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ギャルを1匹、心に住まわせる

ご本に「マインドギャル」という言葉が出てきたときに、私が編集部からこのインタビューを振られた理由がわかったんですよ。以前、水曜日のカンパネラの詩羽さんにお会いしたとき、彼女もまさに「マインドギャル」を提唱していまして。
えー、そうなんですね! たしかにギャルっぽい。
福田さん的にマインドギャルを定義していただくとしますと……。
まず、固定観念をぶち壊して、自分たちのスタイルで新時代の価値観を創造していく人。他人を気にせず自分軸で生きていて、まわりを巻き込んで大きなムーブメントを起こす人。ダサいことをせず、仲間のために働ける人。カオスでピンチな状況でも「え、今やばくない? でも、うちらならやれるっしょ!」と楽しめる人。その4つを本には書きました。
最高。完全にヒーローですよね。
ほんと、ヒーローだと思います。ただ、それを軽やかにやるのが大事かなと思っているんです。
ヒーローというと、強くて欠陥がなくて、いつでも誰にでも優しくて……みたいなイメージですけど、もっとカジュアルに、「これやったらおもろくね?」とか「うちらやばくね? めっちゃイケてね?」みたいなノリのよさや軽やかさを持てたら、一歩を踏み出しやすくなるんじゃないかなと思って。ギャルを1匹、心に住まわせておいていただくと、何かイヤなことが起こって落ち込んでも、心のレジリエンスというか、立ち直りが早くなると思うんです。
私が貪るように読んでいた『Popteen』などのギャル雑誌にはカリスマ読者モデルがいて、彼女たちの「とにかく、自分たち最強」という思考にすごく影響されていると思います。
それが客観的事実じゃなくても、主観でそう思えることって、すごく大事じゃないですか。私たちが大事にしているエフィカシー(自己効力感)、「私ならできる」「私たちならできる」という気持ちは、あの時代の『Popteen』からめちゃくちゃ影響を受けています。
『Popteen』が生んだ起業家であり企業なんですね。
そうです(笑)。『Popteen』に感謝しないと。

同世代の女性起業家たちとお会いになって、「同じバックグラウンドを持っているな、この人」と思われたりしますか?
それはもう。というか、同世代の女性経営者はほぼ全員マインドギャルなんじゃないですか(笑)。自分だけのオリジナリティとか、それで作るクリエイティブな世界を大事にしていて、「誰も見たことのない新時代を作り出してやろうぜ!」みたいな気概を持っているところは、みんなに共通していると思います。
さっき「自分、自分」というよりは仲間と一緒にやりたいという傾向が強い、と言ってくださいましたけど、それは世代の色でもあると思うんです。ギャルも群れるじゃないですか。「みんなでパラパラ踊ったら楽しいよね」みたいな。
素敵なお話です。ご本を拝読したときにもうひとつ印象に残ったのが、心理学用語がたくさん出てくることでした。結果を求める、成長を求めるのは当然として、きちんと納得して取り組んでもらうための裏づけを、サイコロジカルな面まで分け入って考えていらっしゃるんだなと。
始まりはひらめきやアイデアだけれども、再現性のある仕組みを作ってそれを言語化することで、100人とか1万人とか25万人(SHElikesのトータルの登録者数)に広げていける。そのことはすごく意識していて、そのためのロジックとして「心理学の構造上こうなっている」みたいなことは大事にしています。
組織カルチャーに認知行動療法や心理学を取り入れるようになったのは、以前CHRO(最高人事責任者)をやってくれていた子のおかげなんですよ。彼女はそこにかなり精通していて、今、我々の文化になっている「最高価値と呪い」も、実は第三世代認知行動療法と言われているACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をベースにアレンジしたものなんです。そこもまわりの人に助けられた部分のひとつですね。
私たちが大事にしているのが、個人的に創業当時からずっと思っていることなんですけど、「難しいことをポップにやる」みたいなことで。
おお、ギャルマインドが生きている。
そう。民主化好きというか、誰でもアクセスできて、老若男女みんなが好きとか、みんなが学べるとか、そういう世界観が好きなんですよ。
サンフランシスコでプログラミングの世界を見たときも、「これ、めっちゃ民主化したいな」とか「これをポップにわかりやすく『Popteen』を読んでる学生でも楽しみながら学べるようにしたら、世界変わるだろうな」とか思って。そういうところに私の創意工夫ポイントがあるんです。
心理学にしても組織開発にしても人的資本経営にしても、漢字が並んでいると面白くないじゃないですか(笑)。「難しいな」と距離を置いちゃう。それをいかにポップに、ワクワクできるものにするかが、自分のプロデュースのベース思考になっているんです。
やっぱり、昔からずっとハイブリッドが好きなんですよ。ギャルと秀才のハイブリッドとか、ポップと難解のハイブリッドとか。「二項対立を超える」という弊社の基本思想も、ベースはそれだと思います。ギャップのかけ算でユニークネスを作るという。
「壁」を突き破る一助になれたら

お話をうかがっていると、教育に着手されたことがすごくわかる気がします。「手に職」じゃないですが、知識や技術を身につけることが人の未来を切り拓く、という考え方が根本にありそう。
教育のポテンシャルはすごく感じています。というか、今の日本に残された伸び代って教育しかないんじゃないかな、とも思っていて。もう機能的な価値とか利便性はけっこう飽和しているというか、そこで差別化する時代ではもはやないのかなと。どうやって新しいものをクリエイトしていくか、マインドや価値観の教育をやらないと。最終的には義務教育のアップデートといいますか、子どもの価値観教育まで幅を広げていきたいです。
今までの義務教育って「いかに早く正解を出すか」を求められますよね。その画一的な公教育の仕組みは、アップデートはあれど、ベースは戦後から変わっていない。だから、大人になって就活で「あなたは何がやりたいの?」という問いに直面したときに、「やりたいことが見つからない」とか「私は何をすればいいんだろう」みたいに、キャリア迷子、やりたいこと迷子になってしまう方が多いんです。
そういう人たちが今、SHElikesにいらっしゃっていると思いますし、それを解決するには根本の部分、学生時代からの教育の部分を変えていかないといけないな、というのは、すごく強い課題意識としてあります。
うんうん。ところで留学はどれくらいされていたんですか?
アメリカに9ヶ月、韓国4ヶ月です。
海外経験って大事ですよね。
めっちゃ大事だと思います。けっこう頭をガツンとやられるというか、今までの当たり前を覆される経験をしましたし。
例えば道を歩いていると、知らない人が「あなたのピアスかわいいね」みたいに声をかけてくれたりするんですよね、アメリカって。そうしてお互いを肯定し合うのもそうですし、国全体が実験志向というか、前例のないことにすごく寛容だと感じました。だからこそスタートアップがどんどん生まれてくるんでしょうし。
それで日本に帰ってきたら、みんな同じ格好をしていて、レールから外れることを極端に怖がっていて、ちょっとでも外れる人がいたらいじめられて……みたいな違いも痛感しました。
今、日本の国力が落ちてきて、海外に行く人が減っていることには危機感があるんじゃないですか?
あります、めちゃくちゃ。今、留学とか海外旅行とかしようと思ったら大変じゃないですか。子どもの体験格差もものすごく拡大して、問題視されていると思うんですけど。だからこそ稼ぐ手段を国内市場に閉じずに、外貨を稼ぐみたいなことも、スキルというか選択肢として提供していきたいという考えはあります。
日本に住みながら海外の仕事をするとか、逆に海外に行っても日本の仕事ができるとか。そういった輸出入みたいなことを、働き方の部分でももっと柔軟にやっていけるといいなと今は思っています。
円安が止まりませんしね。
1、2年前に経産省の海外派遣プログラムでアメリカに行ったとき、ベイエリアのスタートアップの方々が「日本人のエンジニアが安いから、オフショア的な感じで雇っている」みたいな話をしていたのが、けっこう衝撃で。そんなに差がついてしまっているんだな、とショックを受けると同時に、逆に日本のエンジニアの立場からしたら、同じスキルを持っていても、アメリカから仕事を受ければ国内でやるより1.6 ~ 1.7倍ぐらい稼げるということになるわけですよね。
まさに。
同じスキルで、市場を変えるだけで単価が上がると考えると、そのアクセス権みたいなものをご提供することができれば、その人の市場価値がうんと上がる可能性もある。ここはひとつ、ピンチをチャンスに変えてやっていきたいなと思っています。
まだまだ成長の余地がいっぱいありそうで、今後が楽しみです。
はい。頑張ります。女性の上場経営者ってまだ1%未満ですから、そこも変えていきたいですし。ギャルでも上場できる、じゃないけど(笑)、「あの人ができるならウチもできんじゃね?」みたいに思ってくれる人が増えてほしいんです。例えば高市さんが初の女性総理になって、続々と「当たり前」が塗り変わってきていることは感じるので。その壁を突き破る一助になれたらいいなと思います。

撮影/中野賢太(@_kentanakano)
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