新型コロナウイルスによって経済への悪影響が懸念される昨今、フリーランス・副業市場では職種によっては急速なニーズ増加が起こっているようです。では具体的に、どんな職種・人材への注目度が高まっているのでしょうか。
フリーランス・副業者を対象とした業務委託マッチングプラットフォームを運営する『SOKUDAN』の田根靖之さん(CAMELORS株式会社 代表取締役社長)と、 業務委託のプロ人材マッチングサービス 『CARRY ME(キャリーミー)』の毛利優子さん(株式会社Piece to Peace 執行役員 CMO)に聞きました。(2021年3月取材)
田根氏「リモートワークが定着し、副業・フリーランス市場が活性化」
まずは『SOKUDAN』代表取締役社長・田根靖之さんに話を聞きました。
新型コロナウイルスの影響ですっかり定着した「リモートワーク」ですが、SOKUDANでは創業時からそのメリットに着目し、フリーランス・副業者へのリモートワーク案件の紹介にこだわってきました。
田根「以前はリモートワークに理解を示す企業は少なかったのですが、新型コロナウイルスの影響で変わりました。企業から弊社へのオファー・問い合わせが増加し、同時に弊社サービスへの登録者も伸びています。どちらも2020年の緊急事態宣言後(2020年5月下旬頃)から、目立って増えてきた印象です」
そんな田根さんに、具体的にニーズが増えているフリーランス・副業者の職種をあげていただきました。
1:今後の営業の主戦力となる「デジタルマーケター」
田根さんが真っ先に名前を挙げたのは、デジタルマーケター。特にBtoB 向けサービスを提供している企業が、優秀なデジタルマーケターを求めるケースが急増中だといいます。
田根「リモートワークを採用する企業が増え、これまでのように企業に電話をかけたり訪問したりするという営業手法が難しくなってきました。そのぶんデジタルで顧客を獲得していかなければ、という背景があると思います」
デジタルマーケティングといえば広告運用を真っ先に思い浮かべる人も多いでしょうが、それだけでなく、コンテンツマーケティングをより強化するという企業も多いそう。
田根「ただコンテンツを作るだけでなく、コンバージョンまで持っていけるような人が重宝されますね。そして、営業的な視点でコンテンツを作れる人も人気がありますよ。コンテンツ制作の経験がなくても、これまで培った営業担当者としての視点を生かして、顧客を惹きつけるコンテンツを企画できるような人です」
2:コロナ前と比較して需要が倍増「RPA・AI エンジニア」
次に田根さんが言及したのは、RPAエンジニア※とAI エンジニア。
※RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入や開発をするエンジニア
田根「エンジニア周りの需要はコロナ前から高いのですが、ソフトウェアのシステム開発エンジニアよりも、RPA・AI エンジニアへの需要がかなり増えていますね。これまでもRPAに取り組んでいる企業はありましたが、一部の企業に限られていた印象です。それがコロナによってリモートワークが導入されたことで、さまざまな業務の自動化を必然であると感じ始めた企業がすごく増えているのでしょう。AI開発によく使用されるPythonなどの言語を扱う案件数は、コロナ前と比べて2倍以上になっています」
ニーズが急速に増えているのに対して、RPA・AI エンジニア自体がそう多くないため、しばらくは売り手市場が続くのではないかと田根さんは分析します。
田根「RPA・AI エンジニアの数はまだそんなに多くないので、必然的に需要に対して供給が不足する状態になります。このあたりの領域は経験者(実務経験3年以上等)であることが必須条件になってくるので、勉強をしてきただけの人材は通用しないこともあります。そういう状況で、案件単価も上がっている印象です」
3:オンライン営業のプロフェッショナル「インサイドセールス」
デジタルマーケターの需要が増えていることに関連して、オンラインを使ったインサイドセールス※ができる人材の人気も高まっているそうです。
※電話、メール、オンライン会議ツール等を使い顧客とコミュニケーションをとるというセールス方法
田根「デジタルマーケターが獲得してきた顧客にオンラインでアポイントをとって商談したり、適宜コミュニケーションをとって購入検討フェーズまで持っていったり、ユーザーを“見込み客化(成約の可能性が高い顧客)”にするような人材です」
オンラインでという限られた空間で営業を行うには対面営業とは違うコツが必要なため、これからはプロフェッショナルの領域として重宝されるのではないか、と田根さん。
田根「例えばオンラインの商談はオフラインよりも時間が短めのことが多いので、限られた時間の中でいかにサービスの魅力を伝えるかが重要になります。そのためにはプレゼン能力、資料の作りこみ、適度な演出も必要ですよね。マーケティングオートメーションを導入する企業も増えていますから、その数字を見ながらアプローチのタイミングを科学できるような人はさらに強いでしょう」
「コロナだからやむを得ずオンラインで営業する」ではなく、「オンライン営業のプロになるぞ!」と発想を切り替えれば、今後の市場価値が上がっていくかもしれませんね。
4:採用の形が大きく変わる。新たな動きに対応する「人事系」
田根「新型コロナウイルスの影響で、採用の形が大きく変わったと思います。採用のためのイベントやカンファレンス等が開催しづらくなっているので、デジタルで採用を強化しなければならない期間がしばらく続くでしょう。そこで活躍するのが、デジタルマーケティングができる人事です」
新型コロナウイルスの影響が少し落ち着いた頃から、企業の採用は活性化すると田根さんは分析します。
田根「未経験者の採用が減って、即戦力、特にデジタル系人材の取り合いになると思います。そこで、デジタルを駆使して優秀な人材を確保できる人事が必要になるでしょう。実際に弊社にも、そういった人材がいないかという問い合わせが少しずつ来ています」
毛利氏「副業・複業を始める個人も、依頼する企業も増加傾向に」
次は、業務委託のプロ人材マッチングサービス『CARRY ME(キャリーミー)』の毛利優子さんにお話を伺います。キャリーミーはマーケティングや広報など専門性が高い分野を中心に業務委託契約のマッチングを行っており、登録者数は1万人以上。専業フリーランス(法人化している人も含む)が全体の約8割を占めています。
毛利「もともと弊社ではフリーランスの方の登録が多いのですが、コロナ以降は副業を解禁した企業も多く、その影響で副業の登録数も増加しています。リモート勤務によって通勤時間が減ったり、早く仕事が終わるようになったため、正社員で役員をしながらキャリーミーの業務委託案件を始めたという方もいます」
そして田根さんと同様に、「フリーランスや副業・複業者に仕事を頼みたい企業も増えている」と話します。
毛利「コロナ不況に絡んで、正社員として雇用することをリスキーだと感じる企業が増えています。正社員で雇うと年収が高く手が出せない人材でも、業務委託なら稼働工数を調整することで比較的安価に抑えられるという利点もあります」
それでは具体的に、どんな内容の仕事の依頼が増えているのでしょうか?
毛利「コロナ禍をきっかけに対面営業の仕事が減っていて、それに代わって売り上げを伸ばすことができる職種へのニーズが増えています。代表的なものは以下の4つです」
1:予算配分まで考えられる「デジタルマーケター」
毛利さんが一番に名前を挙げたのは、田根さんと同じくデジタルマーケター。
毛利「対面での営業に代わって、デジタルマーケティングを強化して売り上げを伸ばしたいという企業が増加しています。特にニーズが高いのは、戦略面から設計まで全体的なプランニングを任せられる人です。どんな施策かだけではなく、どの施策にいくらかけるのか、予算配分まで考えられるような人ですね。販売する商品やマーケティングのターゲットによって施策の内容は大きく変わります。 例えば、女性相手にコスメを販売するならインスタグラム、BtoB向けのサービスの場合はFacebookが相性が良いなどです。施策の選定から予算配分まで考えて、全体に最適化できる方は重宝されています」
2:成果にコミットする「メディア編集者 & BtoB向けライター」
デジタルマーケター同様に、対面営業に代わる方法として自社メディアによって顧客を獲得していきたいと考える企業も多いそう。そこで必要になるのが、メディア編集者。
毛利「記事を作っても読まれずに埋もれてしまっては意味がないので、コンバージョンやリード獲得など、数値的な成果を出せる人が求められています。また、記事を書くだけでなく、ライターの採用からマネージメントまでできるような編集者のポジションも重宝されています」
さらにライター職では、BtoCだけではなく、BtoB向けの記事が書けるライターのニーズが高いそうです。
毛利「企業の経営者やマネージャーといった決済権のある人に響くような記事を作らなければいけないので、難易度は高く、豊富な経験を持っている人材も圧倒的に少ないようです。過去にBtoB 向けの記事を書いて結果を出した実績のあるライターには、チャンスが多い状況だと思います」
3:協業によりシナジーを生み出す「パートナーセールス」
協業することでシナジーを生み出せるような、自社と相性の良い企業を探せるパートナーセールス戦略を考えられる人材へのニーズも高まっているそう。
毛利「協業企業と上手くタッグを組んで、企業やサービスの認知度・売上アップを図りたいと思っている会社も増えており、協業企業開拓の経験がある人材が求められるようになりました。代理店網の開拓や教育、代理店向け支援プログラムの設計などができる人も人気です」
4:もはや“正社員限定”ではない「経営職」
毛利「コロナをきっかけに、オンラインで業務を進めることへの抵抗もなくなったためか、経営企画やCMO・CFOといった、これまではフリーランスや副業者に任せることは難しいと考えられていたポジションに対する依頼も増えています。経営や戦略の上流に関わりたいというフリーランスや副業・複業の方にも、可能性が広がっていると思います」
マーケティングや財務の責任者といった、企業の中核に近い部分は正社員が担うのが当たり前のことでしたが、その考え方が変わってきているようです。
フリーランス・副業者の市場はどうなる?
今後のフリーランス市場、副業市場はどうなっていくのかを田根さん・毛利さんの両者にそれぞれお聞きしました。
毛利「先ほどの経営職の話でも言及しましたが、正社員とフリーランス・副業者の境界線が薄れていくと思います」
正社員でもリモートワークが当たり前になったり、「週3勤務でOK」という企業が登場したり……。正社員が、フリーランス・副業に近い環境で働くようになっているとも言えます。つまり、これまでは「正社員じゃないとダメ」と思われていたポジションに、フリーランス・副業者を採用する企業が増えるのかもしれません。
毛利「会社員をやりながら副業するという人もどんどん増えるでしょうし、フリーランス・副業市場は活性化していくと考えています」
そして田根さんも、同様の意見を述べます。
田根「フリーランス・副業の案件は非常に増えていますし、今後も増えていくでしょう。大手も積極的に副業者の採用を始めていますしね。この仕事は社員に、この仕事は業務委託に、みたいな垣根がなくなって、もっと自由に働ける時代になってきていると感じます」
新型コロナウイルスの影響でフリーランス・副業の仕事が減ったと落ち込んでいる人もいるかもしれませんが、市場自体は活性化してくというのが田根さん・毛利さんの見解。
フリーランス・副業の仕事を増やしたい、案件単価を上げたいと考えている人は、仕事の方向性を考える際にぜひ上記を参考にしてみてはいかがでしょうか。
https://sokudan.work/
https://carryme.jp//