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子育てしながらフリーランス。そこで生じた疑問が協会設立のきっかけに。フリーランス協会代表理事・平田麻莉さんインタビュー

FREENANCE フリーナンス フリーランス 個人事業主 平田麻莉

創業期のPR会社で国内外50社以上の広報を手がけたのち、研究者に転身すべく慶應義塾大学大学院へ。

二度の出産を経た現在は、フリーランスでPRプランナーや出版プロデューサー、ケースメソッド教材のライターとして活動しながら、2017年1月に設立したプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会で代表理事を務める平田麻莉さん。

ライフイベントに応じた多様な働き方を自ら実践する彼女に、「子育て×フリーランス」をテーマに語っていただきました。

profile
平田麻莉
大学卒業後、PR会社で国内外50社以上の広報業務に従事。修士号取得、専業主婦を経て、現在はフリーランスで広報や出版を行う傍ら、プロボノの社会活動として、2017年1月にプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会設立。 政策提言を始めとする8つのプロジェクト活動や、フリーランス向けベネフィットプランの提供など、 新しい働き方のムーブメントづくりと環境整備に情熱を注ぐ。
プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会

PR会社時代の経験から、「衝動的に」研究者の道へ

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フリーランス協会 代表理事・平田麻莉さん

広報担当者としてキャリアを積みながら、なぜ退職して慶應義塾大学のビジネススクールへ?

インターンから入社したPR会社では、当時は国内でまだ認知が低かった人材紹介業や、派遣法改正で注目された人材派遣業の企業PRを担当したり、クライアントの経営者インタビューに同席させていただいたりする機会が数多くありました。そんな中で、企業と個人の関係には、終身雇用や年功序列のいわゆる日本型雇用に限らない、いろいろな形があることに気づいたんです。

成長著しい企業の創業期を経験できたことも大きかったですね。オフィス設立の物件探しから始める中で多くの学びや経験を得て、画一的でない、多様な働き方を選べる世の中になっていくといいなあという思いが強まりました。

そうしたことをもっと学んで探求したい、そんな気持ちが高じて5年勤めた会社を辞め、慶應義塾大学のビジネススクールに入学しました。

それにしても、思い切った決断でしたね。

割と衝動的なんです、私。「プランド・ハプンスタンス(計画された偶発性理論)」、簡単に言うと「キャリアとは予期せぬ出来事に最善を尽くして対応することで形成される」というキャリア理論があるんですが、ある人に「あなたはまさにそれですね」と言われたことがあります。昔から、この会社に入りたい、この職種になりたいのはあまりなくて、自分の名前で仕事をしたいという思いのほうが強かったんです。

「フリーランス=自己責任」はおかしい。多くの共感を得て協会を設立

フリーランスになったきっかけは?

慶應義塾大学在学中に日本ビジネススクールケースコンペティションという、国内ビジネススクールが切磋琢磨するイベントを立上げ、経産省の後援やハーバード・ビジネス・レビューの協賛をいただいたり、新聞に取り上げてもらったりしていました。それを見た恩師に、博士課程に在籍しながら「ビジネススクールの広報をやらないか」と声をかけていただいたのがスタートです。

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恩師からのオファーが、フリーランスになるきっかけに

その後、出産や病気などがあって大学院を離れ、在宅でできるケースライターの仕事をちょこっとする以外は、ほぼ専業主婦として1年半ほど過ごしました。やがて子どもが大きくなったタイミングでPR関連のお仕事も受けるようになり、徐々に業務拡大して今に至ります。まさにプランド・ハプンスタンス、というか、行き当たりばったりですね(笑)。

二人のお子さんの出産を経験され、どのようなことを感じましたか?

日本では、フリーランスって「規格外」なんだと思いましたね。例えば当時、保活のために役所に提出する書類は「内勤・自営業」と「外勤」の二種類だけでしたし、会社員で育児休業中の人には保育園入園が有利になる加点があったんです。

「フリーランスを選んだのは自分だから」と、その頃は甘んじて受け入れていました。しかしここ数年でフリーランスやパラレルワーク人口は急速に増え、国も一億総活躍とか女性活躍推進を提唱する中で、いまだに「フリーランスは自己責任で」というのはどうなんだろうと。そんな時に同じ思いを抱える仲間とランチ会を開催したところ、多くの共感を得て、わずか二カ月で「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」を設立しました。

取材や講演も、抱っこ紐をつけて赤ちゃんと一緒に

フリーランスは時間や勤務場所に融通が利くとはいえ、育児しながらのお仕事は大変ですね。

二人目の子の出産時は外出を伴う広報の仕事に復帰していましたが、一年間待機児童で、保育園などに預けることができなかったんです。そこで、クライアントの了承を得たうえで、「カンガルーワーク」と称して仕事先に抱っこ紐で子どもを連れて行きました。最初は社内会議だけでしたが、数か月後には取材対応や講演で登壇するときも抱っこ紐のままで仕事をするようになりました。

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「子連れワークへの許容が広がれば嬉しい」と話す平田さん

それはすごい!クライアントの反応はいかがでしたか。

年配の男性の方など、最初はぎょっとされることもありましたね。でも、理解を示してくださる方も多くて、本当に感謝しています。フリーランスとして名指しでお仕事をいただくケースが多く、受け入れていただきやすい土壌もあったと思います。よく寝てくれた娘にも感謝です(笑)。

もしかすると、中には非常識だと思われた方もいたのかもしれません。ただ、何人かの方の私個人への評価が下がったとしても、社会全体の子連れワークに対する許容が広がればいいと、そこは割り切っていました。

心がけているのは、一日一回、子どもたちを大笑いさせること

仕事と子育てを両立するコツを教えてください。

夫や親はもちろん、保育士さんやママ友、時にはプロの手も借りながら、チームで助け合って子育てをしていけるといいなと考えています。長期軸で見ればみんなお互い様だと感謝し合える社会が理想です。家事代行サービスなども積極的に活用していて、お世話になっているのが、「伝説の家政婦」としてメディアにもよく登場するタサン志麻さん。恩返しに彼女のマネジメントプロデュースを私が担当していて、まさに公私ともにパートナーです。

子どもを預けて働くことに負い目を感じる人も多いですよね。

日本のお母さんって、まじめでがんばりすぎちゃいますよね。私の場合、平日の夜に料理をすることは少なくて、作り置きを温めて出すくらい。仕事から帰って、今度は料理で子どもたちを待たせるより、早く食卓を囲んでおしゃべりする時間があったほうがいいかなと思っています。

ちなみに、子どもたちをちょっとしたことで幸せを感じられる「幸せの閾値(しきいち)が低い子」に育てるのが、私のプチ目標です。心がけているのは、一日一回、大笑いさせること。大したことじゃなくても、一緒に笑える時間をちゃんと作ることは大切にしています。

社会との接点を保ち続けることが、自信や自己肯定感につながる

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多様な働き方を選択できる社会を実現することが協会の目標

女性にとってフリーランスとして働くことのメリットは?

協会では、「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中へ」というミッションのもと、子育て中はフリーランス、仕事に全力投球できるようになったら正社員というように、ライフイベントやキャリアステージに応じて多様な働き方を選択できる社会にすることを目指しています。私自身、来年は上の子が小学生になるので、仕事と子育ての時間配分も変わってくると思います。働く母親として、子どものフェーズに合わせて働くボリュームをコントロールできるのは、フリーランスならではのメリットだと感じています。

子育て中のブランクを気にする女性は多いですが、そこでスキルが落ちることはあまりなくて、むしろ、自信や意欲を失ってしまうことのほうが問題です。「育児休業の延長を」という議論もありますが、個人的にはブランクを長くするより、社会との接点を細くても持ち続けて自己肯定感や自己効力感をキープしつつ、復帰するときにぐっと成長できているほうがいい。そういう意味でも、フリーランスってすごく女性にフィットした働き方だと思います。

自分に対する一番の応援者は自分。自己投資を惜しまず、力をつけてほしい

今後の展望や目標は?

勝手な使命感と勢いで立ち上げた協会ですが、この2年で活動の幅も広がり、少しずつ社会的責任が増してきている実感があります。

初年度は主にフリーランスの保活格差の是正や、第1号被保険者の出産時の国民年金保険料免除に関する法改正などで一定の成果を得られましたし、2年目は女性経営者やフリーランスの出産・子育てに関する自主調査に基づく政策提言に1万4千人の署名賛同者が集まり、厚生労働省でセーフティネット整備の議論を進めていただいています。協会設立以来一貫して発信している「働き方に中立な社会保険制度」というメッセージについても、自民党の提言に盛り込んでいただきました。まだ具体的な方策は白紙ですが、議論のテーブルにのせていただけたことに感謝しつつ、今後も健康保険など、ライフリスクに関する社会保障制度への提言などに力を入れていきます。

また、フリーランスの7割が未払い報酬を経験していることがデータで分かっています。資金繰り悪化を背景に支払いを踏み倒したり、口約束で乗り切ろうとしていたり、相手がフリーランスだからとなめられているケースも少なくないのですが、泣き寝入りをする人が大半なのです。かくいう私も経験者ですが、きちんと弁護士など専門家に相談し、正当な手続きを踏めば被害は減らせます。協会の会員の皆様には、賠償責任保険に引き続き、そうした泣き寝入りを無くしていくためのサポートも提供開始できたらと考えています。

読者へのメッセージをお願いします。

すでにフリーランスで活躍する方やこれから目指す方は、自己投資や自己研鑽を惜しまないでください。フリーランスとして自由でいるには力が必要ですし、力があれば選択の幅が広がります。

自分に対する一番の応援者は自分。皆さんは自分が思っている以上に社会から必要とされています。子育てや介護を含めたあらゆる経験があなたを成長させ、人生の価値を高めてくれます。協会はこれからも皆さんを応援していきますし、私自身もフリーランスという働き方を最高に気に入ってこれからも続けていくつもりですので、一緒にがんばっていきましょう!

取材・文/IDATEN吉田麻樹子

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