多数の人気媒体で執筆中のライター・アケミンさんに聞く、クライアントとの金銭トラブルやハラスメントを回避するための「自衛策」

2009年からフリーランスのライターとして活躍中のアケミンさん。AVメーカー2社で計6年間、広報としての勤務を経てフリーランスに転身というユニークなプロフィールの持ち主です。『スポニチ』や『週刊SPA!』などの人気媒体で精力的に執筆をしているアケミンさんに、フリーランスになったきっかけやフリーランスが自分を守るために必要なことなどお聞きしました。

「就職はできないだろう」と達観していた、氷河期世代の大学生時代

まず、アケミンさんがフリーランスのライターになったきっかけを聞かせてください

最初から「フリーランスのライターになろう!」という意気込みがあったわけではないんです。

AVメーカーの広報をしていたときに、雑誌やスポーツ新聞にコラム書かせていただいていて、「書くことでお金をいただけるっていいな」と思っていたんです。退職した後は、その延長線上でライターになって、今に至るという感じですね。ライターとして活動しはじめたときは、ファッションや美容など競合の多い分野ではなく、競合の少ないAV関連のフィールドで知名度を上げていこうという思いはありました。

競合の少ないフィールドで勝負しようと考えたというアケミンさん

そもそも、AVメーカーに勤務しようと考えた理由は……?

私は就職氷河期世代なので、学生時代から「就職活動を頑張ったところで、どうせ就職できないだろう」と思っていたんです。私立文系の大卒女子って、エントリーシートすら出せないような時代でしたから。就活がツラすぎて、心を病んでしまう同級生もいたほどでした。自分の心と体を壊してまで、就職しなきゃいけないの?って思うようになったんです。

結局、正社員として企業に就職はせず、卒業後は事務職の派遣社員をしていました。9時から17時まで残業なしという仕事だったので、仕事帰りによく飲み歩いていて(笑)。たまたま飲み屋で知り合った人の紹介で、AVメーカーに就職して広報を担当することになったんです。

なぜ会社員を辞めて、フリーランスになろうと思ったのでしょう?

広報の仕事はやりがいもあって楽しかったけれど、会社員という働き方には疑問があったんです。組織で働くことに、やりがいを感じられなかったというか。仕事の成果に直接関係ない社内の人間関係に配慮したり、親睦のためのイベントの幹事をしたりとか、そういうのって純度の高い仕事をしようとしたらムダなんですよね。それが、私が会社勤めでやりがいを感じきれなかった理由なのだと思います。だから、フリーランスが性に合っているのでしょうね。

基本は「来る仕事は拒まず」、でも「やらない仕事」は明確に設定

フリーランスを11年続けてきた中で、仕事を選ぶポリシーのようなものはありますか?

SNSで自分の手がけた仕事や意見を発信しているので、SNS経由でお話をいただくことが多いのですが、基本的には「来る仕事は拒まず」という姿勢でいます。ただ、ヘイトや差別に結びつくような内容のもの、極端な政治思想がからむようなものは「やらない」と決めています。たとえ無記名の記事でも、です。

「無記名の記事であっても、ポリシーに反するものは受けません」

ギャランティでの線引きはしていますか?

金額についてはケースバイケースです。事件や事故の被害者や貧困などで困窮している人の役に立つ内容の場合は、報酬よりも社会的な意義を優先して、できるだけ受けると決めています。

フリーランスになって、収入の面で不安はありませんか?

私の場合は連載などのレギュラーの仕事で「月々、だいたいこれぐらいは稼げる」というのが分かるので、そこまで不安はありません。レギュラーに単発案件がプラスになるというイメージですね。とはいえ、収入面だけでいうのならば、フリーランスはやっぱり大変かもしれません(笑)。

これまで、お金のトラブルで悩んだことはないですか?

私自身は幸いにも、原稿料を踏み倒されたという経験はありません。ただクライアントによっては、原稿料を先に明言しないこともあるんです。「自分から原稿料を聞くと、お金にうるさいライターだと思われるかも…」と思って、きちんと交渉できずモヤモヤした気持ちのまま仕事を進めた経験もありました。

でもそういうモヤモヤって、不思議なことに原稿の端々に現れるんです。大きな意味では仕事のクオリティが下がるので、クライアントにとってもライターにとてもデメリット。なので今は、締切り日と原稿料はセットで聞くことにしています。提示された価格が税込み価格か、請求書が必要かまで聞くようにしています。

こちらも請求書の送付や経費精算などは、クライアントの手を煩わせないように期日をきちんと守ります。支払い漏れがないように、支払い通知書も逐一チェックしていますね。こうした事務的な作業をこなすことも、フリーランスにとって大事な業務だと思っています。

女性のフリーランスには“予備知識”と“仲間”が大切

そのほかにも、フリーランスに起こりやすいトラブルって何かありますか?

女性というだけでハラスメントの被害に遭いやすい、ということを知っておく必要があると思っています。加えて下請け、ということも被害に遭いやすい条件になります。例えば、取材だから話を聞いているのに「笑顔で話を聞いてくれた、僕に気がある証拠だ」と取材相手から勘違いされた、という女性ライターの体験談も少なくありません。その笑顔って、いわゆる営業スマイルなんですけどね……。

フリーランスは自分で自分を守る姿勢が大切!

そういったハラスメント問題には、具体的にどのように対処すればいいのでしょう。

ハラスメントを完全に防ぐのは難しいので、自衛が大切です。私は取材のときは可能な限り編集者に同行してもらうなどして、取材対象者と二人きりで会わないようにしています。内容によっては、男性編集者に同行をお願いしたり。

あとは、私の場合はフェミニズムやハラスメント問題についてSNSでも積極的に発信しているので、それが功を奏して「この人、ジェンダーハラスメントにはちょっとうるさそうだぞ」と相手にも警戒心を与えるようです。それが結果的に、自衛策につながっているのだと思います。

実際にハラスメント被害に遭った場合は、どうしたらいいのでしょう?

会社員の場合、ハラスメントの被害を訴えられる仕組みや法整備が進んでいます。でも、フリーランスは今のところ仕組みや法整備の対象外。なので、ひとりで抱え込まないことが大事です。「どうしよう」と話せる人、できれば事情を分かり合える同業者の仲間を持っていることはとっても大事です。そして、「被害に遭ったのは私が悪かったからだ」と思わないこともとても重要だと思います。もちろん、ハラスメントの域を超えるケース、刑事罰に相当するような場合は警察に被害届を出しましょう。

こうしたリスクがあっても、フリーランスとして働くことにアケミンさんは魅力を感じていますか?

会社員時代、業務以外のしがらみがストレスだった私にとって、フリーになってからのほうが肌の調子がいいし、風邪やインフルエンザにもかからなくなりました。会社員をしていた頃の方が若いのに、今の方が元気で健康なんです(笑)。余分なストレスがないぶん、純度の高い仕事ができることも魅力です。女性の場合は、結婚や妊娠・出産、育児や介護によって働き方に影響を受ける場面が多いですよね。そうしたライフステージにも、フリーランスは柔軟に対応できる素晴らしい働き方だと思います!

プロフィール
アケミン:ライターとしてさまざまな媒体の企画/構成/執筆を担当。03年〜09年はAVメーカー2社にて広報として勤務し、09年にフリーランスに。『スポニチ』『週刊SPA!』『女子SPA!』『NETViVi』『幻冬舎plus』『東洋経済オンライン』などで活躍中。著書に『うちの娘はAV女優です』(幻冬舎)がある。