「何者でもないことが価値になる」。フリーランス編集者・小沢あやさんの仕事術

FREENANCE MAGで「フリーランスな私たち」の連載を担当してくれている、編集者の小沢あやさん。いつもはインタビューする側の小沢さんに、今回はインタビューに答える側になっていただきました。執筆に限らずメディア運営・コンテンツ企画・イベントなど広い領域で活躍する小沢さんに、仕事のスタンスやこれまでの連載で思い出深いエピソードなど、いろいろ聞いてみました。

ある程度「お金を使って」情報収集することが大切

フリーナンス

「フリーランスな私たち」の連載でいろいろなフリーランスの方にインタビューをしてくれてますよね。これまでのインタビューで、特に思い出に残っているエピソードは?
毎回、楽しくお仕事させていただいてます。新人フリーランスという立場から、ご活躍中の先輩方のお話を聞けるのがとてもありがたいです。中でも、モーニング娘。OGの小川麻琴さんは、自分と同世代のスターなのでとても印象に残ってます。TOEICの勉強をしたり資格を取得したり、日々すごく努力していると思うんですけど、「仕事だからやるしかないんです!」「仕事ならできるんです!」って言い切るのがすごいなって。

小沢

肩書きや過去の実績に固執せず、柔軟にチャレンジを。元モー娘。小川麻琴の仕事論
辛酸なめ子さんも高校時代から単著を買って読んでいたので、感慨深かったですね。いろんなジャンルについて独自の視点で、ずーっと書き続けているの、本当にすごいなって思います。

小沢

不況に動じず、フリーランスが安定して仕事を得るには?辛酸なめ子さんに聞いてみた。

フリーナンス

これまで一緒にお仕事をしてきて感じたのですが、小沢さんはインタビューする前に、かなり情報収集してきてくれるイメージなんです。だからこそ面白い話を聞きだせるんだなって感じているんですが、いつも仕事の情報収入にどのくらい時間やコストをかけてます?
誰かにインタビューするときは、ご本人の著書や発信だけでなく、ファンからの反応や、職種・業界の専門書を読むことが多いですね。

小沢

フリーナンス

専門書、というと?
経営者にインタビューするときは、最低限の業界のビジネス構造や歴史なんかも知っておいた方がいい。取材日までに、できる限りインプットします。アパレルの場合は、各社の決算情報や廃棄ロスについても勉強していきますね。エンタメ系でもそうです。

小沢

フリーナンス

そこまで調べるんですね!?
はい。その時に重視しているのが、ある程度、自分のお金を使って情報収集することです。映画、コンサート、ゲーム、漫画、ビジネス書、新聞、あとは有料の情報サイト……。普段からいろんなものに課金してますね。

小沢

フリーナンス

ネットを見れば、お金をかけなくてもある程度は情報収集できる気がするのですが、あえてお金を使う理由は?
わざわざお金をかけたんだから見なきゃ!って気持ちになるんですよね(笑)。商品紹介とかも、サンプルをいただいちゃうと結局メーカーさんに遠慮してしまう気がするので基本は自腹です。自分のお金を使って、消費者目線で商品のことを正直に伝えたい思いがあります。ウマ娘とか、韓国式写真館のような若者カルチャーも1回は身銭を切って体験。面白いと思ったものだけを発信するようにしています。毎月「最低◯万円使うぞ!」と決めて、その範囲内であればケチらずに使っちゃいます。

小沢

フリーナンス

それだけ情報収集すると、時間のやりくりも大変そうですが……。
いえ、全く負担に感じていないです。そもそも私はインターネットが大好きなので、ネットでの情報収集は呼吸みたいなもので(笑)。でも、「仕事のためにリサーチする」というよりは、実際に体験したことを後から「うまいこと仕事にしちゃおう」って考えるタイプですね。仕事の方が先にくると、生活のすべてが支配されてしまうので、精神衛生上よくないと思います。

小沢

企画案を出すときは「ヒットする根拠」と一緒に

フリーナンス

それができたら理想的ですよね。どんな方法で実現しているのですか?
まずは友だちに言いふらしたりTwitterに書いたりします。会話の中で良いリアクションがもらえれば「企画になるかも!」って思うし。POSTがバズることもあるので、それをもとに提案もします。「この企画やりたいです!」って言うだけじゃなく、「これについて書いたら、こんな反応があったんですよ」とか、具体的に伝えると企画が通りやすいですよね。ちゃんと根拠を出すことが大切だと思います。

小沢

フリーナンス

小沢さんはSNSもうまく使っている印象があるのですが、SNSとはどんな風に向き合っていますか?
うーん、私はSNSではそんなに目立たなくてもいいと思ってます。私の発信している内容を見て、「この人、何かいい情報を持ってそうだな」「この人に頼めば何か面白いものが出てきそう」って思ってくれる人が数人でもいれば、仕事はまあ何とかなるし。あんまりSNSをやりすぎるのも、精神的な負荷が大きいと思うんですよね。

小沢

フリーナンス

フォロワー数を増やそう、とは思わないですか?
もちろんSNSのフォロワー数が多いほうが得かもしれませんが、前提として「フォロワー数=ファン数」とは限らない、と考えています。あと、サブアカウントや鍵アカウントも作らないようにしてます。裏表なく自分を出すからこそ、気が合う方からのお仕事のオファーが多い気がしています。

小沢

一般生活者としてミーハーに生きていること自体が価値に

フリーナンス

お仕事を獲得するために、セルフブランディングのようなことはしていますか?
全然、ブランディングできてないですね〜(笑)。書かないことは決めているけど、「テーマを絞って発信する」とか一切考えていないので。一貫しているのは、無理して「何者か」になろうとしないこと。野心をバネにできる人こそが成功するのだろうと思いつつ、私は目立つこと自体が精神的負荷になるタイプ。だったら、「無理しない」「キャラ付けしない」が大切だなって思います。そして、「何者でもないこと」こそが自分の価値になるんだなって実感することもたくさんあります。

小沢

フリーナンス

「何者でもないことが価値になる」って面白いですね。具体的には?
例えば、ガジェット系の連載を持ったきっかけは、育児中にApple Watchを使った率直な感想をSNSに投稿したからなんです。当時のApple Watchって、ガジェット玄人向けの商品だったんですね。「赤ちゃんを抱っこしながらでも通知が受け取れるし、改札もサクサク!育児中こそApple Watch!」って書いたら、「この発想はなかった!」って反応があって、あっさり連載が決まりました。

小沢

フリーナンス

普通のユーザー目線の切り口が良かったわけですね。
ガジェットの機能やスペックを専門的な切り口で説明する人はたくさんいるけど、それじゃ差別化は難しい。一般生活者としてミーハーに生きていること自体が価値になるんだと、改めて感じました。

小沢

フリーナンス

なるほど。
何者かになるって茨の道だと思うし、全員が全員、トップになる必要ってないと思うんですよね。会社だって、役職がなくても部署内で重宝されている人だっているし、それぞれの働き方があるわけですよね。それに、私はどちらかというと、すごい人たちに「どうしてそんな考えを!?」と聞く職業なので。興味関心とリスペクト、勉強する意欲がなによりも大事だと思います。

小沢

誰かとの雑談でほっとしながら、フリーランスを楽しんでいきたい

フリーナンス

営業方法ってどうしてます?仕事の獲得方法、聞きたいです。
営業は一切していないですね。人からの紹介か、実績を見てインバウンドでくることがほとんどです。私がインタビューしたタレントさんのファンの方から、「あまり喋らない印象の◯◯さんの良さを引き出してくださりありがとうございました!」と、いきなり依頼いただいたこともあります(笑)。本当に予想外のところから仕事はやってくるので、どの仕事も手を抜かず、過去仕事も良きタイミングでPOSTするなど、見つけてもらいやすくする工夫はしてますね。

小沢

フリーナンス

仕事の量とか収入とか、目標設定はしているんですか?
目標設定や目標を達成しようというガッツはもちろん必要ですが、マストにしてしまうと苦しくなりますよね。私はあまり目標に縛られず、「家庭内(自分・夫・子ども)のストレス総合値を最小限にした上で、心地良く働く」を大切にしてます。

小沢

フリーナンス

そもそも、小沢さんはなぜフリーランスになったのでしょう。フリーランスという働き方を続ける理由は?
ほんとに、成り行きです。退職ブログのタイトルにも「フリーランス(仮)はじめます」って、(仮)をつけていましたし。みなさん、「フリーランスになろう!」という強い意思が必要だと考えがちですが、思いつめなくていいんじゃないかな。自分ひとりで始められて、大きな経費がかからない職種であれば、まずは「ダメだったら会社員に戻ればいいか〜」くらいの気持ちでやってみてもいいんじゃないかなと。

小沢

フリーナンス

ありがとうございました!最後にフリーランスのみなさんにメッセージをお願いします!
仕事がうまくいっていてもいっていなくても、不安は尽きないのがフリーランスです。私は、浅くてもいいので、できるだけ多くの人と接点を持つようにしています。仕事のために人脈を作るという意味ではなくて、ね。フリーランスは孤独になりやすいと思いますが、誰かとのちょっとした雑談でほっとすることもあるし。これからもフリーランスを楽しんでいきたいと思います。

小沢

#編集後記

取材後に、小沢さんが小学校の頃に作ったというスクラップブックを見せてもらいました。新聞から自分が気になった記事を切り抜いて、感想を書いていたのだそうです。「障害者介護の話とか移民のこととか、なかなか鋭い視点で記事を選んでいると思うんですよね〜」と小沢さん。 小沢さんの仕事の強みになっている「情報を収集して物事を知ること」への意欲は、子どもの頃からすでに芽生えていたのですね!

profile
●小沢あや/フリーランスの編集者・コンテンツプランナー。芸能人や経営者のインタビューのほか、エッセイも多数執筆。「ワーママのガジェット育児日記」などの連載のほか、「つんく♂の超プロデューサー視点!」編集も担当。

フリーランスが自信をもって自由に働く。
フリーナンスは、そのお手伝いをします。

FREENANCE