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知的好奇心に勝るものはない。AI普及に賭ける使命感とは? 茶圓将裕(株式会社デジライズ)インタビュー

知的好奇心に勝るものはない。AI普及に賭ける使命感とは? 茶圓将裕(株式会社デジライズ)インタビュー

インターンとして上海に渡り、現地で動画求人サイトを立ち上げる等、学生時代から起業家として活動していた茶圓将裕さん。コロナ禍のあおりで中国から帰国した後も、人事やIT関連の事業を行うなか、人生を変えたのがAIとの衝撃的な出会いだったそうです。

日本初のリアルタイム添削のAIと語学学習ができる『AI会話』を皮切りに、AI関連サービスを次々リリースして、昨年は企業向けAI研修と独自開発した企業向けChatGPT「AI Works」の提供と導入支援を行う株式会社デジライズを創立。「日本におけるChatGPTの普及率を7、8割まで持っていくことが僕の使命」と明言する茶圓さんが見据える近未来のビジョンについてお聞きしました。

profile
茶圓将裕(チャエンマサヒロ)
学生時代に英語圏での1年間の留学後、上海にて日系人事コンサル会社にて法人営業に従事。延べ100社以上の人事評価制度構築に携わる。
日本に帰国後はSNSマーケティング事業の会社を企業。2022年には世界初の食べて稼げるeat to earn NFTゲーム「Eatnsmile」をスペインにて共同創業。
帰国後はAIチャットボット「AideX」、AI語学学習ツール「AI会話」などAI関連サービスを複数開発。現在はX等でAI情報発信を行い(フォロワー10万人以上)、AI専門家としてTBSテレビやABEMAにも複数回出演。
GMO AI & Web3株式会社顧問、一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、2023年に法人向けAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する「株式会社デジライズ」とを立ち上げ代表取締役に就任。NewsPicksプロピッカーも兼任。
https://twitter.com/masahirochaen
https://www.instagram.com/masahirochaen/

起業家としてのスタートは上海

茶圓将裕(株式会社デジライズ)

大学在学中にオーストラリア・アメリカに留学に行かれたそうですが、帰国したら普通は大学に戻って就職に向かうのが定番なところ、茶圓さんの場合はかなり違う道に進まれていますよね。

その前に、まず「留学」と聞くとお金持ちのイメージがあるかもしれませんが、違うんです。強制的に留学しないといけない学部に、僕、知らずに入学したんですよ。そしたら1年留学するのに生活費と授業料で300万必要だと言われたんで、勉強を頑張るともらえる給付金と貸与奨学金で半分用意して、あとはバイトで貯めたんです。

朝はパン屋、昼は家庭教師、夕方は塾講師。夜は居酒屋と、夏休みは28日連続で掛け持ったりしてましたね。その反動か、現地に行ってからは何も勉強せず、メチャクチャ遊んで! 英語だけは人並みになりましたけど、燃え尽きた状態で日本に帰ってきたんです。

では、日本に戻ってからインターンをされていたのも、特に目的があったわけでもなく?

そうですね。インターンって大学生だったら割と軽い気持ちでやるものだし、“なんかやんなきゃな”と思ってた程度でした。ただ、インターンを大義名分に労働力を搾取しているような企業もあるなかで、僕がお世話になった「未来電子」はインターン教育にかなり力を入れていて。例えば”聞く力”についての課題図書を渡されたりもして、当時はマンガしか読んでいなかったのが、読んでみたら意外と面白かったんですよ。そこで初めてビジネスに興味を持つようになり、日経新聞とかも読み始めるようになったんです。

ただ、そのまま未来電子に入社するのではなく、突然上海に行かれたのはどういった経緯だったんでしょう?

未来電子でインターンしていたのは1年半くらいだったんですが、当時の上海はキャッシュレスとかシェアリングエコノミーとかで急成長していて、まるでシリコンバレーのようになっていたんですよ。それで、どんなものか自分の目で見てみたいなと思うようになったんです。でも、また留学するとなると、お金がかかるじゃないですか。じゃあインターンとして行こうと、日系企業で上海に拠点のある企業をリストアップして。その中でも利益率の高いコンサル系ならチャンスがあるかも……!と、インターン時代の人脈づてに、「あしたのチーム」の方につないでもらったんです。それで、お会いするなり「上海に行かせてください!」って熱意をぶつけたら気に入っていただけて(笑)。

あしたのチームが報酬と連動した人事評価制度のシステムを提供している会社だったので、日系企業を中心にテレアポして営業してました。もう、砂嵐が吹き荒れる内陸の地方とかも回りましたね。当時、道路が舗装されていない場所もあれば、都市部は完全に先進国っていうギャップが面白くて。同じアジアなので馴染みもあるし、それで独立して動画求人サイトを立ち上げたんです。もともと人事系の領域をやっていたから、採用領域もやろうかなと。

しかし、そもそも中国で起業するというのが大胆すぎますよね。まったくイメージできません。

でも、登記自体は会計事務所にお願いできれば簡単ですからね。で、そのまま中国に骨を埋めるつもりでいたのに、コロナが来ちゃったんですよ。テレビを見て「武漢がすごいことになってるなぁ」と思ってたら、1週間後には上海がロックダウンされて、人っ子一人いなくなって。これは……と僕が出国した2日後には完全に家から出られなくなりましたね。

起業はハイリスク・ハイリターン?

茶圓将裕(株式会社デジライズ)

ちなみに中国に行っている間、大学の方は……。

ずっと休学してたんですけど、結局、復学はしませんでした。帰国してからは、上海で一緒に会社を作った人が沖縄にも会社を持ってたんで、僕も沖縄に行って。その会社からの業務委託みたいな形で、営業の代行とかマーケティングの支援とか、1年半くらいしてました。ただ、やっぱり自分の会社を持ちたくて、上京して、ツイッターを中心としたSNSの運用代行の会社を立ち上げたんです。採用系の事業をする中で、SNSを通じて人材募集するほうが得だというのは、実体験として身に染みてたんですね。

なるほど。一つ質問なんですが、やはり起業するって、一般的には非常にハードルの高いイメージがあるんですね。節目を迎えるたびに、大学に戻るとか就職するとかではなく、常に起業を選ぶのは何故なんでしょう?

その理由は二つあって、まず一つは家庭環境です。僕、祖父が流し台のシンクを作る会社の社長をしていたので、4歳までは結構お金持ちだったんですよ。でも、父親が継いだら市場が縮小傾向だったのと、経営手腕がまずかったらしくて会社を潰してしまい、十何億の借金をして自己破産したんです。おかげで、豪邸から大阪の2部屋しかない家に5人家族で引っ越して、急に生活が変わって。

父親も何度か転職して、僕が高校生の頃には生活も落ち着いてきたんですけど、そのときはじめて母親から「実はウチは自己破産したんだ」と聞かされたんです。そこで最初に湧いた最初の感情が“ラッキー!”だったんですよ。

自己破産したのに? 何故!

だって、自己破産しても10年以上息子にバレることもなく、結果的に息子3人育て上げることができたわけですから。よく、起業はハイリスク・ハイリターンだって聞くけれど、いや、セーフティーネットが充実している日本においてはゼロリスクじゃないかと。もちろん破産当時の状況について、母親は「大変だった」って言ってますけど、結果、みんな元気にしてるんで。

もう一つは性格的なもので、僕、昔から学級委員長とか野球部キャプテンとかをやるのが好きだったんです。要するに、目立ちたがり屋なんでしょうね。イーロン・マスクとかの経営者にも憧れがあって、ああいう人口の1%くらいの突き抜けた人たちが、クリエイティブなことにチャレンジしないと世界は発展していかないと思うんですよ。この二つのトータルで、失敗しても死なないんだから面白いことをやりたい、という思考になったんですよね。

ChatGPTとの出会い

茶圓将裕(株式会社デジライズ)

確かに世の中の全員が安定した会社員でいようとしたら、社会は進化していかないでしょうね。その後、2022年には世界初の「食べて稼げる」アプリ、EatnSmileをスペインで共同創業されたりしつつ、現在はAI関連の事業に注力されるようになったキッカケは何だったんでしょう?

もともとITが好きでトレンドを追っていたんですが、2022年はWeb3がメチャクチャ流行っていたんです。STEPNっていう歩いて稼げるゲームだとか、いわゆる仮想通貨まわりが活況だったんですね。EatnSmileもその一環だったんですけど、そのうちにWeb3の市場が縮小していくなか、2022年の11月にChatGPTに初めて触れて、これはヤバい!と衝撃を受けたんです。

「おはよう」って打ち込んだら返事が来て、会話できることにビックリしたんですよ。これは世界が変わる!と、そこからは家に籠り、ひたすらいろんなAIツールを調べたり試したりして、結果をツイッターでアウトプットしていきました。ChatGPTだけでなく、画像生成だったり動画生成だったり、いろんなAIツールを研究したので、AIツール山手線をやったら日本でトップクラスの自信はあります(笑)。

でも、ChatGPTって正確性に難がありません? 「○○について教えてください」と打ち込むと、まったくのフィクションが出てくることもありますよ。

最新の論文ベースだと正確性は97%なんですが(※)、やっぱり向き不向きはあるので、間違えないようにプロンプト(指示)を打ち込むべきなんです。例えば、体調が悪くて日程調整をメールでお願いしたい場合、「体調不良」「日程調整」「すみません」って入力すれば、ほぼ完璧なメール文面を出してくれますよ。

https://twitter.com/masahirochaen/status/1734100896169308177

「型」を完璧に言語化して完璧に教えるほど精度は高くなるので、アメリカだとプロンプトエンジニアは年収4,000万ぐらい稼げる職業になっているんです。なので、ポイントはプロンプトの仕方と、あとは使っているモデルですね。無料のWeb版ChatGPTは入力可能文字が約6,000文字ですけど、有償版のChatGPT4になると、API版GPT-4 Turboなら約10万文字入力できるので、そのぶん精度も上がります。画像生成やファイルの分析もできますし、無料版のChatGPT3.5に比べて性能と機能に格段の差がありますね(※)。

※2024年1月現在
https://openai.com/chatgpt/pricing

やはり使い方次第ということですね。ちなみに今、AI関連事業を次々に立ち上げられているのは、成長が見込める分野で大きな利益が見込めるからなのか、それとも、世界を変える技術を世に普及させたいからなのか、ぶっちゃけどちらでしょう?

利益云々は、そんなに気にしてないですね。お金のことだけ考えたら、SNSの企業向け運用代行をしている方が効率よく、ゆったり暮らせますよ。ただ、やっぱり知的好奇心に勝るものはないんです。

例えば今、注目してるのは人間のAI化で、オンライン上に僕の声と僕の顔が生成されてリアルタイムで会話できるっていう、いわゆるデジタル上のクローンですね。性格とかも多少反映させられるんで、そのへんは事業関係なく、純粋に興味があります。基本、起きてる間はずっとパソコンを触っていて、もはや娯楽=リサーチみたいになってますし、金銭目的で動いてる人ってAI業界には少ないと思いますよ。

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