コロナ禍の文化芸術活動を支援する補助金事業、「ARTS for the future!(以下、AFF1)」が2021年に実施され、1万件を超える申し込みがありました。この記事では、その後継となる「ARTS for the future!2(以下、AFF2)」について解説します。2022年2月に公開された募集要項の内容に加え、AFF1との違いやAFF2の特色などをまとめましたので、ぜひ活用をご検討ください。
Contents
ARTS for the future!2とは?
AFF2は、文化庁による「コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業」です。
新型コロナウイルス感染症は、長期にわたって文化芸術活動の妨げとなり、多くのアーティストや団体が、活動の縮小・停止や減収といった悪影響を受けています。
こうした悪影響を受けている「プロの文化芸術関係団体」に対し、「積極的に公演等を開催する活動」のための支援がAFF2です。
AFF1と同じく、対象は「団体」であるため、フリーランスなど個人での申請はできません。ただし、文化芸術活動における上演や制作の実績があるなど、一定の条件を満たした人物が、新規の団体や実行委員会の中核メンバーとなれば、支援対象になることができます。
AFF1とAFF2の違い
2021年のAFF1の問題点などを踏まえ、今回のAFF2では、以下が改善されています。
AFF1の問題点 | AFF2の改善点 |
審査状況がわからず、交付・不交付の決定までに時間がかかる | ・審査体制の拡充により、審査の迅速化に取り組む ・AFF1採択団体は申請書類を一部免除 ・申請から原則1カ月以内に、(a)交付、(b)不交付、(c)差戻しを連絡 |
審査基準が不明確 | ・(c)差戻しの場合は、差し戻し理由をできる限り具体的に伝える |
コールセンターの回答が不統一 | ・統一回答に努める |
交付決定額から減額された | ・『募集要項』、『申請の手引き』、『実績報告の手引き』など公表情報をわかりやすくし、変更・補足等の都度、それぞれのサイトにて公表 |
プロの文化芸術団体支援としての適正化や重複申請抑制が必要 | ・プロ性と実在性を担保するため、補助対象となる活動の要件を明確化 ・任意団体について「収益事業開始届出書」(e-Taxにてオンライン完結可)の提出を求める ・売上減少割合が一定程度以下の「営利法人」については、補助率1/2またはAFF2申請対象外に |
AFF2の募集開始は、2022年3月28日(月)~と予定されています。ただし、申請・審査の量が偏り、時間や審査の基準に差が生じないようにするため、予算消化の目途が立つまでの間「随時申請」とすることにより、審査量の平準化を図ることが明言されています。
補助対象となる要件は?
AFF2の補助対象者となるためには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- 今回申請する取組の主催者として、資金面での責任を持つ者であること
- 構成員及び外部から招聘した個人や団体に報酬を支払うプロの団体であること(出展者が自ら制作した文化芸術作品を販売する展示即売会の主催者は、出展者が出展料を支払う場合でも対象)
- 過去10年間に申請する取組と同じ文化芸術分野で有料一般公開の公演等の主催や活動の実績があること
上記に加え、以下のaまたはbに該当する、法人又は任意団体が補助対象者となります。
- 国内のプロの文化芸術関係団体(地方公共団体を除く)
- 国内の文化施設の設置者又は運営者(地方公共団体、独立行政法人、指定管理者、個人事業主を含む)
※文化施設の例:劇場、音楽堂、ライブハウス、映画館、美術館等
「プロの文化芸術関係団体」とは?
「aに該当するプロの文化芸術関係団体」とは、以下のイからハのいずれかに該当する団体を指します。
- 団体として公演等の主催の実績がある法人格を有する文化芸術団体
- 公演等の活動の実績がある個人が中核となり設立した法人格を有する文化芸術団体
- 法人格を有しない、以下の1.から3.のいずれかの任意団体(実行委員会及び共同事業体形式のものを含む)であって、*の要件を充たしているもの
- 団体として公演等の主催の実績がる任意団体
- 公演等の活動の実績がある個人が中核者となる任意団体公演等の活動の実績がある個人が中核者となる任意団体
- 公演等の主催の実績がある団体が中核団体となる任意団体
- 団体の意思を決定し、執行する組織が確立されていること
- 自ら経理し、監査する等の会計組織を有すること
- 団体活動の本拠としての事務所を有すること
補助対象外となってしまうケースの具体例
AFF2では、2020年度(2020年4月~2021年3月)の売上高が2019年度比20%以上減少していない営利法人は、補助対象外となり、営利法人が申請する場合には、「2020年度の売上高が2019年度比20%以上減少していることを証明する決算書」の提出が必要です。
ただし、2020年度以降に新設された営利法人は、補助対象外の条件には含まれません。また、2019年度途中に新設された営利法人の年間売上高は、2019年度の事業期間の売上高を1年間当たりに割り戻して算出できます。
また、以下のようなケースも、補助対象外となります。
- 申請者の主催実績として示されたものが無料の公演等である場合(プロの公演とは認められないため)
- 申請者の主催実績として示されたものが、申請取り組みの分野と違う場合
- 申請者が申請された取り組みの主催者であることが確認できない場合
AFF2で特に注意したい点として、「1団体1申請ルール」があります。これは、名前の異なる団体で複数の申請があっても、構成員や活動内容がほぼ同じと判断されれば、「同じ団体だとみなされる」ということで、以下のような場合も補助対象外となる恐れがあります。
- 複数の団体で中核者が同じ、団体の連絡先・構成員・活動内容がほぼ同じなど、重複した申請とみなされる場合
- 不正会計が疑われる場合(相互に受注する循環取引をしているなど)
補助対象となる文化芸術活動とは?
AFF2で補助対象となる文化芸術活動は、AFF1と同じく、文化芸術基本法第8条から第12条に定められている文化芸術分野(公演等、展覧会等、映画製作)です。
公演等 | |
音楽 | ポップス/ロック、演歌、クラシック、ジャズ等 |
演劇 | 演劇、ミュージカル等 |
舞踊 | バレエ、現代舞踊等 |
伝統芸能 | 能楽、文楽、歌舞伎、雅楽、組踊、邦楽、日本舞踊等 |
大衆芸能 | 落語、漫才、講談、漫談、浪曲等 |
生活文化 | 茶道、華道等 |
国民娯楽 | 囲碁、将棋等 |
展覧会等 | |
美術 | 絵画、彫刻等 ※展示即売会を含む |
映画上映 | 映画祭等 |
マンガ | マンガ等 |
映画製作 | |
映画製作 | 劇映画、記録映画、アニメーション映画 ※映倫番号の取得と有料一般公開が条件 |
補助対象となる活動は?
AFF2の補助対象となる活動は、大きく分けて次の2つです。
- 有料一般公開される公演や展覧会、映画の製作等であって、その更なる充実・発展を図る積極的な取組がなされているもの。
- 実地を予定していた1.充実支援事業で、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置、水際措置などのイベント開催制限等により、延期・中止せざるを得なくなった公演など。ただし、積極的な取り組みに代わるものとして、動画制作を行うこと。
充実支援事業とみなされるための条件
充実支援事業とみなされるためには、下記を満たす必要があります。
- 有料で不特定多数(1公演等あたり概ね50人以上)を集客し開催するものであること
- 当該活動に出演等する個人や団体に報酬を支払うものであること
- 国内の公演・展覧会等の活動であること(海外アーティストを招聘するだけのイベントは対象外)
- 公演等実施時点における新型コロナウイルス感染症に関する政府、都道府県等の方針・要請等及び業種ごとの感染拡大予防ガイドライン等に反しないこと
会場の収容人数自体が50人未満である文化施設での開催を予定していた場合は、不特定多数の人数が問われることはありません。また、海外アーティストを招聘しているイベントであっても、国内団体が主体で開催するものであれば、対象となります。
対象となる映画製作の条件
充実支援事業にある「映画の制作」には、以下の条件が定められています。
- 映画館として、主体的に特色ある作品群を積極的に選定し、広報・上映公開する活動であること(全国的に広報・宣伝され公開される作品の上映に関わる活動は対象外)
- AFF2の事業期間内に完成し初号試写を行うもの
- 有料一般公開までに映倫番号を取得し、国内の映画館・ミニシアター等で、概ね7日間以上かつ14回以上、有料一般公開を行うこと(要件を満たせなかった場合は、補助金の返還が必要)
- 劇映画は概ね1時間以上、アニメーション及び記録映画は概ね20分以上の作品であること
積極的な取り組みとは?
補助対象となる活動の条件「積極的な取り組み」には、以下のような例があげられます。
- 既公演の演出を変えて実施する公演
- 他の文化芸術関係団体とコラボレーションした公演
- 経験年数が少ない若手に役を配分して実施する公演
- 有観客で公演等を行うとともに、オンライン映像配信等を行い顧客の拡大に取り組む公演
- 教育普及プログラムやワークショップを実施した上で行う展示
- 地域ゆかりの作家と共同して制作するプログラムを実施した上で行う展示
- クラウドファンディングを行って活動資金を強化しつつ行う公演
補助金額は最大2,500万円
AFF2の補助金額は、原則1団体あたり最大600万円~2,500万円となっています(充実支援事業+キャンセル料支援事業)。補助金額には、公演に従事している人数や、事業者の団体規模に応じて、補助上限区分が定められており、それぞれ、600万円、1,000万円、1,500万円、2,000万円、2,500万円に区分が設定されます。
公演等
演劇やミュージカル、ライブなどの公演では、従事人数規模(計画)をベースに補助金額が決まりますが、従事人員規模を適正に把握できない場合は、過去実績をベースとした補正基準①もしくは②が適用できます。
区分 | 補助額の上限 | 1回当たりの従事人員規模 (計画) |
補正基準 (過去実績) |
|
①団体の年間収入規模 | ②主催した公演等の会場の年間延べ総座席数 | |||
I | 600万円 | 50人未満 | – | – |
II | 1,000万円 | 50人以上 | 3億円以上 | 3万席以上 |
III | 1,500万円 | 80人以上 | 5億円以上 | 5万席以上 |
IV | 2,000万円 | 120人以上 | 7.5億円以上 | 7.5万席以上 |
V | 2,500万円 | 170人以上 | 10億円以上 | 10万席以上 |
展覧会等
美術品等を見せる展覧会等も、従事人員規模をベースに補助金額の区分が決定されますが、従事人員規模が適正に把握できない場合は、①もしくは②の補正基準が適用できます。
区分 | 補助額の上限 | 1会期当たりの従事人員規模 (計画) |
補正基準 (過去実績) |
|
①団体の年間収入規模 | ②主催した展覧会等の年間総入場者数 | |||
I | 600万円 | 50人未満 | – | – |
II | 1,000万円 | 50人以上 | 3億円以上 | 20万人以上 |
III | 1,500万円 | 80人以上 | 5億円以上 | 35万人以上 |
IV | 2,000万円 | 120人以上 | 7.5億円以上 | 50万人以上 |
V | 2,500万円 | 170人以上 | 10億円以上 | 65万人以上 |
映画製作
映画製作の場合は、製作費を基準に区分が決定されます。
区分 | 補助額の上限 | 映画製作費 |
I | 600万円 | – |
II | 1,000万円 | 6,000万円以上 |
III | 1,500万円 | 1億円以上 |
IV | 2,000万円 | 1.5億円以上 |
V | 2,500万円 | 2億円以上 |
ただし、J-LODlive2(令和2年度コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)やJ-LODlive(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)の支援対象外である任意団体や美術館の企画展等のキャンセル料支援事業は、別枠に設定されており、1公演等あたり2,500万円が上限となっています(展覧会の場合は、1展覧会あたり2,500万円。常設展は対象外)。
また、充実支援事業、キャンセル料支援事業ともに、補助率は定額補助に設定されていますが、売上高が規定以上減少していない営利法人は、補助率がカットされるケースもあるため注意してください。加えて、補助金額は、補助対象となる経費に補助率を掛けた金額(定額補助の場合は対象経費全額)か、補助上限額のいずれか小さい金額となります。
対象となる事業の期間は?
AFF2の対象となる事業の期間は、2022年1月1日(事業開始日)から2022年12月31日(事業完了日)までに実施されるものです。原則として、2022年1月1日より前に発注された事業の経費は補助対象外になります。
また、事業完了日以降の日付の請求書も、補助対象外です。ただし、会場費や権利使用料に関しては、2022年1月1日より前に発注したものであっても、対象になる場合があります。
申請の流れ
AFF2の申請システムは現在準備中となっています。AFF1公募時の申請の流れを以下に記載しますので参考にしてみてください。
- 法人:履歴事項全部証明書(法人登記簿謄本)、過去4年間で最も収入規模が大きかった年度の決算書
- 任意団体:定款等に類する規約、過去4年間で最も収入規模が大きかった年度の決算書、代表者本人確認書類
- 事前申請情報の登録に必要なもの:金融機関の口座情報(通帳のコピーなど)
- 該当する場合必要になることもある資料:必要な場合は実績ID、実績証明書(ポスターやチケットなど)、補足資料やWebサイト、従事人員申請書、補正基準実績証明書、収支計画書
履歴事項全部証明書は、内容が読み取れることや、全ページがそろっていること、発行日から3カ月以内のものであることなど、条件を満たす必要があるので注意が必要です。また、任意団体として登録する場合でも、実行委員会の中核団体が法人である場合には、その法人の法人登記簿謄本を提出する必要があります。
新設の団体の場合は、決算書の代わりに、団体の収支計画書を添付し、新設の実行委員会の場合は、中核団体の決算書を提出してください。その他条件によって、求められる必要書類が異なるため、申請したい法人・団体として提出が必要な書類のチェックを入念に行いましょう。
そのほか、取組の登録やキャンセルになった取組などを入力、最後に補助金が入金される金融機関の情報を登録し、申請します。申請が受理されたことは担当者宛てにメールが届き、申請から1カ月をめどに、「交付決定」もしくは「不採択」が通知されるという流れです。
AFF1で交付が決定した団体は申請書類が一部免除に
AFF1で交付が決定した団体は、事業申請IDを記載することで、「法人登記簿謄本(申請日前3カ月以内に発行された「履歴事項全部証明書」)」、「決算書」、「実績証明書」の3つが免除になります。申請がより手軽にでき、審査も通りやすくなるでしょう。
また、AFF2では、審査体制を強化し、審査に偏りがでないよう取り組みがなされていますが、前回のAFF1では、数回にわたる差し戻しなどにより、申請から交付・不交付の決定までに3カ月以上かかったケースもあります。時間に余裕をもって申請準備を進めていきましょう。
まとめ
AFF2は、文化庁による文化芸術活動を行う団体を支援する補助金事業ですが、個人やフリーランスにも支援が行き届くよう意図されています。公演などの実績があれば、新規団体を立ち上げることで、補助対象になれるかもしれません。前回のAFF1を活用された方はもちろん、長引くコロナ禍で、文化芸術活動に支障が出ている個人・フリーランスの方も、ぜひ活用をご検討ください。
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