【弁護士が解説】フリーランスって、一度請けた仕事を断ることはできる?

仕事を請けたのはいいけれど、想定外に忙しくなって対応が難しくなったり、当初の予定にはなかった作業を要求されたり…。そんなときに思わず「この仕事、今から断れないかなぁ」と考えたことがあるフリーランスも少なくないのでは?

この「一度請けた仕事を断る」という行為、認められるか否かのボーダーラインはどこにあるのか、弁護士の細越さんに聞きました。

大前提として、業務委託契約の内容次第

フリーランスがクライアントから仕事を請ける場合、通常、業務委託契約を締結し、委託業務を行うことになります。そのため、「一度請けた仕事を断る」ことができるか否かは、まずはその業務委託契約の中で中途解約に関する規定があるかを確認していただき、フリーランス側の中途解約権を認めた規定があれば、同規定に基づいて中途解約をすることができます。

しかし、契約書を取り交わしておらず、中途解約に関する合意自体もないような場合は、法律に則って、中途解約の可否を判断する必要があります。

契約書を交わさずに仕事をするフリーランスも少なくないと思うのですが・・・。

そうですね。良し悪しは別として、確かにそのようなケースも少なくないと思います。そういった場合、業務の性質や具体的な内容に応じて契約の実態を判断することになります。

業務委託契約は、基本的には「委任」か「請負」いずれかの性質を持つものと整理ができます。委任と請負では、民法における規律の内容が異なります。そこで、まずは問題となる契約が「委任」と「請負」いずれの性質を持つものか把握する必要があります。

「委任型」か「請負型」かで、契約の中途解約についてのルールは異なる

「委任型」というのは一定の作業などを行う場合で、たとえば週に1回ビルの清掃を行うといった契約などはこれにあたるといえます。これに対し、「請負型」というのは成果物を作成し、納品する場合で、例えば原稿制作やシステム開発を行うといった契約がこれにあたります。

そして、同じ業務委託契約であっても、「委任型」か「請負型」かで、契約の中途解約についてのルールはまったく違います。「委任型」は、クライアントに迷惑がかからない範囲でいつでも契約を解除できるのに対し、「請負型」は、クラアント側は損害を賠償すればいつでも解約できますが、フリーランス側は原則として解約できないことになっています。

どうしても断りたい場合は、誠意を持った話し合いを

CST法律事務所 弁護士 細越善斉さん
ちなみに、正式な受発注契約が成立するタイミングというのは、契約書を交わした時点ということになりますか?

契約書を交わしていなくても、法律的には、「お願いします」「はい、やります」といった申込みと承諾の意思表示の合致により、口頭で契約が成立します。そのため、それ以降の中途解約の可否については、先程説明したとおりの内容となります。

もっとも、契約の初期段階、たとえば、まだ作業着手前などに、「やはり対応できません」というのであれば、おそらくその段階は他の人に頼める余地が十分にあると考えられ、クライアントとしてもそれ程困る事態にはならないのなら、話合いにより中途解約を認めてもらえる可能性は十分にあるのではないかと思います。そもそも、契約書も取り交わしていないので、正式に契約が成立していないとして取り扱っていただけるかもしれません。

中途解約を望むのであれば、誠意をもって話し合いを

いずれにしても、中途解約を望むのであれば、速やかにクラアントに申出て、中途解約を希望することとその理由を説明するなどして、誠意をもって話合いを行うのが肝要でしょう。

法律的に解決するのではなく、コミュニケーションで解決するということですね。

そうですね。法律の規律に従うと、「請負型」の場合は基本的には中途解約ができないことになってしまいますが、あくまで発注者も中途解約を了承するのであれば、合意により契約を終了させることは可能です。

そこで、一方的な中途解約が認められない場合であっても、十分なコミュニケーションにより発注者の了承を得て、合意による契約終了を目指すということはトライしてみてもよいのではないでしょうか。そのためには、普段から発注者と円滑なコミュニケーションを図れる関係性を築いておくことが重要だと思います。

当初の想定作業量を大幅に超えてしまった場合も解約できない?

たとえば修正が何度も入ったり、後からさまざまな追加オーダーが入ってきて当初の予定を超える作業や成果物の納品を強いられたりした場合も途中で仕事を断れないんですか?

当初の契約で合意した業務内容を超える場合、例えば、契約書で設定した修正回数を超える修正の要求や追加の納品物の要求があるような場合、厳密にはその追加業務については契約が成立していませんので、発注者の要求に従う必要はなく、その意味で断ることは可能です。

しかし、当初の契約でどこまでが合意した業務内容なのか必ずしも明らかではない場合が多く、実際は、発注者の要求を受け入れてしまっているケースが多いように感じます。

そういう事態を防ぐためにも、当初の契約で、できるだけ詳細な業務内容、具体的には作業の内容や範囲、成果物の数量や修正回数の上限等を明記した契約書を取り交わしておくことを是非ともおすすめします。契約書を取り交わすことが難しい場合にはメールを証拠とすることもできますので、メールで具体的な業務内容について確認し、了承を得ておくなどして、業務内容を明確にしてくことを心がけてください。

当初の業務内容が明確であれば、仮に、それを超えるオーダーがあった場合、「追加業務になります」「これ以上はできません」ということを発注者に伝えることができます。そして、実際に追加業務を行うのであれば、当初の契約の際と同様に、業務内容と納期、報酬、支払時期等について、新たに合意書面を取り交わしたうえで、作業を行っていただくのがよいと思います。

まずは、具体的な内容を明示した契約書を交わすこと

以上のように、フリーランスの方がクライアントから仕事を請ける場合、中途解約の可否や不当な追加要求に対抗するためにも、具体的にどのような内容の業務をどのような条件で受託したのかを明らかにしておくことがとても重要になります。そこで、できるだけ契約書を取り交わし、契約内容を明確化しておくことを心がけてください。

実際は、フリーランス側が作成した契約書を発注者側がそのまま認める場合は少ないと思います。契約書を締結するとしても、通常は発注者側から提示された契約書に署名捺印を求められることが多いでしょう。しかし、そのような場合でも、業務内容や納期、報酬、支払い時期、契約期間、中途解約の可否と違約金の有無等をしっかりと確認し、あいまいな点は明確化することを求めましょう。フリーランス側に一方的に不利になるような内容は平等的規定に修正してもらうなど、指摘や修正を要求することが大切です。

フリーランスとして仕事を請ける場合、自分の身を守るためにも、契約書は是非とも取り交わすようにしてください。

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CST法律事務所 弁護士 細越善斉
大企業からベンチャー企業・フリーランスまで、幅広い業種の顧問弁護士・社外役員を務める。