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市区町村運営の国民健康保険は、所得が増えるほど負担額が大きく
フリーランスの中には「国民保険料が高い……」という悩みをお持ちの方は少なくないと思います。一般的なフリーランスは、市区町村の「国民健康保険組合」に加入します。国民健康保険の負担額は市区町村によって異なり、地域によっても負担額に差がありますが、収入(税引き後の総所得金額)が大きいほど、負担も大きくなります。
例として、広島県広島市で1人世帯、加入者は35歳で介護保険料を支払う必要がないというケースを想定します。(参考:広島市の国民健康保険料目安表)
- 年間の総所得金額330,000円で、年間保険料は20,748円
- 年間の総所得金額6,000,000円で、年間保険料は635,033円
最高額と最低額の差は年間で約61万円です。このように、市区町村や所得によって大きく額が異なる市区町村運営の国民健康保険では、所得が増えるほど負担額も比例して大きくなります。
そのため、業界によっては、従事者の職域ごとに国民健康保険が存在するケースがあります。医師のための「全国医師国民健康保険連合会(全医連)」や、建設業従事者のための「全国建設工事事業国民健康保険組合(建設国保)」など職種・職域毎にさまざまな種類があります。
文芸美術国民健康保険(以下、文美国保)もその一つです。
具体的な制度内容についてはこの後に詳しく解説しますが、市区町村の国民健康保険に加入するよりも、毎月の国民保険の費用を抑えられる可能性があります。
文芸美術国民健康保険組合は、国民健康保険と何が違う?
文美国保は、デザイナー・作家・ライター・フォトグラファー・美術など、クリエイティブな業務に関わる人が加入対象となっています。
文美国保への加入するには、下記の条件を満たす必要があります。
- 日本国内に住所を有していること
- 文芸、美術及び著作活動に従事し、かつ、組合加盟の各団体の会員であること(会員の家族も含む)
- 個人事業主であること(法人の場合は、健康保険が強制適用されるため、国民保険には加入できない)。社会保険・失業保険・厚生年金などが適用されている給料制の社員は加入不可。
- 後期高齢者(75歳以上、または65歳以上75歳未満で広域連合より認定を受けている障がいのある方)は加入できない
この中でポイントとなるのが、「文芸、美術及び著作活動に従事し、かつ、組合加盟の各団体の会員であること」という条件です。文美国保に加入するためには、まず文美国保に加盟している団体の会員になる必要があります。
文美国保に加盟している団体をご覧いただくと、極めて多種多様です。
(参考:文芸美術国民健康保険組合「加盟団体一覧表」)
どうやったら加入できる?
文美国保に加入するためには、まず前述の文美国保に加盟している団体の会員になる必要があります。自身の扱う業務が、加盟団体の業務と一致することが前提です。また、団体によっては独自の加入条件を設けており、例えば日本デジタルライターズ協会の場合、以下2つの条件を満たす必要があります。
2)申し込みには2年以上の会員歴がある会員からの推薦が必要
(参考:日本デジタルライターズ協会)
加盟料や預託金、年会費などが必要な協会もありますので、加入検討時に初期費用や年間の費用がいくらかかるかも確認しておくと良いでしょう。
加入できないのはどんなケース?
加盟団体に加入できたからといって、文美国保にも必ず加入できるという訳ではありません。日本デジタルライターズ協会のFAQには、下記のような留意点が記されています。
(参考:日本デジタルライターズ協会)
一般社団法人 日本ネットクリエイター協会の記事では、文芸美術国保について、下記のようなパターンは文美国保への加入は厳しいと記載されています。
(参考:一般社団法人 日本ネットクリエイター協会)
文芸美術国民健康保険組合に加入するメリットは?
文美国保のメリットは、収入比例で保険料が上がるのではなく、純粋に組合員やその家族の人数に応じて保険料が決まる点です。例えば、JDPU Japan Design Producer’s Unionの、文芸美術国民健康保険組合保険料のページを見ると、以下のように書かれています。
- 組合員1人月額(医療保険 後期高齢者支援金分含む)19,900円
- 家族1人月額(医療保険 後期高齢者支援金分含む)10,600円
- 1人月額 介護保険分 4,300円
(参考:JDPU Japan Design Producer’s Union)
以上の通り、市区町村の国民保険と異なり定額となっています。市区町村の国民健康保険は収入が多くなるほど保険料が増えますので、「たくさん稼いでいる人」ほど、文美国保に入るメリットは大きいと言えるかもしれません。
加入するデメリットはある?
文美国保に加入するデメリットは特にないと思われますが、一定の所得以下の場合、文美国保の保険料の方が、市区町村の国民健康保険・介護保険料よりも高くなる可能性があるということです。
収入・自治体の計算・介護保険の有無などさまざまな要因があるため、一概に所得が「これ以下ならば文美国保の方がお得になる」とは言いにくいですが、大まかな目安を出すと「税引き・所得控除後の総所得が200万円前後、もしくは200万円以下」だと、国民健康保険の方が負担が軽くなる可能性が高くなります。
審査が厳しいって本当?落ちたらどうなる?
文美国保は、審査が厳しいという情報も目にします。
しかし、審査が厳しいというよりも、文美国保の本来の目的である「文芸・美術・クリエイティブに従事する人のための組合」であることを大切にしているという印象です。
文芸・美術等以外の要素が強い業種(前述のアフィリエイトのような広告業など)は、文美国保の資格としては適していないと判断されるという可能性があります。
なお、文美国保加入時には、以下のものを提出します。
- 所得税の確定申告書Bの大一表、大二表
- 所得の内訳書(税務署に提出している場合のみ)
- さらに必要に応じて、
- 文芸、美術及び著作活動に従事していることがわかる書類
- 注文書や領収書、請求書など、数点の証拠書類
- (作品がある場合は)作品をA4用紙にコピーして制作年、納品先名称、作品名を明記したもの
文美国保の審査に落ちた場合は、
- 自身が他に事業を行っている場合は、その事業での健康保険組合に加入できないかを検討する
- 該当する健康保険組合がない場合は、通常の国民健康保険に加入する
- 法人化して役員報酬を減らすことで国民健康保険を圧縮する
などの方法が考えられます。
良い制度なのに、認知度はやや低い……?
文美国保は対象となる人にとっては、お得な国民健康保険組合です。しかし、特定の業界内で使われる国民健康保険(前述の医師国民保険組合・全国建設工事業国民保険組合や、弁護士国民健康保険組合・税理士国民健康保険組合など)のように、その職務に就いた時点で紹介される国民保険組合と異なり、
- まず存在を知る必要がある
- 加入資格を満たしているか審査を受ける必要がある
という点から、他の業種毎の国民健康保険と比べて、知名度が上がりにくいのかもしれません。
まとめ
以上、文芸美術国民健康保険(文美国保)に関してまとめました。
クリエイティブに携わるフリーランスには特におすすめで、収入が多いフリーランスほど、保険料削減のメリットも大きい制度です。業界団体加入、文美国保加入と手続が必要なので、加入前にしっかりと事前確認を行ってから手続を進めましょう。
また、フリーランス・個人事業主の方にはこんな保険もおすすめです。
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