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水曜日のカンパネラ「エジソン」MVから日清食品CMまで。映像作家・渡邉直のオリジナリティとは?

FREENANCE MAG 渡邉直

水曜日のカンパネラエジソン」、あのちゅ、多様性。」、サザンオールスターズ盆ギリ恋歌」といったミュージックビデオ(以下、MV)や、日清食品、ソフトバンク、日本マクドナルドなどのテレビCMを多数手がけてきた渡邉直さん。現在もっとも「バズる」映像の作り手のひとりです。

ことに水曜日のカンパネラ、xiangyu(シャンユー)とのタッグで「ジャンヌダルク」「ディアブロ」「プーパッポンカリー」など数々の名作を残してきました。渡邉さんはどんなキャリアを経てMVやCMを手がけるようになったのか。ユーモラスかつエッジの立ったユニークなアイデアはいかにして生まれるのか。じっくりとお話をうかがいました。

profile
渡邉直(ワタナベナオ)
1985年山形県生まれ。日本大学芸術学部卒業。CM制作会社勤務を経て独立、フリーランスのディレクターとして、様々なCMやミュージックビデオを制作。CM制作の傍ら、数々のアーティストのライブVJとしても活躍中。
https://twitter.com/watanabe_nao
https://www.instagram.com/watanabe_nao/
https://watanabenao.com/

まずはCMの世界に

FREENANCE MAG 渡邉直

日芸の放送学科を出られていますが、もともとテレビのお仕事をしたかったんですか?

TBS系で放送されてた『ZONE』って番組を見ていて、同じようなスポーツドキュメンタリーを撮りたかったんです。テレビの道に進みたいなと。でも大学の授業で刺激を受けて、例えば『世にも奇妙な物語』の一遍のような、ショートドラマの制作を志していた時期もありました。

日芸の同級生に、いま電通でクリエイティブディレクターやってる佐藤雄介くんって方がいるんですけど、彼が面白いMVに詳しかったんです。当時で言うと、後に映画『エターナル・サンシャイン』でアカデミー賞を受賞したミシェル・ゴンドリーが撮ったMVとか教えてもらったりしてました。「ビョーク知ってる?」って聞かれて、知らなかった僕は「あぁ、いいバンドだね」とか適当に話を合わせながら。MVすごいな!って、徐々にそっちへ興味が向いていきましたね。

大学を出て就職したのは?

CMの制作会社です。入社1年目の新人だからやたら資料探しとかするんですけど、そのおかげでいろんな昔のCMの映像を見れて、「CMもおもろいな」と。自分が思うキャリアのスタートは、MVとCMに惹かれていた印象が強く残っています。まずはCMの世界に入っていった感じですね。

子どものころはテレビっ子?

当時はテレビぐらいしかなかったですから。いろいろ録画してタグを書いたり、ラジオをMDに録ったり、いろいろ記録してました。MTVも見てたんですよ。そこでの刷り込みもあったのかもしれないです。

映画を志していたという方もよくいらっしゃいますが……。

僕はないですね。たぶん集中力が続かないんですよ(笑)。僕は良く言うと短いものに魂を入れるタイプな気がします。拘束時間が長いと、ずっとその作品のことを考えてなきゃいけないじゃないですか。

それよりかは常に4つ、5つのプロジェクトを進行させて、これを3時間やって、よし、次はこっちを3時間やるか、今日はこんなとこかな、みたいに脳みそを切り替えられるほうが向いてるんですよ。本当に短期集中型です。ずっと寝てて急に「やろう!」ってなったりするんで、いつ始められるかもわかんなくて。

プロフィールを拝見すると、制作会社に入った翌年に独立されていますよね。ずいぶん早いなと思ったんですが。

あ、そうです。鋭いですね(笑)。僕は「演出をやりたい」ってずっと言ってたんですけど、要はプロデューサーにしかなれない会社で。だから「演出したいんだったら独立しろ」と言われてたのもあるし、マネージャー的な業務が自分に向いてなかった。鍵をなくしたりとか、お弁当の発注を忘れたりとか、凡ミスが多くて。

それでもなんとか1年間やって、上司に「そろそろ新人が入ってくるから、演出やりたいんだったら独立したほうがいいよ。ステップアップしよう! 俺らもサポートするから!」みたいに言われて、「じゃあやめます!」って言って、特にサポートもないまま(笑)、大きな海に放り出されたみたいな感じです。

じゃ、その1年間に学んだのは、具体的な演出のテクニックみたいなことよりも……。

「こうやって作るんだ」みたいなノウハウとか、監督、スタッフ、代理店、みたいに「こういう人がいるんだ」っていう、CM業界がどんなところなのかをなんとなく知るには十分な時間だったんで、じゃあ目指して頑張ってみるか、っていう感じでしたね。CMに興味を持ち、でもMVへの情熱はまだ消えてない。これが僕のチャプター1です。いまは小舟に乗ってる状態です(笑)。

水曜日のカンパネラとの出会い

FREENANCE MAG 渡邉直

小舟で漕ぎ出して、まずどこへ向かいましたか?

1年間、特撮映画のキーイングをしました。キーイングというのはグリーンバックを抜く仕事で、おかげでアフターエフェクトがけっこう使えるようになって、それで食いっぱぐれなくなったんです。そこから、清水康彦さんっていう監督のMVがすごく好きだったんで、「アシスタント募集してないですか?」って直接メールしたんですよ。そしたら「すぐ来い」って言われて行って、編集アシスタントに就かせてもらって。清水さんは広告もやってたから、CMのビデオコンテの制作とかに紹介してくれたりして。「若くて手が早いやつがいるから、エディターとして使ってみたら」みたいな。清水さんのおかげで広告業界に再び入っていけました。

清水さんからはどんなことを学びましたか?

演出の基礎というか、例えばMVだったら「人は6秒以上待ってられないと考えたほうがいい」とか、かなり具体的な哲学を教えてもらいました。あと、編集のテクニック。すごく勉強になりましたね。そしてマンジョット・ベディさんというインド人の監督についてグローバルな仕事を経験させていただいた後、ずっとファンだった辻川幸一郎さんの編集補佐をやらせてもらったんですけど、そこでまたいろんな学びがありました。辻川さんは、コーネリアスのアートディクションとかMVを手掛けていて、コーネリアスとともに有名になられた方だと思うんですけど、僕もそういうアーティストが欲しいな、と思って。

なるほど。一緒に上がっていけるような。

そうです。夜な夜なライブハウスをほっつき歩いて、chelmicoとかふぇのたすとか、フレンズとか。そういう人たちと出会っていったんですけど、その中に水曜日のカンパネラがいたんです。メンバーのケンモチ(ヒデフミ)さんが作ってる楽曲も超かっこよかったし、「三菱コンバイン!」(「デーメーテール」)とか歌ってたじゃないですか。「これはCMっぽいぞ!」と思って(笑)。カンパネラのMVは当時、藤代雄一朗さんが撮ってたんですけど、「ああいうトーンじゃないときに撮らせてください」って直接、物販で声をかけました。

なんと! 直談判だったんですね。

でもいきなりそれじゃ胡散臭いだろうと思ったから、 自分を被写体にして 「二階堂マリ」っていう曲のMVを試しに作ったんですよ。それを「こんな感じどうですか?」って渡したら気に入ってくれて撮ったのが「ジャンヌダルク」です。僕のチャプター2はここでくさびが打たれるでしょうね。

(「二階堂マリ」の試作品を見せてもらう)面白いですね。確かに「ジャンヌダルク」につながるものを感じます。

「ジャンヌダルク」は完全音ハメの演出だったんですが、あれはsalyu × salyuの「話したいあなたと」のMVで、音に合わせてsalyuがポンポンポンポンって増殖するアイデアから転用させていただいたんです。そこにカンパネラっぽい味が加わればオリジナルになるんじゃないかなと思って。そしたら好きなバランスになったんです。ここが自分のオリジナリティの原点なのかな、って思ったのが「くさびが打たれた」って言った理由ですね。

カンパネラとは以来ずっと撮り続けていますよね。

ケンモチさんの音が好きなんですよ。自分の表現との相性もとてもいいと思います。もちろんそこに、コムアイや今のヴォーカルの詩羽ちゃんの魅力も加算されてますけど、特に考えなくてもアイデアが湧くんですよね。「エジソン」の机の上と下で分けてハウスダンスをするのも、曲を聴いて1分くらいでぱっと出てきたアイデアをそのまんま使いました。

ひらめかせてくれる曲なんですね。

本当にそうです。いろんなアーティストのMVやらせていただきますけど、なかなか出てこなくて苦労するときもありますし、ポンとすぐ出てくるときもあるし。脳のコンディションと曲のタイプがピタッと合うといいものになる気がします。

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