「私たち」を定義するものなんて、何もない。
だからこそ、何にでもなれる。
SHE is NO ONE. さあ、可能性を解き放とう。https://she-inc.co.jp/
上記は、「ミレニアルライフコーチングカンパニー」を謳うSHE株式会社がブランドムービーで掲げた文言です。
創業は2017年。代表取締役CEO / CCOの福田恵里さんは当時26歳でした。以来10年間、女性向けキャリアスクール「SHElikes(シーライクス)」をはじめ、そこで学んだ人材を企業とマッチングする「SHE WORKS(シーワークス)」、金融教育の「SHEmoney(シーマネー)」など、一貫して女性のキャリア支援に取り組んできました。
福田さんが5月に上梓した初めての著書『「私なんか」を「私だから」に変える本 一生ものの自信のつくり方』(日経BP)は、生まれ育った滋賀県でギャルと秀才を両立した少女時代から、留学中にサンフランシスコで起業家たちに会った経験をヒントに女性のキャリア向上を目指して起業、何度かの試練を乗り越えて「日本の起業家TOP20」に4年連続で選出される現在までを回顧しつつ、「まだ何者でもない」読者を励まし、キャリアと自信を手に入れるための具体的な方法まで指南しています。
大阪大学在学中、サンフランシスコに留学し、同世代の起業家を目の当たりにし、起業を志す。帰国後に学生時代に初心者の女性向けのウェブデザイン講座を立ち上げ、300名以上が受講。2015年、リクルートホールディングスに新卒入社。2017年4月、26歳の時に女性向けにキャリア支援を行うSHE株式会社を設立。主要事業である「SHElikes(シーライクス)」の累計登録者数は25万名を突破。2020年に同社代表取締役CEOに就任。2026年に著書『「私なんか」を「私だから」に変える本 一生ものの自信のつくり方』を出版。
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一人だけでは見れない景色を見たい

起業家の方には強いリーダーシップとカリスマ性で組織を引っ張っていく方が多いイメージがありますが、ご本を拝読すると「のび太型リーダー」を自称される福田さんはちょっとタイプが違いそうですね。
弊社には自己分析、内省というのが社内のカルチャーとしてありまして、入社すると必ずストレングスファインダーとかMBTIを受けてもらうんですけど、私のストレングスファインダーに「包含」というのがあるんです。
個としてガンガン引っ張っていきたいというよりは、みんなと一緒にやることで生まれるものや見られる景色みたいなものにすごく興味があって。アフリカのことわざに「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」というのがありますけど、私は遠くに行って、一人だけでは見れない景色をみんなと見たいって思っている派ですね。
そういうお考えはどう生まれて、どう培われてきたと思いますか?
起業して10年やってきた中で、ことあるごとに「自分ひとりでは何もできないな」と思い知らされることがすごく多くて。ハードシングスに何度も見舞われる中で、常にまわりの支えや助けがあってこそ会社を成長させてこられた実感があるんです。
もともと謙虚なお人柄なのかな、とも思ったんですが。
別に謙虚なつもりもないんです。本にも書いた通り、幼少期は『天才えりちゃん』シリーズに触発されてか(笑)、「私は天才や!」と思っていたんですけど、小学校のときにいじめに遭ったりとか、成長する中でいろんな壁にぶち当たって、「自分だけよければいい」じゃなくて「自分にとっても、みんなにとってもいい」を大事にするようになったんだと思います。
私、滋賀県出身なんですけど、近江商人の「三方よし」という考え方は、他者との関係性とか社会や事業を継続的に繁栄させていくのにすごく大事だと思うんです。近江商人の血みたいなものも、もしかしたらあるのかも。
モメンタムは自分たちで上げる

WeWork半蔵門には初めてお邪魔しましたが、こちらの上階にオフィスを借りていらっしゃるそうですね。本社を構えてみんなが出勤するスタイルと完全リモートの間みたいなイメージなんでしょうか。
そうですね、ハイブリッドワークでやらせてもらっています。火曜日と金曜日だけ出社、他はリモートでOKという。私たち、コロナ禍から2025年まで5年間ずっとフルリモートだったんですよ。その間にみんな全国各地に散っちゃって、週2で東京に来るのが難しい方もいるので、近隣者、準遠方者、遠方者に分けて、出社は月に1回とか数ヶ月に1回でOKみたいに、ルールも柔軟に設計しています。
弊社が事業として「女性たちが時間や場所に縛られずに全国どこでも働けるようになる」ということを推進しているのに、週5で東京一極集中で働くというのは、ちょっと目指している姿と乖離してしまうというのもありますし。
ただ、フルリモートを5年間やって、組織の熱狂感が希薄化してきた感じもあったんですね。リモートワークは効率性や機能性が高い一方で、みんなで苦楽をともにするのも大事だな、それを熱狂感とかやりがいとして作るべきだなと思って、いいとこ取りでハイブリッドワークをやっています。
うまくいっていますか?
だいぶうまくいっているかなと思います。最近、社内のモメンタム局の取り組みがめちゃくちゃメディアに取り上げられているんです。ただ週2出社するだけだとあんまり意義を感じてもらえないかなと思って、「世界最高の出社体験を作ろう」というコンセプトで、自分たちのモメンタムを自分たちで上げていく。
それが事業成果にもつながっていくという思考のもと、月に1回、「総会」という全社で集まる会のときに、例えば「寿SHE」と銘打って、寿司職人を呼んでオフィスでマグロを捌いてもらって、みんなでお寿司をいただくイベントをやったりとか。あとは「玉転がSHE」と言ってボウリング大会をやったり、「涼SHE」という夏祭りをやったり。写真を見ていただきたいんですけど、みんなで浴衣を着て焼きそばを食べたりして。
(写真を見て)普通にガチのお祭りじゃないですか。これはたのSHEですね(笑)。
人間、自分でやりたいときが一番エネルギーが出るじゃないですか。その能動性をどうデザインするか、みたいなところを組織開発全体のコンセプトとして大事にしているんです。
遠方に住んでいて、無理に出社しなくていい人も行きたくなりそう。
九州に住んでいたのに、「出社日が楽しそうすぎて東京に移住してきちゃいました」みたいな社員がいたりします(笑)。モメンタム局のメンバーは部署横断で、挙手制で、半期ごとに交代するんです。
そういう柔軟な組織のあり方も、ハイブリッドワークと同様にユーザーさん、スクール生さんとの関係から発想していったところもあるんでしょうか。
総会にユーザーのみなさんを呼んで、その方のビフォー/アフターのストーリーを話していただいて、社員と触れ合う機会を作っています。ふだん顧客接点のない部署の人たちにも、自分たちが何のために仕事をしているのか、というところの解像度を上げてもらいたいので。
受講生と運営がひとつのコミュニティみたいなイメージなんですね。
そうです。社員にも元シーメイトさん(受講生)たちがめちゃくちゃたくさんいますし。
あらゆる格差や不均衡を解消する、第一歩

女性向けのスクーリングを提供しようと思われたのは、学生のときにサンフランシスコに留学して大いに刺激を受けて、帰国後にいざWebを学んでみたら受講生には女性が自分だけで危機感を覚えた、ということがきっかけだそうですが、女性を刺激して啓発していかないと、というお気持ちがあったんでしょうか。
というよりは「もったいないな」みたいな気持ちですね。「私だけがスキルを身につけて、こんなにお金もらっちゃっていいのかな。みんなにも分け与えてあげないと」みたいな気持ちでした。MBTIの診断結果が「広報運動家」なので(笑)。
広報運動家、近江商人、包含とキーワードが豊富ですね。特に地方ではまだまだ保守的な価値観が強くて、やりたいことができずにいる女性が今も多いでしょうし。
多いと思います。自分が抑圧されてることにも気づいていなくて、選択肢を知らないから、「自分はここでこの状況で生きていくしかないんだ」と消極的に生きている人が多いと思うんです。
可能性や才能を閉ざされている人に対して、世界を広げてあげたい、可能性を解放してあげたいということは、事業を始めたときからずっと思っています。
そのことにご本では今後の課題として触れていらっしゃいますから、まだ道半ばな感覚なんでしょうか。
ぜんぜん道半ばです。私たちのビジョンは「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を創る」なんですけど、そのためには社会のあらゆる不均衡や格差を解消していくということが、私たちの介在価値だと思っていて。
日本は相変わらずG7中ジェンダーギャップ最下位ですし、今後ますます人手不足になる中で、単純に労働力として見ても、女性を解放しないとGDPが上がっていかないと思っているので、まずはそこから取り組んでいる感じですね。
ただ女性だけをなんとかしたいと思っているわけでももちろんなくて、あらゆる格差や不均衡を解消する第一歩として女性のキャリア格差の解消に取り組んでいます。その解決の糸口を、生きている間に何かしら見つけることができたら、次は地方と都会の機会格差だったりとか、日本と国際社会の格差だったりとか、いろんな格差を解消していきたいです。
ジェンダーや年齢を問わず、人間全般の可能性を信じていらっしゃるんですね。どうしてそういう考え方をされるようになったと思われますか?
自分でもわからないんですけど、やっぱり起業家との出会いじゃないですかね。あとひとつ、ルーツ的なところで言うと、私、在日韓国人なんですよ。両親や祖父母の「自分の力でなんとかする」みたいな志向は、私の中にも遺伝子としてあると思っています。
受動的に生きるんじゃなく、飴の包みの内職でもなんでも、とにかく自分たちで事業を起こして生計を立てていかないといけないとか、野心を持って成り上がっていきたいみたいなバイタリティを、親族から受け継いだんじゃないかなって思います。
自分が起業したきっかけは父たちへの憧れとかではなくて、サンフランシスコに行って起業家の方に会ったときに「自分で自分の人生を切り拓きたい」と思っただけなんですけど。
バイタリティはひしひしと感じます。子どものころはどちらかというとまじめで、ある時期までは比較的、決められたレールの上を歩いていた、ともご本には書かれていますが……。
ぜんぜんまじめなキャラではなかったんですけどね。中高生のときはギャルでしたし。『egg』と『Popteen』をバイブルのように読み漁っていました。「ギャル×王道」みたいなのを目指していて。
ギャル×王道。一番かっこいいやつですね。
ギャルのアウトローな姿というか、道を外れながら新しいカルチャーを生み出していく姿に憧れる一方で、とはいえちゃんと王道で結果を出していかないと「ただのアウトローでは誰も話を聞いてくれへんな」という感覚があったんです。
ちゃんと勉強はするし、いい高校にも行くし、結果は残すけど、マインドはギャルでありたい。二律背反を生きたかったんです。なのでたぶんまじめキャラではなくて、当時の友人たちに聞いても「え、恵里めっちゃギャルやったやん」と言うと思います(笑)。
FREENANCE MAG 
