『ファイナンシャルプランナーに聞く』 フリーランスが蓄えておくべき老後資金はいくら?(前編)

高齢化が加速する中、何かと気になるのが老後資金。

特に会社員と違って厚生年金が支給されないフリーランスは、より老後資金に対する不安は大きいのではないでしょうか。

今回は多くのフリーランスの相談に応じている、ファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さんにお話をお聞きしました。

貯金計画はもちろん、自分のライフスタイル計画を立てることが重要

まず自分がフリーランスだからといって、老後資金について過度に焦ったり心配したりする必要はないと思いますが、今すぐに「計画」は立てるべきだと思います。

ファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さん

計画というと、貯金計画ですか?

貯金計画はもちろんですが、ライフスタイル全体に関する計画ですね。老後に毎月どのくらい生活費が欲しいのか、毎月どのくらいお金が入ってくるのかを整理して、今から蓄えておくべき金額を算出するんです。

夫婦ともにフリーランスのAさん夫婦の例を見ながら考えてみましょう。

例えば夫婦そろってフリーランスの場合は、夫婦合わせて毎月の年金支給額が約13万円になりますので、「もらえるお金」は13万円です(夫婦とも国民年金のみの場合)。

また65歳以降の生活を考えたときに、月30万円ほど必要だとイメージした場合、「必要になるお金」は30万円になります。

これらの情報を以下のシートに入力して、蓄えるべきお金を算出してみましょう。

【夫婦ともにフリーランスのAさん夫婦の場合】

国民年金が夫婦合わせて月13万円、住宅ローン完済済の持ち家有り、65歳で退職

1:もらえるお金 毎月( 13万 )円

2:老後に必要な生活費 毎月( 30万 )円

3:毎月不足するお金 ( 30-13=17万 )円

夫婦共に( 88 )歳まで生きると仮定すると( 88-65=23 )年

( 23 )年× 12 =( 276 )ヶ月、毎月17万円ずつお金が不足することになります。

4:蓄えておくべきお金 ( 276 )ヶ月×( 17  )万円= 【 4,692万円 】

上記の( )部分に、自分の数字をあてはめて計算してみましょう。

このケースだと、用意しておくべき金額は夫婦で約4,700万円ということですか。なかなか厳しいですね。

そんなに悲観的になる必要はありませんよ。

現在の夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦の平均生活費は月約26万円です。持家か家賃のかかる賃貸かどうかにもよりますが、毎月30万円あれば旅行や外食などを楽しむ「余裕のある生活」ができそうですね。

でも「自分たちは月に20万円で十分!」というならば、準備するべき金額はもっと低くなるわけです。自分たちは毎月どのくらいお金をかければ幸せに老後を過ごせるのか、この機会に考えてみてもいいかもしれませんね。

しかしこうして見ると、年金支給額が少ないのはフリーランスにとって頭が痛い問題ですね。

そうですね。20歳から60歳までの40年間、国民年金のみ支払ってきたフリーランスが老後に毎月もらえる額は今65,000円程度で、しかも今後は少子化にともない、年金を支えてくれる現役世代が減るわけですから、金額だって減ってしまうかも知れない。

だからといって「老後のことを今から考えても仕方がない!」と、面倒な問題に蓋をしてしまうのは良くありませんので、しっかり向き合いましょう。

特に養うべき家族がいるのに、年金が未納状態の方は要注意です。家族のいる方にとって、老齢年金と同じくらい重要になるのが障害年金と遺族年金なんです。

障害年金と遺族年金とは?

障害年金は、病気やけがにより一定の障害を負った場合に受け取ることができる年金です。 そして遺族年金は、被保険者が死亡した時に、その方によって生計を維持されていた一定の遺族が受けとれる年金です。国民年金に加入するフリーランスの場合は、18歳までの子どもがいる配偶者などが受け取れます。

このように、老後の年金だけでなく、自分に何かあったときに家族を守ってくれる役割がある年金ですが、直近1年以上は保険料の滞納がないことが支給の条件なんです。だからきちんと保険料を払っていることが大事なんですよね。

フリーランスなら「65歳以降も働く」という選択肢がある

フリーランスは会社員に比べて年金受給額が少ないという、ちょっとネガティブな話になってしまいましたが、実は老後資金について考えたときに、会社員よりもフリーランスの方が有利な点があるんです。

会社員は多くの場合65歳で定年を迎えて退職することになりますが、フリーランスは65歳以降も働き続けるという選択肢がありますよね。

ファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さん

しかし、65歳以降も現在の仕事を続けるのは、体力面などで難しいと感じる人も多い気がします。

若い頃と同じ仕事ができなくてもいいんですよ。

例えばこれまでフリーランスでデザイナーをしていた女性が、元々の趣味を生かして65歳からは着物の着付け教室を開催するとか。何か資格を取得しておいて、それを生かしてシニアで起業することだってできると思うんです。65歳以降も働き続けるチャンスはいくらでもあります。

もちろん、働き続けるチャンスがあるのは会社員でも同じですが、会社員はどうしても日々の仕事に追われて、新しい可能性を模索する時間 のとりづらさがあると思います。しかしフリーランスなら、早めに準備をしておくこともできますよ。

老後を考えて、今のうちからパラレルワークをするという方法もありますしね。

ええ。ちなみに私は65歳以降に新しいことを始めるには、人脈がすごく重要だと思います。フリーランスなら会社という枠にとらわれず、いろいろなところに積極的に飛び込んで、人脈を広げることができますよね。何十万円も稼ぐことは難しくても、65歳以降に毎月3〜4万円収入があるだけでも、だいぶ違ってくると思います。

65歳以降も自分のペースで働くという意欲があれば、老後資金についての不安はだいぶ軽減できるのではないでしょうか。

本当にその通りですよね。ありがとうございました!

取材・文:FREENANCE編集部 

『ファイナンシャルプランナーに聞く』 フリーランスが蓄えておくべき老後資金はいくら?(後編)

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鈴木さや子
株式会社ライフヴェーラ代表取締役 ファイナンシャルプランナー(CFP®)・1級FP技能士・DCプランナー1級・キャリアコンサルタント(国家資格) All About学費・教育費ガイド-毎日を笑顔で過ごすために、生活に役立つお金の情報やキャリアの考え方を、セミナーや雑誌のコラム、ブログ、Facebookなどを通じて発信。保険や金融商品などを一切販売しないFPとして活動中。
株式会社ライフヴェーラ