フリーランス・個人事業主として仕事をする上で欠かせないのが「請求書発行」という業務。基本的な書き方は理解しているけど、実は正確なルールを知らないという人も少なくないのでは?最近は請求書を電子化してメールで送るのが主流になってきたので、その場合のルールも正確に把握しておきたいですよね。
今回は、フリーランス・個人事業主が知っておきたい請求書のルールや電子化された請求書をメールで送る際の注意点などを税理士が解説します!
【請求書の基礎知識】
請求書の存在意義は?発行しなくても報酬を支払ってもらうことは可能
個人事業主の中には「うっかり請求書を発行し忘れた!」なんて事態を一度は経験している人もいるのではないでしょうか。
実は、法律的には「報酬を支払ってもらうために請求書が絶対必要」というわけではありません。契約が成立していれば報酬を支払ってもらう権利がありますので、業務委託契約書、発注書、見積書、メールなどで「いつまでにいくら支払ってもらうか」が約束できていれば請求書は不要です。発注書や見積書は納品前の約束で不確定要素も含まれていますから、一番有効なのは契約書です(口頭でも契約は成立しますが、いざという時に証明が難しくなります)。
しかし、請求書を発行しないとクライアントが振込先などを把握できていない可能性もありますし、そもそもクライアントに「請求を受けている」という認識がないかもしれません。それを避けるためにも、取引終了後にはきちんと請求書を出すのが一般的です。
税務・会計上は請求書の保存義務がある
ただし、ここまでは「法律上」の話であって、「税務・会計上」は異なります。
税務調査が入ったときに「口座に100万円の入金があるが、これは何か」と聞かれた場合、請求書も契約書も残っていなければ証明が難しくなります。結果、税務調査において主張が否認されてしまうリスクが出てきますので、請求書があった方が安心なのです。また税法上は、一定期間、請求書を保存する義務があります。
法律上「請求書はいつまでに送るべき」という決まりはない
法律上は、「取引完了から何日以内に請求書を送らなければならない」というルールはありません。しかしクライアントの経理処理等の都合上、「毎月何日までに請求書を送ってもらわないと、月末までに支払えません」というルールはあるでしょうから、事前に確認しておきましょう。
請求書のテンプレートは原則「自由」
「請求している」ことがクライアントに伝わればいいので、請求書のフォーマットやテンプレートに特段ルールはありません。クライアントからフォーマットを指定されることもあるでしょうが、必ず応じなければいけないわけではありません。ただし円滑な取引を心がけるのであれば、従っておくほうが無難でしょう。
請求書に記載する項目は?
請求書に記載する必要がある項目は以下です。
項目 | 記載内容 |
タイトル | そもそも何の書類かを伝えるために、目立つ場所に「請求書」と記載 |
請求先 | 誰に請求するかを伝えるために、クライアントの社名・住所・案件担当者などを記載 |
発行者 | 誰からの請求であるかを伝えるために、自分の名前(屋号)や住所などを記載 |
発行年月日 | 請求書を発行した日付を記載 |
請求内容 | 請求する内容・単価・数量・金額を記載 |
請求金額 | 請求内容の金額に消費税を加えた合計金額を記載。源泉徴収の対象である場合は、源泉徴収後の金額を記載するのが一般的 |
振込先 | 報酬を振り込む銀行名・支店名・預金種別・口座番号・口座名義を記載 |
支払期日 | 報酬をいつまでに支払ってもらうか、支払期日を記載 |
【電子化した請求書を送るときの基礎知識】
電子化した請求書の法的効力は書面と一緒
最近は電子化した請求書をメール等で送る方法も主流になっています。
ファイル形式は原則自由ですが、エクセルやワードは請求書送付後に金額や項目を簡単に編集できてしまう懸念があるため、PDFで送るのが一般的です。
「データを送るだけでいいの?」と不安に感じる人もいるかもしれません。電子化した請求書をメール等で送ることは、書面の請求書を渡すのと同じ法的効力があります。メール等で請求書を送った後に、追加で原本を郵送する必要はありません。
ただしクライアントから「原本も欲しい」と言われた場合は、先方の社内ルールでそう決まっているのでしょうから、今後の円滑な取引のためにも対応すべきでしょう。
電子化した請求書に印鑑は必要?
請求書を電子化するときに、書面のように印鑑を押せないので困ってしまう人も多いと思います。しかし請求書においては、「印鑑がないと支払ってもらえない」わけではありません。これは、請求書を書面で発行するときも同じくです。
ただし、請求書に印鑑を押すことで「これは間違いなく私が発行したものです」ということを証明できる、つまり「偽造防止」につながります。メールで請求書を送る場合は、そもそも送信元のメールアカウントによって証明できますが、印鑑があればなおさら安心というわけです。
まとめ
請求書関連で大きなトラブルが起こる可能性はそう高くないかもしれませんが、「毎月●日までに請求書を送ってほしいというクライアント側のルールを知らなかったため、予定日に報酬が得られず困ってしまった」「悪意はなかったが、すでに支払われている報酬を再度請求してしまい、クライアントとの信頼関係に支障が出た」なんてミスは起こりがちです。そうならないように、請求書関連のことはしっかり管理しておきましょう。
請求書発行はフリーランス・個人事業主の必須業務ですので、ルールをきちんと知ってスムーズに進めてくださいね!
2020年、30歳で名古屋市内にて税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界では数少ない若手税理士。単発の税務相談や執筆活動なども行い「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。同年代の経営者やフリーランス、副業に取り組む方々の良き相談相手となれるよう奮闘中。
服部大税理士事務所
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