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ヘイトにはラブを。マインドギャルの「ウケる」自己肯定力とは?詩羽(水曜日のカンパネラ)インタビュー

FREENANCE 詩羽 水曜日のカンパネラ

昨年9月から、音楽ユニット水曜日のカンパネラの2代目主演・歌唱を務める詩羽(うたは)さん。初代のコムアイさんとはまた違ったカラフルでポップな個性を発揮し、サントリーやパルコのCMに起用されるなど、ぐんぐん頭角を現しています。5月25日にリリースした初のデジタルEP『ネオン』も好評で、収録曲「エジソン」のミュージックビデオはYouTubeで1,700万回再生。こんなにうまくいった「世代交代」も珍しいのではないでしょうか。

去る7月7日深夜、詩羽さんはツイッターに《SNSについてとか世の中についてとか LOVEについて、はやく対談とかインタビュー系のこないカニャ〜》と投稿しました。その前には《TikTokの民度の低さってどうにかならないの?》ともツイートしており、TikTokで何かあったようです。

いったい何があったのか。詩羽さんはどんなことを話したいのか。彼女の問題提起を受けて、FREENANCE MAGはさっそくインタビューを申し込みました。いまやフリーランス/クリエイターにとって、切っても切れないSNSとの付き合い方から、彼女が常々発している「LOVE myself」というメッセージ、そして「心にいるギャル」について詳しくお聞きしました。

profile
詩羽(うたは)
2021年9月、2代目主演・歌唱担当として水曜日のカンパネラに加入。同年10月には加入後初の新曲「アリス」「バッキンガム」をリリース。2022年5月、2代目となる詩羽体制初のEP作品『ネオン』を発表した。また、6月から8月にかけて詩羽体制初の対バンツアー、初のワンマンライブを開催し全公演SOLDOUTとなる。
https://twitter.com/utaha_89_id_
https://www.tiktok.com/@utaha_0809
https://www.instagram.com/utaha.89/

TikTokでの出来事

こうしたツイートをするに至ったきっかけから教えていただけますか?

5月終わりぐらいからTikTokで「エジソン」がバズり始めたんです。水曜日のカンパネラが2代目になったことが改めて世の中に知れ渡るきっかけになったんですけど、たくさんの人が楽曲を使って踊ったりするようになって、わたしも便乗する形で放置してたアカウントを動かして、6月と7月に1回ずつ投稿したんですね。そしたらコメントがめちゃくちゃ来たんですけど、そのなかに批判ともいえない、ただただ単純に人を傷つけようとしてるだけの意味のない空っぽな言葉が大量にあって。

それまではTikTokが身近じゃなかったので、「そういうものだよね」くらいの認識しかなかったんですけど、いざその場に立ってみて初めて実感したというか。で、あらためて、社会が「そういうものだから」で許しちゃってるんだなってことに気づいたんです。

詩羽さんの世代(2001年生まれ)だとTikTokユーザーは多いですよね。

見た感じ半々ぐらいですね。わたしが高校生ぐらいのときに主流になってきて、そのころから3年やってます、みたいな人たちと、あえて触れずに他のSNSを使ってる人たちと。わたしたちの世代はインスタがメインでしたけど、下になればなるほどTikTokがメインになりつつあるのかなと。

距離をとっていたのはなぜ?

正直なところ、もともとあんまりいい印象がなかったんです。水曜日のカンパネラになるまでは何者でもなくて、あえて分けるなら一般人だったから、自分はあまりTikTokをやる理由がわからなくて……。だし、リア充がやるイメージですかね(笑)? 一軍女子のSNSって感じで、わたしは三軍女子だったので、やんなくていいかなっていう感じでした。

他のSNSと比較してどうですか?

ツイッターは小学校のころからやってたので身近だったんですけど、いつも変なことでもめて争いが起こって、変なバズが起きてる、みたいな印象でしたね(笑)。インスタは一方通行というか、攻撃的なことを言ってくる人はわりと少ないんですよ。でもいまは、ツイッターはまだいいほうですね。「批判はしない」とか「多様性を大事に」みたいな意思表示が増えてきたおかげなのか、TikTokにはその反動が出始めているのか。そんなふうに見ていて思います。

悪気のないヘイト

どうしてTikTokはそんな環境なんでしょうね。

ん~……結局、承認欲求の溜まり場じゃないですか。自分から発信して「かわいい!」とか言われることで承認欲求を満たす人たちもいれば、そういう人にヘイトを向けることで承認欲求を満たす人たちもいるってことなのかなって思います。誰でもいいから「おまえのほうが自分より下だ」って言うことでなんとか自分を保ってたりとか、それを生きがいにしちゃってる人たちも一定数いるのかなって。

ツイッターにも手当たり次第にヘイトを向ける人はいるけど、意見を伝えようとしてる人が多いからまだ話が通じるんですよ。でも意見ですらなく、ただただヘイトをぶつけたいんだろうな、っていう人たちが思っていたよりも多くて。圧倒的多数が10代だし、なんだったら小学生もたくさんいるみたいだし。年齢層が一番の問題なんだろうなと思いました。あと匿名でコメントできちゃうことも。

悪気がないのは悪だとわたしは思ってるんですけど、幼ければ幼いほど、クラスで「あの子○○じゃね?」って言ってるのと変わらない感覚で書き込んじゃって、それがネットで不特定多数の人に見られる環境があるんですよね。ヘイトを向ける人は大人にもたくさんいるし、それも大問題だと思います。

家族や友達とテレビを見ながら「この人、太ったよね」とか「そんなにかわいくなくない?」とか言う感覚で気軽に書き込んでしまうんでしょうけれど、それが誰にも見られ、本人の目にも入ってしまうということには想像が及ばないのかな。

思うのは自由だし、友達に言うのも自由だけど、わざわざ本人に言う必要があるのか。それはいまだにあんまり……というか全然、理解できないですね。どういう人が言ってて、なんでそういうこと言うのか、逆に聞いてみたいなって純粋に思います。

最初に触れたツイートの少しあとに「LOVE myself」を強調した投稿もされていましたよね。詩羽さんなりの提案なのかなと思いました。

悪気なく「気にしないほうがいいよ」とか、人気者になったから、有名だから、芸能人だから「仕方ないよ」とか言ってくる人がたくさんいますけど、気にするか気にしないかって当人の問題でしかないじゃないですか。それでわたしが思ったのは、ヘイトをたくさん向けられた人に必要なのはそれ以上のラブなんじゃないかって。

たくさんのラブを向けられることによって、自分自身にもラブを向けられるようになると思うんです。傷ついたときに「へえ、そんなやついるんだね。わたしはあなたのこと大好きだよ」って言ってくれる人がたくさんいればいるほど「あ、そうなん?」って思えるし、「あ、そうなん?」をたくさんもらえればもらえるほど「そうかも!」って確信に変わっていくっていうか。

もともとわたしは自己肯定感を大事にしてて、ずっと訴えてるんですけど、自分自身のことをずっと好きでいるのって難しいことだと思うし、ヘイトを一度にたくさんの人から向けられたら、自己肯定感がどんなに高い人でも傾いちゃったり崩れちゃうとも思うので。それを助けてあげられるのは結局ラブなんじゃないかなって。

わざとらしくでも、ラブを届けたい

その考え方はこれまでの経験から生まれたものなんでしょうか。

高校生とか中学生のころに対人関係がうまくいかなくて、自分のことがすごく嫌いだった時期があったんです。だからわたしの場合は、ピアスを開けたり刈り上げにしたり、見た目を変えることで自己肯定感を上げていきました。

「わたしは詩羽のこと好きだよ」と言ってくれるお友達やご家族はいた?

いなかったんですけど(笑)、深く傷ついて孤独感を深めると、優しくされてもなかなか「自分なんか」っていう殻を割れないと思うんです。そっちに視線を向けるだけの体力もないから。そのころの自分をあとから振り返ってみてそう思います。

わたしは「どうせ誰も助けてくんねーから、わたしがわたしのことを助けてやろう」って思って自力で自己肯定感を作っていきましたけど、いまは手をさしのべてくれる人がいたほうが絶対いいと思うし、それがネットでしか知らない人でもいいんじゃないかとも思うんです。だからわたしにできるのは、直接助けてあげることは難しいかもしれないけど、「わたしはあんたのことが大好きだよ」っていう気持ちを、自分にラブをくれる人たちやヘルプを求めてくる人たちに向けてあげることだなって思ってます。わざとらしくでもラブを届けたいですね。

それはきっとステージ上での振る舞いなどにも反映していますよね。

ライブだと、初対面の人たちにも「わたしはあんたのことが大好きだよ」っていう気持ちをひとりひとりに向けることは半分無意識でやれてると思います。「えー! わざわざチケットを買ってわざわざ会場まで来てくれてるんだから、絶対詩羽のこと好きじゃん! ウケる」って気持ちなんですよ(笑)。だから自然と「詩羽も好きー!」って感じでライブできてますね。

ライブは幸せな空間になるけれど、詩羽さんのことが好きな人ばかりじゃない場だといろいろ面倒なこともあると。

でもヘイトを向けられることは少ないほうだと思います。ツイッターでエゴサすると出てくることもあるけど、そんなに過激な批判はいまのところ全然ないし、ちょっとでも批判的だなって思ったらすぐミュートしちゃうんで(笑)。インスタでもわざわざ何か言ってくる人ってめったにいないし。

より大きな肯定で否定を乗り越える、という詩羽さんの考え方のヒントになった本なり人物なりってありますか?

んー……ないですね。わたし本が全然読めないタイプで、本から得たものが全然ないんですよ(笑)。人についても、リスペクトしてる人はたくさんいますけど、ひとり挙げてって言われても挙げられないし。アーティスト活動に関しては、誰かのライブを見に行ってやる気が出たり、悔しくなったり、「もっといけるぞ」って思ったりはしますけど、人生観に関しては本当にないです。

(まだ20年しか生きていないけど)わたしはわたしでめちゃめちゃつらい人生を歩んできて、あの子はあの子でめちゃめちゃつらい人生を歩んできたわけじゃないですか。結局、自分のことは自分にしかわからないっていうか、「あなたはあなた、わたしはわたし」って、わりとちゃんと線引きをしちゃってるところがありますね。プライドが高くて、干渉されるのが得意じゃないから、親にもまったく相談しないし。自分のことをいちばん大事にできるのは自分だって思っちゃってるところがあります。学校でいろいろあったときに、誰にも相談しないで全部自分で解決できちゃったのが、もしかしたら問題なのかもしれないですけど(笑)。

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