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すべてを失った与沢翼の「広告なし・スタッフなし・オフィスなし」が生み出す最速の成果

FREENANCE MAG 与沢翼

20代の若さで起業し、「秒速で1億円稼ぐ男」として世間に名を馳せながらも、2014年に経営破綻してすべてを失ったと言われていた与沢翼さん。「ネオヒルズ族」という言葉を生み出し、メディアに度々登場して白いスーツでロールスロイスに乗り込む姿を記憶している方もいらっしゃるのではないでしょうか。ネットビジネス界でのぼり詰め注目を集めましたが、会社の資金がショートした後は投資スキルを独学。お金との向き合い方を考え直し、財政状態を再建しました。昨年4月に出版された「お金の真理」でも、直近で生じたコロナショックに向き合い、与沢さん独自のマネー論や戦略的な仕事術を紹介しています。

大きく転んでも再起できる思考や行動の核となるものは何か。今回はタイにいる与沢さんに、経験に基づいたお話をオンラインにてうかがいました。

profile
与沢 翼(よざわ つばさ)
1982年11月11日、埼玉県生まれ。投資家・実業家。2007年3月、早稲田大学社会科学部を卒業。早大在学中に起業を経てメディアに登場。「秒速1億円の男」として一躍脚光を浴びる。2014年にシンガポール、2016年からはドバイに移住。現在は株式、不動産、外貨、仮想通貨、社債、保険、信託などを対象に個人投資家として活動。
https://www.amazon.co.jp/dp/4299000145/
https://twitter.com/tsubasa_yozawa

新境地は成果に集中できる「1人」で

日本からシンガポールに移住され、ドバイ、タイと活動の拠点を広げられていますが、海外での生活はいかがでしょうか。

そうですね。全てのコミュニケーションが英語なので、当初の数年はずっとストレスを抱えていました。でも、生活レベルでは使うワードが決まっているので、覚えてしまった今は問題なく生活できています。

与沢翼

では、お仕事を軌道に乗せるため、どういったことに気を付けてこられましたか?

僕がやったことはまず、インターネットを駆使することです。複雑なことはやらない。個人でできることに絞る。そして、色んな条件を自分に課していましたね。例えば、広告は出さない、スタッフは雇わない、オフィスを持たない、などです。現在のようなコロナに最適化した生活を2014年からずっと実践していますね。

なるほど。スタッフを雇わないというのは、何か理由があるのでしょうか。

現地にも日本人は大勢いますので雇うことは簡単ですが、あえて「雇わない」のは自分のルールです。私の場合は、雇うことによるデメリットを排除するという発想です。まず、コミュニケーションの問題があります。例えば、私のスケジュール管理をスタッフにお願いした場合、共有して可視化する必要が生まれる。そういったコミュニケーションコスト自体がもったいないっていう発想です。

早稲田大学在学中からアパレル事業を起こし、チームで仕事をされていた時代もあったと思うのですが、個人事業主となった現在の方が成果が上がっているということでしょうか?

はい。もう圧倒的ですね。この先も私の中で、チームを作るという選択肢はないです。それくらい、一人ひとりの感情や思い・利害関係というのは重いものだと思っています。 立場をわきまえたり、我慢したり、そういったことで社会は回っていると思うんですけど、私自身は人の感情の渦の中にいるよりも、自分の成果を出すことに集中したいという圧倒的合理主義者です。 一緒にケアしていけるのは、家族くらいが精いっぱいというのが正直なところですね。

組織と個人では「儲けの差」が生じるとは思いますが。

確かに、一般的にはチームや会社として規模を大きくした方が、多くのことに挑戦できて大きな富も生まれやすいとは思います。ただし、問題は、得られた成果をコミットした人数で分割しなければならないということです。私は年収や年商を狙うのではなく、純利益でいつも考えています。

著書「お金の真理」でも、「純利益」や「可処分所得」に目を向けられていましたよね。

はい。あと私は、「一人でやる」ことでストレスを排除することができました。ストレスって多くの場合は、人間関係の摩擦から生まれます。競争、奪い合い、憎しみ、嫉妬、緊張関係。なるべくそうしたことから離れてみることです。

コロナ禍で試された力とは

なるほど。現在も仕事の可能性を幅広く模索されていますが、影響を受けた方がいらっしゃるのでしょうか。

はい。僕は小学1年生に上がるときに、地方やアメリカなど転勤を繰り返す父親の元を離れました。母と妹とも離れ、僕だけ祖父母のいる秩父で育ちました。自分で祖父母と一緒がいいと言ったそうですが、6歳の時なので、なぜそう言ったのかは記憶がないんです。ただ、この決断が後の運命を変えたと今では思っています。

父はサラリーマン、母は公務員でしたが、祖父母は個人事業主で旅館をやっていました。その姿を見ながら、「大人は生きていくうえで、自分でお客さんをとって、浮き沈みもありつつ必死にやっていくもの」ということを肌で感じていました。自分にとっては祖父母が鑑だったので、小学校の6年間で「商売をして生きていくのが当たり前」という起業家精神の芽のようなものが育ったのかもしれません。

与沢さんの原体験といえそうですね。昨年からさまざまな業界がコロナの影響を受け、仕事が減ったというフリーランスも多いようです。不測の事態に個人は備えることができるでしょうか。

そもそも本来であれば、コロナに強いのが「個人」であるはずです。個人と言っても、飲食関係の方々はかなりダメージですが。例えば、在宅で頭脳をつかってするような仕事であれば、影響を受けてしまうのではなく、逆に増収増益しなければいけないと思います。

もしコロナで足元が揺らいでいるのであれば、これまでの仕事のやり方やサービスのつくり方が脆弱だったと厳し目に見た方がいいかもしれない 。実際、イメージしやすい大手で言えばネットフリックスとか巣ごもりのサービスなどは、今回ものすごい需要が爆発しているわけですから。ピンチはチャンスに変えないといけない。

与沢翼

今、増収増益している会社や個人というのは備えが十分あったということでしょうか。

備えもありますが、急な社会動向に合わせて迅速に変化したというところが一番大きいと思います。リモートワークでも円滑に回るように業務の効率化を図ったり、対面できずとも顧客満足度を下げないような設計に変えたりですとか、いわゆるデジタルトランスフォーメーションですね。デジタル改革をして、それに遅れがなかった企業や個人は結果を出したということになると思います。

私は株をやっているので決算を片っ端から見てますけど、実際、大幅に増益している会社は日本にも多く存在します。なぜなら、必要だと思い込んでいたものを切って、むしろ利益体質になったということまであるからです。

ご自身が手がけられている事業の方向性については、どのように検証されているのでしょうか。

リタイア状態の今は、経営管理指標を見たり、月次損益の把握をしたりといったことはしていません。どこまで伸ばそうとか大きな目標がないからなのですが、そういうことは2014~2017年くらいまでにやり切ったと思います。

当時はアクセス分析をしたり、自分のコンテンツがどれだけの人に届いているかなどをよく見ていたりしましたけど、最近はメルマガも発行していませんし、やることを極限まで絞っていて、現在はYouTubeのメンバーシップにしか力を入れてないですね。

社会を分析して発言力を高める

著書の中で、「今後、個人が活躍する時代は加速する」とおっしゃっていますが、個人の収益化についてはどう考えればいいでしょうか。

与沢翼

再現性が大切だと思います。例えば、私と同じようなことをしようというのは、再現性が低い。それは、個性が人それぞれだからです。確かに、人間は幼少期から大人の真似をして成長していくもの。ですから、誰かの真似をして成長していく方法は否定しません。ただ本音で言えば、なるべく早い未熟な段階から、自分だけの軸・自分らしさを貫いてしまった方が、結果が出るのは、かえって早いと思っています。

次に収益の話ですが、時代は味方していますよ。今、インターネット上で影響力を持つ発信者となることは、誰もが目指せます。インフルエンサーはさまざまな形態があって裾野が広いんですが、NFT(デジタル資産)としてアートを売るような人が出てきたり、オンラインでゲームをして賞金や仮想通貨を獲得する人たちがいたり、為替や株式のトレーダーとして発信したりですとか多様です。人間が成す所業は全て発言力に変えていくことができます。

インフルエンサーになると、「影響力」が 「お金」に変わる仕組みを各プラットフォームが用意しています。YouTubeだけでも広告の収益化プログラム、スーパーチャット、メンバーシップ、グッズ販売とあって、Facebookではショップも作れる。Instagramでも投げ銭が始まったし、Twitterでは音声のスペースが始まってきている。有料ツイートも間もなくできそう。影響力のある個人には課金できるように、世の中全体が動いています。そして、ここからもっともっと拡大しますよ。

プラットフォーマーがユーザー間のCtoC課金を強化しています。Facebookの投稿で商品を売れた人は、本格的なECを低コストで実現できる Shopify(ショッピファイ)にトライしたり。Stripe(ストライプ)もですね。ブログにさっと決済リンクを置ける。 誰もが簡単にクレジット決済を導入したり、仮想通貨払いで支払いを受けたり、モノや情報、サービスを売ることができる時代がきています。 明確な対価がない応援の形も、スパチャやクラファンで広がった。

でも、発言力を持てるようになるのは、本当にわずか一握りです。ここが問題で、個人の時代と言っても、多くの人は商流をつくれず、在宅で悶々と仕事をせざるを得ないといった状況もあるでしょう。個人でも、二極化が進んできているのが現状です。

淘汰されない心がけとしては、まずは情報収集でしょうか。

それもひとつです。私も、自分が気になるキーワードからグーグルに提案させて、毎日大量のニュースを読んでいます。そこから一日ひとつ、一番重要だと思ったものを選んで精読して、自分の人生に具体的にどう役立てられるかなあと考えます。ちなみに、世の中から課金してもらえたり、収益化できたりするような個人になるっていうのはブランド作りでもあるんです。

ブランディングなんですね。

最初はもちろん、誰もが実績がないところからスタートしますよね。その時に重要となるのが、対人関係能力、つまりコミュニケーション能力やリーダーシップです。

やっぱり力がある人というのは、実績がなくても分かるものです。成長の芽って伝わってくるので、職業は何でもいいんですが、例えば将来人気ブロガーになる候補生は最初から何か着眼点が面白かったりして、タダ者じゃない感は初動から出ていると感じます。

発信者数が増えたことで、ジャッジする側の目も磨かれてきていますよね。

はい。何をやっている人かは知らないけど、言ってることや視点がすごく面白い。それだけで話題になり、人気ブログになったということで実績になり、結果として「あなたの話をもっと聞きたい」「お金を払ってでも」と選ばれる人になりますね。地道ですけどね。だから時間はかかります。

発信力がないということは致命的でしょうか。

そこはもっと分解して考えると、社会を分析する力ということになると思います。世の中をどう見てるのかという「視点」ですね。9割の人は、ただ漫然と生きている「その他大勢」 。厳しい言い方になりますが、「個人の時代」と言ってもその他大勢になるんだったら、弱小個人でしかないということです。

独立して生き抜くことの難しさが伝わってきました。

簡単に言うと、世の中には「追いかけられる人」と「追いかける人」がいて、この「追いかけられる人」は常に少数です。

ここでも二極化ですね。

「追いかけられる人」にならないと、個人として「豊か」にはまずなれない。どこにでも競争があって、個人が有利なわけではないので、誤解しないほうがいいですね。個人も厳しい。企業も厳しいです。基本、世の中、全て厳しいので。

顧客ニーズを越えていけ

与沢さんがこれまでに、乗り越えるのに時間がかかったという経験があれば聞かせてください。

やっぱり、アパレル会社が倒産して、法人を破産させた時が精神的に一番辛かったです。出社するオフィスがなくなり、チームも解雇するしかなかった。自分自身も当然残る場所はありません。28歳のときに法的破産してもう10年くらい経ちますが、 あの時の経験は今でも生きています。

今、海外に出て丸7年ですが、そこからピンチは一度もないですね。経験から学んだことを生かして、窮地が生じない状態を作っているので、現在はパーフェクトと言えるはずです。 「やっちゃいけないこと」をルールとして決めているので、 それを破らない限り大丈夫ということです。

例えばですけど、野心というほどのものではなく、継続的な仕事を思うように獲得できないといったフリーランスからの声を耳にすることもあります。その原因はなんだと思いますか。

なるほど。2つ思ったことがあります。1つは、細かいところを見てないんじゃないか、雑なんじゃないか、ということです。

「神は細部に宿る」っていう言葉もありますが、クライアントへの対応や仕事の仕方を細かいところまで配慮して、相手に尽くすようにした方がいいと思います。

ずっと大切にされている人や企業を注視してみるといいですよ。そうすると、どれぐらい気を遣っているかってことが分かると思います。タイムチャージ1時間で請けた仕事で、1時間経ったから成果問わず終了しますみたいなスタンスだったら、恐らく次の受注にはつながらないでしょう。

損して得とれって言葉がありますが、一番はじめに自分が損しないとダメです。 世の中って、損してると自分で思っているような人が、最後は一番得をするようにできています。

ご自身もそういった意識は強いですか?

今は、どういう人にお願いするかってことをよく考えます。それと、約束をとにかく守るという意識がメチャクチャ強いですね。

不動産管理だったら、サービス範囲外のことをケアしてくれたり、自分が全く気付かなかった問題点について先回りでアドバイスしてくれたりする人。そういった人には継続してお願いするし、一度信頼すると基本的にスイッチしないですよね。実際、そういうことができる人が豊かになっていくでしょう。

儲けは二の次、ということですか。

そうです。最初は儲けなんかに目を向けちゃいけないと思います。「この人のために」や「私のことを見てくれているフォロワーのために」など、どうすれば貢献できるかなと採算度外視の気持ちでやっていると、自然と選ばれる人になると思うんです。

最初に損していつか得とれっていう本当の意味が分かっているかどうかってことです。 これは仕事のスタンスの問題ですが、人間としての心構えでもあります。仕事ができない、選ばれないっていう人って、ぼーっとしているというか、うわの空っていうか、 やっぱり何か抜けてますね。

基本的なところを大切にするということですね。

多分、それが全てだと思います。マーケティングって人の心を動かすことですが、人の心を動かすからこそ購入され、利用される。あなたが好きだからあなたと一緒に仕事したいといった好循環も生まれる。中身を磨くことを大切にしてみてください。

内面磨きもおろそかにできないですね。

そういうことです。それともう一つは、甘えですね。つまずいてしまうのは、逆に「大それた野心がない」からなのかもしれないと想像できる。 私は今でこそ野望はないですけど、当初は野心が強くて、勝負に挑むタイプでした。緊張感のあるシーンをもっと経験しないと、甘えから抜け出すことは難しい。自分にプレッシャーをかけて、背伸びをしようってことです。

著書の中に「本業を続けながら『副業』で稼げ」という章もありましたが、「副業」を「本業」にシフトする瞬間が来たとして、GOと判断できるポイントがありましたら教えてください。

副業のことが気になって仕方がなくなった時でしょう。例えば、寝ても覚めても副業のアイディアがどんどん沸いて来てワクワクするとか。意識のほとんどが本業ではなく副業に向いた時。なおかつ、本業の収入を副業が超えてからがベストです。その理由は、副業は不安定だから、多少割り引いて保守的に考えておく方がよいからです。

目標設定といったものも必須でしょうか。

僕は独立したばかりの時は、目標って一切意識してなかったと思います。「生き抜け」「目の前のことを全力でやれ」それが全てでした。

資産や年商をいくらにするとか、それはあなたの都合でしょって話で誰も聞きたくない。そうではなくて、目の前のことを全力でやれるか。真剣モードになるスイッチを入れられるかどうかだと思います。

フリーランスのみなさんへ

与沢翼

これからのフリーランスの要となるのは、自分の作品や実績を、ソーシャルメディアを通じて社会に共有していくということになると思います。ライターだったら記事、編集者だったら本、アーティストだったら作品のように。つくるプロセスを可能な限り全て共有して、応援してもらう。泣いたところ、笑ったところ、勝ったところも負けたところも失敗まで、活動の全プロセスを共有しましょう。 さらには、作品が評価されていく過程もみんなに知ってもらって、少しずつ実績を重ねて、ブランドを作っていけるようになるといいですね。

その結果、ファンができて、もっと大きい存在から声がかかって、ワンフェーズ上のお仕事をできるようになるっていう好循環のスパイラルが生み出されます。意識しなきゃいけないのは、自分の作品作りブランド、それから社会との情報共有ですね。

世の中の大半は「見られる側」と「見る側」に別れていて、見る側はいわゆる消費者です。消費者になるのか、少数派の見られる側=生産者になるのか。やっぱり、みんなに追っかけてもらって生産者にならなければ豊かにはなれないので、そういった厳しさも常に意識してください。 みなさんの笑顔だってブランドになりますよ。ですから、ツールとしてSNSは必須となります。

SNSはみなさんの力を増幅させるエンパワーメント装置なので、使わないのは本当にもったいない。 もし使いづらい理由があるのであれば、リアルでの人間関係は特に大事にして、周りから好かれる人になってください。求められる人になるには、好かれる人になるのが一番重要です!

ありがとうございました!

取材・文/FREENANCE MAG編集部

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