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支払い遅延などのお金のトラブル回避のために、発注書に盛り込んでおく内容とは?【弁護士が解説】

支払い遅延などのお金のトラブル回避のために、発注書に盛り込んでおく内容とは?【弁護士が解説】

※この記事は2021年2月時点での最新情報に更新されています。

フリーランスにとってもっともツラいことのひとつがクライアントとのお金のトラブル。予定していた日に入金されなかったり、支払日に対する認識の相違があったり、場合によっては納品が遅れたことによる損害賠償を請求されるケースも。フリーランスにとって絶対に避けたいお金に関するトラブルの回避方法について、弁護士の細越さんに解説していただきます。

よくあるトラブルは、ギャラの未払いや遅延、納品物の瑕疵など

まず、フリーランスに起こりがちなお金のトラブルで代表的なものを教えてください。

よくあるトラブルといえば、ギャランティの未払いや遅延、さらに納品物に瑕疵があった場合(納期遅れなども含む)の損害賠償といったことが一般的ではないでしょうか。

でも、これらは企業でも起こりうることですが、フリーランスの場合、クライアントとの力関係が大きく影響するケースが見受けられます。例えばクライアントから「これお願い」と依頼され、契約書などを作成せずに仕事にとりかかる、というケース。この場合「何を作って」「いくらで」「いつ納品して」「いつ入金されるのか」という大事な部分が曖昧なまま仕事が進んでいきます。そして、いざ制作してみたら「イメージと違う」などと言われ、修正を繰り返した結果、当初想定していたものよりも時間がかかりすぎて疲弊してしまう、というのはよくあるパターンですね。

費やした労力や時間に見合わないギャランティしかもらえない、といったトラブルですね。

修正の回数を事前に決めておいて、例えば「3回目の修正からは別途金額がかかります」などと合意できればいいのですが、力関係はクライアントのほうがどうしても強い立場なので、なかなか言い出せないことが多いですよね。

最低限の条項を盛り込んだ発注書は必ず入手すること

CST法律事務所 弁護士 細越善斉
CST法律事務所 弁護士 細越善斉さん

まず知っておいてほしいことは、フリーランスも「下請法」により保護されているということです。下請法では「何を」「いつまでに」「いくらで」「支払日はいつ」などといった最低限の条項を盛り込んだ発注書を作成し、交付しなければいけないと定められています。

また、下請法は、優越的地位の濫用を禁止した独占禁止法を補完する法律として制定されていますので、親事業者による下請代金の不当な減額や支払遅延が禁止されています。これらのことを頭に入れておいたほうがいいですね。

発注書に盛り込む条件「何を」「いつまでに」「いくらで」「支払日はいつ」

下請法、これはフリーランスには大きく関係してきますよね。

そうですね。また、契約書を交わす場合でも、相手方のほうが立場的には強い場合が多いですから、提示される契約内容は、相手方に有利な場合がほとんどでしょう。その場合でも、契約内容を確認して、致命的な内容がないかについては最低限チェックする必要があります。

例えば、「クライアントの一方的な意思表示で契約を中途解約でき、しかも、違約金や出来高報酬も発生しない」といった契約内容となっていれば、さすがに致命的な契約内容といえると思いますので、修正を求めた方がよいでしょう。あくまで合意に基づき業務を行うわけですから、一方的な契約内容となっていないかということはしっかりと確認していただきたいですね。

トラブルが起こった場合は、メールやLINEも重要な証拠に

フリーランスの場合、クライアントとの継続的な取引のためには、関係性を悪化させないということも大事な要素だと思います。そのため、問題が起きたとしてもなかなか強く言えない場合もあると思いますが、関係性が壊れても構わないので許せないという場合には、毅然と対応することも検討しましょう。例えば、公正取引委員会や中小企業庁に「●●は下請法に違反しています」という通報を行うことなどが考えられます。

トラブルが起きた場合には、できるだけ早く対応することを心がけてください。また、トラブル発生時に自分を守れるような「証拠」も残しておくようにしましょう。

どんなものが証拠になりますか?

例えば最近は、メールのやりとりが裁判上の証拠として多く利用されています。ですから、大事な連絡はメールやLINE、ビジネスチャットなど、客観的に残る形でやりとりをするように心掛けましょう。

合意内容は何かということが重要ですので、例えば、「〇〇円でお請けします」というメールに対して、電話でOKをもらったもののメールの返信はないという場合、こちらの送信メールだけで○○円での合意が成立したことを直ちに立証できるわけではありません。

そして、電話でのやりとりは、言った言わないの世界であり、立証が非常に難しいという問題があります。そこで、このような場合は、例えば電話でOKをもらった場合でも、「先ほどの電話の件ですが、念のため、確認をさせていただきます……この内容でよろしいでしょうか」というメールを送信し、了承のメールをもらっておく、つまり証拠化する、ということを是非心がけてください。

立証が難しいケース/立証しやすいケース

自分の身や権利は自分で守るしかありません。下請法などの基本的な法律の知識と、メールなどにより証拠を残すということは、常に心掛けていただければと思います。

CST法律事務所 弁護士 細越善斉

弁護士に相談する場合、相談料の相場は1時間につき1~2万円

自分では解決できない場合は弁護士に依頼するという方法もあると思いますが、報酬が気になります。

以前は弁護士の報酬基準というものがあり、どの弁護士に頼んでも基本的には報酬基準は変わりませんでしたが、現在は規制緩和により弁護士報酬が自由化され、弁護士ごとに弁護士報酬も様々となっています。とはいえ、旧報酬基準をそのまま使っている弁護士も多いと思います。

旧報酬基準に従った場合、紛争額が300万円以下の場合、着手金として8%、成功報酬として16%といったところが一般的です。

例えば100万円の未払金の回収といった案件の場合、着手金として8万円、報酬金として16万円という額が一般的と考えてもらっていいと思います。ただし、着手金や報酬金について、例えば私の場合は各10万円ですが、最低金額が設定されている場合もありますので、ご依頼される弁護士に事前に確認することをお勧めします。

また、行政機関や商工会などで弁護士による無料相談を行っている場合もありますから、そういった場を活用することを考えてもいいかもしれません。なお、事業者の法律相談の場合、1時間につき1万円~2万円が相談料の相場だと思いますが、最近では、事業者の相談であっても初回相談は無料で行う弁護士もいます。フリーランスの場合、一件一件の単価はそれほど大きくはないので、まずは無料相談できる弁護士を探してみるのもひとつの方法だと思いますよ。

取材・文/FREENANCE MAG編集部

profile
CST法律事務所 代表弁護士 細越善斉
大企業からベンチャー企業・フリーランスまで、幅広い業種の顧問弁護士の実績を有する。遺産相続と税務訴訟を中心に、民商事全般を取り扱う。
事務所HPhttps://cst-law.jp/
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