の者が一定の交通違反(信号無視、ながら運転等)で、3年以内に2回以上反復して検挙され、または交通事故を起こしたときに自転車運転者講習の受講を命じられます。
講習では、視聴覚教材による疑似体験や、犯しやすい違反行為の事例紹介、小テストなどが行われ、3時間の受講が必要です。講習を命じられたにもかかわらず3カ月以内に受講しないときは、5万円以下の罰金が科せられます。
自転車運転者講習には受講料を支払う必要がありますが、受講料は経費に算入できません。また、受講命令に従わずに課せられて支払った罰金も、経費に算入できません。
自転車安全利用のための具体的なルールと対策
自転車を安全に運転するためのルールを確認しておきましょう。
車道走行の原則
まず、自転車は「車両」(道路交通法2条1項8号・11号)であり、原則として車道を通行しなければなりません(道路交通法17条1項)。
例外として、歩道を走行できるのは以下の場合のみです。
- 道路標識・道路標示で歩道を通行することができるとされているとき
- 13歳未満の者若しくは70歳以上の者又は一定の身体障害を有する者が運転するとき
- 車道又は交通の状況に照らして、自転車の通行の安全を確保するため、自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
※道路工事・連続した駐車車両等のため車道の左側を通行することが難しいとき、著しく自動車の交通量が多い、車道の幅が狭いなど(道路交通法63条の4第1項、道路交通法施行令26条)
自転車の歩道通行が許される例外に当たる場合でも、自転車は歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければなりません(道路交通法63条の4第2項)。また、歩行者の通行を妨げる場合には、自転車は一時停止をしなければなりません(同項本文)。
信号・一時停止のルール
自転車が車道を走行するときは車両用の信号を、横断歩道を進行するときは歩行者用の信号に従うことになります(道路交通法7条)。ただし、歩行者用信号に歩行者・自転車専用の標示がある場合は、自転車が車道を通行するときであっても、歩行者用信号に従うことになります。
「車両用の信号が赤色になっているのに、歩行者用の信号が青色になっているから」ということで自転車が車道を進行すると、信号無視となり、6,000円の交通反則金が課されることになるため注意が必要です。
赤信号で停止する際には、基本的に停止線の直前で停止しなければならず、一時停止標識などがある交差点でも同様です。停止線がない場合には交差点の直前で停止することになります。
ヘルメットの着用
2023年4月1日より、自転車運転において、ヘルメットの着用が努力義務とされました(道路交通法63条の11第1項)。あくまで努力義務ですので、着用しないことで反則金や刑事罰の対象となるわけではありません。
しかし、警察庁交通局によると、令和6年中の自転車乗用中の死者の約5割が頭部を負傷しており、頭部を負傷した者のうちヘルメットを着用していなかった者の致死率がヘルメットを着用していた者の致死率の約1.4倍になっていると報告されています。
このことから、特に業務で自転車を日常的に使うフリーランスの方は、自らの命を守るためも、できる限りヘルメットの着用が望ましいといえるでしょう。
まとめ
2026年4月1日に施行された「改正道路交通法」は、これまで自動車や原付に適用されていた交通反則金制度が自転車にも適用されるため、取り締まりがいっそう強化されると予測されます。特にスマートフォン・携帯電話を注視しながら運転する「ながらスマホ」「ながら運転」には、もっとも高額な1万2,000円という反則金が予定されています。
こうした交通反則金や自転車運転者講習の受講料、罰金などは経費に算入できません。完全な自己負担となるため、普段自転車を業務に使用しているフリーランス・個人事業主の方は注意が必要です。
交通反則通告制度の施行日、具体的な違反内容と反則金の額や期限、納めない場合どうなるかなど、改正された法律の内容をしっかり確認しておきましょう。また、この機会に自転車の運転ルールを見直しておけば、自身や周りの人の命を守る、安全な運転ができるようになるでしょう。
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