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「もっと売れたいし、死ぬ日まで文章を書きたい」翻訳家・エッセイスト村井理子の仕事論

「もっと売れたいし、死ぬ日まで文章を書きたい」翻訳家・エッセイスト村井理子の仕事論

堂々と翻訳家と名乗れない時期も長かった

小沢:エッセイの仕事を始める以前、翻訳の仕事は、年に1冊あればいいほうという時期も長かったそうですね。

村井:翻訳家って、「この本を訳させてください」と言えば訳せる世界ではないんですよね。本当に依頼を待ってるだけ。よっぽどの売れっ子でない限り、複数冊まとめて訳すなんてありえないと思うんですね。

小沢:そういう時期は、どうされていましたか?

村井:ブログを細々と書いたり、産業翻訳というビジネス系の翻訳をやったりしていました。仕事が思うように進まない時は不安や焦りもありましたし、このままだと翻訳は続けられないだろうなと毎日苦しかったです。書くことだけは続けていたけど、ここまで原稿を書くようになるとは夢にも思っていませんでした。今でも「翻訳家」と言うのはちょっと恥ずかしいです(笑)。「翻訳とかもやってます」ぐらいのメンタリティの時期が長かったので。

小沢:それでも堂々と翻訳家と名乗れるようになったのは、やっぱり売り上げや仕事量が増えてからですか?

村井:そうですね。あとは、売れた本が1冊出てからです。自分の名刺代わりになる本が出て、確実に翻訳の世界の切符をもらった感じがしました。

小沢:今は情報発信する人が多く、面白い書き手が発見されにくくなってきたのかなと感じています。もし仕事が増える前の村井さんだったら、今、何をすると思いますか?

村井:無料で読めるブログとかを毎日更新して、淡々と記事を残していくと思います。最近は瞬間的にSNSでバズって、1冊出版されても次がないという傾向があると思うんです。でも、わたしはTwitterも14年目で4万フォロワーになりましたし、じわじわ支持層を獲得していくタイプだと思っているので(笑)。静かにずーっと書いていると思いますね。

小沢:わたし、訳者が村井さんだと認識せずに読んでいた本がありました。いろんなところで書き続けていると、あとから「これもこの人だったのか!」と読者の中でつながっていくこともありそうです。

村井:わたしが同じぐらいの主婦層の人たちに名前が売れたのって、Twitterに投稿した「ぎゅうぎゅう焼き」の料理写真がきっかけじゃないかと思いますしね(笑)。やっぱり、いろんなところに仕事の種まきをするのはいいことかもしれません。

「バズる」よりも、最後まで読まれる文章にこだわる

小沢:文章を書き続けると、だんだんと何が「ウケる」のかもわかってきますよね。そこに引っ張られすぎずに文章を書くには、どうしたらいいんでしょう?

村井:そうだなあ。自分の書きたいことしか書かないっていうのは、大事かなと思いますね。反対に、バズらないだろうと思っても、書きたいことは書くようにしています。最近は依頼が多いので、「文字数を埋めるために、書いちゃうかー!」と書くことが広がってきている面もなきにしもあらずですが(笑)。

小沢:なるほど。とはいえ、仕事として書くなら、読んでほしい人にしっかり届けるための工夫も必要になるかと思います。そこはどうされていますか?

村井:「読むのを途中でやめられない文章にする」ということには、結構こだわっているかもしれません。最後まで読まれれば、絶対に誤解されないだろうなという思いがあるんです。公園のうんていみたいに、次から次へと勢いで読み進めてしまうような文を書く。そういう意味で、読みやすさには徹底的にこだわっています。

小沢:確かに、最後まで読んでもらうってすごく重要ですよね。

村井:今はWeb上だと、2,000字を超えるともう最後まで読まれなくなっていると聞いたことがあって。そんな中で4,000字、5,000字をどうやって読ませるか、いかにありふれた起承転結の文にしないかは、考えています。

デイサービスからも発信して、死ぬ日まで書きたい

小沢:今後の仕事について、計画を立てていると最初に話されていましたよね。少し教えていただけますか?翻訳についてはいかがでしょう。

村井:翻訳って文字数が多くて、ものすごく大変な作業なので、今後は本数を減らさないと体力的に難しいかなと思っています。翻訳以外の書く仕事も増やしたいので、仕事のやり方は少しずつシフトしていこうかなって。もともと事件物やノンフィクション、とくにセンセーショナルな本の翻訳のご依頼が多いので、今後はそういう内容に絞っていこうかなとは思っています。

小沢:エッセイについてはいかがですか?

村井:エッセイで筆が進むのは、過去の不幸な時期を書く時なんですよね(笑)。どちらかといえば、幸せなことを書くより、幸せじゃなかった時期をひたひたとしつこく書くほうが自分には合っている気がする。そのほうが得意だと思うので、ちょっと伸ばしていきたいですね。

小沢:そうなんですね。

村井:それから、書くこと以外にも挑戦してみたいと思っています。編集者さんにも「今までの翻訳家がしていないことを、もっともっとやったら?」「小説やったら?」「ラジオやったら?」とは、すごく言ってもらえますね。

小沢:ラジオ、すごく合いそうです!じゃあ、今のペースで落ち着いて長く書き続けたいか、もっと売れたいかで言うと……。

村井:100%、バカ売れしたいです。常に(笑)。それは収入面での理由もありますが、長く読み継がれるような、普遍的な1冊を書けるところまで辿り着きたいなと思っているからですね。このままだとちょっと困ります(笑)。

小沢:お話を伺っていて、村井さんは本当に書くのが好きなんだなあと感じました。

村井:そうですね。全然、書くことが苦しいとかはないです。できるだけ長い間、本当にくだらない文章でもいいから書いていったら面白いかなあと思って、ブログも持ち続けています。自分が死ぬ日まで書きたいですし、できれば自分がデイサービスに通うようになったら、そこから発信したいと思っています(笑)。

<構成:佐々木優樹 編集:ピース株式会社>

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