【弁護士が解説】フリーランスが気をつけるべきSNS関連のトラブルと対処法

自分の仕事内容や実績を発信したり、同業者とつながることができたり。フリーランスにとって、SNSはさまざまな形で仕事をサポートしてくれる貴重なツールでもあります。しかし、SNSで思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もゼロではありません。今回はSNSで起こりがちなトラブルと対処法について、弁護士の辻悠祐さんにお話をお聞きしました。

クライアントから開示された情報の扱いには細心の注意を払うべ

フリーランスが陥りがちなSNSトラブルには、どのようなものがありますか?

顧客情報を安易に投稿してしまったことによって、トラブルが起こるケースがあります。たとえば「こんな企業と一緒にこんなお仕事をさせていただきました!」というように、自分の実績として顧客情報を投稿してしまうことです。

もちろんクライアントに掲載許可をとっていれば問題ないのですが、無断で投稿してしまうと、トラブルに発展する恐れがあります。特に以下のようなケースは、トラブルに発展しやすいので注意しましょう。

・クライアントとの打ち合わせ中に得た、開発中の商品や企画中のキャンペーンに関する情報などを投稿してしまう

・クライアントとの写真を許可なく投稿してしまう

・クライアントの実名を挙げて仕事の愚痴や悪口を投稿してしまう

クライアントに関連する投稿をする場合は、きちんと許可をとることが大切です。「SNSにあげてもいいですか?」と事前にひと言聞くことで、トラブルのほとんどは避けられるはずです。

弁護士の辻悠祐さん

無断で投稿した場合、どのようなトラブルに発展するおそれがありますか?

我々のような法律事務所がフリーランスの方から相談を受けるのは、「軽率な投稿のせいで損害賠償請求をされてしまった」というケースがあります。情報の漏洩によって損害を受けたと相手が判断したら、損害賠償請求をされるリスクがあります。

たとえばあるフリーランスが新商品の開発に関する情報を、クライアントに無断でSNSに投稿してしまい、その情報を競合企業が知ってしまった。これはクラアントにとって損害が出る可能性がありますよね。しかもSNSの投稿は半永久的に残りますから、時間の経過とともに損害額が積みあがっていくかもしれません。

SNSは思わぬ方向に情報が拡散されてしまう可能性も

SNSトラブルを起こさないためには、事前予防が非常に重要

トラブルにならないための対処法はどのようなものが考えられますか?

弁護士として法律的な視点で話をすれば、まず契約書を確認することです。どんなことが情報漏洩に該当するかは、そのクライアントとどんな契約を結んでいるかによって決まってきますので。

仕事を請ける際に、業務委託契約書や秘密保持契約書を交わすことも多いと思います。その際には内容をしっかりと理解したうえでサインして、契約内容をきちんと守るという意識を持ちましょう。

フリーランスの場合、契約書を交わさずに仕事を開始する方もいるかもしれませんが、何かがあったときは、法律は、基本的に契約書に基づいて判断されることになります。契約書は自分を守るためのものだと考えて、しっかりと内容を理解するようにしていただきたいですね。

先ほども言いましたが、誰かが拡散したら、その投稿は半永久的に消えませんから、事後対策が難しいのです。SNSトラブルを起こさないためには、事前予防が非常に重要と考えましょう。

トラブルを未然に防ぐよう心がけることが何よりも重要

SNSに投稿する前に、少し考えたほうがいいということですね?

その通りです。SNSの便利特性として「投稿が簡単」「情報の拡散力」「投稿が消えずに残る」といったことが挙げられます。非常に便利で使いやすいのですが、その反面、リスクもあると覚えておいたほうがいいですね。

だからこそ、投稿する前に少しだけ立ち止まって「(投稿は簡単だけど)安易な投稿ではないか?」「(情報は拡散するけど)他の人に知られても問題のない情報か?」「(消えずに残るけど)半永久的に残しても問題のない内容か?」といったことを考えてみるようにしてください。

社長になったつもりでSNS運用マニュアルを作ってみよう

事前予防として、有効な対処法などがあれば教えてください

たとえば大企業の場合、SNSの運用マニュアルなどがあって、それが社員間で共有されていることがあります。これだけSNSが世の中に浸透している社会ですから、少しでもリスクを軽減するための対策です。

フリーランスの方の場合、自分が大企業の社長になったつもりで、SNSの運用マニュアルやルールを作ってみる、ということが有効かもしれません。マニュアルやルールを作るとなると、SNSについて詳しく調べる必要がありますから、その過程で正しい知識を得て、適切な運用ができていくと思います。

例えば

・SNSの定義や特徴、利用する際の注意点などをまとめる(例:誹謗中傷や差別的発言は控える、政治・宗教・社会問題など、人によって考え方が違う内容を投稿した場合は炎上するリスクがあるので慎重に検討する、クライアントに関連する情報を投稿する場合は契約書を確認する、クライアントに確認をとるなど)

・セキュリティ対策(パソコンやスマートフォンを紛失した場合や、SNSが不正ログインされた場合のリスクと対策など)をまとめる

などが考えられます。

リスクを考えると、SNSを使うのが怖くなりますね…?

SNSは本来なら人と人が気軽につながることができて、簡単に情報を共有できるとても便利なものです。しかしSNSをひとつのビジネスツールとして活用しているフリーランスの方は、発信する情報には必ず責任が発生するということを自覚しておきましょう

フリーランスの方がSNSを活用することで得られるメリットは、本当に大きいと思います。だからこそ、有意義に活用し続けるためにも知識をしっかりと身につけましょう。

そして、万が一トラブルが起きてしまったら、弁護士に相談するなど何らかの対応をとってください。最近では、顧客情報の漏洩に関する保険なども出てきていますから、そういった保険や補償の加入を検討してみてもよいでしょう。

profile
よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐:中小企業や自営業者のトラブル、交通事故、債務整理、不動産、相続など幅広い分野を扱う。中小企業の顧問弁護士も多く務める。宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーでもあり、不動産や資産形成も得意とする。