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【弁護士が解説】「買いたたき」などの違反行為情報提供フォームを公取委が公開。フリーランスが知っておくべき下請法の知識とは?

FREENANCE 買いたたき 下請法

フリーランスや個人事業主を含む下請事業者「買いたたき」といった下請法違反行為をしていると疑われる親事業者の情報を、公正取引委員会・中小企業庁に対して提供できる「違反行為情報提供フォーム」が2022年(令和4年)1月に公開されました。

この記事では、弁護士である筆者が、フリーランスや個人事業主として事業を行う上で知っておきたい下請法について解説し、買いたたきの実例や、対処法などを解説していきます。

下請法とはどんな法律?

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、下請事業者よりも経済的に優越的な立場にある親事業者の「下請事業者に対する不当な行為を取り締まる法律」です。

規制対象となる取引

下請法の規制対象となる取引は、親事業者(発注者)から下請事業者に対する委託業務(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託/例:プログラムやコンテンツ、設計図などの作成業務の委託)、役務提供委託(例:保守業務や運送業務の委託)です。

規制対象となる親事業者:製造委託・修理委託の場合

親事業者が個人に対し、製造委託または修理委託をする場合、その資本金が1,000万円を超えていれば、下請法の規制対象になります。

また、法人に対する委託の場合は、親事業者の資本金が3億円超であれば、資本金が3億円以下の法人に対して、親事業者の資本金が1,000万円超~3億円以下であれば、資本金が1,000万円以下の法人に対して委託する場合に、規制対象になります。

規制対象となる親事業者:情報成果物作成委託・役務提供委託の場合

親事業者が個人に対し、情報成果物作成委託または役務提供委託をする場合は、製造委託または修理委託の場合と同じく、その資本金が1,000万円を超えていれば、下請法の規制対象になります。

他方で、法人に対する委託の場合は、製造委託または修理委託の場合と異なり、親事業者の資本金が5,000万円超であれば、資本金が5,000万円以下の法人に対して、親事業者の資本金が1,000万円超~5,000万円以下であれば、資本金が1,000万円以下の法人に対して委託する場合に、規制対象になります。

親事業者の義務・禁止行為

親事業者には、発注内容、下請代金額、支払期日などを記載した書面を下請事業者に交付等する義務や、下請取引に関する記録を2年間保存しておく義務などが課されています。

また、親事業者は、下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注した業務の提供を拒絶すること、下請代金を支払期日までに支払わないこと、下請代金額を不当に低く定めること(いわゆる「買いたたき」などをすることは禁止されています。万一、下請代金を支払期日までに支払わない場合、年率14.6%の遅延利息を支払う義務があります。

※引用元:公正取引委員会 親事業者の禁止行為

違反行為情報提供フォームとは?

2021年(令和3年)12月27日、パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージが取りまとめられました。これは、昨今の原油価格の上昇や円安の進展に伴い、エネルギーコストや原材料価格の上昇が懸念される中、下請事業者がそのようなコスト上昇分を、適切に下請代金額に転嫁できるようにすることを目的とした取りまとめです。

このパッケージに基づき、下請事業者が匿名で「買いたたき」など、下請法違反行為をしていると疑われる親事業者に関する情報を提供できるシステムとして、2022年1月に「違反行為情報提供フォーム」が公開されました。

※引用元:中小企業庁 違反行為情報提供フォーム

このフォームにより、提供された情報は、独占禁止法上の優越的地位の濫用に関する緊急調査(公正取引委員会)下請法上の定期調査(公正取引委員会、中小企業庁)における対象業種の選定,調査票の送付先の選定などに活用されます。

類似の制度として、既存の「下請法申告受付窓口」からの申告があります。「下請法申告受付窓口」からの申告と「違反行為情報提供フォーム」での申告は、いずれもオンライン申告となっています。

※参照:中小企業庁 下請法申告受付窓口

「下請法申告受付窓口」からの申告は、申告者の名称などを明らかにして行う必要がありますが、「違反行為情報提供フォーム」での申告は、匿名で行えるという点が大きく異なります。ただし、「違反行為情報提供フォーム」では、親事業者の違反行為の態様についてあまり詳しく報告することはできません。

具体的な違反行為の事実を報告し、個別の事件調査を求め、より詳細な情報提供を行うことを希望する場合は、申告者名を明らかにして「下請法申告受付窓口」から申告することになります。

もっとも、この2つの方法による情報提供は、個別の紛争解決を目的とするものではありません。では、個別の紛争解決を目的とする手続きについて詳しく解説していきましょう

「買いたたき」とは?

買いたたき」とは、親事業者が類似品等の価格又は市価にくらべて、著しく低い下請代金を不当に定めることをいいます。

発注元である親事業者に対し、弱い立場にある、フリーランスなどの下請事業者は、親事業者の買いたたきに対し、逆らえないケースもあるでしょう。そのため仮に、買いたたきについて、親事業者が下請事業者の了解を得ていた場合や、親事業者に違法性の意識がないなどの場合でも下請法に違反することになります。

親事業者が、下請事業者に対して、消費税分の上乗せを拒絶する、原材料が値上がりしているにもかかわらずコストダウンの要請をする、価格交渉に応じないといった場合、買いたたきに該当する場合があります。

「買いたたき」にあった場合はどうする?

買いたたきをはじめ、報酬の減額、支払遅延などといった「不当なしわ寄せ」(下請法違反)を受けた場合は、公正取引委員会の本局または地方事務所等の相談窓口につながるフリーダイヤル「不当なしわ寄せに関する下請相談窓口」(0120-060-110)に連絡し、対応を相談できます。

不当なしわ寄せに関する下請相談窓口
フリーダイヤル 0120-060-110
受付時間 10:00~17:00
(土日祝・年末年始を除く)
※固定電話のほか携帯電話からも利用可能。

※参照:「不当なしわ寄せに関する下請相談窓口」のフリーダイヤル化について

また、公益財団法人 全国中小企業振興機関協会が全国48カ所に設置した「下請かけこみ寺」に連絡すれば、相談員や弁護士などに無料で相談したり、アドバイスを受けたりすることができ、弁護士への相談を除けば、匿名でも相談できます。

※引用元: 下請かけこみ寺

このほか、各地の弁護士会は法律相談センターを設置し、法律相談に応じています(費用は、概ね30分で5,500円ほどです)。中には百貨店などで無料相談会を開催している弁護士会もありますので、お近くの弁護士会に問い合わせてみるとよいでしょう。

※引用元:日本弁護士連合会

そして、上記のような機関を通さず、弁護士に直接連絡して相談することも、もちろん可能です。多くの法律事務所がWebサイトで取扱業務を公開していますので、下請法の相談に応じてくれそうな事務所を探してみてもよいでしょう。

相談料は、弁護士によって異なりますので、事前に確認することをおすすめします。弁護士によっては、初回相談は無料としている場合もあります。

もっとも、下請事業者として、親事業者の下請法違反を指摘し、直接交渉することが、はばかられる場合もあると思います。

現状として、公正取引委員会や中小企業庁は、親事業者への立入調査の件数を増やすといった取締りや、再発防止が不十分な事業者に対しては取締役会決議を経た上で改善報告書の提出を求めるなど、下請法の執行を強化しています。状況の改善を期待して、上記の「違反行為情報提供フォーム」や「下請法申告受付窓口」に通報することも一案となるでしょう。

まとめ

下請法では、親事業者が業務委託先である下請事業者に対して、「買いたたき」などの不当な行為をすることを禁止しています。もし、買いたたきなどにあった場合には、一人で悩まず、公正取引委員会等に設置されている相談窓口や弁護士などに相談してみましょう。もっとも、親事業者との直接交渉を避けたい場合には、「違反行為情報提供フォーム」などにより親事業者の違反行為を通報して、状況の改善を図ることも一案です。

執筆者profile
弁護士・工藤敦子
1986年大学卒業後、映像・イベント制作会社、都市計画研究所等勤務を経て、2003年弁護士登録。2014年~2016年英国スウォンジー大学留学(法学修士課程卒)、ロンドン及びタイ王国バンコクの法律事務所にて研修勤務。国際・国内企業法務全般、知的財産権法関連案件(特許、商標、不正競争防止法)、紛争解決(システム開発関連、企業不祥事、労働案件、船舶融資等)、国際・国内相続案件を得意とする。
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