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知的好奇心に勝るものはない。AI普及に賭ける使命感とは? 茶圓将裕(株式会社デジライズ)インタビュー

知的好奇心に勝るものはない。AI普及に賭ける使命感とは? 茶圓将裕(株式会社デジライズ)インタビュー

「AIの行く先」を真っ先に知りたい

茶圓将裕(株式会社デジライズ)

そこまで情熱を持って、茶圓さんがAIについてリサーチできる理由って、いったい何ですか?

AIが普及すれば、全部が変わりますからね。もう4、5年経ったら人間いらなくなるんじゃないか?ってくらいの可能性を感じているので、その行く先を真っ先に知りたいんです。生成AIが出始めてまだ1年くらいですけど、今後はエクセルとかワード、パワーポイントとかでも指示を打ち込めばデータを作ってくれるようになるでしょうし、iPhoneでも今年リリースされる16から生成AIが導入されると発表されてますから。生活の中に自然に入り込んできて、みんな気づかないうちに勝手にAIを使ってる感じになると思うんです。

なるほど。特別にAIを勉強する必要もなく、いつの間にか利用していると。

でも、それだと周りと差をつけられないので、受け身ではなく使いこなす側に行こう!という啓蒙活動をしたいんです。そのために2023年の8月に設立したのが株式会社デジライズで、具体的には今、企業向けのAI研修とChatGPTの企業版の販売をしていますね。

日本におけるAIの導入率って、上場企業でも今10%ぐらいなのに、アメリカのフォーチュン500だと92%だから、差は歴然なんですよ。ただ、海外産のツールってサーバーが海外にあるので、入力した情報が海外に流れてしまうという懸念から、基本的に日本企業は導入できないんです。その点、デジライズのツールは日本にサーバーがあるのでセキュリティ上の問題もないですし、プロンプトのテンプレートも装備させて、企業が使いやすいものにしました。

それだと導入希望の会社も、かなり多いんじゃありません?

本格的に営業し始めたのは2023年10月からなんですけど、ニーズはメッチャありますね! AIがすごいことはわかっていても、使い方がわからないから教えてほしいという声も多いので、ChatGPTを販売するだけでなく、研修をメインとした導入支援までお節介にやってます(笑)。

実際、パソコンを使っている企業なら業種にかかわらず、AIを導入することのメリットは大きいんですよ。例えばメール一つ作るのに5分かかっていたとして、1日に15通書いていたら1時間以上かかりますけど、ChatGPTなら1通1分、トータル15分で終わりますから。

メールだけでなくスラックにも導入できますし、新規事業とかセミナーの企画とかのアイディア出しにも使えますね。人間の独創性って、その人が生きてきた数十年の経験からしか生まれてこないですけど、ChatGPTなら100個でも200個でも無限にアイディアを出してくれるので。あとはゲームのコード生成だったり、テキストから3Dキャラクターを作ったりもできますから、開発業界でも使い勝手はいいと思います。

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AIはインフラ。フリーランスとの相性の良さ

お話をうかがっていると、茶圓さんご自身もアイディアの塊のような方ですが、そのネタ元って日々、どんな風にインプットされてます?

9割9分はXですね。英語圏、中華圏のAI系の開発者のアカウントをフォローしまくった結果、タイムラインが最適化されて、もうソッチ関連のポストしか出てこなくなっているんですよ。あとは日経新聞やNewsPicsも読んでますし、AIでヒットした記事が出るようにキュレーションツールも使って、ひたすらインプットしてます。あとは開発者や業界の方と話して、最近のツールとか技術とかの情報も聞いたりしてますね。そうやってインプットした情報から、アウトプットしていくのが好きなんですよ。新しいものを取り入れて、自分で翻訳して出すのは得意かもしれない。今は翻訳ツールもありますし(笑)。

インプットを欠かさず、常にトレンドをキャッチアップされている今の展望として、AIへの注力はしばらく続きそうですか? もしくはAIの次に実は注目しているものがあったりするとか。

結論から言うと、AIにしか注目してないです。いわばAIってインフラで、いろんなところに組み込まれているから、不可逆的で衰退することはないんですよね。今は社員を雇って会社も大きくしてるので、もう、軸はAIに定まったかなと。AIの次のトレンドとして、もう一回Web3とか仮想通貨とかが盛り上がる可能性はありますけど、Web3にも当然AIは使われてますし、今の僕の使命は日本のChatGPTの普及率を7、8割まで持っていくことなので。実際問題、そうならないと日本は本当にヤバいと思うんです。

世界と戦えない?

戦えない。いろんなビッグテックの人に話を聞いても、日本って眼中にないんですよ。ChatGPTを運営しているOpenAIも、もともと日本市場に参入するつもりはなかったのが、たまたま日本語を話せる人がいたからやっただけで、Googleも日本人ユーザーの少なさから、日本語を最適化しようとはしていない。それを考えると本当にガラパゴス化してるというか置いてきぼりなんで、日本のAIを盛り上げていかないと、国全体が苦しくなるだろうなと。市場も縮小してGDPもドイツに抜かれてしまいましたし、そんな今の状況をなんとかしようと考える人間が、一人くらいいてもいいじゃないですか。

頼もしいです。では、フリーランスの人間がAIを自分の仕事に活かすとして、どんな手法が考えられるか教えていただけますか?

コンサルタントとかフリーランスの人間にとって、AIはかなり相性がいいと思いますよ! いわゆる雑務は、人を雇わなくてもAIで大体できますからね。ライターだったら、AIを使って記事を爆速で書いて、クラウドワークスで案件を取りまくることもできるし、誤字脱字チェックにも活用できる。新規事業じゃなくて、既存の案件をどう効率化していくか?っていう観点で攻めると、メチャクチャ使えますよ。

あと、AIの特徴ってパーソナライズ(個別化)なので、企業に送る営業メールにしても、営業先のサイトから情報を読みこんで、個別具体の営業メールを勝手に作って送信してもらうこともできるんです。それこそVRの世界なんて、完全に個別化されていますよね。

AIに仕事を奪われるパターンも増えてきているので、これからの時代、こちらから使いこなしていくことは必須ですよね。

知っていて損はないので。まずは知ることが大事かなと。知ることにデメリットはありませんし。

確かに! 逆に、AIにはできないことってあります?

ダジャレは言えないですね(笑)。だから創作物の「良さ」を理解するのは難しいかもしれない。その人の経験とか文化的背景を全部入力できるのか?というと、結構難しいので。

人間の仕事が残る余地が、そこにあるかもしれませんね。ちなみに、大阪から上海、沖縄、東京と、拠点を決めずにどんどん変えていく茶圓さんの働き方も、ある意味フリーランス的だと思うのですが、拠点を変えることのメリットって、やはり大きいんでしょうか。

結論から言うと、変えたほうがいいです。ココと決めた場所が自分や仕事にフィットすればいいですけど、そうならない可能性もありますし、自分の夢に応じて居場所は変えるべきで、変えない理由が見つからないですね。地元に固執する人とかもいますけど、それで幸せならともかく、不満があるなら出たほうがいい。人生一回なんだから、いろんな場所に行った方が楽しいだろうし、生まれた土地が自分に合う場所とは限らないじゃないですか。僕、去年、世界一周に近いことしたんですよ。東南アジアから中東、ヨーロッパと2カ月くらい、ホント起きてから飛行機のチケットを取るみたいな生活をして、そのときに「いろいろ見るのは大事やな」と思ったんです。

自分には、どこが合っているなと感じました?

ヨーロッパ。フランスが漠然と好きで、あとは、中国も大阪っぽいところがあっていいですね。LAとかの西海岸も好きだし、実は今後サンフランシスコに行きたいなと真面目に考えてます。テクノロジーに関して言うと、やっぱり世界の中心はサンフランシスコ、圧倒的にシリコンバレーなんですよ! そこにいると各社の動向がわかるんで、未来がいち早く見えるんです。

これだけ情報が瞬時に世界中に届く時代でも、そこはオフラインなんですね。

GAFAMクラスのビッグテックで働いてる人は、普通に言えない内部情報を持っているので、そのコミュニティに入れたら情報も入るんです。なので、会社はみなさんに任せて、2024年は本気で行こうかなと。僕、社長ですけどデジライズでは最年少で、他は年上のすごい方ばかりですから。

じゃあ、サンフランシスコでまた新しい会社を立てるかも?

でも、今の会社も大事にしたいですし、IPO(株式公開)も目指しているので、そこにつながるような事業はしたいですね。顧問をやらせてもらっているGMOさんでのセミナーとか、国内でのオフライン業務もありますけど、オンラインで何とかならなくもないですし、逆に箔が付きそうじゃないですか? シリコンバレーにいます!ってほうがカッコいいかなって(笑)。

茶圓将裕(株式会社デジライズ)

撮影/中野賢太@_kentanakano