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模索の10年を経て独立、転機をチャンスに。 DJみそしるとMCごはんインタビュー

DJみそしるとMCごはん

『おいしいものは人類の奇跡だ!』をモットーに、料理のレシピやうんちくをラップで歌うという斬新すぎるスタイルで活動するDJみそしるとMCごはんさん。女子栄養大学の卒論として制作した映像が関係者の目に留まり、メジャーデビューを果たすという“シンデレラストーリー”を歩んでこられましたが、メジャーデビューから10年となる今年3月1日、所属事務所からの独立を発表されました。

NHK Eテレ『ごちそんぐDJ』に長年出演したり、絵本を描いたりと子ども向けの活動も多く、昨年の年末には第一子も出産。ご本人いわく「人生の重大事が二つ重なった」このタイミングでの独立には、どんな意図があったのか? 通称“おみそはん”の醸し出すホンワカとした空気のなか、じっくりと伺わせていただきました。

profile
DJみそしるとMCごはん
『おいしいものは人類の奇跡だ!』をモットーに、トラック、リリック、アートワーク、ミュージックビデオなどを自ら制作し、料理と音楽の新たな楽しみ方を提案する、くいしんぼうヒップホッパー。
https://www.omisohan.com/
https://twitter.com/D_M_M_G
https://www.instagram.com/misosirugohan/
https://www.youtube.com/channel/UCAGNfJ2VQ4DhArn5_1laJVA

自分の責任で活動する楽しさ

DJみそしるとMCごはん

3月1日をもって所属されていた音楽事務所、ソニー・ミュージックアーティスツから独立されたそうですが、どんな経緯で独立を決められたんでしょう?

私の活動って、例えばライブをしたり、絵本を描いたり。Eテレの『ごちそんぐDJ』という番組にも長年出演させていただきましたけど、基本的にはコンパクトなんですよね。曲作りも歌詞を書くのも絵を描くのも自宅でやれるし、ライブもマネージャーさんは同行するとはいえ、キーボードとかPCを自分で持っていって一人でやれますし。コロナ禍でYouTubeチャンネルを始めたときも、撮影と出演と編集とアップするところまで、全部一人でやってたんです。だったら、独立しても大丈夫なんじゃない?って(笑)。

活動内容を冷静に考えてみたら、事務所に所属しなくてもある程度やれるものだってことに気づいたんですね。

そうですね。だけど、私が所属していた事務所は規模の大きなところだったから、単に自分一人分だけ稼げればいいわけじゃなくて。大きなホールでライブをして、ゆくゆくは日本武道館とか東京ドームとかに立つようなアーティスト像を期待されていたでしょうし、実際そこを目指して活動している方がたくさん所属していて。メジャーデビューしてから10年間、“DJみそしるとMCごはん”をやってきて、やっぱり私はソッチの方向じゃないかもしれないなぁ……って気づいたんです。でも、DJみそしるとMCごはんという活動は続けていきたいと思ったときに、大きな組織にお世話になるよりは、自分でやったほうが活動の幅が広がるんじゃないか?ということで、独立することを決めました。

活動自体は身軽にやれるものなのに、事務所を通すとフットワークが重くなってしまう。じゃあ、やりたいけれど事務所的にNGってことも、きっと今までにはあったんじゃありません?

実際、独立を発表したら、さっそく地方のパン屋さんから「お店の絵を描いてくれませんか?」っていう問い合わせをいただいて、こういうお仕事も事務所にいたら引き受けることができなかったかもなぁ……って実感しました。あと、人に気を遣いがちな性格なのもあって、マネージャーさんに上手く想いを伝えられなくてモヤモヤすることも、多少なりともあったんですよ。だから、一人で責任を持ってやっていくほうが気も楽なんじゃないか、自分には向いているんじゃないかとも思ったんです。

DJみそしるとMCごはん

でも、独立したことで、逆に大変になったこともあるのでは?

たくさんあります! 今までは全部マネージャーさんが窓口になってくださっていたので、例えば今日みたいなインタビューにしても「何時何分にこのビルの下に来てください」と言われて「はい、わかりました」と行くだけだったんですよ。取材の内容も私に簡潔に要点だけを教えてもらっていたのが、今は仕事が決まるまでのやりとりも全部自分でやっているので、どういう経緯で私に声をかけていただいたのか? どんな丁寧なメールを送ってくださっているのか?というところまで、100%わかるのが普通に新鮮なんです。ただ、私はビジネスメールを書いたことがなかったので、それに対するお返事に苦戦していて……! パソコンの前で小説家が悩みながら執筆してるような状態になっているんで、夫にも「メール文学なの?」って笑われてます(笑)。

今までは用意された場で何かをすればよかったけれど、そこに至るまでの作業にも携わらなければいけなくなったと。

そうですね。イベントに出演するにしても、今はどういったイベントにするかっていう事前の打ち合わせから参加しているので、当日を迎えるまでに打ち合わせ、メールのやり取り、スケジュール管理と、こんなにやらなきゃいけないことがあるんだ!って驚きました。でも、例えば今度5月に子ども向けのワークショップをやることになったんですけど、打ち合わせの中で自分からアイディアを出して、ゼロから作ることができるのは楽しいんです。今までだったらマネージャーさんが私にできる作業量とかも考えて“ここまで”っていう限界を決めてくれていたけれど、今は独立したてでそんなに仕事もないし(笑)。自分でバランスを考えながらやってますね。

自分の強み、10年で得た気づき

DJみそしるとMCごはん

そもそも料理のレシピをラップで歌うという、DJみそしるとMCごはんの活動形態自体が唯一無二の発想から生まれているので、確かにアイディアをゼロから提案するのはお得意そうです。

ありがとうございます。そうですね、この“料理のレシピをラップで伝える”というコンセプトがあるおかげで、独立できたなぁとは思っています。料理と音楽を絡めたことをやりたいと誰かが考えたときには、私のことが頭に浮かびやすいでしょうし、他に同じことしてる人がいないので、そこは自分に感謝してますね。

しかも、そのコンセプトを最初から掲げて音楽活動をしていたわけではないというのが、また面白いところで。キッカケは大学の卒論だったんですよね。

そうなんです。本当にラッキーで、私からしてみたらシンデレラストーリーのような流れでメジャーデビューまで来てしまったから、当時は下積みゼロで何もわからなかったんですよ。ライブ経験もほとんど無いまま、いろんなイベントに呼んでいただいたり、フジロックにまで出演できたり! 出版社の方からお声がけいただいて、いきなり絵本を描かせていただけたり、本当に「これを仕事と呼んでいいんだろうか?」って思いながら、10年間やってきたところはあります。

DJみそしるとMCごはん

ただ、経験がないまま大きな舞台に放り込まれたことで、その後は逆に苦労も多かったのでは?

そうですね。まず、ライブでの声の出し方からわからなくて、一生懸命大きな声を出しても、なぜかマイクに乗らなかったり。そこからボイストレーナーの先生のところに通うようになって、ラップをすることにまで意識が向くようになったのは、デビューしてから3、4年ほど経ってからでしたね。もともとは料理研究家さんみたいなお仕事に憧れていて、誰か師匠について何年か勉強したい、教えてほしいという気持ちがあったから、まさか誰も先生がいない仕事をやることになるなんて!と、すごく模索はしてきました。

その模索の10年があって、ようやく一つの答えに辿り着いたのが今であり、その結果が今回の独立なのかもしれませんね。

そうですね。“自分はこうだ”っていうのがわかったかもしれないです。ただ、年末に子どもも生まれていたから、こんな人生の重大事が二つも重なるなんて、私、大丈夫か!?って、発表するまではかなり不安だったんですよ。独立するといろんな作業も増えるし、子育てのほうでも保育園と小まめにやりとりしなければいけないので、結構いっぱいいっぱいになりそうだなって。でも、今までと同じだけ仕事に時間を費やせるかどうかわからないからこそ、独立のタイミングが重なったのは逆に良かったのかなって今は思ってます。

DJみそしるとMCごはん

それに子ども向けの活動も多くされてますから、ご出産されたことで仕事にも良い影響がありそうですよね。

それが子どもと触れ合っている中で、何か良いアイディアとか浮かぶんじゃないかな?っていう期待も最初はあったんですけど、実際に子育てしてみたら……ただただ可愛いだけで! この守るべき存在のために一生懸命働いて、この子を育てていかなければいけないと思うだけで、アイディアなんて何も出てこない! 子どもは自分とは別個の人間なんだから、そんな都合のいい存在じゃないぞ、何かを得ようとするのはセコいぞ!ってことがわかりました(笑)。ただ、今まで子ども向けのライブに出たり、Eテレで番組をやっていても、どんな目線で子どもと親御さんが観ているのか、あまり思い至れていなかったので、よりリアルな目線で仕事ができるんじゃないかという気はしてます。

離乳食の時期になったら、それは仕事に活かせるんじゃありません? 離乳食のレシピをラップにしたら、かなり喜ばれそうですよ。

あ、そうかも。今はミルクしか飲んでないですけど、確かに離乳食を作るのは楽しみですね。ただ、子育てと仕事とで、今、ほとんど家で料理できてないんですよ! 結婚しても今までは夫と二人で、自分の時間もたくさんあったから、仕事であり趣味でもある料理を楽しんでこれたんです。でも、そういう時間ってしばらく持てないかもしれない……ってなって初めて、世の中にある作り置きとか時短レシピとかの有難みがわかりました。今まで「こういう料理を作れたら楽しいよね」とか「もっと楽しんで料理して、美味しく食べられたら幸せだよね」っていう歌を作ってきたけれど、どうしたら時間がない中でも料理を楽しめるんだろう?っていうのは、今、自分自身が直面している課題でもあります。

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