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【弁護士が解説】「仕事上は夫婦別姓で」という人が、仕事で旧姓を使う場合の注意点は?(フリーランス向け)

FREENANCE 夫婦別姓

2021年6月23日、夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定が「合憲」と決定しました。つまり日本では引き続き、夫婦別姓は不可能ということになります。

夫婦別姓は認められていないものの、「仕事上は旧姓を使い続けたい」という人は少なくないでしょう。今回はフリーランス・個人事業主が仕事上で旧姓を使う際の注意点などを、松浦綜合法律事務所代表・松浦絢子先生に解説していただきました。

仕事で契約を締結するときは旧姓も使用可能

松浦:夫婦別姓は法律で認められていませんが、仕事上で旧姓を使うことには何の問題もありません。ビジネスシーンに限らず、あくまでも「通称・呼び名」として、戸籍とは違う姓を使っている人はたくさんいます。ただし、契約書を締結するときの署名等には少し注意が必要です。

契約書には旧姓は使えないということですか?

松浦:いえ、契約書の署名は基本的に旧姓で構いませんが、そもそも契約書に記載する名前や住所には「本人を特定する」という目的があります。つまり契約書に書いた旧姓が、自分自身であるということを特定できなければいけません。

自分自身であることを特定……というと?

松浦:そんなに難しいことではありませんよ。普段から仕事で旧姓を使っていて、周囲にも旧姓が認知されていれば問題ないでしょう。いざとなったら、戸籍謄本を取り寄せれば証明もできますし。「万が一トラブルが起こって裁判等に発展した場合、署名が旧姓であることが問題になる可能性もある」という程度ですので、そこまで強く意識する必要はないと思います。

ただし、不動産取引や大きな金銭の授受が発生する契約など、絶対にトラブルを避けたい契約の場合は、旧姓ではなく戸籍上の姓を書いていておく、もしくは戸籍上の姓と旧姓を併記しておくのが無難かもしれません。

契約書の捺印は、旧姓でもいいのでしょうか?

松浦:そもそも契約書の捺印の有無で、契約の法的効力が決まることはほとんどありません。捺印には「本人の意思によって契約が締結されたことの証明を容易にする」という意味はあるのですが、そのような争いに発展すること自体が少ないためです。基本的には偽造防止や本人特定のためのものですから、捺印にそこまでこだわる必要はなく、旧姓と戸籍上の姓の同一性が戸籍謄本などで証明できるのであれば、旧姓で問題ありません。

会社を設立して法人登記するときは旧姓の併記が可能

フリーランス・個人事業主の中には法人化を検討している人もいると思いますが、法人登記をする際に代表者の氏名等に旧姓は使えるのでしょうか?

松浦:これについては2015年に法改正があり、旧姓での登記が認められるようになりました。ただし旧姓のみで登記できるわけではなく、戸籍上の姓と併記することが可能という意味です。結婚前に登記した場合、結婚後に姓が変わったら、登記簿の代表者名も「戸籍上の姓もしくは戸籍上の姓と旧姓の併記」に変更しなければなりません。登記簿の変更には手間や費用がかかりますから、そこはいまだネックですね。

ちなみに、個人事業主の開業届に旧姓は使えるのでしょうか?

松浦:開業届については、管轄の税務署に問い合わせてみることをお勧めします。開業届に記載する氏名についても、登記と同様に「戸籍上の姓」もしくは「戸籍上の姓と旧姓の併記」が一般的かと思います。

資格によっても旧姓の使用可否は異なる

松浦:実は、資格によっては旧姓が使えない場合があります。そうなると事実上、仕事で旧姓を使うという選択肢はなくなってきます。

資格によって旧姓が使えないとは、どういうことですか?

松浦:例えば国家資格でいうと弁護士・税理士・医師などは旧姓が使用できますが、 電気工事士・不動産鑑定士などは名簿や免許証での旧姓使用は原則不可とされています。ただし最近は夫婦別姓について世間の関心が高まっていることもあり、こういった制度もどんどん変わってくると思います。これまでは旧姓が使えなかった資格も、使えるようになることがあるのではないでしょうか。

確かに、時代と共に制度は変わっていきそうですね!ありがとうございました。

執筆者profile
松浦絢子 弁護士 松浦絢子
松浦綜合法律事務所代表。
京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。宅地建物取引士。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。
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