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模索の10年を経て独立、転機をチャンスに。 DJみそしるとMCごはんインタビュー

DJみそしるとMCごはん

楽しむためには余裕が必要!

DJみそしるとMCごはん

料理は楽しいものとはいえ、楽しむためには“余裕”が必要ですもんね。

でも、例えばレトルトのカレーに近所のお肉屋さんで買ってきたメンチカツとエビフライを乗っけるとか、そうやって食べたいものを思い描いて組み合わせるだけでも、私は料理だと思うんです。ごはんに梅干しだけでも料理だし、料理のハードルを下げたいというのは、ずっと考えていることなので、今、世で言われている“料理”以前の料理本みたいなものも、もっとたくさんあったらいいですよね。

ええ。米の洗い方から教えてほしい(笑)。

料理って自分で食べるものだから、みんな作れたほうがいいじゃないですか。上手にできなくても、自分で食べるぶんくらいは用意できたほうがいい。だからレシピ本とか、普通は2人前とか3人前とかの設定が多いけど、1人前で作れるレシピも増やしてほしいし、もしくはみんなで一緒に作れるレシピ本があってもいいんじゃないのかなぁって。

レシピ本にせよ何にせよ、確かに1人で多人数のものを作るのが前提になっているのは不思議ですよね。

そうなんですよね。だから以前『ごちそんぐDJ』でも、大鍋に人参とか野菜とかお肉とかをドーン!と煮込んでおいて、家族それぞれが自分の食べたいときに、小鍋に移して自分で味付けを変えて食べたらいいんじゃない?っていう提案をしたんです。例えば、好みによってカレーのルーを入れたり、ミネストローネにしたい人はトマトピューレ入れたり、豚汁にしたい人は味噌入れたり。あとは、コンロの前に2人で立って、大きな卵焼きの上に各自が食べたい具材を乗っけてハーフ&ハーフの卵焼きを作るとか、1人で料理するんじゃなく、家族や友達みんなで料理する時間が増えてもいいなぁと思ってます。

DJみそしるとMCごはん

料理は自分自身の生命線なんですから、誰もが最低限作れて然るべきですよね。とはいえ、なかなか“料理”に対するハードルを乗り越えられない人たちも多いじゃないですか。

でも、必要に迫られればやるようになるんじゃないですかね。私も料理を始めたのは、大学に進学して一人暮らしになってからですし。

え、そうなんですか!?

そうなんです(笑)。もともと楽曲を演奏したりとか、絵を描いたりとか、何かを自分で作ることは好きだったので、そういう性格と料理が上手くハマッたんですよ。一人暮らしでお金もないし、暇だし……という中で、料理っていうのがちょうどいい遊びになったんですよね。料理を作ることは楽しいし、それでお腹も満たされるから。

趣味と実益を兼ねられたと。

そういうキッカケが無かったとしても、外食続きで体調を崩したとき、身体が重いなぁとかって不調を感じたときに、食べ物で変えられるかもしれないってことは覚えておいてほしいです。例えば、朝ごはんをフルーツに替えてみただけで、むくみがスッキリしてお腹の調子も良くなったとか。そういう体験ができたら、じゃあ、今度は昼食に塩むすびでも握っていこうかな……ってなるかもしれないし、本当に食べ物って大事なんですよ。

“出戻りみそしる”になってるかも…?

DJみそしるとMCごはん

独立して今後やりたいことって、結局はそういった食の重要性や料理の楽しみを伝えることなのかもしれませんね。

そうですね。料理を楽しんでやってくれる人が増えたら嬉しいし、子供たちにとって料理の入口になったり、料理への好奇心が刺激されるような活動をしたいとは、ずっと考えているので、やりたいことは今までと変わらず。むしろ独立したことによって、それがより小回りの利く活動になっていくというだけなんですね。例えば、どこかの街のレストランでコラボメニューを出すかもしれないし、 実際に料理が食べられるような音楽イベントを企画したいとも思っています。

YouTubeで手芸の動画を公開されていましたが、ぬいぐるみもお好きなんですか?

はい。一昨年、急にぬいぐるみ作りにハマッたんです。クルックフィールズのイベントに出たときにぬいぐるみのワークショップがあって、そこで「ぬいぐるみって面白い!」ってなって。で、ぬい撮りをインスタにアップしてたら、今度はぬい撮りのお仕事も依頼が来たんですよ! そうやって自分の好きなことを仕事にできているのって、本当に恵まれているなぁって思います。

楽曲、料理、絵、ぬいぐるみと、何かを作るのが好きという性質を上手く仕事に活かされていますよね。

でも、そういった自分のできることを、どうお金にしていくか?というところは、今まで10年間ずっと事務所だったりレーベルの方々がやってくださっていたので、今度はそれを自分でやれるのか? 自分自身で上手くプレゼンできるんだろうか?っていうドキドキはあります。そこは夫もフリーランスで長く働いていますし、周りにもフリーでやっている人、フリーから会社を立てた人も多いので、困ったときはいろいろ聞いたりしてますね。

DJみそしるとMCごはん

心強いですね。フリーランスになろうか迷っている人へのアドバイスなど、いただけると嬉しいのですが。

いや、私も独立したばかりなので、そんなに言えることなんてなくて! 過去に会社員を経験したこともありますけど1年ぐらいだし、アーティストとしてずっとノビノビやってきたから、会社勤めの窮屈さからフリーになりたいと考える人の気持ちもわからないんですよね。私の場合「フリーランスになりたい」とか「独立したい」っていう明確な気持ちがあったわけでもなく、なんだか流れというか。「今が独立するべきタイミングのような気がする!」っていう直感が大きかったので、そういう流れを冷静に見極めてみたらいいんじゃないですかね。独立したほうが楽しくやれそうなイメージが湧くんだったら、飛び込んでみてもいいんじゃないかな。友達の中には流れでフリーになって、やっぱり会社員に戻った人もいますけど、それでもいいと思うんですよ。何か見通しがあれば……って、でも、私もそんな見通し全然できてないからなぁ。半年後とかには痛い目を見て、いろんな事務所に「所属させて下さい!」って頭下げに行ってるかもしれない。“出戻りみそしる”になってるかも(笑)。

そうならないことを祈ってます! では、最後にファンの方々へメッセージを。

子どもを産んでもフェイドアウトしません! 独立して自分一人でやることになって、できる量が限られたり、ちょっと歩みが遅く見えたりするかもしれないですけど、中の人は今までの2倍、3倍働いているので!

DJみそしるとMCごはんって、やればやるほど料理も楽曲も技術が上がって、やればやるほどできることが増えていく仕事だと思うんですよ。以前、台湾で占い師に見てもらったときに「あなたが一番ブレイクするのは52歳です」って言われて、「……え?」ってなったんですけど、自分は若さを売りにしているわけでもないし、料理って経験を積んでいる人のほうが信頼されるじゃないですか。20代のDJみそしるとMCごはんが提案する料理の曲より、52歳のDJみそしるとMCごはんが歌う曲のほうが確実に説得力は上だなと、その占いの結果にも納得したんで、そこを見据えて頑張っていきたいですね。DJみそしるとMCごはんを末永くよろしくお願いします!

DJみそしるとMCごはん

撮影/中野賢太@_kentanakano