厚生労働省が発表している「労働経済動向調査(令和3年11月)」によると、運送業界は深刻な人手不足となっています。しかし、フリーランスや個人事業主の目線で見れば、こうした状況もビジネスチャンスにできるかもしれません。そこで今回は、比較的に個人事業主向けの運送業とされている「軽貨物運送業」の始め方について解説していきます。経済活動の根幹を支える運送業に、ぜひチャレンジしてみませんか?
軽貨物運送業とは?
軽貨物運送業の正式名称は、「貨物軽自動車運送事業」です。貨物軽自動車運送事業は、貨物自動車運送事業法第二条第四項にて、「他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る)を使用して貨物を運送する事業」と規定されています。
「貨物軽自動車運送事業」は、貨物自動車運送事業のひとつです。他にも「一般貨物自動車運送事業」や、「特定貨物自動車運送事業」などがあります。「貨物軽自動車運送事業」は、一般貨物自動車運送事業にくらべ、小さな荷物の宅配がメインです。
「軽自動車」という名称ですが、二輪の自動車を使った書類の配達や小型貨物の緊急配送 (バイク便) といったサービスを提供することもでき、軽自動車や125ccを超えるバイクを使用した宅配飲食輸送サービスを行う場合も、貨物軽運送事業の届出が必要です。
このような運送規模を想定した規定は、「輸送」という、ある程度の危険を伴う事業の安全性を確保するために定められています。
※参照:公益社団法人 全日本トラック協会「貨物自動車運送事業法 ハンドブック」
軽貨物運送業が「スタートしやすい」理由
軽貨物輸送業が「スタートしやすい」といえる理由は、個人事業主にとって、事業を始めるための届出がシンプルで、比較的に受理されやすい点にあります。ここでは、軽貨物運送業を始めるための、フローを見ていきましょう。
- 運輸支局へ貨物軽自動車運送事業経営届出書・運賃料金設定届出書を提出
- 運輸支局が届出書を受理(事業用自動車等連絡書の交付)
- 届出した営業所を管轄する軽自動車検査協会で事業用ナンバーを取得
上記フローの①にある「貨物軽自動車運送事業経営届出書」には、氏名や住所、事業の開始予定日に加え、事業計画を記入する必要があります。この事業計画には、以下のような情報を記入していきます。
- 事業所や営業所の名前と場所
- 事業用の自動車の車種と数
- 車庫の場所と収容能力
- 休憩・睡眠施設の場所と収容能力
運ぶ荷物が大きかったり、多かったりする一般貨物自動車運送事業になると、こうした事業計画が運輸支局に受理されるハードルも上がります。一方、運ぶ荷物が比較的小さな軽貨物運送業は、これらの事業計画が受理されやすい傾向にあるようです。
例えば、「営業所・事業所・車庫」は自宅、「休憩・入眠施設」は自室、「事業用の車両」は1台から届出が可能です。
運送約款に関しても、「国土交通大臣が定めて公示した標準約款を使用する場合、届出書にその旨を記載し、提出は不要」とされています。また、届出に費用はかかりません。るなどといったことからも軽貨物輸送業は「スタートしやすい」といえるでしょう。
加えて、運輸支局での手続きは、代理人でも可能(委任状も不要)、個人事業の場合は代表者・運行管理者・運転者はすべて本人でも問題がないといった点も、事業を始めやすいポイントです。
必要書類は?
軽貨物輸送業をスタートさせたい場合は、まず、地元にある運輸支局に必要書類を提出します。ここからは東京都の場合を例に解説していきましょう。
東京都の場合
関東運輸局 東京支局に、以下の書類を提出します。
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書
- 事業用自動車等連絡書
- 貨物軽自動車運送事業運賃料金表
- 車検証または完成検査終了証(写し可) ※管轄の運輸支局によって、必要書類が多少異なる場合があります。
「貨物軽自動車運送事業経営届出書」は前項でも解説した、氏名や代表者名に加え、事業所や営業所の場所、使用する車両や車庫といった事業計画を記入する書類です。軽貨物輸送業であれば、車両や書庫の情報も簡潔で済むでしょう。
※参照:貨物軽自動車運送事業経営届出書
「事業用自動車等連絡書」は、事業に使う車であることの届出となる書類です。使用者の氏名や所属する営業所名、使用する自動車に関する情報(登録番号や年式など)を記入してください。
※参照:事業用自動車等連絡書
「貨物軽自動車運送事業運賃料金表」は、運送業を行うにあたっての料金設定を届け出る書類です。距離や時間、運ぶ荷物などによって設定した料金を記入していきましょう。運輸支局によっては料金表のひな形を公開・配布している場合もありますので、参考にしてみてください。
※参照:貨物軽自動車運送事業運賃料金表
軽自動車検査協会で事業用ナンバーを取得する際の必要書類
軽自動車検査協会を通して、事業用のナンバー(黒ナンバー)を取得すると、重量税や自動車税が安くなるといったメリットがあります。黒ナンバーを、軽自動車検査協会を通して取得したい場合の一般的な必要書類は以下のものが挙げられます。
- 自動車検査証記入申請書
- 事業用自動車等連絡書(運輸支局の経由印が押されているもの)
- 車検証原本(コピー不可)
- ナンバープレート(前後2枚)
- 軽自動車税申告書 など ※管轄の軽自動車検査協会によって、必要書類が多少異なる場合があります。
なお、軽自動車検査協会に提出する書類を作成するのは、事業開始のために運輸局へ必要書類を提出し、「事業用自動車等連絡書」が交付(発行)された後になります。書類に問題がなければ、届け出たその場で発行してもらうことも可能です。
仕事の取り方は?
フリーランス・個人事業主として運送業をする場合、仕事の取り方は主に以下の3つが考えられるでしょう。
下請け契約
下請け契約は個人として運送業をする場合に、もっともポピュラーな方法です。大手運送会社と下請け契約を結び、軽貨物専門の業者として登録すれば、指示があったときに配達をするというシンプルな方法で仕事ができます。
注意点としては、配送料から手数料を引かれる、決まったルートを任される、勤務日に関する条件が契約に追加されるといったことがあげられます。自由度が減少してしまう点がデメリットといえるでしょう。
フランチャイズ契約
コンビニ加盟店のように、本部とフランチャイズ契約を結び、軽貨物輸送業をする方法もあります。フランチャイズ契約のメリットは、本部から仕事を回してもらえるため、収入が安定しやすいことにあります。
一方、ロイヤリティの支払いがあるため、その上で事業が続けていけるかどうかを見極める必要があるでしょう。また、使用したい車両がリース指定だったり、仕事のやり方に関して細かな指示があったりと、ある程度、本部の決定に従う必要があるかもしれません。
自身での営業
どことも契約せず、自ら営業をかけて運送業をする方法もあります。手数料が引かれたり、ロイヤリティを支払ったりすることもなく、いつどこで、どんな方法で仕事をするのかも自由です。
ただし、宣伝をしたり、広告を作ったりといった営業を、自身で行う必要があります。加えて、収入の面でも仕事量の面でも不安定になりがちでしょう。仕事につながる個人的なコネクションを持っているなら、選択肢のひとつとなるかもしれません。
まとめ
ネットショッピングの急増や、長引くコロナ禍の影響もあり、運送業界は慢性的な人手不足です。今まさに、荷物を届ける仕事のなり手が必要とされています。ポスト投函が可能な軽い荷物の配送も多くあるため、軽貨物輸送業は、フリーランス・個人事業主としても挑戦しやすいでしょう。ご興味がある方は、ぜひ、これを機に軽貨物輸送業への参入を検討してみませんか?
日本初のフリーランス向けファクタリングサービス
「FREENANCE即日払い」
会員登録自体は通常1時間以内に完了。会員登録を申し込んだその日に即日払いを利用することも可能です。
https://freenance.net/sokujitsu
▼あわせて読みたい!▼