「収入は右肩上がり」乃木坂46からフリーランスになった川後陽菜を支える〝ファン組織〟

FREENANCE MAGにて、新連載がスタート。独立2年目のコンテンツプランナー小沢あやが、気になるフリーランスの方々に、それぞれの仕事論をうかがいます。

第1回目のゲストは、乃木坂46に1期生として加入し、2018年にグループを卒業した川後陽菜さん。芸能事務所に所属せずフリーランスに転身し、現在はイベント出演のほか、オリジナル日本酒や洋服の販売など、マルチに活躍しています。

取材オファーをしたところ、ご本人から早速レスが!スケジュール調整から経理まで、完全に個人で行なっているそう。「守ってくれる大人がいなくて、大丈夫?」「どんな基準で仕事を選んでいるの?」などなど、聞いてみました。

請求書の出し方もわからない状態で活動スタート

小沢

川後さんが乃木坂を卒業してから、1年が経ちましたね。「卒業してもひとりでやれる!」という自信、最初からありましたか?

全然!2017年に卒業宣言してから、実際のラスト公演までは1年あったんですが、その間も乃木坂はずっと上り調子で。「どうしよう、やめるって言わなきゃよかったかも……」って思ったくらいです(笑)。でも、どこかで区切りつけないといけないと思って。最終的には、明るく前向きな気持ちで卒業できました。

川後さん

小沢

他の事務所から引く手あまただったと思いますが、フリーランスとしての独立を選んだ理由は?
大手事務所に所属したら、きっと私を色んな場面で守ってくれるだろうし、仕事も絶えずとってきてくれるだろうなとは思いました。だけど、まずはやってみようと。一度は挑戦するのもいいかなと思ったんです。フリーでもやっていけるくらいの存在感を出さないと、芸能界で生き残れないと思ったんですよ。もっともっと売れて忙しくなって「マネージメントしてもらわないと無理!」ってなったら、また事務所に入ればいいかなって。

川後さん

小沢

フリーランスになって、最初の壁はなんでしたか?
何もわからないから、「フリーランス」で検索するところから始めました(笑)。ビジネスマナーや税金、とくに確定申告については家族総出で調べて勉強しましたね。一番困ったのが、請求書!書き方もわからないし……。

川後さん

小沢

事務作業が苦手で、つい後回しにしてしまうフリーランスは多いですよね。でも、請求書出さないとギャラが貰えないから大変!
最初に「請求書出してください」って言われたときに、超困惑(笑)。迷ったので「どうしたらいいですか?」って、素直に聞くことにしました。そしたらなんと、取引先の方がフォーマット作ってくださったんです!それをいまだに、毎月愛用しています。

川後さん

小沢

知ったかぶりしないでちゃんと聞くの、素直ですね。
周囲の人に、支えられていますね。本当に、私は運がいいなと。おかげさまでフリーランスになってから、辛いことはまったくないんです。

川後さん

気持ちが良いくらい、素直。

ギャラが高い案件を断ることも。目先の欲につられずに仕事を選ぶ

小沢

個人事業主が生き残るには、継続して依頼をくださるクライアントが鍵です。信頼関係をつくるために、普段から川後さんが心がけていることはありますか?
結構、友達感覚で接する方かも!仕事とプライベートを、きっちりとは分けないようにしています。でも、お金の面ははっきり言うようにしていますね。「断れないと損するよ」って、失敗談をよく友達から聞いていたので。自分の仕事に自信を持っているし、弱気にならないようにしています。

川後さん

小沢

ギャラ交渉が苦手なフリーランスも多いですよね。私も心を強く持ちます!川後さんが仕事を選ぶうえで大切にしていることは、ギャラ以外になにかありますか?
ファンからの信頼度が下がることは、すべて断ります。PR案件も、慎重に選びます。本当に自分が自信を持ってオススメできるもの以外は、どんなにギャラが高くてもちゃんと断る!

川後さん

小沢

ついつい欲が出ちゃうけど、目先のお金につられないようにすることが大切ですよね。
逆に、漫画など、カルチャーにまつわる仕事ならギャラが安くても受けることもあります。フリーっていつ仕事が来るかわからないという不安があるから、目先の仕事に飛びつきたくなることもあるけど(笑)、そこは絶対にブレないようにしています。自分が好きなことや、将来の自信に繋がる仕事がしたいんです。

川後さん

ファンがいれば、フリーでも一人じゃない!ファンのサポートで広がる仕事

小沢

仕事の獲得方法に悩むフリーランスも多いと思いますが、川後さんは、営業ってどうしてますか?
乃木坂時代から「やりたい!」と思うことがあれば、声に出してガツガツアピールします。「モデルやりたい!」とずっと言い続けていたら、本当にPopteen(ポップティーン)の専属モデルになることができたんです。「この子は本気なんだな」と、周囲から思ってもらえるくらい言い続ければ、動いてくれる人がきっといて、結果的に実現するんですよ!

川後さん

小沢

口に出すことで、自分自身「やってやるぞ!」という気持ちになれるのも大きいですよね。
声に出せば、動いてくれる人がきっといる
そうそう!私自身の営業だけじゃなくて、ファンの方々が私の営業・宣伝をしてくれるのが大きいです。

川後さん

小沢

ファンの方が?SNSで情報を拡散してくれるということですか?
いや、リアル営業です。私は日本酒のプロデュースをしているんですけど、ファンが行きつけのお店で店員さんに「川後のお酒を置いてくれないか?」って声をかけて、本当に受注してくれたことがありました。デザイナーをやっているファンが、私が出演するイベントのチラシを作ってくれて、会場に配布してくれたことも。本当に、ありがたいです。

川後さん

小沢

ファンのみなさんの自主性がすごい。
川後陽菜ファンクラブのトークルームでも「川後さんをどう売るか」というテーマで、みんなで宣伝プランを練ってくれて。ファン有志がリアル会議も開催しているみたいです。

川後さん

小沢

めちゃくちゃありがたいですね。
いただくファンレターの内容も、ちょっと変わってて……。プレゼン資料が添付されていたりとか、Weibo(中国で人気のSNS)で拡散力をつけるための調査データをまとめてくれたりする人もいます。

川後さん

小沢

海外戦略まで担うマーケターがいるんですね!みなさん、見返りなしで動いてくれるんですよね?
そうですね。繋がりなどを求めず、純粋に応援してくれています。ファンのみんなが背中を押してくれるからフリーランスでも一人じゃないって思えますし、仕事を獲得する上でも本当に助けられています。

川後さん

小沢

乃木坂時代からずっと応援してくれているファンもいますし。
はい。それに加えて、フリーランスになってから、アイドル時代とは違う層のファンがついた手応えがあります。私と同じフリーランスの方が「自分の好きなことを仕事にして、一つのジャンルを極めたい」という私の姿勢に共感して応援してくれることも多いみたいです。

川後さん

小沢

フリーランスになって、アイドル時代とはまた違った価値が、川後さんに生まれたんですね。
そうかもしれません。「ひなちゃん可愛い!」っていうよりは、「一人で仕事を頑張る川後さんを応援します」っていうスタンスかな。自分の生き方を応援してもらえているような気がして、とても心強いですね。

川後さん

重要なのは目標設定。独立後、売り上げ目標は毎月達成

小沢

乃木坂時代に大きな会場に立ったり、TV出演バンバンしていただけに気になるんですが、新たな目標設定ってどうしていますか?
目標は、パッと思いついたときにスマホでメモしておいて、あとから紙に手書きします。手を動かして自分の字で書くことで、頭の中に入りやすいんです。「書いたからには実現しよう」と、強く思えるようにもなりますし。

川後さん

小沢

書き初めみたいな感じですね。川後さんの目標リスト、どんなものが書いてあるんでしょうか?
えーと、ちょっと待ってくださいね。こういうとこで宣言すると、絶対にやらなきゃいけないから……!

川後さん

有言実行精神の川後さん……! 差しつかえない範囲でお願いします。
(少し考えて)地元・長崎でCM!2年以内に実現したいです。あとは趣味が旅行なので、海外でお仕事をしたいですね。目標設定する上で心がけているのは「今のままならできないけど、頑張ればギリギリやれる」という目標を掲げること。すぐできそうなことを書いちゃうと、自分のレベルが変わらず、成長できないので。

川後さん

小沢

自分に対して、程よいプレッシャーをかけるのがポイントなんですね。ちなみに……収入については目標設定していますか?
毎月、売上・収入目標も立てています。フリーランスっていくらでも休めちゃうので、常に緊張感を保つためにも目標は必要かなと。

川後さん

小沢

達成率はどうでしょうか?
独立してからは毎月達成、右肩上がりです。 具体的な額は言えないですけど、おかげさまで2019年はこれまでの人生で、最高年収! 毎月の目標金額は、2018年(乃木坂46所属時代)の年収を12で割って算出しました。

川後さん

小沢

乃木坂時代を超えたんですね。独立初年度から、勢いがすごい。具体的に、どんな努力をしているんですか?
「今月はこのままだと未達だな」と感じたら、そこで諦めずにSNSで「お仕事ください!」って発信しています。人脈を使って仕事を探したり、仕事につながりそうなバイトをやることもあります。

川後さん

小沢

バイトまで!とにかく諦めずに、なんとしてでも達成する姿勢が大事なんですね。
あとは、売上を維持するにはレギュラーの仕事も重要なので、できるだけ長くその仕事を継続できるよう、現場で良い人間関係をつくれるようにしていますね。お世話になっている方には、自分のプロデュースした日本酒にメッセージカードを添えて、何かの折に差し入れすることもありますよ。

川後さん

小沢

人間関係、本当に大切ですよね。そうそう。働き続けるためにはしっかり休むことも大切ですが、スケジュール管理はどうしてますか?
毎月1回、必ず旅行に行くと決めています。休みは、基本それだけですね。数カ月先までの旅行の予定を先に決めて、そこから仕事のスケジュールを埋めていきます。

川後さん

小沢

旅行と受けたい仕事の日程がかぶっちゃったときは?
スケジュールをずらせないかクライアントに依頼します。仕事を優先してばかりいると息が詰まってしまうので、断る勇気も必要だと思うんです。でも「川後」ありきでオファーしてくださった案件なら、意外と日程をずらしてくれることもあるんですよ。

川後さん

小沢

指名されるような仕事をしていれば、プライベートの予定を入れても大丈夫ってことですね。ちなみに、お金を使う方はどうですか?
必要に応じて投資もします。今後仕事に繋がりそうな海外旅行や美容、漫画には、どんどんお金を使うようにしています。とくに、コスメ代は惜しまない!アイドル時代からの男性ファンが多いけど、これからは女性ファンも増やさないと長くやっていけないなと思うんです。だからこそ、コスメやファッションについて、どんどん発信したい。

川後さん

小沢

既存顧客とは別の領域も攻める、ということですね。
もしかしたら、男性ファンは「女の子の方を向いちゃってるの?」って思っちゃうかもしれないけど、女性ファンを増やさないと、川後が強くなれないので。昔からのファンの方とはちゃんと信頼関係があるので、「コスメ興味ないかもしれないけど、ごめん!見ててね!」という気持ちでやっていますね。

川後さん

小沢

「ファンならわかってくれる」という安心感が、川後さんをチャレンジさせるんですね。
そうですね。私自身もっと成長して、乃木坂のメンバーと、また一緒に大きな仕事がしたいんです。みんなの活躍を見ていると、本当に自分も頑張ろうと思える。メンバーもマネージャーさんも、よく連絡をくれるんですよ。いつか、私のプロデュースした商品のモデルをしてもらいたいですね。

川後さん

# 編集後記
国民的アイドルという華やかな世界でやってきた川後さんですが、意外にも堅実でした。乃木坂を卒業してからは、「フリーランスになるんだから、節約しないと」と家賃が安いアパートに引っ越したり、貯金推移額をきちんとメモしたりしているそう。しぼるところはしぼり、適切な自己投資は忘れない姿勢、勉強になります。

そして彼女の強みは、取引先やファンの方と信頼関係を築けていること。個人事業主には、上司がいません。フィードバックがないため、成長機会が失われてしまうこともあるかもしれません。川後さんの「わからないことは素直に聞く姿勢」、見習いたいですね。

取材・文/小沢あや(@hibicoto)撮影/須合知也