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ソフトウェアエンジニア池澤あやか、フリーランスを“退職”。理想のワークライフバランスとは?

ソフトウェアエンジニア池澤あやか、フリーランスを“退職”。理想のワークライフバランスとは?

中学生時代に東宝のシンデレラオーディションで審査員特別賞を受賞して、芸能界デビューした池澤あやかさん。以降、タレントとして幅広く活躍しつつ、慶應義塾大学卒業後はフリーランスのソフトウェアエンジニアとの二足のわらじで活動してきましたが、2022年には事実婚を公表し、突如IT企業に就職されました。

8年間のフリーランス生活から、生まれて初めて“会社員”となった池澤さんの真意とは? 池澤さんが思うフリーランスと会社員、それぞれのメリット/デメリットと、自身のパーソナリティに即した「理想のワークライフバランス」の実現のさせ方についてうかがいました。

profile
池澤あやか(イケザワアヤカ)
2006年、第6回東宝「シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞し、映画『ラフ ROUGH』でデビュー。慶應義塾大学環境情報学部在学中にプログラミングに触れ、卒業後はフリーランスのソフトウェアエンジニアとしても活動。現在は芸能活動と並行して、IT企業に所属するソフトウェアエンジニアとしてアプリケーション開発に携わる。Podcast『家電ライターが語る家電最前線』のMCほか、Abema TV『Abema Prime』にコメンテーターとして出演中。
https://twitter.com/ikeay
https://www.toho-ent.co.jp/actor/1042

プログラミング=モノ作り

現在、タレントとソフトウェアエンジニアというダブルワークをされていますが、初対面の方に自己紹介するときって、どんな風に説明してます?

プライベートで会った人なら、普通に「IT企業でソフトウェアエンジニアしてます」としか言わないですね。ソフトウェアエンジニアの仕事をしている時間のほうが割合的にも多いですし、芸能活動をしている話をしても、あんまり良いことがないので(苦笑)。

そうなんですね(笑)。芸能活動を始められたキッカケは、中学時代に東宝のシンデレラオーディションで審査員特別賞を受賞されたことだそうですけれど、そもそもの応募のキッカケは何だったんでしょう?

小学校のころに一番仲の良かった友達が、女優活動をしていたので、ちょっと影響は受けてたんです。で、中学生になったときに「何か、別のことをやりたいな」って母に相談したら、母が美容室で偶然オーディションの広告を見つけてきて「応募してみたら?」と。

お母様からすると、きっと「ウチの娘は可愛いから向いている」と思ったんでしょうね。

いや、たぶん思ってないです! その同級生がメッチャ可愛くて、むしろ「あなたには無理でしょ」みたいな感じでした。両親は教育熱心でしたし、私が通っていたのも私立の進学校だったので、ちゃんと勉強してほしいとも言われていて。なので、芸能活動をやりながら、そのまま大学に進学したんです。

そこで、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)を選ばれた理由は何だったんでしょう?

当時は将来、何を専攻するかはあんまり決めていなくて、でも、映像にまつわる仕事をしているから、映像系を専攻できるところがいいなと考えたんです。で、SFCには映像の専攻があったので、そこでインタラクションデザインを勉強していました。いわゆる新しいメディアを考える、新しい情報提示の仕方を探っていくという学問で、例えば苔や泡でディスプレイを作ったり、スピーカーの置き方でより臨場感のある体験ができるようにしたり。そういった人とインタラクション(=相互作用)するデザインを行うというのが専攻で、私も卒業制作では、魚とコミュニケーションを取るっていう、ものすごく面倒くさいことをやってました(笑)。魚の性質を利用して、人の動きで魚の動く方向を制御できる水槽を作ったりしてたんですよ。

その中でプログラミングにも出会ったんでしょうか?

もちろん、その研究でもプログラミングをいじらなくてはいけなかったんですけど、大学を卒業した先輩がウェブの制作会社をやっていて、そこでアルバイトをしていたのが大きかったんです。ウェブ制作でもプログラミングを活用して、JavaScriptでページの動き方を制御したりもしますし、HTMLやCSSで組んだWebページの内容を技術がわからない方でも簡単に更新できるようなシステムを組むこともあったんですね。そうなるとプログラムが必要になるので、だんだん学んでいくうちに、プログラミングってモノ作りに関連するんだな……と感じるようになったんです。

何かを自分でイチから作りあげていくことに喜びを感じたんでしょうね。

そうですね。「納品、楽しい!」みたいな(笑)。完成したら「できた!」と喜んで、納品したら実際に動いて、使ってもらえるのが嬉しかった。子供のころから図工だったり、黙々作業して何かを完成させるのが好きだったので、そこはアナログもデジタルも変わらなかったんです。

フリーランスを“退職”する

それで大学卒業後は、芸能活動と両立する働き方としてフリーランスのソフトウェアエンジニアという道を選ばれたと。

最初は普通に就活もしていたんですよ。ただ、芸能活動のほうの事務所が給料制で定期収入があったので、別に就職しなくても食べていける状況ではあったんですよね。だったら無理して就職せずに、フリーランスでウェブ制作をしていれば、全然生きていけるなって。あとは、自分にしかできない選択肢を取っておきたいという考えもあったんです。当時、ソフトウェアエンジニアはスキルさえあればやっていける職業として扱われていたので、もし食べていけなくなったら就職すればいいかなって。

ソフトウェアエンジニアをしながら芸能活動もするって、確かに、池澤さんにしかできない働き方ですもんね。

はい。キャリアとして独自性も出ますし。実際、大学4年生くらいから、ソフトウェアエンジニアにまつわる芸能のお仕事も来るようになったんです。テクノロジーにまつわる知識を持った上で人前に出られるということが、ありがたがられることがあって。

芸能活動って時間も不定期だから、隙間時間にしやすい仕事だろうくらいの認識でソフトウェアエンジニアを始めたのに、自分でも考えなかった需要があったんです。おまけにタレント活動をすることが、逆にソフトウェアエンジニアとしての仕事にもつながっていったんですよね。

というと?

人前に出て話す機会が多いので、それが営業を兼ねるような形になったというか。パネルディスカッションとか講演とかで「ソフトウェアエンジニアとして働いてます」って言うと、そこで認知してもらって「じゃあ、こんなお仕事どうですか?」っていう依頼が来ることが多くて。要するに、登壇することで効率よく営業活動できていたんです。だからスキルは人並みなのに、依頼が続いてスケジュールがギチギチになることもありました(笑)。

ちなみに池澤さんにとって、ソフトウェアエンジニアというお仕事の魅力って何でしょう?

モノ作りが好きなので、その点でやりがいを感じられるところと、やっぱりリモートワークがしやすいのは魅力ですね! 芸能活動と両立できる仕事ということで、そこは絶対に譲れないところでしたし、それで候補に挙げていたのがライターとソフトウェアエンジニアの2つだったんですよ。

なるほど。では、逆に短所は?

ソフトウェアエンジニアが、というよりフリーランスの短所なのですが、先を見据えて動かないといけないのが精神衛生上よくないですね。今、関わっているプロジェクトが終わると収入が途絶えるから、並行して次の案件を探しておかないといけない。ただ、プロダクト開発だと最近は終わりがないことも多くて、例えばアプリだったら継続的にアップデートがありますし、途中で方向性が変わったりもするので“作って終わり”は少なくなってきました。それを2社とか3社掛け持つような働き方をしていて、そのうちの一つが開発ストップしたのをキッカケに、私、会社員になったんです。チームの人員が大幅削減されることになったので、じゃあ“退職”しようと。

ただ、その前から会社員になることは考えられていたんですよね。

そうなんです。フリーランスの先輩を見ていると、ワークライフバランスがとれていない人が多いんですよ! 土日の区別なく働いていたり、特に女性の場合は産休も育休もないですからね。子供を産んでから2ヶ月で仕事復帰する知り合いもいたりしたので、ちょっと早めに会社員になって環境を整えたかったんです。それで副業OK、女性が活躍しやすい環境、フレックスタイムという条件で企業を探したんですけど、そういう企業風土って求人情報を見ても、なかなかわからないんですよ。なので、それっぽい企業の噂を耳にしては、カジュアル面談を受けて……の繰り返しで、ようやく今の会社に就職できたんです。

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