カメラマン・クロカワリュートに聞く。フリーランスクリエイターとして、認知度と単価を上げる仕事術

脱サラしたばかりの小沢あやが、さまざまな業種のフリーランスに話を聞く連載『フリーランスな私たち』。今回は、「認知度や単価を上げていく方法」をテーマに、カメラマンのクロカワリュートさんにお話を伺います。

クロカワさんのTwitterより

SNSでパッと目をひく、カラフルな写真。Twitterのタイムラインなどで、目にしたことがある方も多いのでは? 

クロカワさんは、会社員としてさまざまな業界・職種を経験した後、2019年からフリーランスとして活動しています。独立したばかりなのに指名の仕事が途切れない理由や、SNSを活用したブランディング法、仕事のスタンスで意識していることなどを聞きました。

クリエイターはまず、自分より「作品」を覚えてもらおう

小沢

クロカワさんは、 ディレクター時代に取材などで撮影するところからカメラマンとしてのキャリアをスタートしたんですよね。数年前に、今の作風に舵を切ることにしたそうですが、どんなことを考えて、今のスタイルでの発信を決めたんでしょうか。
「自分の好きなもの」と「仕事に繋がりそうかどうか」を考えて、今のスタイルになりました。写真もいろんなジャンルがあるので、フリーランスとして独立するからには、どこで勝負するかは考えました。

クロカワさん

クロカワリュートさん

小沢

具体的には、どんな戦略を立てたんですか?
「作風は絞りすぎず、可変性を残す」「SNSでわかりやすく、目立って、ライバルが少ない領域を選ぶ」ことですね。SNSって、フィルム写真やエモいポートレートが多いですよね。それに対して、スタジオで作りこんだ写真を載せている人は少ない。カラフルな写真ならさらに、タイムラインが早く流れても目に入りやすいので、差別化できると考えたんです。

クロカワさん

クロカワさんのTwitterより

小沢

確かに、Twitterのタイムラインで写真が流れてくるのを見て、私は「クロカワさんの作品だ」と、すぐわかります。
ありがとうございます。でも、カラーバック(カラフルな背景)での撮影は昔からいろんな人がやっているし、ジャンルとしてはすでに存在しているので、僕の専売特許だとは思ってないです。SNSで発信するという方法に的を絞って実行したのが僕というだけで。でも最近は「あれ、クロカワが撮ったやつ?」って聞かれるようになったし、イメージは定着したのかなと。ありがたいですね。極論、僕の名前は覚えてもらえなくてもいいんです。「あのカラフルな写真撮る人」って認識を持ってもらえれば。

クロカワさん

やりたい仕事を引き寄せるためのSNS戦略

小沢

クロカワさんは、作品の方向性がはっきりしているだけに、受ける仕事の種類もかなり絞っているんでしょうか?
いえ、そうでもないです。僕の作風で撮っているのは6割くらいで、残り4割くらいはディレクターからの要望を再現するような撮影のお仕事を請けています。でもその4割は、SNS上で紹介していないだけです。

クロカワさん

小沢

意外です。実績として全部アピールしたくなりませんか? 「実はこんなに手広くできるんですよ!」って。
欲張りたくなることもあるけど、我慢してます(笑)。まずは、自分の作風を覚えてもらわないと、何も始まりませんから。SNSでは基本的に写真のことしかつぶやかないし、他のことをしていても表には出さないようにしています。

クロカワさん

小沢

私はつい欲が出ちゃって、仕事内容もどんどん紹介しちゃうし、どうでもいいこともつぶやいちゃいます(笑)。
TwitterやInstagramのアカウントを見た人に、「こういう作風のカメラマンです」って伝えたいんです。常に初見の人からの印象を意識して、仕事関連のPOSTが上にくるようにしています。フォロワー数が多くても、クリエイティブが頭に入って来なければ、仕事には繋がりませんから。だから、Twitter上に「お腹すいた」とかは残さないようにしています。どうしても呟きたくなったら、深夜にまとめてワーッとつぶやいて、後で消すことは多々ありますけど(笑)。

クロカワさん

小沢

違和感のある投稿を消しておくというのは良さそうですね。SNS作法って、本当に大事ですからね。
企業と仕事をするうえで、人柄は絶対に見られると思っています。Twitter上ですぐ怒ったり、誰かと戦ってしまったりしている人もいますが、正しい正しくないは別として、あまり心象が良くないと思うんですよ。

クロカワさん

小沢

そうそう。フォロワー数だけじゃなくて、穏やかな人かどうかは結構みんな見ていますよね。もちろん、実績のアピールも重要。SNS経由で大型案件の声がかかることも、意外と多いですから。
やはり、「自分が何をしたいか」、「何ができるか」を宣言するのが大事です。僕も、会社を辞めてフリーランスになるとき、noteにやりたい仕事の方向性や実績をまとめて公開したんです。それを見た企業の方から、たくさん仕事がいただけるようになりました。もちろん、SNSブランディング以上に、作品と実績が大事だと思っていますが。

クロカワさん

小沢

発信を絞るメリット、わかりました。でも、絞ることで逃した仕事やジャンルはないですか?
意外とないです。「こういう写真を撮ってる人が、車を撮ったらどうなるんだろう?」みたいな期待値で、これまでやったことない依頼がくることも多いです。先日は、旅館の撮影をしてきました。自分がジャンルを絞っても、取引先の方が可能性をどんどん広げてくれるのは、とてもありがたいです。そういう意味でも、作品に可変性と、展開の余白を残しておくのは大事だと思っています。

クロカワさん

ディレクターとしての会社員経験が大きな武器に

小沢

2019年に独立するまで、たくさんの撮影をしてこられてますよね。
趣味でも、街や風景を撮っていた時期もありました。その後、写真を扱う企業や広告代理店でディレクターやプロデューサーなども経験しました。

クロカワさん

小沢

さまざまな業界・職種を経験しながら、カメラマンとして独立を考えるようになったのはいつからですか?
転機になったのは、友人と立ち上げた編集プロダクションですね。オウンドメディアの仕事をたくさんやっていくうちに、予算の関係などもあり、僕自身が撮影する機会が増えてきたんです。そこで写真を撮る面白さに目覚めて、誰かが作ったものを編集・ディレクションする立場ではなく、自分が現場に立って作る人間=カメラマンという方向に興味が湧きました。

クロカワさん

小沢

そうしたデイレクターとしての立場が、フリーになって活かされているところはありますか?
自分がフリーランスのクリエイターにお仕事をお願いする経験ができたのは大きかったですね。「こういうカットも一応撮っておいたほうがいいな」とか、クライアントがカメラマンに求めるものがわかるんです。

クロカワさん

クロカワさんのTwitterより

小沢

発注側としての感覚が身についているのは、強いですよね。現場での仕事の進め方だけでなく、戦略を立てるうえでもその感覚は役に立っていますか?
そうですね。作風を絞っているのも、発注側のニーズを考えた上でそうしているんです。広告の大型案件って、「どんな写真でも撮れます」っていうフォトグラファーには絶対お願いしないと思っていて。「このジャンルをずっと撮っている人で、実績があります」って説得できるような人じゃないと、クライアントの決裁が下りませんから。

クロカワさん

小沢

確かに、専門性が高い人のほうが安心ですよね。予算が大きいなら、なおさら。
僕もそれを意識して、「代わりがきかない人」になろうという気持ちが強いです。「なんでもできる人」は、スケジュールは埋まるけど単価が安くなってしまう印象があります。

クロカワさん

苦手な業務、取引先との交渉、コロナの影響……フリーランスの悩みと不安、どうしてる?

小沢

フリーランスは、一般的に「自由に好きなことを仕事にしている」というイメージが強いですが、それぞれ苦労もありますよね。クロカワさんも、悩みや不安とどう付き合っていますか?
フリーランスになりたいと思う人って、何かしら今の環境に思うところがある人だと思うんですよ。せっかく独立したなら、仕事の本質になる部分では、我慢しないほうがいい。何より、だいたいのことって、考えても解決しないので、行動あるのみと思っています。

クロカワさん

小沢

クロカワさんは、課題にぶつかったときに、どうのりこえてきたんですか?
まずは「お金で解決する」「人にお願いする」の二つの方法を検討しますね。そもそも、フリーランスの悩みの8割くらいは、お金で解決できる内容じゃないかと思うんです。例えば、仕事の方向性を変えたいなら、しばらく休んで戦略を練って営業するとか、仕事がくるようにブランディングをするとかして、理想のジャンルを獲得すればいい。つまり、お金(貯金)があれば、解決方法を模索する時間ができる。

クロカワさん

小沢

たしかに。多くのフリーランスを悩ませている事務・経理作業も、外注すれば解決しますよね。とはいえ、「お金で解決」するにも稼ぎが必要です。クロカワさんは、案件の単価を上げていくために工夫していることなどありますか?
関係各所とコミュニケーションをとって、予算をしっかりいただくことです。事前に担当範囲や予算を確認した上で、「撮影だけ」ではなく、企画提案を含んだ提案ができれば、報酬は増えます。自分にできることなら、マルチにコミットしたいと考えています。

クロカワさん

クロカワさんのTwitterより

小沢

でも、ディレクターの仕事って、カメラマンに比べて業務範囲が不明瞭ですよね。たとえば、私の場合、ライターとして請けた案件なのに、後から編集やメディアディレクションまで求められることがありました。条件交渉に苦労するのですが、業務や条件など、お取引先の方とどのように擦り合わせていますか?
最初から「自分の担当範囲がどこまでなのか」を明確にします。企画を立ち上げて提案したり、コンテを書いたり、配色提案したり、いろんな仕事がありますから、何をどこまでやるかをしっかりと話しておくのが大事です。その方が案件全体の予算は増えます。例えば、僕に制作スタッフのアサインまで任せてもらえれば、クリエイターとスムーズにやりとりができるし、彼らにも還元ができます。そこは毎回、意識しています。

クロカワさん

小沢

最近はコロナの影響もあって、将来に不安を抱えるフリーランスの方も多いです。どうしようもない理由で仕事が減ってしまうこともあると思いますが、クロカワさんはスケジュールが空いたとき、どんな風に過ごしていますか?
戦略を練る時間にしています。今考えているのは、撮影以外で、個人の発信として何ができるのか。「とりあえずなんとなくやってみる」が苦手で。SNSなどインターネットの発信も、企業の新規事業の立ち上げのように、しっかり戦略性を持って取り組みたいんです。しっかり取り組んだ結果、うまくいかなかったらすぐにやめればいい。

クロカワさん

小沢

経営者視点ですね。最後に、会社員とフリーランス、どちらも経験した今だから言えることはありますか?
今の会社の仕事が苦しいなら辞めてもいいし、フリーランスの人も、しんどくなったらまた会社員に戻ってもいいんです。今の環境で戦うのか、フィールドを変えるかっていう話かなと。会社員もフリーランスも、それぞれの厳しさがあるし、チャレンジは必要。自分に合う働き方を選べばいいと思います!

クロカワさん

# 編集後記

「自分は仕事とプライベートの境目がないタイプ」と語るクロカワさん。ストイックな仕事術を語りながらも、物腰が柔らかくてとても穏やか。作品や戦略性はもちろん、人柄も含めて、人気を博している理由がよくわかりました。

出演/クロカワリュートさん(@ryuto_kurokawa
取材・文/小沢あや(@hibicoto)撮影/伊藤健二郎