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肩書きや過去の実績に固執せず、柔軟にチャレンジを。元モー娘。小川麻琴の仕事論

FREENANCE 小川麻琴 フリーランスな私たち

脱サラしたばかりの小沢あやが、さまざまな業種のフリーランスに話を聞く連載『フリーランスな私たち』。

フリーランスは、自分の名前で仕事を掴んできるのが大事。そのためには「仕事のジャンルを絞ろう」「専門性を高めよう」など、セルフブランディングの方法論があふれていますが、実際みなさんどうしているのでしょう?そもそも、やりたいことを全部やっていたら、仕事のジャンルを絞るのも難しくありませんか?

そんな小沢自身の悩みを相談すべくお呼びしたのは、元モーニング娘。の小川麻琴さん。国民的アイドルからの大幅なキャリアチェンジを果たし、今では「タレント」「俳優」「歌手」「アプリ開発ディレクター」「東洋大学の外部講師」などなど、たくさんの肩書きを持つフリーランスとして活躍しています。

事務所を辞めてフリーになってから、どうやって新たな仕事を掴んでいったの?という素朴な疑問から、さまざまなジャンルの仕事に挑戦し続ける理由などを率直に聞きました。

チャレンジした仕事の分だけ、肩書きが増えていく

小沢

フリーランスがよく悩むのが、「肩書き」。会社が配属を決めてくれるわけではないから、自分の仕事に、名前をつけなきゃいけないですよね。小川さんは、いろんな肩書きを持っていますが、今日はなんてお呼びすればよいでしょうか?
なんだろう?私、肩書きにこだわりがないんですよ。今は舞台のお仕事が多いけど、それだけでもないし。これまでいろいろなことをやってきましたが、「タレント・女優」って紹介していただくことが多いですかね。

小川さん

小沢

そこは、あまりこだわらないんですね。たとえば、私みたいに「WEB記事をつくる」お仕事にしても、ライター、作家、記者、ブロガーなどいろんな肩書きがあります。それぞれ、強いこだわりを持っている方が多いですよ。
「私は◯◯です」と自分から宣言するのではなくて、私の仕事を見た人がつけた肩書きが、自分の肩書きだと思うんです。いろんなお仕事にチャレンジした分だけ、どんどん新しい肩書きができていく感覚ですね。

小川さん

小川麻琴
肩書きにはこだわらず、柔軟にチャレンジするという小川さん

小沢

なるほど。世間的には、仕事のジャンルを絞って「◯◯に強い人」になるのが正攻法のひとつとされていますよね。実際に私も、もっと専門性を高めるべきかと、悩んでいる当事者です。小川さんが、さまざまなジャンルの仕事にチャレンジしている理由は?
やりたいことがたくさんあって、「チャレンジできるならなんでもやってみよう」という気持ちでいるんです。やったことないジャンルのお仕事も、興味があることは「ぜひ!」というスタンスですね。

小川さん

小沢

この企画も、まさかご本人から即レスがいただけるとは思わなかったです。小川さんはアシスタントやスタッフをつけずに、全部自分でお仕事を選んでいるんですよね。オファーを受ける・受けないの基準は何かありますか?
まずは、自分が楽しいか。あとはやっぱり、モーニング娘。の現役メンバー、OGメンバー、そしてファンの方たちがどう思うかなぁ?とかを考えていますかね。

小川さん

アプリ制作にチャレンジしたら、Tech系の仕事が舞い込むように

小沢

それにしても、元アイドルで「アプリディレクター」「東洋大学総合情報学部の外部講師」って、すごいギャップです。それぞれ、何がきっかけで掴んだ仕事なんですか?
小川麻琴 小沢あや
アプリディレクターや大学講師って、難易度が高そうなのに……
レギュラー番組で、スマートフォンアプリを紹介していたんです。その頃、ちょうどガラケーからスマホにシフトしてきたから、私も積極的にいろんなアプリを試して、勉強していて。その番組でご一緒していた東洋大学の藤本貴之教授が、「せっかくだし、自分でアプリを作ってみたら?」って声をかけてくれたので、やってみることにしました。

小川さん

小沢

チャレンジ精神がすごい。まったくの未経験から、どんな風にアプリを制作したんですか?
まず、どんなアプリが人気上位にくるのかを、アプリストアを調べるところから始めました。そこで「個人でやるなら、マニアックなアプリのほうがチャンスがあるな」と思ったんです。私はベーグルが大好きなので、日本全国のベーグル専門店の情報を集約したアプリを作りました。

小川さん

小沢

「パン」じゃなくて、ベーグルに絞ったんですね。超ニッチ。
コアな層が使ってくれたら、それでいいと思って。ベーグルって、カロリーが低いのに腹持ちがいいんです。ダイエットにぴったりだから、女性にウケるんじゃないかと考えたんですよ。

小川さん

小沢

そこから、開発はどうしていったんですか?
自分でアプリ自体を作れるわけではないので、開発は藤本教授にお願いしたんですけど、アプリ内のデザインはすべて私がイラストに起こしました。アプリ内部のコンテンツのテキストも写真も、全部やりましたね。その様子を見た藤本教授が「東洋大学でアプリの講義、やってみない?」って、声をかけてくれたんです。

小川さん

小沢

大学の講義って、専門家としての知識が求められますよね。「ちょっと無理です」とか、物怖じはしなかったんですか?
もちろん不安があったので、事前に「私はそんなに詳しくないんですよ」と伝えました。自分ができること、できないことを明確に伝えることは大事だと思いますから。大学の講義の件に限らず、私は「自分がどの立ち位置から、どんなことが語れるか」を、ちゃんと言うようにしています。

小川さん

小沢

誠実ですね。
それを伝えた上で、大学の講義をやらせていただくことになったのですが、講義の様子が新聞記事になって「ITに強い人」のイメージがつき、Tech系の連載にも繋がりました。IT企業の講演会のオファーがきたときは、教授に声をかけて、一緒に登壇してもらいました。自分の知識だけでは自信が持てないときは、専門家とペアで仕事をするというのも一つの方法だと思います。

小川さん

将来の不安には、資格でしっかり備えを?

小沢

小川さんが事務所を辞めてフリーランスになったのが2015年。そこから約1年間、活動をおやすみされてましたが、その期間はどんなことをして過ごしていたんですか?
黙々と勉強していました。フリーになってから、まず最初に医療事務の資格を取得したんですよ。

小川さん

小沢

医療のお仕事へ転職しようとしてたんですか?元モーニング娘。から、予想外の領域。
もちろんこの業界で頑張りたい気持ちでいますが、特殊な世界ではあるので、全然違う分野でも働けるように、資格が欲しかったという気持ちはあります。(笑)

小川さん

小沢

ネクストキャリアへの準備をしていたんですね。「フリーランスだと将来が不安」って、元モーニング娘。も一緒なんだ……。なんだか、親近感が湧きました。
そりゃ、不安ですよ!でも、悩むよりまずは手に職を持って備えたほうが、安心できると思ったんです。バリスタの資格も取得したし、英語も頑張りました。

小川さん

小沢

モーニング娘。を卒業後、ニュージーランドに留学したんですよね。
自分の武器になるものが欲しかったんですよね。TOEICのスコア目標を設定して勉強してきました。

小川さん

小沢

800点台までスコアを上げて、そこからTOEIC関連のお仕事も掴んだとか。
そうなんです。もともと、子どもが大好きなので保育士資格をとろうと思ったんです。けど、大卒資格が必要だったので諦めました。かわりに、TECSOLという児童英語教師資格も取得したんですよ。結構、資格マニアかもしれない(笑)。

小川さん

小川麻琴
資格はとっておいて損はなし!

モー娘。時代に培った「やりきる力」が武器に

小沢

ここまでお話していて、小川さんの行動力に驚いています。限られた時間の中で、なぜそんなにいろんなことに挑戦できるんでしょう?
できるできないじゃなくて、「やる」。それだけですね。メンタルは、モーニング娘。で相当鍛えられました。あの頃は本当に忙しくて、ダンスのレッスン時間が短くても「できません」なんて絶対に言えないから、やるしかない。怒られて泣いても、悔しくても、目の前のことをやらなきゃいけない。仕事だから。フリーランスになった今でも、その力は糧になっていますね。

小川さん

小沢

「やりきる」コツみたいなもの、教えてください。
なんでも自分なりに締め切りを設定して、1日あたりのノルマを課すことです。「参考書を1カ月で終わらせるなら、毎日10ページやらなきゃいけないな」とか、ゴールから細かく逆算してノルマを考えるのが重要です。

小川さん

小沢

いったん英語関係の仕事を受けたら、ずっと英語力を磨かなきゃいけないですよね。いろんなジャンルの仕事を続けながら、並行して勉強するのは大変そう。
TOEICの仕事を受けたあと、舞台が忙しくて、勉強に集中できない時期がありまして。もしこれが仕事でなかったら「テストは舞台が落ち着いてから」と先延ばしにしていた可能性はあります。でも、仕事として受けた以上は「やるしかない!」と、短期集中で気合い入れて頭に叩きこみました。なので「趣味じゃなくて仕事」という意識を持つのが大事ですよね。なんでも、真面目に取り組んだことは、後から仕事に繋がると思うんです。

小川さん

「過去の自分を超える!」と無理をする必要はない

小沢

独立後、これまでの実績は自分の能力だけではなく「会社組織」の看板あってこそだったと気がつく人も多いはず。小川さんは、どうですか?
ミラクルが起こらない限り、「小川麻琴」が「元モーニング娘。」を超えるのが難しいのは、私自身もわかっているんです。将来の野望がないわけじゃないけど、看板が大き過ぎるから。

小川さん

小沢

ずっと「元モー娘。」と呼ばれることに対して、複雑な気持ちはありますか?若くしてドーンと大きな実績を作った人は、「最近やっていること」をアピールするのが大変そうで、気になるんです。
もちろんグループに誇りもあるし、感謝いっぱいなんですけど、モーニング娘。の名前が壁になることもありました。舞台も「あなたは元アイドルだからヒロイン役やれるんでしょ」と、厳しい目で見られるんですよね。ずっと俳優一本でやってきたわけじゃないし、私、中途半端かも……って、悩むこともありました。

小川さん

小沢

そんな葛藤から、どう気持ちに折り合いをつけて演技の仕事に向き合うことにしたんですか?
「モーニング娘。というグループにいたからこそ、こういう役をいただけたんだ」ということを素直に受け止め、自覚することにしました。その道でずっとやって来た方と同じ舞台に立つと決めたなら、ゼロから学ぶつもりで頑張るしかない。その過程の中で「また小川さんにお願いしたいね」って思ってもらえるように、一生懸命に取り組むしかないと思っています。

小川さん

小沢

ひたすら真剣に、努力するのみということですね。
モーニング娘。になることができて、若いうちに夢を叶えちゃったからこそ悩むことって、たくさんあります。でも、「あの頃の自分を超えるぞ!」って、構えることもないんです。課題を感じることもあるけど、今の仕事が大好きなので、これからもずっと挑戦し続けたいですね。

小川さん

編集後記

30代フリーランスは、専門スキルと即戦力が求められます。「今」なにができるか、どんな仕事をしているのかを常に聞かれますよね。

「モーニング娘。」の偉大さは、ファンとしても感じています。でも、過去の実績に浸るわけでも、「あの頃を超えられない」と今の自分を責めるわけでもなく、目の前の仕事に全力で取り組んでいる小川さんの姿に強く勇気づけられました。不安になることもあるけれど、柔軟にチャレンジしながら、 できるできないじゃなくて「やる!」のマインドで、 おのおの前を向いていきましょう!

取材・文/小沢あや(@hibicoto)撮影/高浦宏幸

小川麻琴さん出演の舞台が3/4よりスタート!
劇団時間制作第二十一回本公演「赤すぎて、黒」
作・演出:谷碧仁(劇団時間制作)
愛を求め続けた家族の、「至極の愛」を描いた圧倒的な現代劇。
■キャスト:石井康太 小川麻琴 ほか
■劇場:萬劇場~ヨロズゲキジョウ~
劇団時間制作公式ホームページ
https://twitter.com/1029makoto
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